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2008年2月28日 (木)

割り箸事故医療民事裁判判決を読んで

2月22日のエントリーで割り箸事故の東京地裁判決文を紹介し、22日の時点では私も読めていなかったのですが、じっくり読み、そして考えるに、妥当な判決だと思いました。

1) 民事賠償

民事賠償とは、過失により損害を受けた被害者が加害者に対し損害賠償を求めるものです。過失があったのかがポイントであり、あったとするからには、その過失とは何であるかが、明確にされなければならないと考えます。過失とは、通常求められる注意を払い、そのことを実行しなかったことと考えます。

医療裁判であったのですが、判決文においては60ページで、次のように述べられれれいます。

人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する者は,その業務の性質に照らし,危険防止のため実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるが(最高裁昭和36年2月16日第一小法廷判決・民集15巻2号244頁参照),この注意義務の基準となるべきものは,診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である(最高裁昭和57年3月30日第三小法廷判決・集民135号563頁)。

判決は、注意義務を医師は果たしたと判断しました。

綿飴の割り箸をさして、それを子供が自分で抜き取り、意識がある状態で病院に来て、救急車で来たが救急隊員からも、重傷であるとの引継はなかった。判決文で言えば、次の所(66ページ)でしょうか。

本件においては,頭蓋底の骨折を疑わせる髄液の漏出や,頸動静脈損傷等を疑わせる大量の出血,頸静脈孔内の迷走神経,副神経,舌咽神経の損傷に伴う神経学的な障害が生じていたことを認めるに足りる証拠はない。さらに,軟口蓋を刺したとされる割りばしが持参されていないこと,D本人が割りばしを抜いたと告知されていたことを考慮すると,傷の深さは,子供の力でも割りばしを容易に抜去することができる程度にとどまると考えるのが通常である。

CTを取らなかったら医師は過失であると原告は主張しました。でも、その原告は子供についてきていました。でもCTでも割り箸が残っていることは発見不可能なはずです。CTを撮れば全てが割るわけではないし、判決文では、「司法解剖を施術したK医師も,脳を取り出した際に初めて割りばしの存在を確認した」と書いてあります。

医療側に過失があったとは言えないと思います。

2) 刑事裁判

この事件は、医師が業務上過失致死罪で起訴されて一審判決が2006年3月28日にあり無罪にはなっていますが、「診断ミスがあったことは認めた」となっており、スッキリしません。検察は控訴しました。この判決文は探し出せませんでしたので、読売の記事を掲げます。

読売 2006年3月29日 「延命の可能性低い」医師に無罪…割りばし死亡事故

私は、民事の東京地裁の判決文を読んだので、検察は不当であると怒りを感じました。

3) 医療は社会の重要なインフラ

私は、医療は社会の重要なインフラであると思います。医療は空気ではないはずで、人間社会が築き上げてきたものです。それを発展させていかなければならい。崩してはならないはず。過失がないのに、業務上過失致死罪で起訴とは検察は酷いと思います。検察が有罪率を誇りにするなら、過失のない人を起訴すべきでない。正当な行為をしている人を起訴したら、社会悪であると思います。

ここは、検察を責めるだけではなく、悪人でない人を犯罪者にすべきでないと全員が運動すべきなのでしょうか。医療行為をして、犯罪者になるなら、誰も医療を提供しない。医療というインフラを壊すだけのはずです。

民事訴訟は誰もが持つ権利であり、これを制限してはいけない。しかし、前回掲げた「医療過誤の立証なお壁高く」とマスコミが正義はこれだと医療に対する誤解を蔓延させるのも、我々の貴重な医療インフラを壊す行為と思います。

東京地裁の判決は正しい社会を実現するために正義を守ってくれる判決だと思いました。

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2008年2月22日 (金)

マスコミ報道

今更こんなエントリータイトルを付けるのも変ですが、1年少し前「あるある事件」を何回か書きましたが、なんというか、関西テレビって未だに後を引きずっているのですね。

読売2月18日 関テレの民放連再加盟、関西民放18社が容認せず

今でも2007年10月27日のエントリー廃止候補の201病院を訪れていただく方がたくさんおられ、医療問題に関心を持っておられる方が多いのだと実感しています。

「あるある」は捏造であったのですが、2月12日に「割り箸事故」についての医療に関する東京地裁の民事判決がありました。この事故のことを詳しく知っていなければ、次のMSN産経ニュースのような「医療過誤の立証なお壁高く」と一般の方は感じてしまうのだろうと思います。

