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2008年9月27日 (土)

丸大食品のメラミンに関する危険性

メラミンが含まれた食品が日本国内で発見されたと報道が、ありました。

読売 9月26日 丸大食品の自主回収対象4商品からメラミン検出

そこで、丸大食品の商品の安全性を評価してみます。

1) 丸大食品のメラミン含有量

読売の記事によれば、次の通りです。

市販用クリームパンダ      37  ppm(高槻市検査分)
業務用クリームパンダ       36.6ppm(大阪府検査分)
グラタンクレープコーン      14  ppm(丸大食品検査分)

2) 食品安全委員会の基準

食品安全委員会のメラミンについての文書はここにあります。メラミンが工業用の物であることから、食品委員会としての基準値は未だ作成しておられないと思いますが、米国食品医薬品庁(FDA)と欧州食品安全機関(EFSA)のリスク/安全性評価が書かれています。FDAの基準は以下であります。

TDI(耐容一日摂取量):0.63 mg/kg 体重/日
(注)TDI(耐容一日摂取量)とは、耐容摂取量は、意図的に使用されていないにもかかわらず、食品中に存在したり、食品を汚染する物質(重金属、かび毒など)に設定される。耐容一日摂取量は、食品の消費に伴い摂取される汚染物質に対して人が一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量

安全値が0.63mg/kgですから、体重を10kg~50kgの場合について計算すると次の通りになります。

体重 10kg 20kg 30kg 40kg 50kg
耐容一日摂取量 6.3mg 12.6mg 18.9mg 25.2mg 31.5mg

3) クリームパンダの安全性

クリームパンダの安全性を評価します。この丸大食品のクリームパンダの商品情報に100gあたりの数字が書いてあります。100gで262Kcalとなっているので、普通であれば1回に食べる量は100g程度ではないかと思います。クリームパンダのメラミン含有量が37ppmであるとすると、100gに対して3.7mgです。従い、1日100g程度クリームパンダを食べるだけだったら良いのですが、例えば体重20kgの子供が1日3食合計で340g以上クリームパンダを食べると危険範囲に入ってしまいます。

なお、基準値TDIは一生涯にわたって摂取を続けても安全であることを前提にしていることから、直ちに危険ということではないと理解します。

4) 中国の乳幼児用調製粉乳の場合

食品安全委員会の文書には、メラミンが混入された中国の乳幼児用調製粉乳に関して、22 の製造者の69 製品からメラミンが検出され、その含有量は、高いもので2,563 mg/kg で、それ以外のもので0.09~ 619mg/kg との記載があります。

乳幼児のミルクの飲む量ですが、3~5月の離乳食前の場合がミルクを飲む量が一番多く、1回200mlを1日5回位のようです。1日に1,000mlですね。この中の粉乳の量は130g程度でしょうか。そうすると、1日のメラミン摂取量は、高いものの場合は333mgで、それ以外のもので0.01mg~80mgとなります。

3~5月の離乳食前の乳児の体重は、6~7kgであり、FDAの基準をあてはめると耐容一日摂取量は3.8mg~4.4mgです。高い場合は、基準値の80倍以上になりました。

食品の安全性について、○×ではなく、数字を使用して評価することが重要であり、本質を追究しないと本当の意味で対策がとれない。下手をすると多大なるコストを有効でないにも拘わらず掛けてしまい、結果的に我々の食品の価格が上がる。それを全員が支持するなら良いのですが、むしろその結果として、更に安いコストを求めて更に危険な食品が出回ることとなる。そんな馬鹿げた「イタチごっこ」だけはしたくありません。

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2008年9月25日 (木)

