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2008年5月31日 (土)

IXI前社長他計4人の逮捕

1) IXIの架空循環取引

IXIの循環取引について、1年以上前ですが、過去のエントリーで書いたことがあります。

2007年1月24日のエントリー IXI(アイ・エックス・アイ)の民事再生手続の申し立て
2007年1月27日のエントリー IRI発表のIXIによる循環取引(続編)

IXIの前社長、元常務、元取締役と元執行役員の4人の逮捕に関する朝日 5月29日 IXI前社長らを粉飾決算容疑で逮捕 大阪地検特捜部には、「02年3月期以降の売上総額約1205億円のうち、98%にあたる約1182億円が循環取引によるものと疑われるという。」と書いてあります。98%が循環取引なら、正常な売上高はたったの2%となりますが、本当?と驚きました。

2007年1月27日のエントリーで循環取引の例としてメディアリンクスの場合は、85%が循環取引と書いており、よもやIXIがそれ以上とは思っていませんでした。

2007年9月20日に、52.19%の株式を保有する親会社であるインターネット総合研究所(IRI)が架空循環取引の事実を伏せてIXI株式を高値で売りつけられたとして、TOBで購入した相手先であるCACに対する損害賠償を東京地裁に提起しています。その際の、このIRIのプレスリリースには、「こうした不正な循環取引による売上高の架空計上は、当社がCAC等からIXIの株式を取得した平成17年8月の時点までには、IXIの全売上高の90%以上に達しており、その時点において既に、同社の株式は、正常な取引通念に照らして実質的に無価値の状態でありました。」と書かれてあります。

ということは、90%以上は架空循環取引であったと考えて間違いないのであり、IXIは新記録だと思いました。

2) 関係者への波紋

4人の逮捕について冒頭の朝日の記事には、「繰り返して架空の売り上げを計上し、03年3月期の有価証券報告書に実際より売上高を約17億円以上、純利益を12億円余り水増しするなど虚偽の実績を記載。同年6月、近畿財務局に提出した疑い。」となっています。

東洋経済 5月28日 大詰めのIXI事件 浮かぶ業界の「無法」には、循環取引の関係者として多くの会社の名前が出てきます。影響はあるのでしょうか?それと、5月14日 ニイウスコーの推理を書きましたが、ニイウスコーの関係者も1年と少したてば逮捕される可能性が出てくるのでしょうか?

財務諸表の虚偽記載は、金融商品取引法の刑事罰だけではなく、IRIが提起したように、民事賠償がつきまといます。IRIが損害賠償を求めた相手は、CACのみならず、新日本監査法人が含まれています。

ニイウスコーの財務諸表の監査はトーマツでした。そしてこのブログで最近取り上げた財務諸表の問題は、武富士の300億円の社債について債務が消滅したとしてオフバランスとしたことを書いた5月27日のエントリー 武富士の300億円に思うでした。武富士の監査は新日本監査法人でした。

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2008年5月29日 (木)

カニカニ詐欺の電話を受けました

1) カニカニ詐欺の電話

驚きました。まさかです。本日、カニカニ詐欺の電話がかかってきました。

「北海道のえりも岬の近くですが。北海道の新鮮な海産物が今大漁なんです。海産物はお好きでしょう・・・・」というようなことを言っていました。そして、電話の音には、市場であるかのような威勢の良い声が入っていました。しばらく、返答をしないで、そのまま聞き流していると自然に電話が切れて終わりました。

これだけは、未だカニカニ詐欺とは決められないので、電話の通信記録に残った相手先の電話番号011-330-0044に電話を掛けてみると呼び出し音のみで応答がありません。そして、数時間経過して電話をすると「お掛けになった電話番号は現在使われておりません。または、・・・・」とのテープ音が流れました。

当然受けた時から変な電話でした。カニカニ詐欺の証拠を捕らえようかとも思いましたが、個人でできることには限界があり、相手の電話番号を残せたのみです。多分、決定的証拠を相手も出さなかったと思います。言葉尻を捕まえて、売りつける作戦であり、危険と判断すれば、相手も電話を切ったと思います。住所と名前を聞いて、宅急便で送りつけ、生ものだから解約できないとして、お金を取る手段と思いますから。

カニカニ詐欺に関する記事としては、この5月29日 @niftyニュースAERA 2008年6月2日号 現地取材「3千円のクズガニが1万2千円」 カニカニ商法中身スカスカがあります。

2) 消費者庁

福田内閣メールマガジン(第32号 2008/05/22)には、「消費者を守る新しい組織である「消費者庁」を、できるだけ早期につくりあげます。」と書いてあります。消費者庁設置を求める意見書としては、この2008年2月15日付け日本弁護士連合会の「消費者庁」の創設を求める意見書があります。

日弁連の意見書10ページ目には、「3 消費者行政機構の現状と問題点」として、以下のようなことが書かれています。

(1)わが国の消費者行政は、多数省庁が業界を行政上の取締法規によって監督することによって行われている。・・・・消費者被害の防止よりも企業の被る損失や企業活動への悪影響を懸念し、規制権限を適切に行使しない事態が消費者被害を深刻にしてきた。さらに、複数の省庁に係る重大あるいは複雑な問題の場合には、総合的な対策の企画・立案が必要となるが、そのような権限のある機関がなく、迅速に適切な対応をとることができず、問題が深刻化する。

(2)消費者政策の企画立案は、内閣府が担当している。しかし、この事務は、分担管理事務とされており(内閣府設置法4条3項36号)、・・・・端的に言えば、関係省庁の意に反した立案はできないのである。これに対して、・・・横断的な企画調整機能を担う内閣補助事務(同法3条1項、4条1項・2項))に関しては、特命担当大臣の関係行政機関の長に対する資料提出・説明要求・勧告・勧告に基づく措置の報告要求・勧告事項に関する内閣総理大臣への意見具申などの権限が付与されている(同法12条)。しかし、消費者問題のなかで内閣補助義務と位置付けられているのは、「食品の安全性の確保を図るための環境の総合的な整備に関する事項」(同法4条1項16号)「食育の推進を図るための基本的な施策に関する事項」(同項17号)などに限られている。・・・・・・

でも消費者庁ができるのだろうか福田さん!というのが今の政治の現状でしょうか?この共同47ニュース 5月16日 消費者庁に20法令移管 閣僚折衝へ政府原案には、「いずれの法令も関係省庁の権限の源泉だけに「霞が関」は徹底抗戦の構えで、首相が最終段階で指導力を発揮できるかが焦点になる。」と書いてあります。

3) 消費者行政

消費者基本法があるんですよねと言いたい。消費者基本法第2条1項と第24条を書きます。

2条1項 消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。

24条 国及び地方公共団体は、消費者政策の推進につき、総合的見地に立つた行政組織の整備及び行政運営の改善に努めなければならない。

消費者基本法に従って政府が行政を実行していないので、問題が起きているのかなと思いました。少なくとも事故や被害発生等に関する広報活動は積極的にすべきであり、法令移管がなくとも消費者のために活動を行う組織を政府の中に作って、活動しながら改善をしていかないと進まないと思いました。

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2008年5月28日 (水)