MSN産経 2月12日 医療過誤の立証なお壁高く 割りばし事故訴訟

しかし、この事故に対する医療は、色々話を聞けば聞くほど、手落ちはなかったと私には思えるのです。マスコミが「医療過誤の立証なお壁高く」と言っているのは、何を根拠にそう述べているのかです。私には、自ら調査を行わず、両親の話だけを聞いて記事を書いているように思えるのです。多面的な取材をして、記事を書いて欲しい。そうしないと、「あるある」捏造と紙一重の所に陥っていりやしないかと思います。これは、医療裁判だけではなく、全てについてそう思います。

割り箸事故医療裁判の東京地裁の判決文は裁判所のWebに掲載されました。こことそしてここに全文です。私も、じっくり読んでみます。よく調べて書いている良い判決だと言っておられる方もいます。

最近、ブログの更新ができずにいましたが、まだ少し忙しくてできないと思います。

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2008年2月12日 (火)

他社の株価下落と取締役の責任

次のようなニュースがありました。

Infoseekニュース 2月8日 評価額18兆円目減り…東証1部上場企業の保有有価証券 (夕刊フジ)

フジサンケイ ビジネスアイ 2月8日 東証1部企業、評価損18兆円超…背景に株式持ち合い加速

これについて、色々思ったものですから、書いてみます。

1) 本質は何か

本質は、企業の業績と他社の株価下落は無関係であるはずと思いました。例えば、製造業を例に取ると、原料を仕入れて、それを加工して(付加価値を付けて)、製品にして、販売する。販売するマーケットと、仕入れするマーケットは、双方とも株価とは直接の関係がないはずです。株価が下がっても、最終的な需要には影響しないはずで、むしろ消費者の好みや、為替や、他社製品との競争が影響するはずです。仕入れも、同じで、仕入れ単価は株価に影響されないはずです。人件費や加工費も同じですから、企業の業績に対するインパクトは小さいはずです。

勿論、例外はあるわけで、株式投資を本業としている会社の場合で、例えば、証券会社が販売できるはずと見込んで引き受けたが、売れずに自社で抱えてしまったようなことがあるかも知れません。銀行がサブプライムでXXX億円損失を出したと言うのも、金融業であるからこそ、発生していることです。

記事には、東証1部上場の1227社(金融機関を除く)が保有する1月末時点の有価証券の評価額は、昨年9月末に比べて18兆2000億円少ない109兆円と書いてありますから、1社あたりの平均で言えば、1036億円保有している株式が1月末では、148億円下落して、888億円の時価となってしまったということです。

1000億円も保有している必要があったのでしょうか。生産には寄与しないはずです。もしかしたら、場合によっては、販売や仕入れの面で、取引先と好関係が築けてなんてこともあるかも知れませんが、個別に評価するひつようがあります。

2) 持ち合い株式?

記事に、敵対的な買収攻勢に備えて、逆に持ち合いを強化する動きが活発化と書いてあります。そうだとすると、取締役の自己保身のための背信行為みたいだと思います。配当や新規事業に投資すべき株主の資金を使って、自己保身のために他社と株式の持ち合いをする。変だと思います。

事業と関係のない株式を保有しても、生産性の向上には繋がらない。利益には繋がらない。お互いに、借入金をして株式を購入しあったら、借入金の利息分収益が悪くなるし、会社としての資金調達力にもどこかに限界があるはずで、会社の資金調達力の一部を、無意味なことに使うことです。

敵対的買収かどうかは、取締役が決定するものではないはず。株主が、判断することです。敵対的買収とは、会社を乗っ取って、その会社を自分の都合の良いように利用して、他の株主、従業員、取引先、社会のためとか考えないことです。株主の最大の権利は、取締役を選任することです。取締役は株主により雇われた人間です。

3) 株主の皆さん権利行使をしてください

投資とは、平均数字の議論ではなく、個々の投資毎の判断です。売却してもよし、追加購入してもよし、株式だったら議決権があるので、賛成・反対の投票をすべきです。上場会社の場合、会計監査人の監査を受けていることから、決算の承認はありませんし、一般株主がそんなことができるほどのデータも持っていません。配当も、会社に置いておくか、株主に戻させるかの話だとすれば、一番重要なのは取締役の選任です。変な会社なら、任期満了にともない改選される取締役全員の選任に反対すればよいと思います。そうすると取締役達も引き締まって、まじめに仕事をするのではとの期待ができるかも。

