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2007年11月18日 (日)

米証券取引委員会(SEC)の決定

次の日経の記事です。

日経 11月18日 国際会計基準決算書、米が来年から導入――SEC決定

グローバル化に乗り遅れている日本を皮肉っているようで、相当前から進んでいたことで、今更ではありますが、少し書いてみます。

1) 米証券取引委員会(SEC)の発表

実際の米証券取引委員会(US Securites and Exchange Commission - SEC)の発表文は以下です。

SEC Press Release: 2007-235 SEC Takes Action to Improve Consistency of Disclosure to U.S. Investors in Foreign Companies

SECの発表の格となる部分は次の部分と思います。

・・・・the Commission today approved rule amendments under which financial statements from foreign private issuers in the U.S. will be accepted without reconciliation to U.S. generally Accepted Accounting Principles only if they are prepared using International Financial Reporting Standards (IFRS) as issued by the International Accounting Standards Board. The purpose of the requirement to use the IASB-approved version is to encourage the development of IFRS as a uniform global standard, not a divergent set of standards applied differently in every nation.

「外国企業の財務諸表がIASBが定めたIFRSに従っている場合のみ、これを許可する。」であり、「各国が異なった基準を使用するのではなく、IFRSを世界統一基準(a uniform global standard)に発展させていくことが目的である。」です。

2) 会計基準

SEC発表文は正しいことを述べていると思います。会計基準が、異なれば、企業の利益・売上高・原価・資産・負債等が異なってきます。ヒト・モノ・カネが国境を越えて移動する時代です。おそらく、これを阻止することは誰もできないと思います。効果的にヒト・モノ・カネが国境を越えて移動するときに、地球の繁栄があるのだと思います。その中で、ヒトとモノは、カネを目指して移動するのかも知れません。勿論、援助という形のカネの移動もあるでしょうが、売買・投資・貸付・援助何にしても、お互いのお財布を見せっこして有効になるはずです。

企業にとって、資金を集めることは、自分のお財布を見せることです。金を借りても投資を受けても、「この様にしますよ、明朗会計です。」とするのが、最も合理的です。お財布といっても、現金のみではないわけで、借金もあれば、保証もあるし、不良債権も、売れ残りの商品もある。全てを適正に評価して作成するのが、財務諸表であり、評価して数字を作るための基準が会計基準です。

全世界の企業・国家財政が同じ基準でできていれば、すごく便利です。

米国の証券取引の大元締めであるSECが、IFRSを認めると公式に発表したことは、IFRSが今後の世界基準となるための一歩を大きく歩み始めたと思います。

3) 日本は?

日経の記事は、正確でない部分があります。「民間組織が作成した独自の会計基準を採用している日本」はについて、少し違うと言いたい。例えば、金融所品取引法第24条が、有価証券報告書の提出義務を定めており、財務諸表がこれに含まれる。そして、財務諸表は内閣府令(大蔵省令から名前が変更になっていると思うのですが)である財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則に従わなければならないと金融所品取引法に書いてある。内閣府令は、民間組織が作成した規則ですかと言いたいのです。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則については、金融庁や政府が勝手に作成しているのではないし、企業会計基準委員会が定めた多くの企業会計基準・企業会計基準適用指針・実務対応報告があり、細かい部分は、これらによって解釈する部分が多いのは確かです。でも、米国と比べたら、米国の方が政府とは独立したSECがマーケットを管理している。会計基準であるUS GAAPだって、政府により作られた基準ではありません。

政府や政治家にマーケットを委ねたら、自分に都合の良いようにしてしまう。自分たちの金融取引は自分たちがルールを作り、守っていかなければならないというのが根本思想です。政府や政治家が悪いことをするのは、悪い人がいるからではありません。人間がするからです。権力を集中せず、合理的に管理することの重要性と思います。

すこし、横道にそれてしまいましたが、日本の会計基準もずいぶんIFRSやUS GAAP(米国会計基準)に近くなっています。しかし、固定資産の減損会計や企業結合会計等でIFRSやUS GAAPと相当異なる部分もあります。日本的な部分を引きずりすぎた部分と私は思っています。正しいかどうかではなく、国際的に統一する方向に動くことの重要性の認識が薄いと思います。もしかしたら、能力のない経営者に引きずられる甘い公認会計士といった図なのでしょうか?(言い過ぎの点は、お許し下さい。)

4) 日本

日本は、先進国なのでしょうか?途上国なのでしょうか?先進国だとしたら、世界を見渡して活動している。でも、そうではなく、日本のみしか見ていないのではないかと思えるのです。例えば、中国初めアジアの国々を見るときに、日本という視点からのみ見て、アジアという視点は欠いているのではないか。

日本の携帯電話は、世界一高い。何故なら、日本独自の規格だから。TV地デジ放送のワンセグなんて、馬鹿だと思ってしまう。何故、ワンセグが必要なのか分からない。普通に放送を受信する安い携帯TV受信機を作れば、良いだけの話なのに。おそらく、ハイビジョン・テレビも日本だけが世界と異なった規格で突っ走ることになるのだろう。日本のメーカーは、世界の後進国となり、携帯電話同様日本のマーケットしか通用しない、高い物になる。日本の消費者は高くて性能の悪い物を使わざるを得なくなる。

日本のハイビジョン・テレビ放送はISDBという方式(最も衛星放送のISDB-Sと地デジ用のISDB-Tがあるから更にややこしいですが)であり、米国他はATSC方式で、ヨーロッパはDVB方式を使う。日本のことしか考えないなら、日本で勝手にすればよい。でも、そうすると世界の後進国になってしまいます。世界標準・世界規格を積極的に作っていく。作ることに参加する。そんなことができないのは何故でしょうか?

教育が悪いのでしょうか?私は教育で一番大事なのは、真実を見極める目や力を与えることであると思います。そのためには、大人が手本を示さなければならない。大人が目先だけにとらわれて、他人の粗探しばかりしていたら、将来のない世界になるのだと思います。

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