NHK職員インサイダー取引

NHK職員の株式インサイダー取引に関しての第三者委員会が、報告書を提出しました。

日経 5月27日 NHKの職員81人が勤務中に株取引、第三者委が調査報告書

その報告書はこのNHKのWebからダウンロードできます。報告書を読んで思うことを以下に書きます。

1) インサイダー取引と認定された事件の概要

カッパ・クリエイト株式会社(以下カッパと略す)と株式会社ゼンショー(以下ゼンショーと略す)が資本提携について、2007年3月8日にNHKが情報をスクープし、午後3時のニュースで報道しました。この放送前にNHKの報道情報システムの端末から情報を得たNHK職員3名が証券市場の午後立会が終了する3時前にカッパとゼンショーの株式を購入しインサイダー取引を行ったという事件です。

このインサイダー取引について証券取引等監視委員会が2008年2月29日に課徴金納付命令の勧告を出していますが、ここにあります。

3名とは、水戸放送局Xディレクター、(東京の)放送総局報道局Y制作記者と岐阜放送局多治見報道室Z記者で、当時の所属先です。なお、多治見報道室は一人勤務です。

この3名がインサイダー取引でいくら儲けたかでありますが、各人が失ったものに比較すると、たいした金額ではありません。(賢ければ、利益とリスクが見合わないことが解るはずですが。)

  購入額 売却額 手数料 手数料差引後純利益
水戸放送局 X 5,150,000 5,570,000 5,017 514,983
東京 Y 1,710,050 1,811,250 1,002 98,392
多治見 Z 8,673,900 9,202,700 17,346 511,454
合計 15,533,950 16,583,950 23,365 1,124,829

多治見Zについては、カッパとゼンショーの2社の株式を購入しており、水戸Xと東京Yは、カッパ株式のみです。

2) NHKによる株式報道スクープは不要である

報告書によれば、経緯は以下の通りです。(全て、2007年3月8日のことです。)

11:00頃 経済部デスクが記者よりゼンショーがカッパ株の1/3をTOBで取得する方針と聞く。
12:00頃 経済部デスクは同部民間グループのキャップに取材と記事原稿の作成を依頼。
13:23 キャップは収集した情報も踏まえ記事を作成し、NHKの報道情報システムに原稿を入力した。この際、パスワードをかけ、更にタイトルも「外食問題」とした。
14:00過ぎ 日経クイックをチェックしたところ、ゼンショー・カッパの情報がないことから、NHK独自情報として15:00のニュースで報道したいと思い、ゼンショーに確認をすることとした。
14:20 担当記者はゼンショーに電話を入れ問い合わせた。結果、TOBではなく第三者割当で、ゼンショーがカッパ株式の約1/3を取得することを知った。記事の修正に取りかかる。
14:38 最終記事が完成。(パスワードも解除したと思います。)
15:00 ニュース開始

3名が何時株式購入をしたかですが、水戸放送局Xは、14:30頃自宅に戻り、14:45から14:57にかけてであり、東京Yは事務所の廊下で携帯電話により14:42に、多治見Zは14:20頃自宅に戻り14:28から15:00にかけてです。報告書によれば、3名ともパスワードがかかった本文を見ていないが、タイトルが既に「ゼンショー、カッパ株式・・・」となっていたのを報道情報システムの端末で見て、株式購入に動いたのです。

ゼンショーとカッパのプレスリリースは、それぞれここここにありますが、両社は15:15に発表したのです。なお、この提携は結局は7月強経過した10月26日に凍結されているのです。株式保有は継続。プレスリリースはここここにあります。

NHKの任務は、こんな報道合戦をすることではないはずです。普通のニュースでもNHKニュースはTVだから短い時間に伝えざるを得ず、端折った表現になっていると、私は感じています。TVのニュースは複雑なことを伝えることに適しているとは思いません。他のメディアより遅くてよいから、TVでないと伝えられない映像表現が豊かな情報が良いと思います。

同じようにインサイダー取引の事件が報道されている日経と野村とNHKはレベルが異なります。日経と野村は、他社から引き受けた仕事に含まれていた情報によるインサイダー取引です。NHKは、勝手に取材して得た情報によるインサイダー取引です。3名を悪者にして終わらせてはならない。NHKが手を出す必要ない報道に手を出して、犯罪を犯したとも言えるのかなとの気もします。

3) NHK組織の欠陥

地方の放送局の報道記者が報道情報システムの端末で情報を見られるようにしておく必要があるのか。一人勤務の多治見報道室Z記者なんて、「猫に鰹節」状態におかれていたのですから。XYZ3名の責任と決めたら、大事なことを見逃すと思います。

誘惑に駆られても踏み止まざるを得ない制度をつくることが重要です。そのような制度を作らなかった経営委員と会長、副会長、理事と言った執行委員の責任は重大であると私は思います。組織のルールを作る責任は経営者です。

4) インサイダー取引?

金融商品取引法166条3項の違反に相当するのでしょうが、多少無理をしていると感じます。即ち、インサイダー取引とは166条1項の役員・従業員を含む会社関係者に適用され、第3項で会社関係より伝達を受けた者も含めていますが、3名は報道情報システムの端末で情報を得たのです。

インサイダー取引で構わないのですが、本当は、職業倫理の問題だと思うのです。船場吉兆の廃業のニュースがありましたが、同様です。プロフェッショナルとして譲れない一線があると思います。報道で、その一線を崩したなら、信頼を得られなくなり、自ら崩壊する。

5) NHKに苦言

NHKには誤解を生む表現をしている報道が多いと思ったりしますが、最大の問題は放送法32条の「受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」という点でしょうか。でも、NHKに言うことではなく、国会に言うべき、議員に言うべきことかも知れません。

アナログ放送を止めた段階で、全てのTVにB-CASカードが付くのであり、有料放送が可能となります。NHK有料放送と言っても、現段階で既に有料放送ですが、一律ではない、ペイ・パー・番組とか、契約の種類によって見ることができる番組が違ったり、一部無料放送を組み込んだり、きめの細かいサービスの提供が可能となります。

見ようが見まいがワンセグでも受信機を持てば、毎月払わねばならない。法人契約は厳しいです。1台に1契約に近いから、法人は受信機を持つと受信料が大変です。法人が契約している携帯にワンセグが見れるようにしたならば、電話料金よりNHK受信料が高くなったりして。ここにNHK受信規約がありますが、その第2条は次のようになっています。しかも、契約解除は受信機を廃止する時だけです。(放送法がありますから)

2 事業所等住居以外の場所に設置する受信機についての放送受信契約は、前項本文の規定にかかわらず、受信機の設置場所ごとに行なうものとする。

4 第2項に規定する受信機の設置場所の単位は、部屋、自動車またはこれらに準ずるものの単位による。

NHKさん!良い番組を作ってください。放送法に寄りかかった経営ではなく、デジタル時代に適した合理的で、良い番組が作られ、NHK職員の給与も民法並に近づくような、そんな受信契約を自らも検討していって欲しいと思います。

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米GMストライキで2800億円の損失

2800億円の損失は大きいです。ストライキがあったのは、GMではなく一次下請けでプロペラシャフト等を製造している部品メーカAmerican Axle & Manufacturing Holdings(”AML")で、ストライキをしたのはUAW(United Automobile, Aerospace and Agricultural Implement Workers of America)で、2月26日から5月23日まで3ヶ月近く続いたのでした。

いくつかのニュースを掲げます。

日経 5月24日 米GM、部品会社ストが18億ドルの減益要因に・4―6月期
日経 5月17日 GM、操業正常化へ・労使交渉、取引先が暫定合意
共同 5月24日 GM損失2700億円に 部品メーカーストは収拾
IB Times 5月24日 米GM、ストの損失が2,900億円に
Reuter May 23, GM says UAW strikes were $2.8 billion earnings hit

GMもSECに提出した5月22日付のForm 8Kで述べていました。ここにあります。

1) 今の日本でストライキは可能か?