健康保険組合の保険料率引き上げ

次のようなニュースがあります。

日経 9月25日 NTT健保、保険料率引き上げ 10月から1%

1%の保険料率ではなく6.27%→7.27%であります。しかし、NTTの保険料が元々安かったと言える面があり、少し書いてみます。

1) 政府管掌保険の保険料率

現在の保険料率は、8.2%です。従い、保険料率の比較では7.27%に上がったとしても、政府管掌保険よりは1%近く安いのです。

2) 国民健康保険の保険料率

保険者(保険事業者)が、市町村であり、この国民健康保険ガイドの説明にも書いてあるように、住んでいる市区町村によって保険料は大きく異なります。保険料は、所得割、資産割、均等割、平等割の4種類の計算方法で計算した合計額です。

所得割について評価をすると、8.5%であるから、政府管掌健保より保険料率が高く、しかも、資産割、均等割、平等割が加わるので確実に高いはずです。また、組合健保も政府管掌健保も会社と従業員が50%づつの負担なので、生活実感からすれば保険料全額自己負担の国民健康保険料は負担が大変と思います。(なお、厳密には、所得割は、所得に対してであり、住民税を計算する際に、社会保険料控除、扶養控除、基礎控除等を差し引くので、グロスの支払額に相当する金額で計算する組合健保や政府管掌健保のかけ算対象金額より小さくはなります。・・・・実際は、国庫(税金)の補助金があるから、猛烈に複雑にはなりますが、とりあえず個人・世帯ベースでいくら負担しているかの話で終始します。

但し、最高保険料は53万円ですから、組合健保や政府管掌健保より低い(政府管掌健保の最高保険料の場合は、143万円)ですが、会社との折半を考えれば、53万円の上限は妥当とも考えられます。更には、保険料が高額になると、自分でリスクを取って、民間保険に加入し、病気になれば自由診療を受けるという選択を取る高額所得者がいるかも知れないことでしょうか。国民皆保険制度の崩壊防止と高額所得者への配慮もあると想像します。

3) 健保の比較

西濃運輸の組合健保が解散したというニュースがありました。また、この9月11日日経 健保組合、計6300億円赤字 全体の9割、収支マイナスのような報道もありました。但し、財務諸表を見たわけでもないし、政府管掌健保と比べると安い保険料率で高い付加給付となっている組合も多いと考えられるので、全体を把握した上でないと、結論めいたことを言うのは不適切と考えます。

次の表は、社会保険庁が作成した2005年12月13日の政府管掌健康保険 改革ビジョンの8ページの表であり、国民健保、政府管掌健保、組合健保の比較です。

16

この比較表は平成16年3月末の状態で古いのですが、1世帯あたりの保険料に国保、政府管掌、組合の間で大きな差はありません。政府管掌健保と組合健保を比較した場合に、平均報酬月額に差があります。この差が、保険料率の差となっていたのであり、組合健保は企業または企業グループ毎なので、賃金が高い企業の健保組合は低い保険料率で運営できていました。

4) どうなる政府管掌健保

多分解散して、政府管掌健保に移行する健保組合が増加すると思います。しかし、実は、政府管掌健保は9月30日で消滅し、10月1日に「協会けんぽ」という不思議な健康保険制度になります。このWebをご覧下さい。ちなみにここに雑誌に出した広告がありますが、政府は何故変更するのか、よく説明していません。

いつだれが、そんなことを決めたかですが、後期高齢者医療制度を決めた平成18年6月21日公布の法律第83号「健康保険法等の一部を改正する法律」です。すなわち、郵政民営化選挙で小泉が勝利し、好き放題に法律を作ったときです。

何が協会けんぽになると変わるかというと、日本全国一律の健康保険料が都道府県毎の料率となります。差を埋める調整をすることになっているのですが、将来どうなるか、分かりません。何故改正するのか、納得がいかないのですが、最大の改正点である健康保険法4条は次の通りです。

第4条 健康保険(日雇特例被保険者の保険を除く。)の保険者は、政府全国健康保険協会及び健康保険組合とする。

ある保険料の試算を次に掲げておきます。(厚生労働省のある資料です。)