思い出すのは、次のニュースです。

MSN産経 2月8日 「デイトレーダーはバカ」 経産省次官、講演で発言

色々な意見があってよいと思います。「バカ」と講演のなかで使うと問題があるでしょうが。「デイトレーダー」とは、1日のうちに同じ銘柄を何度も売買する人とすれば、ほとんどの人は当てはまらないし、この経済産業省の北畑隆生事務次官も一般投資家のことを言ったのではないと思うのですが。

一般投資家が「バカ」だと思われていたら、大変です。もしかしたら、持ち合い株式を進めた取締役は一般投資家を「バカ」だと思ったから、持ち合いを進めたのではないかと思うのです。株主様を「バカ」と考える取締役は許せないと思います。

6月末に多くの会社の株主総会がありますが、その会社が持ち合い株式を進めたかどうかは、連結キャッシュ・フロー計算書投資活動によるキャッシュ・フロー投資有価証券の取得による支出という項目と投資有価証券の売却による収入という項目がありますから、これで判断してください。

ちなみに、上場会社である子会社や関係会社の株式を保有していることもあり得ます。子会社を保有するのは、事業目的であり、関係会社も事業と密接な関連がある場合です。子会社、関係会社の株式取得・売却は少し意味が異なるから除外した方がよいのですが、子会社や関係会社の株式は投資有価証券に含まれません。だから、上記でチェックで正しい答えが出るはずです。

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2008年2月 5日 (火)

これはすごいなJFE、さすがIHIとは違う

開いた口がふさがらなくなりそうです。

IHIは、12月12日のエントリー IHIと東証に書いたように、平成20年3月期通期予想が当初予想より550億円のダウン、平成19年3月期の過去の損益修正が経常利益段階で300億円のダウンで合計850億円ダウンとなった結果、東証他は訂正内容が重要と認められる相当の事由があり、今後の推移及び訂正報告書を提出した後の審査の結果いかんによっては上場廃止基準に該当するとして、監理ポストに指定しました。

JFEの500億円損失(当期利益でのダウンは600億円)のニュースとしては、次の日経を掲げます。

日経 2月4日 JFEの今期、純利益13%減に下方修正・特損500億円計上

1) JFEは、どう思っているのだろうか?

実は、JFEホールディングスは、このことについてプレスリリースを行っていません。500億円や600億円利益が減少するのは、わざわざ発表するに値しないなんて、すごいと思いました。発表したのは、この2月4日に発表した2007年度 業績見通しのなかの、「2007年度 特別損益と当期損益」というページに、500億円の特別損失発生の注として次のことが書かれているのみです。

JFEエンジニアリング(株)の子会社であるJFE環境ソリューションズ(株)が長期契約を締結し、運転・保守を行っている施設のうち数件において、契約期間を通じて将来損失が見込まれることとなったため、当期に一括して前倒しで引き当てることと致します。これは、将来に向けた一層の財務体質の健全化を目的としたものであり、これにより、先行きのリスクに対する透明性の確保を図ってまいります。

中国向けの需要等で鋼材価格が高くなり、製鉄業は業績が良い。だから、500億円や600億円ぐらい、どうでもよいのだという感じがして、株主をバカにしているように思えます。

IHIの発表は、まだ真摯に受け止めて、頭を下げているという感じがするのですが、JFEは高慢ちきの、どうしようもない会社との印象を受けてしまったのですが。

2) JFE500億円の真相

この真相は、非常に気になるのです。これも日経を掲げます。

日経 2月4日 ごみ処理プラント、JFEが今期特損500億円

JFE環境ソリュージョンズ(株)が長期契約をしていた案件は、ごみ処理プラント(ゴミ焼却炉?)ですから、多分相手は地方自治体なのです。もし、地方自治体でなければ、いくつかの地方自治体が集まったゴミ処理の組合です。いずれにしても、相手は市町村です。

日経の記事では「今後17年にわたって生じる損失を損失引当金として一括計上」ですから、1年に30億円です。でも、地方自治体が相手ですから、初めから赤字受注ではなかったと思います。性能が出なかったから、無料メンテナンスをすることとしたのか、そんな生やさしいことではなく、焼却場の運転を無料で引き受けることとしたのか、恐ろしいのは、相手の地方自治体においても、JFEのごみ処理プラントを購入したことから、損失が発生していて、その地方自治体の住民に対する行政サービスが悪くなっている恐れです。