本当に色々なことを思ってしまいます。先ずは、日本はストライキのない国だなと。日本が今活気がないのは、労働組合がストライキを打てる力を喪失てしまったからではないかと。米国のUAWと日本の労働組合を比べるのは違いがありすぎるし、文化や歴史が異なるから比べることは適切ではないと思いますが。

今の日本の格差社会と非正規雇用労働者を生み出した一端は、組合にもあると思うのです。日本の労働組合は、製造業の正規労働者の企業内組合を抜け出せていない。非正規雇用者が低賃金で働かされて、その利益が正規労働者への分配に繋がると同時に、自らの首も絞める。しかし、中国等新興国との競争にもさらされているから、会社と運命共同体の組合も対策が必要であり、そのためには労使協調路線を選んだ。

更に言えば、偉くなっていった人たちは、出世すごろくであがっていったのだから、実は会社の内情も労働者の気持ちも解っている人であり、苦しい中で頑張っているんだから、ストライキまで構えても所詮は、競争相手の会社を利するだけになってしまう。

そんな日本の内情も分かるのですが、余りにもおとなしくなりすぎてしまった日本の労働組合なのかな?三井三池労働争議があったのが1960年ですから、50年近くが経過しました。感傷に浸る必要はないのですが、労働者の夢みたいなことがほとんど消え去ったのかなと思います。むしろ、アメリカ合衆国の方が未だ健在でいるのかなと思う次第です。

5月24日のエントリー日米の経済比較で、サブプライムと騒ぐけれど米国の方が日本より良いではないかとの雰囲気を書きました、それどころかもっと基本的なところで、日本が弱々しくなっており、それに気がつかないでいる恐ろしさがないかと懸念します。

2) ストライキの理由と妥結内容

会社と組合は4年間の契約を締結しており、今年は丁度更改時期にあったのです。このUAW Press Release April 01, 2008 UAW committed to a fair, equitable settlement at American Axle は、AAMが賃下げや人減らしを行うことが必要であることを示す財務データを3月27日にやっと提出し始めたと書いてあります。AAMのFebruary 26 Press Release AAM/UAW Negotiations Update では、業界の平均が時間あたり(20ドルー30ドル)であるのに対し、AAMの人件費は全て込み(医療保険料や厚生年金込み)の70ドルは高すぎると言っています。

妥結内容は、このReuter May 18, 2008 UAW urges adoption of cost-cutting Axle dealこのNY Times May 23, 2008 Auto Parts Workers Approve a Contract にありましたが、最低は時給10ドル(千円)から最高26ドル(2千6百円)で、退職の場合は退職金14万ドル(1千4百万円)です。医療保険や厚生年金は、全額会社負担のはずですから、退職すると、おそらく自己負担となり大変なのだろうと想像します。

3) American Axleの業績

次の表がAMLの最近4年間の業績です。単位は百万ドルで、売上高は約3500億円という感じです。

Axlincome2007

米国だなと思うのは、2007年の役員報酬(株式による受領も全て合わせて)はSECへの提出書類によれば、Co-Founder, Chairman of the Board & Chief Executive OfficerのRichard E. Dauchは$10,175,194、Group Vice President — Finance & Chief Financial OfficerのMichael K. Simonteは$511,241、Vice Chairman & Chief Technology OfficerのYogendra N. Rahangdaleは$1,063,334、Executive Vice President & Chief Operating OfficerのDavid C. Dauchは$752,527でVice President, Chief Administrative Officer & SecretaryのPatrick S. Lancasterが$655,631ですから、5人で13百万ドル(13億円)を超えるわけで、すごい金額です。(金額も大きいですが、日本と異なるのは個人毎の金額が公表されています。)

トヨタ、ホンダに攻め込まれて大変なのですが、カルチャーの違いを感じます。

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2008年5月27日 (火)

武富士の300億円に思う

東洋経済の5月23日の記事 武富士を襲う「仕組み金融取引」の衝撃(1)を見て、武富士の300億円の損失問題は、財務諸表やその監査の信頼性という大きな問題を持っているのではと思いました。

1) 武富士300億円の損失とは

2007年5月24日に300億円投資して10月経過しない2008年3月3日には300億円全額損をしてしまったというお話です。次の武富士のプレスリリースを見ると解ります。

2007.5.24 実質的ディフィーザンスの実施について
本日5月24日、弊社既発国内無担保普通社債を対象に、300億円の実質的ディフィーザンスを実施しましたのでお知らせいたします。

2008年3月3日 実質的ディフィーザンス解消のお知らせ
弊社が発行いたしました第8回国内債300億円に関しまして、メリルリンチ日本証券株式会社がアレンジャーとして組成した仕組み金融取引によって償還手当て済みであったことから偶発債務としておりましたが、当該仕組み金融取引の清算が開始されたとの通知を同社より受けました。・・・第8回国内債300億円が貸借対照表上で社債債務として再認識されます。これによる損失は上記仕組み金融取引の清算が完了するまで確定いたしませんが、最大で300億円となる可能性があります。

2) 貸借対照表には表示されなかった

注記はされましたが、投資の資産として計上されず、一方300億円の社債も抹消されました。その理由は、投資した資産を信託とし、信託収益は全て社債の利払いと償還に使われることから、実質武富士は社債の償還義務を負わないので、債務として認識する必要がなく、従い貸借対照表に表示する必要がないという考え方です。

武富士の社債金額を連結貸借対照表から時系列で追ってみると、次の通りであり、2007年9月末は300億円少ない金額です。ちなみに、この間に社債の発行・償還はありません。

2007年3月31日  158,479百万円
2007年9月30日  129,781百万円
2008年3月31日  161,083百万円

2007年9月30日の連結貸借対照表には次の注記があります。
6.偶発債務 社債の債務履行引受契約に係る偶発債務 第八回20年物無担保普通社
債30,000百万円

財務諸表からは、ハイリスクの投資が行われているとは、思えません。ちなみに、監査法人は2007年3月末まではみすず(旧中央青山)で、それ以後は新日本です。但し、新日本で監査をしている会計士は実はみすずから移った人で、同一人物と思います。

3) 実質的ディフィーザンスとデットアサンプション

武富士は実質的ディフィーザンスであると説明していました。実質的ディフィーザンスとは、信託型デットアサンプションと考えればよいと思うのですが、デットアサンプションとは債務を譲渡することです。債権の譲渡だったら、譲渡対価を受領しますが、債務なので譲渡対価を払うこととなります。例えば、金利5%で1年後に満期の債務があり、譲渡時点の市場金利が1%であったとするなら、1年後の金額105を年率1%で割り引いた(即ち1.01で割った)103.96に手数料を加えた104や105を支払えば債務を引き受けてくれる先があるかも知れません。

デットアサンプションなんて、得か損かは、考え方次第です。利子率の高い債務であれば、高いプレミアムを付けないと譲渡できません。譲渡時に、譲渡手数料として高い金額を払うが将来の利息負担はなくなることとなります。言ってみれば、期限前の債務償還を実施したことと同じ効果です。