Photo

医療費抑制を意図しているのだろうと思いますが、何かの利権が絡んでいるのでしょうか?いずれにせよ、5月7日に書いた後期高齢者医療制度と同じで、この改正が、国民の健康や医療に、有利なのかどうか、私は理解できていません。私の頭の構造では、Simple is Bestで、複雑にしてしまえば、問題点の把握も困難になると思います。

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三笠フーズ家宅捜索問題

三笠フーズのの家宅捜索を始めたとのニュースがあったので、私の頭の中の糸が完全にほぐれた状態ではありませんが、少し書いてみます。

日経 9月24日 三笠フーズを捜索 食品衛生法違反など、3府県警合同捜査本部

1) 食品衛生法違反

9月19日の事故米についての真実についてKoumeさんから次のコメントを頂きました。

ところが平成18年の、いわゆるポジティブリスト制度の施行により、残留農薬基準が設定されていないものは全て一律基準の0.01ppmが使われることになり、コメに対するメタミドホスはそれに該当します。要は0.01ppmは特に安全上の根拠など無い(超安全である)基準なのです。

というわけで、0.05ppm残留していようと安全上の問題が無いのは仰る通りなのですが、食品衛生法では安全かどうかではなく基準値を越えるか越えないかで判断されていますので、安全ではあっても食品衛生法違反には該当するはずです。

食品衛生法の、どの条項かと考えましたが、おそらく次の11条3項と思いました。

農薬、飼料に添加、混和、浸潤その他の方法によつて用いられる物及び医薬品であつて動物のために使用されることが目的とされているものの成分である物質が、人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量を超えて残留する食品は、これを販売の用に供するために製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、又は販売してはならない。ただし、当該物質の当該食品に残留する量の限度について第一項の食品の成分に係る規格が定められている場合については、この限りでない。(注:条文の括弧書き等を含め省略部分あります。)

11条3項の違反に関する刑事罰については、72条で2年以下の懲役または2百万円以内の罰金もしくは併科となっています。

11条3項の「人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量」は、この平成17年11月29日 厚生労働省告示第497号により、次のように発表されていました。

食品衛生法第十一条第三項の規定により人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量は、0.01ppmとする。

2) 対象業者の範囲

0.01ppm以上の問題物質が入っていることを知らないで、販売してしまった場合の、食品衛生法11条3項の適用はどうなるのでしょうか?ニュースでは、「詐欺容疑での立件も視野に実態解明を急ぐ」となっています。もし、三笠フーズが詐欺をしないで、販売していたと判明した取引があったら、その相手も当然同罪ですよね。

おそらくは、欺されてしまった善意の事業者を72条の刑事罰で起訴することはないと思います。しかし、通常よりずいぶん安い価格で、さも「訳あり品」である米として三笠フーズから持ちかけられていたら、商人として品質等について疑問を持つのが合理的であるとするような取引であれば、どうなのでしょうか?

悪魔のささやきに乗っかってしまっている業者は、三笠フーズのみに止まらない。そんな可能性があることを臭わせている気がするのですが。そうであれば、どうするべきか?三笠フーズのトカゲのしっぽ切りでよいのだろうか。消費者側が、品質と安全性に正当な対価を払っているか?

3) ミニマムアクセス米・加工米・飼料米

ここに農林水産省の本年7月31日付けの「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」があります。平成20/21年需要見通しは、831万トンとなっています。(4ページ)今回の事故米はミニマムアクセス米で、5年前に収穫された古々米でした。ミニマムアクセス米について、12ページに記載があります。平成7年4月から平成20年3月までの13年間に865万トンが輸入されたのです。年平均66万トンが輸入され、国内産米の8%位になるようです。ところで、在庫129万トンですから、カビが生える事故米は保管中に出ると思います。

ミニマムアクセス米は、援助用として輸出されている量が一番多いようですが、加工用・飼料用として国内に流通する分もあるようです。これを食料用に販売したら、どうなるのでしょうか?

