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2008年4月27日 (日)

光市母子殺人事件雑感

つい最近の4月16日には、このエントリー光市母子殺害事件についての放送倫理検証委員会報告書を書き、昨年5月26日には、このエントリー光市母子殺人事件の差し戻し控訴審における死刑判決予想を書いています。

4月22日に広島高裁で、判決が出てから、少し経過し、多くのブログでも書かれていますが、このブログでも雑感を書いてみます。

1) 死刑

判決文は、未だ裁判所Webで見あたりませんが、判決要旨はMSN産経ニュース 光市母子殺害判決の要旨にあります。判決要旨もボリュームがありますが、予想通りの判決文です。別の言い方をすると、2006年6月の最高裁差し戻し判決の枠の範囲を少しも逸脱することなく、判決文が書かれています。

2006年6月の最高裁の判決文はこの裁判所のWebにあります。その6ページ目の下の方に次のような文章があります。

これを個々的にみても,また,これらを総合してみても,いまだ被告人につき死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできないのであり,原判決が判示する理由だけでは,その量刑判断を維持することは困難であるといわざるを得ない。

被告が上告したので、もう一度最高裁があるのでしょうが、死刑の判決以外にやはり考えられないと思います。そう考えると、この裁判のことには、耳を塞ぎたくなるだけですけど。でも、死刑に向かって、この事件が動き出したのが、2006年3月頃でした。当時最高裁が公判期日を2006年3月14日で指定して、安田弁護士がドタキャンをして有名になりましたから。私が、この事件を知ったのは、このドタキャンがきっかけでした。即ち、最高裁は通常は、弁論を開かないのです。開くのは、下級審の判決を見直すときですから、この事件では無期懲役を軽くする可能性はありませんでした。だから、最高裁は死刑を決めたと思いました。

2) 刑事裁判の常道に反すると死刑が正しいのか

日本の裁判の有罪判決率が高すぎると言われることがありますが、別の数字として、被告が犯行の事実を認めている割合が、どれほど多いかも考えるべきと思います。多くの刑事裁判における弁護人の弁護は「被告は、罪を深く反省しており・・・・・寛大な措置をお願いします。」となります。拘置所から、被害者に手紙を書き、場合によっては、「被害者も寛大な措置を望んでいます。」と持って行ければ上出来だったりして。

この事件には、「被告が罪を深く反省しており」というのがありませんでした。逆に、第2審である差し戻し前控訴審の広島高裁の2002年3月の判決文がこの裁判所のWebにありますが、「被告人が知人に対して書き送った手紙」について触れられています。

私信であるべきはずの手紙が何故裁判に持ち出されたのか、私にも解っていません。拘置所の中で書かれたのだから、手紙は検閲されています。手紙を弁護側が提出するはずがないので、検察が何らかの手段で手に入れたのだと思います。この点も、この裁判の嫌な点です。

心の中は、誰も解らない。表面だけ、反省していれば、死刑にならないのだろうかと。反省したか、していないかを、裁判官が、どのように判断するか。もともと犯罪を犯しているのだから、性格異常者というか、心が正常でない人間が多いのだとすれば、正常な人間をみるのと同じ眼で見てよいのか?深い反省があるかどうかを、量刑を決める基準の中で、余り重きを置かない方がよいと思うのです。

3) 厳罰化の動き

単に厳罰化と言うのならまだしも、死刑を増やす方向は、おかしいのではと思います。この事件の差し戻し審の弁護団に対して、マスコミがずいぶん叩いていました。マスコミって、どうしてあれほど死刑が好きなのかと思っていました。最高裁の差し戻し判決を読めば、普通の弁護をしても確実に死刑になる。そんな中の苦しみの破れかぶれの弁解と思っていました。

マタイによる福音書にある祈りの言葉です。(6章 9節から、新共同訳)罰を与えることができるのは、神のみではないかと。もし、人が他人を死刑にできるのであれば、テロ行為も許される。