実質的ディフィーザンスは、例えば上の例で言えば、105の国債を購入して、これを信託にして債務の利払いと償還にあてれば良いわけです。ちなみに、実質的ディフィーザンスを売り込んでいるWebがありました。この三菱UFJ信託銀行のWebです。

4) 本当にオフ・バランス・シートで良いのか

金融商品に関する会計基準が適用となります。そこで、会計基準はどう書いているかというと。

いわゆるローン・パーティシペーションやデット・アサンプションは、本会計基準における金融資産及び金融負債の消滅の認識要件を充たさないこととなるが、当分の間、次のように取り扱うこととする。

(1) -省略-

(2)デット・アサンプションは、我が国では社債の買入償還を行うための実務手続が煩雑であることから、法的には債務が存在している状態のまま、社債の買入償還と同等の財務上の効果を得るための手法として広く利用されている。したがって、改めて、オフバランスした債務の履行を求められることもあり得るが、このような手続上の実情を考慮し、取消不能の信託契約等により、社債の元利金の支払に充てることのみを目的として、当該元利金の金額が保全される資産を預け入れた場合等、社債の発行者に対し遡求請求が行われる可能性が極めて低い場合に限り、当該社債の消滅を認識することを認めることとする。

「極めて低い場合」と書いてありますし、公認会計士協会の金融商品会計に関するQ&AのQ&A14でもダブルA格相当以上社債と言っています。ハイリスク金融商品は債務の認識が必要です。

5) 監査の信頼性

複雑な取引ではなかったと思うのです。但し、私も分かっていません。だから、申し上げたい。何故、監査法人は300億円の社債のオフ・バランスを認めたのか?説明することにより、監査の信頼性、財務諸表の信頼性が保てると思うのです。

東洋経済は一番金額が大きい会社として中部電力をあげていました。中部電力の社債の債務履行引受契約に係る偶発債務に関わる注記について私も電卓を叩いてみると699,723百万円ありました。中部電力は引受先として、メガバンクの名前ばかりが記載されていました。引受先の意味が今ひとつ分かりませんでしたが、多分問題はないのであろうと。しかし、そうなると逆に問題が生じた武富士の場合と、外部の投資家はどのようにして見分けができるのか?

このあたり、監査法人の責任は重大だなと思った次第です。

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2008年5月24日 (土)

日米の経済比較

5月16日に内閣府経済社会総合研究所から2008年第1四半期のGDP速報(1次速報値)が発表され、約半月前の4月30日に米商務省(US Department of Commerce)から米国GDP第1四半期の速報値(GROSS DOMESTIC PRODUCT: FIRST QUARTER 2008 (ADVANCE))が発表されています。

1) 日本の景気は良いのか?

5月16日の新聞報道ですが、以下の様なのがありました。(毎日は社説です。)

読売 日本経済成長加速→1~3月期GDP、年率換算で3・3%
朝日 1~3月期GDP、年率3.3%増 3四半期連続プラス
毎日 社説:GDP成長率 景気、物価両にらみの時だ
日経 2008年度の実質成長率1.3%に・NEEDS予測

おそらくは、読売の記事にある「米国経済の減速などの影響で、今後も順調な成長が続くかどうかは不透明」との見方をされておられる人が多いのではと思います。

4月30日の米国GDPについての報道を掲げておきます。

日経 5月1日 1―3月の米実質GDP、0.6%成長――住宅や消費の不振続く

2) 日米比較

2003年からの5年間についての日米GDPの伸び率、即ち経済成長率のグラフを書いてみました。

Gdp200805

2008年第1四半期の前期比GDP成長率(年率換算)は、日本が3.3%、米国が0.6%なので、これだけだと日本が断然良いと感じるのですが、グラフに書いてみると異なった姿が見えてきます。直前の四半期と比べた場合は、季節調整を行っても3月と期間が短いので、調整しきれないのではと私は思います。

上のグラフで波線で現したカーブが、前年同期比でこちらの方が、安定したカーブになっています。前年同期比を2008年第1四半期で日米比較をすると、日本が1.1%で、米国が2.5%です。日本は、サブプライムで騒いでいる米国より悪いのです。そこで、次が2003年第1四半期を100として書いた実質GDPの推移グラフです。

Gdp2008051_2 

やはり、日本経済の方が、問題が多いのではと感じてしまいます。

3) 民間住宅投資

米国ではサブプライムローン問題が大変であると報道されています。確かに、金融関係では大幅な人減らしとボーナスカットが実施されています。そして、住宅関連の建設を初め、住宅設備関係も不況です。しかし、これもグラフを書いてみると少し異なった絵が浮かんできます。

Gdpresidential200805

サブプライムローン問題が表面化したのは、2007年7月28日のエントリー株価・為替・金利の動向で書いたように、2007年7月中旬です。上のグラフからすれば、2007年7月中旬は米国の住宅投資が2003年初めの水準に落っこちてきた頃です。しかし、米国では2006年に入った頃から、住宅投資は減少を始めていたのです。言ってみれば、その頃から新規住宅金融が減少をしていたのであり、サブプライムローン問題の端緒が始まっていた。

日本は、住宅を見ても米国より事態が悪いように思えます。2007年に入っての落ち込みは姉歯ショックでしょうか?そんな単純なものではなく、個人の収入が伸びないことから住宅投資も長年伸びてこなかった可能性があると思います。

4) 家計最終消費支出

個人の支出である家計最終消費支出がどうであったのか伸び率を見たのが次のグラフです。更に、2003年第1四半期の支出を100として書いた推移グラフをその下に掲げます。

Gdp200805houseconsr

Gdp200805housecurv

上のグラフは平均を示しているのであり、貧困層と富裕層で異なるかも知れません。むしろグラフを書いてみると、昨年の初め頃まで言われていたいざなぎ超える好景気と言うのが嘘であったような気がしました。欺されていたのでしょうか?

サブプライムローン問題なんて、実はたいしたことはないのではと思うのです。むしろ、食料価格やエネルギー価格、その他資源価格の高騰の方が、本当は経済に与える影響が大きいのだと思います。そして、影響力を考えた場合、石油メジャーに代表されるように米国は石油・ガス価格の高騰はマイナスのみに働くのではないのです。食料についても同じで、全て日本経済の方が不利であると思います。

スイスの有力ビジネススクールIMDが「2008年世界競争力年鑑」を発表しましたが、日本は22位です。1位米国、2位シンガポール、3位香港と続き、アジアの国で日本より順位が高いのは台湾13位、中国17位、マレーシア19位です。日経の5月15日の記事日本の競争力22位に上昇・08年、スイスのビジネス校調べがあります。又、順位表は、ここにあります。

日本経済は、多くの問題を抱えている。何も解決していないとの気がしています。例えば、本日は、このあたりにして、時間がかかるかも知れませんが、これから先に書き続けたいと思います。

最後に、日米のGDP速報が記載されているWebを書いておきます。

日本:http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#qe
米国:http://www.bea.gov/national/index.htm#gdp

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2008年5月20日 (火)

スピード社"LZR Racer"

スピード社の水着が水泳全種目金銀銅独占となるのでしょうか?