JFEホールディングスに当期純益が2,600億円まだ残っているので、迷惑を被った自治体もまだ救われる余地があるのではと思うのです。

3) JFEの発表が待たれる

上記の2)の自治体が迷惑を受けているかどうかは、最悪の懸念を書いたまでで、JFEが社会に対して真相を発表すべきです。株主をバカにして、社会にはほっかむりをすることが許されるとJFEの経営者は考えているのかと言いたいのです。もし、何もしないなら、コンプライアンス最低の企業と思います。

4) 蛇足

冒頭にIHIについて触れましたが、次の話があります。

日経 1月11日 JFEとIHI、造船統合へ・国内首位、シェア2割に

それ以前に、JFEが日立造船と折半出資するユニバーサル造船(川崎市)を子会社化し、これをIHIの造船子会社と統合するという話ですが、弱小(と呼ぶと怒りを買いそうですが)が集まるだけみたいな。でも、IHIは、水戸藩主徳川斉昭が幕命により江戸・石川島の地に造船所を開いた石川島造船所、戦艦大和を作った呉、元神戸製鋼の造船所である播磨造船所ですから、日本鋼管鶴見造船所よりはるかに老舗だと思いますが、どうするのでしょうか?ここに名前をあげた造船会社の共通点は大型LNGを建造していない(誰も発注しない)でしょうか?

たまたまでしょうが、統合や合併で問題が解決するわけではない。業績が良くなるわけではない。ということを経営者は、認識すべきです。多分、認識しているでしょうね。だから、言い方を変えると、「株主(潜在的株主も含め)や社会に、必要な情報を開示すべき。」であります。そして、株主は、自らの権利を行使して、取締役案を否認するなら、否認すべきと思います。

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2008年2月 4日 (月)

JT冷凍ギョーザとインサイダー取引

2月2日の読売新聞ですが、次の記事がありました。

JT株、ギョーザ事件公表2日前に急落…証取委が調査

農薬が、どの段階でギョーザの中に入ってしまったのかは、調査の結果を待たざるを得ず、その結果によって、批判も可能だと思うことから、このインサイダー取引を考えてみます。

1) JT株の動き

最近3ヶ月間のJT株の株価と出来高を示すYahooチャートは、次の通りです。

Jtchart20080201

JT株価も、他の株と同様の値動きをしていると思うのですが、念のため、日経平均と比較したのが、次のチャートです。

Jtchart20080201comp

青がJT株で赤が日経平均ですから、1月21日以降の動きがJT株と日経平均で違いがあると言えば、あるように思えます。1月21日(月)以降のチャートを大きくしてみました。

Jtchart2008121

2) インサイダー取引の可能性は?

出来高は、1月28日と31日で大きく、それぞれ52,602株と81,172株でした。株価の始値と終値を比べると、28日が28,000円安で、31日が36,000円高でした。一方、出来事を、時系列に並べると次のようになります。

12月28日 千葉市の母子2人中毒症状発生
1月4日 千葉市の中毒に関する情報がJTに伝わる。
1月5日 高砂市の3人中毒症状発生
1月7日 高砂市の中毒に関する情報がJTに伝わる。
1月22日 市川市の5人中毒症状発生
1月30日 JTが市販用・業務用合わせて23品目の自主回収を発表

1月22日の市川市の中毒症状が28日の段階で、特定の関係者で知ることができる人物が存在するかどうかです。この1月30日 朝日新聞 「最初の被害」から1カ月、公表遅れる ギョーザ中毒を読むと、「殺人未遂容疑で捜査を始めたのは1月23日、ギョーザからメタミドホスが検出されたとする鑑定結果を得たのは29日だった。」とあり、29日のある時点においては、JTの関係者で事態をほぼ把握できていた人たちはいたと思います。しかし、28日で、どうであったかは、残念ながら私としては何も言えない状態です。

JT株の売買を金額で把握すると、28日が300億円で、31日が450億円です。通常は1日2万株の出来高ぐらいですから、150億円位です。だから、28日と31日は確かに通常よりは取引が多かったのです。

上場株式は電子制度になり、上場株式の所得税の利点を得るためには、身分証明書を提出して証券会社に売買委託をする必要があることから、今や架空名義はほとんどないであろうと思うのです。だから、強制捜査の権限をもった機関がインサイダー取引があったのかどうかを、調査して結果を報告すべきであると思いました。

証券市場の健全な発展のために、疑わしい場合には、調査をし、その結果を報告することが当然と思います。

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