だから、こう祈りなさい。『天におられるわたしたちの父よ、/御名が崇められますように。
御国が来ますように。御心が行われますように、/天におけるように地の上にも。
わたしたちに必要な糧を今日与えてください。
わたしたちの負い目を赦してください、/わたしたちも自分に負い目のある人を/赦しましたように。
わたしたちを誘惑に遭わせず、/悪い者から救ってください。』
もし人の過ちを赦すなら、あなたがたの天の父もあなたがたの過ちをお赦しになる。
しかし、もし人を赦さないなら、あなたがたの父もあなたがたの過ちをお赦しにならない。」

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2008年4月26日 (土)

揚げ足取りで、ごめんなさい

衆議院山口2区の選挙が明日の27日にです。今月の大きな政治課題の一つがガソリン税です。税制法案は、山口2区の選挙結果には関係なく、衆議院で3分の2以上の再可決になると私は思います。

読売 4月26日 暫定税率復活へ、自公が30日再可決を正式表明

揚げ足取りとは、公明党の選挙公約です。私も、公明党の昨年の参議院選に当たってのマニフェストで、この公明党のWebにありますが、10ページ目の下の、「(5)ユーザーの立場で、自動車関係諸税を見直し」という部分です。

■自動車関係諸税は、公共事業5カ年計画や道路特定財源のあり方の検討にあわせ、見直します。その際、特に自動車重量税については、その財源が本来の道路整備事業に活用されていない現状にかんがみ、例えば、暫定税率の引き下げにより納税者に還元することや、その使途のあり方を検討することなど、見直します。

「見直します。」だから、「見直した結果、重量税は、やはり必要です。」と言うのも、間違いではないが、普通に読めば、「廃止します。」なのだろうと。

私は、1月17日のエントリー 揮発油税の扱いなどで、揮発油税、軽油取引税は税率は現状維持とし、一般財源化すべきと書いてきました。重量税については、触れませんでしたが、こんな変な税金こそなくすべきだと思います。

でも、公明党は、マニフェストに書いておいて、知らないうちに触れずじまい。素知らぬ顔を決め込むのでしょうか?

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2008年4月18日 (金)

自衛隊イラク派遣違憲判決

名古屋高裁で、昨日4月17日に自衛隊がイラクで行っている空輸活動は憲法9条1項に違反する活動を含んでいるとの判断が含まれた判決を下しました。

朝日新聞は1面トップで次の記事を掲げていました。

朝日 4月17日20時44分 空自イラク派遣は憲法9条に違反」 名古屋高裁判断

なお、新聞報道で全てを判断すると誤る恐れあり、共同が配信した判決要旨を読むことをお奨めします。

共同 04月17日 22:19 イラク派遣訴訟控訴審判決要旨 名古屋高裁

もう一つ、この判決に関する補足情報です。裁判長の青山邦夫氏はこの裁判で退官されます。

e-hoki

判決要旨に書かれている違憲の部分は次の通りと思います。

 空自の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員を、戦闘地域のバグダッドへ空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない。

 空自の空輸活動は、イラク特措法を合憲としても、武力行使を禁止した同法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる。

当時の小泉首相は、荒っぽい粗野な議論を吹っかけてきた言うのが、私の印象です。今回の青山邦夫裁判長の判決は、退官に当たっての私たちに対する警鐘だと思います。

今回の判決は自衛隊が違憲であるとまで言っていないし、イラク特措法そのものについても違憲だと言っているわけではありません。多国籍軍の武装兵員の戦闘地域バグダッドへの空輸がイラク特措法にさえ違反しているのではと言っています。

私は、この青山邦夫裁判長の判決は安易に流れてしまう恐ろしさを警告していると感じました。

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2008年4月16日 (水)

光市母子殺害事件についての放送倫理検証委員会報告書

放送倫理検証委員会(BPO)より、15日に放送倫理検証委員会決定 第4号として「光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見」が出されました。次のサイトでダウンロードできます。

光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見のダウンロードはここ(pdf)

裁判員制度については、来年5月21日施行とする政令案を法務省が公表したとの報道があり、いよいよスタートします。(日経Woman 4月8日 裁判員制度、09年5月21日施行・「初公判」は同7月