読売 5月17日 「全く違う感じ」五輪競泳3選手がスピード社の水着試着

ということで、記事の中には、”「疲れてきたラスト15メートルでも、足が動く感じはあった」(伊藤)、「飛び込んだ時から、全く違う感じがした」(森田)と、選手も性能を肌で感じ取っていた。”とも書かれています。すごい、水着なんですね。

そこで米TYR Sport社がSpeedoの親会社であるWarnaco Swimwear社を独禁法違反で訴えたとのことです。

時事通信 05月16日 米メーカー、スピード社を提訴=独禁法違反の疑いで-競泳水着

Associated Press May 15, 2008 Battle over swimsuits moves to the courtroom

アマチュア・スポーツにお金が絡んで、簡単に理解できそうにないと思えました。日本選手がLZR Racerを着れるのかどうかについての記事を読んでも、頭がややこしくなります。

読売 5月7日 スピード社水着「五輪着用」先送り、水連が国内3社に改良要求

読売 5月13日 五輪でスピード社水着の使用可否、6月10日に結論

どちらにしろ、Speedoが技術開発の結果として、勝利したと言うことでしょうか。

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2008年5月17日 (土)

グリーン・ピースの刑事告発

次のニュースがありました。

読売 5月17日 「告発鯨肉は盗難」西濃運輸が被害届、青森県警が捜査開始

そもそもは、読売 5月15日 乗組員が調査捕鯨のクジラ肉を横流し?水産庁が調査への報道があり、事件が知れ渡ることになったのですが。どうもしっくりといきません。問題がありすぎます。

目的のためならどんな手段も正当化されるのか?

であります。即ち、事実関係は、次の通りです。

4月15日 捕鯨船「日新丸」が東京港に着岸。
4月15日 西濃運輸で乗組員は荷物を宅配により発送。西濃運輸が岸壁まで取りに来た。
4月16日 グリーン・ピースは、西濃運輸の青森市内の配送所から1箱の段ボール箱を確保
4月16日 グリーン・ピースは、確保した段ボール箱を市内のホテルに運び、開梱し、中が塩漬け鯨肉を発見、証拠を確保。
5月15日 グリーン・ピースは、東京地検に告発を発表。

上の4月15日から5月15日までの事実は、「奪われた鯨肉と信頼「調査捕鯨母船・日新丸」での鯨肉横領行為の全貌」というグリーン・ピース告発レポートから抜き出したものです告発レポートはここにあります。

4月15日の段ボール箱1箱をグリーン・ピースは、証拠品の確保だとしているわけです。西濃運輸が被害届を提出したわけで、正当な手段で持ち去ったのではなく、奪い去ったと考えるのが妥当と思います。

グリーン・ピースの捕鯨についての意見が例え正当であるとしても、このような手段は許されるべきではないと私は思います。もし、これが許されるなら、令状なしで、警察・検察がなんでもできることとなります。一定の規則に従ったときに、強制的に他人の資産に手を付けることができる。この原則に明らかに違反していると考える次第です。(ホロコーストも731石井部隊もまさか正当化されないよね?)

一方、グリーン・ピースの狙いは、乗組員の告発ではないと思います。日本の捕鯨を中止に追い込むことです。調査捕鯨における国際的な約束に違反していないか(乗組員が慣例とは言え、自宅に持ち帰ることは調査捕鯨の目的を逸脱しているのではないか)について、政府がどのように扱うか、グリーン・ピースとしては、日本政府の弱点と思える部分の証拠を確保したのです。それからすると、今回のグリーン・ピース・ジャパンの実行部隊が犯罪に問われたとしても、グリーン・ピースとしては目的は果たせたのかなと思います。そうすると、目的のためなら、手段の正当性は問題ではなくなるが成立してしまうので、頭が痛くなってしまいます。

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ミャンマーと中国への自衛隊災害派遣

ミャンマーのモンスーンも中国の四川地震も被害の深刻さが伝わってきています。

日経 5月17日 ミャンマー、死者7万7000人に・タイの救援隊が入国

日経 5月15日 四川大地震、死者5万人超と推計・中国政府発表

すごい人数です。go2cさんのブログも書いておられますが、阪神淡路大震災の死者はWikipediaによれば6,434名であったので、その10倍規模の災害なのです。しかも、復旧に手間取ると被害が拡大する危険性もあると思います。

そこで大胆な自衛隊災害復旧海外派遣です。災害復旧なので、一切の武器は持っていきません。自衛隊には、日本国内における災害復旧の経験を多く保有しています。だから、それを活用することです。勿論、日本国内での自衛隊の災害復旧活動の際に都道府県知事から要請を受けて出動しているように、ミャンマー政府、中国政府の要請を受けた後の活動となりますが。

自衛隊イラク派遣なんかより、ずーと有意義だと思ったのですが。なお、本エントリーに関しては、NPJ通信の桂 敬一氏のミャンマー・中国の災害救助に自衛隊の派遣検討を ―日本が先頭に立つべきアジアの共生モデルの創造―を読んだ後に書いており、受け売りでしょうか?

政府がミャンマー、中国と話をしたなら、その反応はどうなのでしょうね。大東亜戦争時代の日本の軍隊ではないとして、人道援助として、両国から受け入れられるのか、それともやはり未だしこりが残っているのでしょうか?

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2008年5月16日 (金)

家庭用太陽光発電システム

(訂正あり:太陽光発電の場合は、電力会社が販売単価相当で購入するとWeb(とりあえず東京電力、中部電力、関西電力を調べました。)にあることから、間違い部分を訂正しました。)

5月15日の朝日新聞の私の視点に、加藤和彦様という方が、太陽光発電について「保守点検はやはり必要だ」と投稿しておられました。

10月12日のエントリーバイオ燃料で大気中にCO2濃度が急速に高くなっていることを記載すると共に、バイオ燃料1トン製造するために、燃料を0.76トンのエネルギーを使用し、しかもこの製造のためのエネルギーは化石燃料であると書きました。

住宅用太陽光発電について、Webを探してみるとここにシャープの「住宅用太陽光発電システム サンビスタ」というのがありました。

価格を見ると、「1kW当りの平均設置価格は70万円前後が目安となります。」と書いてありました。年間発電量に関しては、「4.3kWの設備で、4,587kWhで10.7万円お得です」とありました。平均電力単価を計算すると23.3円/kWhですから、電力会社から購入する際の電気料金とほぼ等しい単価です。夜間は、太陽光発電は発電せず、雨や曇りの日も同様です。だから、家庭内の電力使用より、晴天時の発電による電力会社への売電の方が多いと思うのですが、そうなると、そんなに高い料金にはなりません。電力会社3社を調べましたが、太陽光発電の場合は、販売単価相当で電力会社が購入するとしています。参考まで、東京電力関西電力中部電力です。

耐用期間については、「期待寿命については太陽電池モジュールで約20年以上です。その他の機器は設計寿命が10年程度の部品を使用しております。」と書いてあります。

そこで、私なりに計算してみました。

設備費: 4.3kW x 70万円 = 300万円

年間収益: 10万円

20年の耐用期間で、収益合計は200万円です。そんなバカな!バイオ・ディーゼルよりインチキがまかり通るのと思いました。

勿論、メンテナンスも問題です。自分で危険を冒して、屋根に登れませし、不具合を発見できません。メンテナンスには専門家を呼ばねばならないが、それでもメンテナンスが完璧にできる保証はない。加藤和彦様の投稿によれば、不具合箇所を発見できず、正常な部分の交換が必要であるとして35万円の見積が送られてきたケースがある。ソーラーといえども、自分で発電設備を保有するわけで、通常の場合の電線のみのメンテナンスと差があるのは当然と思います。

CO2削減効果も不明であると思います。ソーラーパネルの制作時にCO2を排出しているから、設備に含まれているCO2の排出を考慮しなければならない。ちなみに、年間4,587kWhの発電のCO2量は20年で45トン位です。

一面だけを見て判断を下すことの恐ろしさだと思います。例えば、電気自動車にしても、発電所で発電した電力を使うのだから、無公害ではないし、発電所でのCO2は発生する。燃料電池も水素は化石燃料から取り出すのだから、本質的な解決ではない。

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2008年5月14日 (水)

ニイウスコーの推理

ニイウスコーと言っても、余りご存じないかも知れません。でも、「日本IBMと野村総合研究所(NRI)によって設立されたニイウスは、最先端のハード、アプリケーション、それに高度なSEサービスを組み合わせた事業展開のもと、情報システムを構築するソリューション・プロバイダ」と言えば、どうでしょうか?ITプラス野村の知的ノウハウがたくさん蓄積された素晴らしい会社と思いませんか?