そもそも食の安全とは、何でしょうか?信頼できる生産者から供給を受けた食品が安全であるにつきると思います。しかし、一方で現在は、三笠フーズ事件のように網の目のような流通経路で多くの業者に販売され、加工食品の原料もその生産者は極めて多く、広く分布している。検査の態勢なんて言っても、全量検査は無理だし、抜き取りでもある程度の安全を確保するには、費用が莫大となり、今の倍の食料価格を消費者が受け入れる等しないと難しい気がします。

事故米となっていないミニマムアクセス米を加工用(食用)ではなく、ご飯用として売ったとして、食品衛生法で罰則に問うことは難しい気がするのですが。事故米ではないから0.01ppmの問題はクリアーしており、食品衛生法11条3項には違反しない気がします。(よく分かりませんが)

農家がつくった飼料米は、どうなのでしょう。国産米です。食品衛生法11条3項では問題は生じないと思います。ブランド米のように手間暇を掛けず、収穫量を上げることを目指すでしょうから、味は2の次です。しかし、米屋がこれを分からないようにブレンドしたら、どうなるでしょうか?

更には、飼料用に遺伝子組み換えで生産するとすれと、どうなるのでしょうか?

米国から多くの飼料を日本は輸入していますが、米国ではどの程度遺伝子組み換えを使っているのでしょうか?考えれば、食品衛生法11条3項も食品に対してであり、飼料に対してでは、ないのではと思います。

考えれば、考えるほど、頭がややこしくなってきました。

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2008年9月24日 (水)

野村のリーマン買収(その2)

たった1日で、言ったことと、起こったことが、見事にずれました。

日経9月24日 野村、欧州勢を追撃 リーマン部門買収で営業網一気に拡大

野村ホールディングス 発表 リーマン・ブラザーズの欧州・中東地域の継承

私の23日のブログで引用したReuterには”Lehman's European investment banking operations, which employ about 6,000 people・・・”とあるものの、野村の発表文は「本案件の対象となる地域・部門において約2,500名の社員が所属するが、・・」となっており、3,500人の差があるのですが、余計なお世話でしょうね?

これからを見ていきましょう。

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2008年9月23日 (火)

野村のリーマン買収

リーマンについては、9月15日にリーマンの連邦破産法11条申請は予想範囲内なんてことを書いたことから、野村のリーマン買収について書いてみます。日経の記事と野村ホールディングスのニュースリリースは次の通りです。

日経 9月23日 野村、米リーマンのアジア部門買収で合意 欧州は最終調整

9月22日 野村ホールディングス リーマン・ブラザーズのアジア・パシフィック地域部門の継承を発表

1) リーマンの資産

メーカーではないし、量販店のような店舗もないし、オフィスは賃借でよいわけで、資産はヒトであり、ヒトが有機的に結びついた組織が資産であります。従い、3,000人を超える雇用を継承は当然であり、むしろ時間がたって従業員が色々な会社に散らばってしまえば、価値がなくなってしまうのであります。

ヒトと密接に結びついてるITシステム(これも優れた運用ノウハウがあって生きるものですから)や内部統制・ガバナンスというか不正を防ぐ制度も会社の資産です。

2) 買収のメリット

買収の最大のメリットは自分で(自社で)開発する必要がないことです。既存品・既製品を買ってくればよいわけで、その上で自分に合うように必要な修正を付け加えればよいのです。自社開発とは格好はよいが、失敗の積み重ね後に、初めて成功する。偶然の成功は、実は成功ではなく、嵐に遭えば直ぐに沈没するものが、偶然嵐にあっていないから、成功しているように見えたりします。

果たして、リーマンのアジア・パシフィック地域部門が200億円の価値があるかについては、私もコメントできませんが、アジアの将来性、将来の経済規模やその金融マーケットの大きさを考えれば、大きな利益をもたらせてくれる可能性のあるマーケットであると思います。