昨年の9月6日に光市殺人事件が裁判員制度での裁判であったならと言うエントリーを書いたこともあるし、 9月18日に光市事件に関するもう一つの裁判を書き、その中で、「3) TV局他マスコミの責任」として「果たして、放送倫理・番組向上機構が取り上げるかどうか、分かりませんが、せめてTV局も正しいことを伝えたり、社会の役に立つことを少しはして欲しいと思います。」と書きました。

BPOが取り上げてくれていました。

1) 能力・知識のないTV局

NHK、テレビ東京、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日の番組を調査したとのことで、大阪局が制作した番組もあるはずで、そこまで調査できなかったのは仕方がなかったのだと思います。報告書で厳しいというか当然の意見をBPOは表明しました。

意見書の中の10ページに「V 刑事裁判――その前提的知識の不足」と言う記載があります。次のように書かれていますが、その通りだと思います。

裁判制度に照らして見るとき、本件放送の際立った特徴は次の2点だった。
(1)被告・弁護団に対する反発・批判の激しさ
(2)裁判所・検察官の存在の極端な軽視
前者は、「第1、2審で争わなかった事実問題を、差戻控訴審になって持ち出すのはおかしい」「被害者遺族の無念の思いを踏みにじっている」「弁護団は死刑制度反対のために、この裁判を利用している」等々の反発・批判をさかんに浴びせたことを指す。
多くの番組がそのことだけに終始した、という印象すらある。

結論は、次の文章でしょうか。私は、TV局の人たちは、正しいことを伝える必要性はないとの認識にいるとしか思えないことがあります。即ち、掘り下げて検討をしないことと、自ら多くの人たちに意見を聞いて判断を下さず、視聴率さえ上がれば何をしてもよいというTV局のバカどもです。せめて、弁護士に位は相談して判断を下すべきです。(最も、弁護士も依頼主を守る、即ち銭稼ぎのチャンスをつぶすことは避けねばらないのであり、どのように依頼するかも非常に難しいのですが。)法以上に倫理性が重要とも言えるのであり、本当は良心と言えます。経営が重要ですが、TV局の経営者は良心を悪魔に売り渡したのかも知れませんので。

これらの背景には、番組制作者に刑事裁判の仕組みについての前提的知識が欠けていたか、あるいは知っていても軽視した、という事情があったのではないだろうか。

報告書の15ページに「Ⅵ 被告人報道――いわゆる「素材負け」について」がありますが、様々なことを含んでいる複雑な事件です。例えば、1審、2審がどのような裁判であったのか、全く報道がされていないと思います。差し戻し審で弁護側が触れたので、少し知ることができました。例えば、私は国選弁護士だと思っていたのが、父親が依頼した弁護士であった。実は、父親と被告人そして母親が複雑な関係にある。

報告書の文章ですが、「記者会見やインタビューに応じた被害者遺族を登場させ、いまの被告の供述や、それをしゃべらせた弁護団を非難し、無念や怒りの気持ちを語らせて打ち消す」というのも聞いていて嫌なものです。愛なしで、憎しみだけの世界ですから。

タレント弁護士を初めとして多くのコメンテーターというTV局の提灯持ちもすごく嫌で、この事件は速報にこだわる必要がなかったのですから、せめて一つの局ぐらい正面からどうどうと取り上げて欲しかったと思います。

2) 裁判員制度

裁判員制度についても、TVは余り取り上げようとしていません。「・・・・と言うのがあった。」と報道するのみです。

裁判員制度は光市母子殺害事件より更に難しい素材です。例えば、裁判員制度が何故導入されるのですかという問いに答えようとすると大変なのです。一つは、政府が言っている説明ですが、それだけと考えてよいのでしょうか?

もともとは、民事事件に対して一般の人たちの参加を得ようとした。しかし、経団連等が反対した。そこで、刑事事件にすることにした。裁判官3名と裁判員6名ですから、裁判員の数が多い多数決で無罪、有罪、有罪の場合の量刑を決めるのですが、3名-6名としたのは与野党の国会での妥協の産物だけで理由はない。このようなことを言った人がおられます。

「刑事事件については、裁判官が詳細に調べを行って、裁判官の良心に従って判断が下されることの方がよい。」については、皆様どう考えられますか?