上の会社紹介は、ニイウスコーの代表取締役副社長割方 美奈子氏が日経BP社の「IT業界に就職するための完全ガイドIT業界徹底研究2007年版」のインタビューに答えて同氏が話した言葉です。その記事はここに同氏の写真と共にあります。

ニイウスコーは、実は現在有名会社でして、東証一部上場で(現在東証2部)、架空循環取引が発覚しているIT会社で、4月30日に民事再生手続開始の申立てを行ったことから脚光を浴びています。(申請したのはニイウスコーとその子会社ニイウスですが、このブログの中では合わせてニイウスとします。)関連の記事のリンクをあげておきます。

読売 4月25日 ニイウスコー、循環取引繰り返し300億円過大決算の疑い(リンク切れ?)

Net IB 05月02日 売上水増しの「循環取引」にのめり込んだ日本IBM、野村総研が母体のニイウスコー

私の、日本語の使い方が、乱れているようです。脚光とは、良い意味の場合に使うはずが、失礼いたしました。でも、この会社を見ていくと私の頭では、ついて行けない部分がありすぎまして、そのあたりを書いてみます。

1) IT株は恐ろしい

ニイウスコーの株価は本日304円でした。5月2日に民事再生手続開始決定が出され、認可されるかどうかは不明です。チャートを見ると言葉につまります。

Niws20080513

コンピューター・ソフトって本当に難しいです。例えば、読売 5月12日三菱UFJ システム統合初日に障害といったこともありましたし。IT会社の株なんて、素人が手を出せるような物ではなく、玄人だってダメだったりすると思います。日本IBMや野村総研なんて名前でも、手を出してはならないことを示しているサンプルではないでしょうか?

なお、IT技術者として生きていきたいと考えておられる方々について、私はITは未来を切り開く重要な産業だと思っています。IT産業は今後も続くし、社会にも役に立ちます。でも、投資対象として考えると難しい面がたくさんあると思います。IT技術者の方々の活躍には今後も期待します。

2) 日本IBMと野村総研

現在のニイウスコーの大野 健社長は卒業後すぐに野村総研に入社した野村総研の出身です。行きがかり上そうなったのだと思いますが、私にとっては野村総研がITには、必ずしも直接に結びつきません。

大野 健氏の前任は末貞郁夫氏で、この人は、1992年のニイウスコー設立以来社長を務めていました。(ここで中断。上に上げた読売の記事のリンクが突然切れました。その代わりに、日経IP Proの記事です。IP Pro 2月14日 ニイウスコー、不正取引の疑いで中間決算発表を延期)

ニイウスコーが4月30日に発表した「調査委員会の調査結果概要と当社としての再発防止策について」という文書がここにあります。この中で、架空循環取引が存在したことを認めています。「過去5期にわたる調査とそれに基づく過年度修正の結果、合計56取引、売上金額総額682億円の不適切取引が行われていたこと、当期利益への影響額は277億円であったことが判明しました。」と書かれています。

その原因の一端として「営業部門へは、達成不可能とも思われる高い社内予算を課す代わりに、その達成率に応じて高額な給与またはボーナスの支給を保証してきたことが明らかになっています。その結果、営業担当者らは、不適切な取引によるか否かは別として、目標達成と高額なインセンティブの取得へと邁進してきました。」とも書かれています。

「達成率に応じての高額な給与またはボーナスの支給」とは、IBMの体質そのものと思います。東洋経済 5月13日 惑・ニイウスコーの破綻とIBM、トーマツの影 は「成績優秀な営業マンに海外旅行を与え、業績連動報酬は最高で数千万円にも上った。」と書いています。休暇をくれて夫婦で会社負担での1週間の海外旅行なんてあったら、家に帰ったら女房から「○○さんのように、あなたも頑張りなさい。」と毎日言われたりして。

業績連動給は、恐ろしいです。下手をすると人間性を失います。

3) 医療事業撤退207億円

2007年6月期は、139億円の純損失ですが、医療事業撤退207億円が含まれています。医療関係の同様なニュースとしては日経 3月29日 偽造の「丸紅保証書」で投資、米証券が240億円回収不能を思い出します。

私の10月27日のエントリー 廃止候補の201病院を見れば、医療は大変ですし、10月 4日のエントリー 医療の国際比較を見れば、日本の医療は最高の医療が最低の金額で得られるのですが。経済財政諮問会議では、日本の医療は非効率である。だから、IT等を導入して効率化すべきといった議論もなされていました。少し古いですが、2002年の国際医療福祉大学の阿曽沼教授のプレゼンのスライドに次の絵があります。

Photo

電子カルテといった文字が浮かんできます。医師の数を増やさないでIT化して、解決するのでしょうか?2)で書いた「人参の馬」には、社会のためといった発想は生まれてきません。

私には、ニイウスコー、丸紅、リーマンなんて皆、医療の発展なんて考えていない。ただ、自社が金儲けするだけを考えたのではないかと。だから失敗する。ビジネスで成功する秘訣は、そのビジネスが社会のために役立っていることだと思います。

4) 何故11月に200億円の増資?

上の1)、2)、3)は、「さもありなむ」です。でも、2007年11月の200億円の増資は、闇に包まれています。何故倒産が予想される会社に200億円もつぎ込むか?200億円つぎ込んだのは、ロングリーチグループ(175億円)とフェニックス・キャピタル(25億円)です。ロングリーチグループはケイマン島の法人ですが、元をたどれば日本かも知れません。フェニックス・キャピタルは日本の株式会社でこの会社です。でも、単純に欺されたのでしょうか。

ニイウスコーの貸借対照表を見ても資産に計上されているもので価値があると思えるものは、ほとんどありません。2007年6月末で41億円の債務超過であったのが、200億円の増資で159億円の純資産となったものの、資産総額667億円を正当に評価すれば無茶苦茶になるのは目に見えています。それなのに金を出したのは誰か?何故か?であります。

もっと恐ろしい裏があるように思えたのです。

私は、ニイウスコーは生き延びないと思っています。ニイウスコーには子会社を含め600名以上のシステムエンジニアが働いていますが、エンジニアにとってニイウスコーに止まる必然性が感じられないからです。むしろ見切りを付けて、新しい勤務先を見つけるのが重要であって、下手をするとニイウスコーの資産であるソフトだってこっそりコピーしてとりあえず個人で保管しておくなんて。ソフト会社が倒産すると、重要ソフトも盗まれてもぬけの殻になる。最も、倒産会社にソフトのみが残っても無価値の資産である。

だから生き延びさせるための手段であった。そうすると資金の出し手は日本IBMが一番くさくなる。但し、日本IBM1社ではなく野村総研も加わっている。だから、200億円増資後は社長が野村総研出身の大野 健氏となった。銀行も、その結果支援を継続するはずであったが、足並みが乱れ民事再生手続開始の申立てとなってしまった。だから、4月30日のプレスリリース民事再生手続開始の申立てに関するお知らせには、「今般、一部の金融機関からの賛同が得られず」と書いてあった。

こんな推理をしてみました。

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2008年5月12日 (月)

年内に総選挙ですか?