3) 野村はヨーロッパにも手を出すか

日経には、「野村はリーマンの欧州地域での事業買収でも合意に向けて最終調整に入った。」とありますが、私は無理はしないであろうと思います。別の言葉で言えば、野村が買収する可能性は低いと思います。多分、ヨーロッパ勢だと思います。理由は、アジアを野村が買ったのと同じことがあてはまります。自分が優位性を持っているマーケットなら買収後のコントロールも可能であるが、弱い部門を買収したら、振り回される可能性があります。

ヒトが資産だと書きましたが、ヒトは条件が悪ければ簡単に他の働き口に出て行きます。リーマンに勤めているヒトは言わば勝ち組です。働いても常に転職を考えているヒトが多いと思います。価値ある知識・ノウハウ・情報は、他人には教えず(会社や上司には当然)自分自身に有利なように使います。そんな世界を切り盛りできなければ、リーマンは買えない。

ある意味、恐ろしい世界です。日本も、そのような世界に向かっていると思います。もし、そうでなければ、外国勢・黒船にやられるでしょうね。実は、野村は、それも分かった上で、リーマンを買ったのではと思います。だから、リスクも分かっている。リスクは自社がコントロールできる範囲に止めておかねばなりません。

なお、上記のことは、多くの場合にあてはまる気がします。私もよく考えてみます。なお、リーマンのヨーロッパ部門買収に関するReuterの記事を掲げておきます。まだ、よく分かりません。

Reuter Sep 23 Lehman Europe deal eyed as Paulson pushes bailout

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2008年9月22日 (月)

朝日新聞の公貧社会 企業節税村オランダ

朝日新聞が「公貧社会 企業節税村オランダに」とのタイトルで9月20日にオランダに設立した場合の外国子会社の法人税について書いていました。9月13日に個人所得税を書いたので、法人税に関しても書いてみます。

1) 法人税とは

その前に法人とは、法人株主も存在するが、究極までさかのぼれば最終は個人になるはずです。だから、法人税ゼロで、個人で全てを課税することも可能であるし、逆の例として国営企業以外を認めず、個人は所得税ゼロにして国営企業の配当で政府支出にあてることも可能なはずです。

もう一つ、現状において国内で完結できないということがあります。例えば外資100%の企業を考えた場合、日本の人民を搾取し、日本人に物を売っておきながら、税を払わないのはけしからんとの考えも存在し得ます。一方で、企業が配当を支払った際に株主に課税する配当の源泉徴収税もあるので、(もっとも源泉徴収税は税額控除の制度もあり、複雑になっていますが)一つの税のみで議論をするより、総合的なバランスで議論をしないと誤ってしまうと思います。

日本の法人税率は約40%と言われますが、これは法人税率30%、道府県民・市町村民税率5.2%、事業税率5.6%位です。(損金算入扱いとなる事業税が所得に対して9.6%の適用となる場合)実際は、資本金1億円以上の企業は外形標準課税が適用されるので、所得に対して7.2%になっていたり、地方自治体によっては標準税率より20%高い税率を条例で決めていたりして、少し複雑です。(東京都23区の場合は、道府県民・市町村民税が都民税となります。)

2) 妥当な法人税率

外資企業とは、会社法により設立された企業ですから、内国法人です。株主の国籍による差はありません。基本的に、日本人あるは日本企業が外国に子会社を設立しても同じことが言えるのであります。税をどのようにするかは、その国の主権に係わることで、日本であれば日本国民が、その決定権を持っています。例えば、消費税を上げずに法人税をあげろというのも一つの考えであります。

一方、経済活動は国境を越え、グローバル化していることから、日本単独で考えることが適切でなくなってきています。日本の法人税率が世界的に見て高い水準にあるから、これを下げるべきであるとの主張があります。

途上国が産業誘致のために、税率を下げていている場合もあります。計画経済から市場経済への移行国で、政策的に低い税率とせざるを得なかった場合もあります。あるいは、現在の日本の法人税は法人税が高いので余裕資金が少なく、R&Dに資金を回せないといった議論については、試験研究費の法人税特別控除(租税特別措置法42の4)のように、個別の対応が良いのかも知れません。