本当は、そんな難しいこともTVは伝えるべきです。お題目だけ唱えるのはある種の宗教で、これでは、TVによりマインドコントロールされてしまう。

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2008年4月12日 (土)

福島交通会社更生法を申請

昨日福島交通が東京地裁へ会社更生法の適用を申請しました。負債総額は福島交通(株)が約73億9000万円で、同時に会社更生法の適用を申請した関係会社の福交整備(株)が約7億1700万円であり、2社合計で約81億700万円です。

福島交通(株)の路線は、福島交通のWeb(ホームページはここ)から拝借しましたが、以下のように、福島県の郡山を中心とした中通りであります。

Photo

直ちにバスが運行を停止したり、鉄道が廃線になったりすることは考えられませんが、ある程度から先のことは何の保証もないと考えるべきです。そうすると、一番困るのは利用者で、特に他に交通手段を持たない老人や弱者だと思います。

ガソリン税・軽油取引税等の暫定税率のことを何度も書きましたが、道路とCO2対策なんて言わないで、最も重要な公共交通機関の維持を図るべきです。インフラは重要です。インフラがなければ、人々の生活は貧しいものです。そして、発展も産業も意味はありません。少し前に、「改革なくして・・・」と言った人がいますが、これを「インフラ」に置き換えればよいのです。

今後、更生計画が検討されていきますが、その中でバス路線の廃止、運転本数の減少、鉄道の廃止も検討対象になることは間違いがないし、地方自治体からの補助金額の増額も検討対象になってくる。再建する一番手っ取り早い方法は、金が稼げる路線を残し、赤字路線は撤退し、現在800人近くいる従業員を減らすことです。それでよいのですか、福島県中通りの皆さん?ということですが。でも、発言する場が、限られるかも知れませんね。地方自治体は、税収不足、交付金削減、三位一体とか言われていじめを受けて「袖を振りたいが、振る袖なんてありません。」という状態でしょうか。

そのような中で、政府・県・市町村が年間1億6千万円の補助金を支出していました。これについての報道は、この河北新報 4月12日 旧経営陣の負債重荷 福島交通破たんにあります。又、どの路線に対して払われていたかは、この福島交通のWebにあります。

日本の田舎は美しいと思います。そして、人間的な暖かみをもった人たちが、そこに住んでいます。そこに、バスも走っていて欲しいと思います。

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2008年4月 6日 (日)

不思議な対応Jパワー

英投資ファンドのザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)による電源開発(J-Power)の株式買い増しについて、政府は11日に外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく審議会を開き、経済産業省はTCIによる株式買い増しの変更・中止を勧告する方向となったとのニュースがありました。

日経 4月5日 英ファンドのJパワー出資、株買い増し拒否へ――経産省

3月27日のエントリー「政府系投資ファンド(SWF)に対する規制」で、このことについて触れた経緯があるので、少し書いてみます。

1) 外為法による審議会とは

外為法21条第1項には「外国投資家は、対内直接投資等のうち第三項の規定による審査が必要となる対内直接投資等に該当するおそれがあるものとして政令で定めるものを行おうとするときは、・・・・当該対内直接投資等について、事業目的、金額、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び事業所管大臣に届け出なければならない。」と書いてあり、

第21条第5項に「財務大臣及び事業所管大臣は、・・・審査をした結果、・・・国の安全等に係る対内直接投資等に該当すると認めるときは、関税・外国為替等審議会の意見を聴いて、当該対内直接投資等の届出をしたものに対し、・・・当該対内直接投資等に係る内容の変更又は中止を勧告することができる。」となっており、そして

第21条第10項に「・・・勧告を受けたものが、・・・・当該勧告を応諾しない旨の通知をした場合には、財務大臣及び事業所管大臣は、当該勧告を受けたものに対し、当該対内直接投資等に係る内容の変更又は中止を命ずることができる。」となっています。

届出制なので、ずいぶん持って回った条文構成になっています。本来は、軍事物資の生産に関するような分野の規制のはずと私は思っています。それを、TCIのJ-Power株式取得に使うのは、無理があり、「違法でなければ何でもする。」に近いのではと思います。政府とは、一番法を遵守すべき機関であると私は思うのです。