次のような記事を見たものですから。

朝日 05月11日21時08分 税制改正を争点に年内にも総選挙 自民幹事長が示唆

可能性は、当然あると思います。もしかしたら、自民・民主のリッシャッフルなんて可能性もあったりして。税制改正が争点と朝日の記事は言っていますが、それが全てではないにしろ、大きな争点になるに違いないと思います。

1) 現状の税収

国会で成立した平成20 年度一般会計の租税及び印紙収入予算額は次のグラフの通りです。

20

所得税16.3兆円、法人税16.7兆円、消費税10.7兆円でこの3つの税だけで43.7兆円あり、税収の81.5%を占めます。改正するなら、この3つの税をどうするかが一番問題となるはずです。

2) 所得税

所得税を単独で考えるか、消費税と合わせて考えるか、またさらには年金、健康保険も含めて考えるかにより、アプローチが変わるのかも知れません。私は、所得税、消費税、年金保険料、健康保険料の全てを合わせて考えるべきと思っています。

所得税単独での議論では、最高税率が40%で地方税の10%を合計すると、これ以上高い税率はあり得ないとの議論が出てきます。しかし、年収3百万円の人は、確かに所得税はほとんど払っていないかも知れないが、家賃を除けば、ほとんどの支出には消費税を払っているわけで、地方税も合計すれば年間45万円程度払っているのではと思います。そうすると15%です。もっと低所得の人は更に余裕のない生活になってしまう。

社会保険料は、低所得者への減免措置はあるが、累進構造になっていない。基本的には、所得税率の引き下げは、低所得者を直撃する。それが現実に起こったのが、定率減税の廃止で、一方で定率減税と同時に実施した高額所得者の減税(累進税率の高い部分の廃止)は、元に戻しませんでした。

累進構造を持った所得税を社会が、どの上手に使いこなせるかが、今後の日本社会の発展に重要だと私は思います。なお、自営業者の所得が捕捉されないからとの議論は、私は嘘八百と思っています。税務署員は、そんなに甘くないし、職務を立派に果たしておられると思います。昔は、ビジネスの決済が現金でしたが、今は銀行振り込み、クレジットカード、手形小切手を含め銀行口座を経由する方法です。基本的に、所得をごまかしにくい社会になっています。

3) 消費税

高福祉社会を所得税増税だけで実現は困難と思います。どうしても消費税増税をせざるを得ない。その時に、年金の掛け金や健康保険料をどうするのかがポイントと思います。消費税が増税になったとしても、社会保険料が同額安くなればよいのです。上の表の消費税は地方消費税を含まない金額ですから、4%の基準です。1%の増税は約2.7兆円の税収増になります。

ジュリストの2008年5月1日号は、【特集】国家は撤退したか?―「規制緩和」と「リスク社会」です。誰のための国家であり、政府であるか。そんな国家なら政府なら必要ないと言えないのです。無政府状態とは、何をしても犯罪を構成しなくなるわけで、弱肉強食以外の何ものでもない。小さな政府論は、聞こえはよいのですが、ライオンが子羊にささやいている恐ろしい言葉ではないかと思えます。

4) 法人税

諸外国よりも高いとの意見を聞くことがあります。しかし、単純ではありません。例えば、中欧のスロバキアですが、所得税、付加価値税、法人税全て19%です。しかし、社会保険料は会社負担35.2%で個人負担13.4%です。背景として、社会主義国から市場経済へ移行したが、計画主義経済で競争力ある産業が存在しなかったことから、外国から企業誘致を推進し、国民の雇用確保に努めることが最重要政策でありました。それと、社会主義で国営企業のみの産業構造の場合は、国営企業の収益金が国庫収入になるのですから、税の概念が異なってきます。税徴収がスムースに行かなければ、公平な税が成立しませんから。

日本は、日本として法人税をどうするかを考えるべきと思います。法人税の特徴は、赤字企業は支払う必要がないことです。それと、法人の利益は最終的には、個人に回ってくることとなるが、法人税率が低いと、個人には回さず、法人に留保することが有利になってしまいます。法人税率を下げても、それが労働者の賃金に回ることは絶対なく、賃金は税が決定するのではなく労働市場が決定する。

同様に、非正規雇用が話題になりますが、労働市場が決定している面があるのであり、法人税を増税して非正規雇用者のセーフティー・ネット整備に支出するとの考え方もあるのではとも思います。

5) 小さな政府・大きな政府

小さな政府を目指した結果は、格差社会と理想を失った社会になってしまったのではと思います。勿論、むやみに大きな政府が良いのではなく、適切な政府が良いはずです。

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2008年5月 7日 (水)

後期高齢者医療制度

「長寿医療制度」の間違いではないかって?厚労省が、そう言っているかも知れませんが、法律の名前が、「高齢者の医療の確保に関する法律」(リンクはここ)であり、その50条で、「次の各号のいずれかに該当する者は、後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者とする。」と定め、次の各号は(1)75歳以上の者と(2)65歳以上75歳未満の障害者としています。

衆院山口2区補欠選挙において、後期高齢者医療制度が始まったことも、選挙結果に影響したとの噂ですが、ゴールデンウィークが明けようとしていることから、ここらで現実に戻って、後期高齢者医療制度をよく見てみます。

1) 何故75歳で線を引くか?

人の医療費は、その多くを死に至る直前に支出しているのが、現状であると理解します。次の、グラフは、1948年生まれの人の将来の人口予測です。(国立社会保障・人口問題研究所による「将来推計人口」による。)

Lifeexpect1948

現在60歳であるとして、将来75歳になっても85%の人たちは健在です。それと、将来の人口構成を見たのが次のグラフです。データ元は同じです。

Age75population

現在日本の人口は127百万人程ですが、既に減少傾向に入っており、2021年頃に1.2億人にを切ることになる。75歳以上の人口は、現在10.4%ですが、20年後の2028年には19.3%と20%近くなると予想されます。

対策を考えるなら、75歳で線を引くことになるなという感じです。

しかし、重要なのは、分析したり、検討したりする場合の線と制度を構築する際の線が同じである必然性はないし、制度は制度で何がよいかを検討するのが本来であると思います。大嘘を、そのままにして、名前を「長寿医療制度」なんて呼ぶのは、悪いことと思います。

2) 医療費抑制が目的

参議院厚生労働委員会で法案の審議が、2006年5月23日に始まりましたが、その時の西島英利委員(自民)の質問とそれに対する水田邦雄君厚生労働省保険局長の答弁によく出ています。(国会での答弁の通りに、国民に説明をしないのは、国民に対する裏切りみたいに思えるのですが)

西島英利君 ・・・・もうちょっと時間はございますけれども、高齢者医療制度の、特に後期高齢者医療制度につきまして、本来この後期高齢者医療制度は、ある意味では医療費の適正化のために実はつくられた制度と私は理解をいたしております
 ですから、75歳以上の医療はみとりの医療なんだというふうに考えまして、ある意味では包括的な医療ということにしたらどうかというのを、当時私が日本医師会に在籍していましたときに自民党に御提案申し上げて、健康保険法の附則の中に書き込んでいただき、今回制度化されているというふうに私は理解をいたしております。
 となりますと、まさしく医療費適正化のための一つの方法でございますので、まさしくこの後期高齢者医療制度が導入されて、どのくらい、じゃ医療費の適正化が行われるのかと、本来やっぱり数値は出していかなきゃいけないはずでございますけれども、まだ厚生労働省の方からそういう数字はほとんど聞いておりません。
 この件について何か御見解があればお教えいただきたい。

水田邦雄君 ・・・・・後期高齢者に係る医療費につきまして申し上げますと、2015年、平成27年段階で、改革を実施しない場合医療費ベースで18兆円という見通しが、改革の実施後は16兆円、それから2025年段階では、改革前で医療費ベースで30兆円との見通しが、改革実施後は25兆円と、このような数字を医療費について持っているところでございます。

3) 誰が得をする制度か?