企業が魅力を感じるのは税のみにあらず。人材やマーケット、インフラ等も重要です。幅広い視野に立った観点が需要と考えます。いずれにせよ、時間を掛けて十分に議論し、国民が納得することが必要です。消費税増税との関係も重要と思います。

3) 二重課税問題

外国での所得には課税を免除する国外所得免除方式と外国での納税額については二重課税になることから一定の条件の下に二重課税を排除する二重課税排除方式の2つの方式があります。日本は米国と同じで二重課税排除方式です。フランスは国外所得免除方式であると思いました。

実務的には、相手国毎に異なる租税条約も存在し、さらにはA国への投資に対してB国、C国と経由することもあり得るので、極めて複雑です。だから、タックスプラニングが重要となり、そのためのコンサルタントのフィーは高いです。

例えば、オランダに子会社を作り、その子会社からEUにある事業会社に投資する場合を考えると、EU内は配当源泉税がかからないはずで、オランダでは国外所得は一定条件を満たすとゼロで、日本に配当しても、その配当に対する源泉税は5%のはずです。しかし、日本に配当をしてくると、その時に配当が所得となります。日本の税の方が高ければ外国で税が安くても差額を日本で納税するので、節税にはなりません。しかし、日本に配当を持ってこずに、そのオランダ子会社から再投資をすると有利になります。

ところで、これが理由で日本の税収が少なくなっているかというと、別に少なくなっていないはずです。企業にとっては、1円でも税が少なくなるなら、そちらを選ぶからです。すなわち法人税率を多少下げても有利な税率の国に資金を止めておくことから、現状と同じで、一方全体の税収は少なくなります。

産業誘致のために当初XX年は税率を下げているような場合もあり、これを有効とするために租税条約で特別な取り決めをしている場合もあるので、非常に複雑です。更には、税制は改正が常時行われており、細部は特に頻繁に改正されることもあります。

4) 移転価格

物が国境を越えて親子会社間で動けば、親子間の価格は勝手に決めることができるのであり、当然出てくる話です。法人は親と子の国籍が違うのですから、価格の付け方で、親の国の税額と子の国の税額異なってしまいますから。私は、経済摩擦でも何でもないと思っています。

5) 朝日新聞批判

「法人減税、社会への還元カギ」と書いてあるのですが、これは変と思います。税引後利益である企業の純利益は株主に属します。社会に貢献するのであれば、寄付金として既に費用として払った部分か、あるいは納税行為としての社会への貢献。それと、企業活動そのものが社会における活動であり、有用な活動であるからこそ、その活動から収益が得られ利益が生まれているはずです。

従業員に対しては、適正な報酬を払うのが義務であり、高度な労働力や、有能な人材確保と法人税率は関係ないはずです。

法人税が減税されれば、企業はその減税分を社会貢献する(orすべし)と考えるのは、おかしいと思います。市場経済においては、利潤を最大化する行為が社会発展に繋がるようなルール・メカニズムを作り出すことが重要と考えます。

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2008年9月19日 (金)

事故米についての真実

太田農相も、辞任を発表しましたが、こんな無責任辞任でよいのだろうかと思いました。

読売 9月19日 農水省ダブル辞任…「当然」「誰が事態収拾する」の声

1) アセタミドホスとアセタミプリドについて

一つ前のエントリーで、メタミドホス残留農薬基準が施行されたのが、平成18年5月からであり、今回問題となっている事故米は平成15年の輸入であり、輸入当時は事故米ではなく、その後平成18年の新残留農薬基準施行の結果、検査を実施し、事故米となったと書きました。

そこで、この残留農薬基準を調べてみると、食品安全委員会がWebで、その内容と共に、見解を述べていました。

メタミドホスの概要について

アセタミプリドの概要について

2) 三笠フーズが販売した事故米の危険性

食品安全委員会の基準を書き出すと次の通りです。

一日摂取許容量 急性参照用量
メタミドホス 0.0006mg/kg(体重)/日 0.003mg/kg(体重)/日
アセタミプリド 0.071mg/kg(体重)/日 0.1mg/kg(体重)/日