「政府系投資ファンド(SWF)に対する規制」で受け入れ国の基本方針というのを書きましたが、読むと見事に違反していると感じます。

2) 身勝手は自分自身を滅亡させる

「J-PowerのIPPプロジェクト一覧」というのがこのJ-PowerのWebにあります。J-Powerが国外の発電会社の49%の出資を持つことは許されて、逆に国外の投資家が10%以上を持ってはならないというのは、すごく身勝手と感じます。2008年3月時点で、出資した国外の発電所で運転中が16件、7,373MWあり、この中で米国とフィリピンの案件はJ-Powerが50%出資しています。

私は、J-Powerが国外に出て行くことに反対はありません。50%超を出資する電力案件があってもよいと思います。TCIの株式買い増しを阻止することは、J-Powerの事業を阻害することになるのではと思います。J-PowerがTCIの増配要求を拒否しました。J-Power経営者が、そう思うのであれば、その対応で構わないのであり、同様にTCIが株式の買い増しをしたいならそれで良いはず。政府が何故口を挟むのかと言いたいのです。

悪影響は、J-Powerにのみならず、国外の電気事業に投資している日本の企業の全てに広がる可能性もあるし、日本は閉鎖的とのことで日本株は、どんどん下がる。日本企業は資金を確保できず、「日落ちる国」が「ますます日落ちる国」になりそうで。かつて、ジャパン・プレミアムといって日本の銀行が欧米銀行より高い金利でないと資金調達ができなかったことを思い出します。

3) どうすべきか?

J-Powerの問題ではなく、株主の問題であり、電力に関係する国民を含めた利害関係者の問題として考えるべきでしょうね。その中で、J-Powerという会社についての問題は、次のようなことが言えると思います。

A) 地域分割の民間上場企業9電力体制における政府資金を活用し、9電力体制の利害調整妥協の産物としての会社であった。(当初は、沖縄が米国統治下であり、J-Power体制には含まれていなかったので、9電力としておきます。)

B) 大型の水力発電を保有しており、(ダムで貯水する水の権利・資産を含め)水という国民の共通資産は株主の利益のみに存在するのではない。

C) この日経 3月17日 Jパワー、大間原発5月着工にもあるように、原発を保有する会社(放射能漏れを起こす可能性がある会社)の株式の外国人株主保有に対しての日本人の抵抗があるかも知れない。(議論がされておらず、コンセンサスが取れているのかの点を含め。柏崎刈羽では、放射能と関係のない変圧器の火災でもマスコミは大騒ぎした。)

D) J-Powerが日本で保有する火力発電所は全て、石炭火力である。即ち、考え方によっては、CO2を多量に排出する石炭火力は、今後日本ではスクラップアンドビルドでないと建設できない恐れあり。不利とみるか、優位とみるか判断は分かれるが、CO2既得権を持つ貴重な資産とも考えられる。

そもそも66%の株式を保有するJ-Powerを政府が株式を手放したことが、出発点です。これがその際のJ-Powerのプレスリリースです。私は、J-Powerの株式を再び政府がTOBをして、取り戻すこと。発行済み株式数が166,569,600株ですから、現在株価3,800円を4,000円で買ったとして6600億円余り。水利権・原発権・石炭排出権込みの価格ですから、安いかも知れません。その上で、火力発電所(橘湾の海底送電線も込みでよい)の部分を海外資産とともに別会社として、それを売却すればよい。

政府として、水力発電所と原子力発電所は、重要な資産であるとして、政府が持ち続けることとなるが、そんな必要もないので、水力発電所はその電力を購入する9電力(沖縄電力には海水揚水発電所があるが、この評価は困難なので、省きます。)に発電所毎(只見系、下郷、佐久間、船明、新豊根、九頭竜系、北山系については複雑ですが)に一般電気事業者に売却する。大間は、日本原子力発電に売却する。私は、このような案が、一番すっきりすると思うのですが。

