他社の株価下落と取締役の責任
次のようなニュースがありました。
Infoseekニュース 2月8日 評価額18兆円目減り…東証1部上場企業の保有有価証券 (夕刊フジ)
フジサンケイ ビジネスアイ 2月8日 東証1部企業、評価損18兆円超…背景に株式持ち合い加速
これについて、色々思ったものですから、書いてみます。
1) 本質は何か
本質は、企業の業績と他社の株価下落は無関係であるはずと思いました。例えば、製造業を例に取ると、原料を仕入れて、それを加工して(付加価値を付けて)、製品にして、販売する。販売するマーケットと、仕入れするマーケットは、双方とも株価とは直接の関係がないはずです。株価が下がっても、最終的な需要には影響しないはずで、むしろ消費者の好みや、為替や、他社製品との競争が影響するはずです。仕入れも、同じで、仕入れ単価は株価に影響されないはずです。人件費や加工費も同じですから、企業の業績に対するインパクトは小さいはずです。
勿論、例外はあるわけで、株式投資を本業としている会社の場合で、例えば、証券会社が販売できるはずと見込んで引き受けたが、売れずに自社で抱えてしまったようなことがあるかも知れません。銀行がサブプライムでXXX億円損失を出したと言うのも、金融業であるからこそ、発生していることです。
記事には、東証1部上場の1227社(金融機関を除く)が保有する1月末時点の有価証券の評価額は、昨年9月末に比べて18兆2000億円少ない109兆円と書いてありますから、1社あたりの平均で言えば、1036億円保有している株式が1月末では、148億円下落して、888億円の時価となってしまったということです。
1000億円も保有している必要があったのでしょうか。生産には寄与しないはずです。もしかしたら、場合によっては、販売や仕入れの面で、取引先と好関係が築けてなんてこともあるかも知れませんが、個別に評価するひつようがあります。
2) 持ち合い株式?
記事に、敵対的な買収攻勢に備えて、逆に持ち合いを強化する動きが活発化と書いてあります。そうだとすると、取締役の自己保身のための背信行為みたいだと思います。配当や新規事業に投資すべき株主の資金を使って、自己保身のために他社と株式の持ち合いをする。変だと思います。
事業と関係のない株式を保有しても、生産性の向上には繋がらない。利益には繋がらない。お互いに、借入金をして株式を購入しあったら、借入金の利息分収益が悪くなるし、会社としての資金調達力にもどこかに限界があるはずで、会社の資金調達力の一部を、無意味なことに使うことです。
敵対的買収かどうかは、取締役が決定するものではないはず。株主が、判断することです。敵対的買収とは、会社を乗っ取って、その会社を自分の都合の良いように利用して、他の株主、従業員、取引先、社会のためとか考えないことです。株主の最大の権利は、取締役を選任することです。取締役は株主により雇われた人間です。
3) 株主の皆さん権利行使をしてください
投資とは、平均数字の議論ではなく、個々の投資毎の判断です。売却してもよし、追加購入してもよし、株式だったら議決権があるので、賛成・反対の投票をすべきです。上場会社の場合、会計監査人の監査を受けていることから、決算の承認はありませんし、一般株主がそんなことができるほどのデータも持っていません。配当も、会社に置いておくか、株主に戻させるかの話だとすれば、一番重要なのは取締役の選任です。変な会社なら、任期満了にともない改選される取締役全員の選任に反対すればよいと思います。そうすると取締役達も引き締まって、まじめに仕事をするのではとの期待ができるかも。
思い出すのは、次のニュースです。
MSN産経 2月8日 「デイトレーダーはバカ」 経産省次官、講演で発言
色々な意見があってよいと思います。「バカ」と講演のなかで使うと問題があるでしょうが。「デイトレーダー」とは、1日のうちに同じ銘柄を何度も売買する人とすれば、ほとんどの人は当てはまらないし、この経済産業省の北畑隆生事務次官も一般投資家のことを言ったのではないと思うのですが。
一般投資家が「バカ」だと思われていたら、大変です。もしかしたら、持ち合い株式を進めた取締役は一般投資家を「バカ」だと思ったから、持ち合いを進めたのではないかと思うのです。株主様を「バカ」と考える取締役は許せないと思います。
6月末に多くの会社の株主総会がありますが、その会社が持ち合い株式を進めたかどうかは、連結キャッシュ・フロー計算書の投資活動によるキャッシュ・フローに投資有価証券の取得による支出という項目と投資有価証券の売却による収入という項目がありますから、これで判断してください。
ちなみに、上場会社である子会社や関係会社の株式を保有していることもあり得ます。子会社を保有するのは、事業目的であり、関係会社も事業と密接な関連がある場合です。子会社、関係会社の株式取得・売却は少し意味が異なるから除外した方がよいのですが、子会社や関係会社の株式は投資有価証券に含まれません。だから、上記でチェックで正しい答えが出るはずです。
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コメント
アダムスミスの考えた市場は個人レベルの取引でなされる行為でその場合は持合とは、市場に展示する品物の数を減少させるので資本主義の原理としては悪いと見なさざるを得ない。
しかし、その市場に強力な強盗のような収奪者が不定期に訪れるとしよう。そうすれば、日々の品物の展示は少ないほうが良い。しかも取引した品物とその金額は象徴的なもので、一定の関係の場合それは実取引の何倍かにすれば、特定の関係の取引の量は減退せず安全がはかれる。こういう信頼関係を表現したのが持ち合い。しかし一見さんには、不平等と映る。
このような中、一見さんの論法で持合を悪と見なしたが、結果的に一見さんは損して市場を去っていった。持ち合いよりも強盗を悪とすべきではないか?
投稿: 加武呂 | 2008年3月13日 (木) 00時16分