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2008年3月27日 (木)

政府系投資ファンド(SWF)に対する規制

政府系投資ファンド(SWF)に対する規制が必要なのか、考えてみます。

1) 米財務省/シンガポール政府/アブダビ政府の高官による基本合意

先ずは、次の記事です。

読売 3月21日 米・シンガポール・アブダビ、政府系ファンド投資原則で合意

正確な内容については、次のプレスリリースをご覧下さい。

3月20日 US Department of Treasury発表 ”Treasury Reaches Agreement on Principles for Sovereign Wealth Fund Investment with Singapore and Abu Dhabi”

基本合意の概要は次の通りで、当然と言えることでありますが、興味深いとも言えます。

SWFの基本方針

1. SWFの投資決定は、純粋に経済利益の追求を目指して行われ、相手国政府の政策に関与する目的で行ってはならない。
2. SWFが情報開示を進めることは、金融市場の不安を解消し、相手国からの信頼を得ることになる。
3. SWFは、自らのガバナンスを高めるべきである。
4. SWFと民間とは、公平な競争関係であるべきである。
5. SWFは、相手国の法令を尊重し遵守する。

投資受け入れ国の基本方針

1. 投資受け入れ国は、外国からの直接投資を防止する規制・制限をしてはならない。
2. 投資受け入れ国における投資規制の枠組みは明確であり、判断基準が法に明確に示されており、解釈に幅がないこと。
3. 投資受け入れ国は、投資家毎の差別をしてはならない。
4. 投資受け入れ国は、SWFの投資判断に関与してはならない。安全保障を目的に、投資制限を行う場合は、純粋に直接関与する部分のみとすべきである。

発表文にも、”We hope that the IMF and OECD's work can build upon these basic principles”とありますが、IMFもOECDも、大きく違ったルールは作らないと思いますし、これがやはりベースになると思います。

2) 我が国では

上の原則を読んでいると、日本は鎖国に近く、黒船がこないと開国できないのかなと思いました。勿論、開国が全てではなく、整備できていない状態で急に開国をする場合が恐ろしいのであり、また開国せずに頑張って日落ちる国になることの恐ろしさです。

即ち、

1.空港外資規制

この日経の2月3日の記事”の「冬柴鉄三国交相は「一部特定の外資支配は国益に反する」と主張しており」はすごいですね。上の原則とは、真っ向から対立しています。

2.放送局外資規制

電波法の20%規制は合理的なのでしょうか?テレビショッピングより、CNNやBBCがCM付きでよいから、CSでなくて見ることができる方がよいと思いますが。ネット時代にカビの生えた電波法を守ることの滑稽さでしょうか?

3.外為規制

具体的には対内直接投資等に関する命令(これ自身が複雑で嫌になりますが、外国為替及び外国貿易法27条1項の審査が必要となる対内直接投資等に該当するおそれがあるものを定める対内直接投資等に関する政令27条2項の主務省令がこれです)の別表1は安全保障上の必要性を理由に事前届出の対象とする製造業等ということで理解できるのですが、別表2の業種に該当する上場会社については、10%以上外資が保有するには許可(許可とは言っておらず、届出と言っているのですが、禁止することがあるとなっており、甚だしいインチキ法です。)が必要です。

例えば、別表2の最初は「米作農業」になっていますが、株式会社が米作をできないのに、バカかと思います。個別の法で決めるべきを、外為法でするのは、キチガイみたい。

なお、この規制に関しては、この日経 2月14日の記事にある「英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)によるJパワー(電源開発)株の買い増し」が問題となっています。この記事には、日本の安全保障を脅かすかどうかを検討なんて書いていますが、そんな問題でしょうか?最も、Jパワーも原子力発電所を大間に建設しようとしているし、水力発電所も保有していますから、全く関係ないとは言えないのですが、それなら政府が2/3以上株式を保有していた会社なのですから、その株を一般に売り渡して銭を儲けた政府が悪いと私は思います。きちんとした長期の考えも持たずに、株式を売却するバカが一番悪いと思います。もし、問題なら買い戻して、再び政府の子会社にするのが皆が納得しやすいと思います。政府によるTOBも考えれば楽しいものです。

なお、対内直接投資等に関する命令の別表はこの日銀の解説書についています。

3) 鎖国状態は避けるべき

私は、「鎖国状態は避けるべき」と思います。日本国憲法の前文に、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とあります。世界の国々や人々と手を取り合って、世界中の人々が発展するようにするのが、本当だと思います。グローバル標準とは、文字通り世界共通標準であり、米国の標準ではないはず。但し、日本標準でもないのであり、世界を良くし、発展させる標準を世界が確立していくことのはずです。世界の発展のための、世界のことを考えた基準を作っていくべきだと思います。

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 明らかに偏った色眼鏡で報道するジャーナリストもいれば、幅広い人脈の背景に高角度で、しかも裏事情にも精通した情報源で、誰もが見逃しがちな報道を真正面から取り組むひともいる。自由社会の日本ならではで、それがことの本質をあぶり出すことになる。その代表格、古森義久『凛とした日本-ワシントンから外交を読む-』(PHP新書)を読んだ。インターネット「SAFETY JAPAN」でのコラム記事をまとめたものである。平和を保つには非現実的で、単細胞的な平和主義ではなく、軍事や安全保障に裏打ちされなければな...... [続きを読む]

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