厚生労働省は、保険料は10%負担で、50%は公費(政府・都道府県・市町村4:1:1)と40%を国保、組合健保、政府管掌保険が負担とすると言っていますが、40%の既存健保の負担に人頭割が含まれています。組合健保は、基本的には大企業です。人件費が高いと負担割合が低いのです。だから、保険料率も組合により3%~10%と開きがあります。人件費が高い保険料率の安い健保組合は、後期高齢者制度が始まって、ウハウハかも知れません。

しかし、参議院厚生労働委員会の議事録を読んでも、不思議なことばかりです。2006年5月30日の朝日俊弘委員(民主)の質問に対する川崎厚生労働大臣の答弁です。

川崎二郎君 特定保険料の負担でございますけれども、高齢者医療制度においても過度のものとならないよう、後期高齢者支援金の割合は制度発足時は給付費全体の約四割になりますけれども、若い人口が減っていく、我々が後期高齢者になっていく、その割合が減少していく仕組み、我々が増えれば、若い人口の減少を勘案して、その割合が減少していくと
 
それから、個別の保険者ごとに見て支援金等の負担が著しく重い保険者については、著しく重い部分について全保険者で再案分する措置、負担調整措置を講ずることといたしております。
 また、健保組合等は医療給付や後期高齢者支援金等に要する費用の見込額等を勘案した上で医療給付等を不足なく行えるよう保険料率を定めることになりますが、特定保険料率と基本保険料率が特に高い水準となる健康保険組合に対しては、これまでと同様、給付費等臨時補助金も活用してまいりたいと。すなわち、事実上赤字になるところには国の方から調整をすると、このようなことを考えております。
 ずっとその後どうなるかと。そこにつきましては、将来における医療費の動向、健康保険組合等の財政状況を見極めた上で、中長期的な課題として今御指摘いただいたことは考えなければならないだろうと、このように考えております。

日本の医療保険の負担は、いびつな形をしている部分があり、本来は、そのような部分を改善していくはずが、そうではなく、破滅に向かっているのが、後期高齢者医療制度である気がします。制度が維持できなくなることが予想されるからです。75歳で一端線を引いたら、「高齢者は高齢者で何とかしろ」との声が強くなる可能性があります。そうなると、一人あたりの医療費の制限をせざるを得なかったり。混合診療解禁へも向かうと思います。

混合診療解禁でよいではないかと思われる方もおられるでしょうが、混合診療解禁の裏に潜むのは、後期高齢者医療制度よりもっと恐ろしい面もあり、別途何時の日がエントリーをたてたいと思います。

4) 国会審議

2005年9月11日が郵政民営化衆議院選挙で、与党の圧勝でした。それを引き継いで、後期高齢者医療制度が盛り込まれた「健康保険法等の一部を改正する法律案」が衆議院に2006年2月10日に提出されました。衆議院厚生労働委員会は5月17日に強行採決で、翌18日に衆議院本会議で可決され、参議院本会議可決が6月14日、公布が6月21日でした。

5月18日の衆議院本会議の議事録の一部を少し覗くと次の様でした。(自民、公明は発言をしませんでした。)ねじれ国会は、よいものだという気がします。ガソリン税の暫定税分は少なくとも一般財源になりましたから。

民主党の郡和子でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)
 この国に民主主義はないのか、医療はだれのものなのか。
 昨日の厚生労働委員会での与党による強行採決は、国民を愚弄し、政治を私物化するものであります。二〇〇二年の健康保険法改正案のときには五十六時間の審議が行われましたが、しかし、今回はまだ三十四時間にすぎません。国民を代表して、断固抗議するものであります。(拍手)
 政府のこれまでの失政により、日本の医療は今壊滅の危機にさらされています。理想の医療、それは、国内のどこででも、いつでも、最善、最良の医療を無理のない金銭負担で、安心して受けられることです。医師を初めとする医療従事者と患者、患者家族との間で培われた確かな信頼関係の中で、平等、公平に受けられる医療、この日本が世界に誇るべき医療体制は、政府の失政により崩壊の一途をたどっております。

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法及び医療法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。(拍手)
 まず最初に、本法案は、国民の命と健康にかかわる極めて重大な法案であるにもかかわらず、昨日の厚生労働委員会において、自民、公明の与党が審議を打ち切り、採決を強行する暴挙を行ったことに、満身の怒りを込めて抗議をするものであります。(拍手)
 小泉構造改革のもとで、国民健康保険の保険料を払えない世帯がふえ、保険証の取り上げが三十二万件に達するなど、国民の命と健康は重大な危機に直面しています。
 本法案は、医療給付費の削減を至上の命題とし、高齢者を中心に患者負担を拡大する、都道府県には入院日数の短縮目標を義務づけ、高齢者医療制度を創設して新たな負担増を打ち出すものであり、しかも、産科や小児救急を初めとする地域医療の拡充、医師の確保や看護師の充足など、国民の切実な声である医療供給体制の充実とはほど遠い制度改悪となっています。
 本法案に反対する第一の理由は、高齢者や重症患者への情け容赦ない負担増と医療の切り捨てが強行されることであります。
 ことし十月から、高齢者の窓口負担は現行の二割から三割になり、療養病床の食費、居住費も保険適用から外されました。また、新設される高齢者医療制度では、年間六万円もの保険料が年金から天引きされ、滞納すれば保険証の取り上げもするというものであります。

日森文尋君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、この両案について、反対の立場で討論いたします。(拍手)
 まず、冒頭、昨日、厚生労働委員会において、国民の命に直結する本重要法案を政府・与党が強行採決したことに対し、満身の怒りをもって抗議をいたします。(拍手)
 本法案は、政府の財政支出の削減のみが目的です。公的医療の範囲の縮小、削減は、国民共有の財産である国民皆保険制度を縮小し、所得による医療格差を持ち込むものです。医療費適正化は避けて通れない重要な課題ではありますが、本法案の基礎となる医療費の将来推計、健診効果による抑制効果は、正確な根拠に基づいたものではありません。
 また、医療改革において最も優先すべきは、国民の立場に立った医療の中身の改善と医療提供体制の構築、そして国民の信頼を得る医療保険制度の充実です。政府が、これらに対する明確なビジョンも戦略も何ら示さないまま、国民、患者、医療現場、そして地方に負担と責任を一方的に押しつけることは断じて許されません。

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