1月30日のエントリー 近江八幡市PFI病院の倒産の恐れで書きましたが、「民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが・・・」との考えは、間違っています。「民間委ねるべきは、民間に委ね、政府事業として実施すべきは、政府事業として実施し・・・」が正解です。J-Power問題は、民間にゆだねておきながなら、それを正しいとして襟を正さずして、理不尽な規制を行うことするようで、「これは許されないこと。」と思います。誰にも、正義が通る正しい処置をして欲しいと思います。

一ついやなのは、経産省は私のように思っている。しかし、国交省が空港問題もあるから、許さないと頑張っている。それで、経産省に頑張らせている。

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2008年4月 2日 (水)

インドのタタ自動車

インドのタタのナノの驚異というエントリーを書いたのは、1月21日でした。あれから、2月半ほど経過しましたが、その後のニュースとしては、次の話題があります。

産経MSN 4月2日 インドのタタ自動車、今夏に東証上場

日経 3月26日 印タタ自動車、英ジャガーとランドローバーを買収・フォードと基本合意

思ったより展開が早いですね。インドの力強さをみなぎらせているみたいです。本日は、またタタ自動車(Tata Motors Ltd.)について。

1) 東証上場

NO PROBLEMですね。何故なら、1月21日のエントリーにも書きましたが、ニューヨーク証券市場(NYSE)にADR(American Deposit Receipt)を上場していますから、NYSEでのADR上場の基準をタタは満たしており、且つ米国基準で作成された監査済み財務諸表を含め必要な情報開示を実施しているからです。NYSEで上場が大丈夫なら、東証でダメとは考えにくいです。

タタが東証で上場しようというのは、ADRの日本版JDR(Japanese Depositary Receipt)で、読売 2007年4月25日 日本型預託証券 年内実現へに読売新聞の記事で説明があり、「JDR上場は年内にも実現」と書いてありました。少し遅れて、この夏からと言うことでしょうか。

私は、アジア株を日本の証券取引所で取引を容易にすることは良いことと思います。タタ株が現在取引できないわけではなく、日本の証券会社経由で、あるいは直接インドの証券会社を通じてタタ株をインド・ルピーで売買できるし、必要な手数料を支払えば済むわけですから。しかし、東証に上場していれば、東証と証券会社の手数料だけで済みますから、多分安いはずです。アジアの株式がJDRという形を含め、日本でたくさん上場してくれれば、面白いと思います。今、XX国は金融引き締めに入った。だから、AA株は手放して、YY国で資源をもっているBB社の株を買うかなんてことになります。

金融の世界でも、日本にリードして欲しいというか、アジアのお手本になるような市場になって欲しいと思います。

2) ジャガーとランドローバー

会社ではなく、自動車のブランドとその製造事業の買収です。だれから買ったかというと、フォードからです。タタ自動車とフォードのプレスリリースを掲げます。

フォード 3月26日 プレスリリース
タタ自動車 3月26日 プレスリリース

フォードは約23億ドル(2300億円)で、タタ自動車に売却するのですが、次の記事によればフォードが買収した時の半分にも満たない額と書いてありますので、これを安いと考えるか、高いと考えるか。少なくも事業を買ったときより安く売るのは、その事業が損失を生んでいる事業の場合です。

NBOnline-BusinessWeek 4月2日 ジャガーとランドローバー、タタに売却

次の記事は、興しろいですね。昨年11月の時点で、方向が見えていたようです。

日経WOMAN11月22日 「ジャガー」労組、印タタ自動車による買収支持・米紙

16000人の従業員を引き継ぐことになりますが、この従業員のために6億ドル(600億円)の年金資産をフォードが追加拠出することが条件ですから。従業員にすれば、1人あたり4百万円近くの年金支払いが、確実になる。逆に言えば、肩たたきをされやすくなるかも知れないが、年金を確実に受け取れるようになることは最高です。

タタ自動車は、簡単に首切りなんかしないでしょうが、労務問題が少なくなっていることは、歓迎するはず。そして、何よりもタタにはない高級車ジャガーと高級四駆ローバーのブランドを手に入れましたから。かつての宗主国のブランドです。どう発展させていくか、フォードが持っているより、よほど楽しみが増えた気がします。

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