一日摂取許容量とは、この数値までであれば一生摂取を続けても問題がないと考えられる量であり、急性参照用量とは、この量を24時間またはそれより短時間に経口摂取しても、健康に悪影響が生じないと推定される量です。

そこで、三笠フーズが販売した事故米について評価します。

A) メタミドホス

食品安全委員会によれば、三笠フーズが販売した事故米のメタミドホス含有量は0.05ppm(ppm=百万分の1:part per million)であったとのこと故、事故米1kgには0.05mgのメタミドホスが含まれている。仮に体重100kgだとすれば、一日摂取許容量が0.06mgで、急性参照用量0.3mgとなるから、事故米換算では、それぞれ1.2kgと6kgになる。体重50kgの場合は、一日摂取許容量0.6kgで、急性参照用量3kgとなる。

ドンブリ飯1杯でも100g以下と思う。危険量の事故米を食べてしまうことは通常ではあり得ないと考える。現在は、(ご飯になる前の精米状態で)1食100gも食べなくなっているのではと思う。日本の米の消費量は年間7百万トン程度のはず。

B) アセタミプリド

食品安全委員会によれば、三笠フーズが販売した事故米のアセタミプリド含有量は0.03ppmとのことです。同じ計算をすると、事故米1kgには0.03mgのアセタミプリドが含まれているのである。一方、体重100kgとすれば、一日摂取許容量は7.1mgで、急性参照用量は10mgとなる。

完全OKとなりました。

3) 事件の真相

なお、農水省のこの9月16日付け中間発表によれば、三笠フーズが扱った事故米はメタミドホス2,669トン、アセタミプリド598トンです。

この事件の真相は何でしょうか?

発表を右から左に垂れ流し、自らは事件の真相を分析したり、理解できないバカなマスコミが危険を煽り、扇動し、世の中を不安に陥れているだけなのでしょうか?私は、今回自分で分析をして、マスコミの言うことをそのまま受け止めて信じることの恐ろしさをあらためて感じます。

安全性については、農水省の官僚も、三笠フーズも当然知っていたはず。まさか、つるんではいないと思いますが、非食料用とはなっているが、安全性に問題がない米であれば、それが食料用に転売されても、単純に農水省と三笠フーズの間の契約違反だけであり、この事件で刑事罰を問えるのかと疑問が出ます。

なお、今回の事件には、もう一つの要素として自民総裁選やその後の衆議院選挙が複雑に絡み合って、与党が官僚に真実の発表を押さえさせ、一方で、野党は政府の失策だとアピールする好材料として利用している。国民は(市民は、とすべきでしょうか)、利用されているだけで、税金がこんなことに無駄遣いされている。

そんなことを感じてしまいました。真実の追求は重要です。

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事故米穀の返送は正しいのか

太田農相は、18日の衆院農林水産委員会で陳謝したとの報道がありました。

読売 9月18日 農相「責任痛感」と衆院委で答弁、ジタバタ発言も「不適切」

衆議院TVで太田農相の発表・陳謝を聞きますと、8月22日と8月27日に福岡農政局食品表示110番に対して三笠フーズが工業用に限定した事故米穀を焼酎用に横流ししていると通報があった。これを受け、厚生労働省、自治体の保健所等の関係機関と協力して調査を開始し、三笠フーズ社長が9月4日に横流しの事実を認めたとのことです。当時の報道としては、以下でした。

読売 9月5日 基準5倍のメタミドホスも検出、「工業米」を食用転売

1) 米粉加工と着色での対応が何故できないのか

事故米穀と食料米穀は、見ただけでは分からず、検査をしなと分からない。

18日の委員会における町田農水省総合食料局長の説明では、国内におけるカドミウム汚染米は、農水省が米粉加工し、着色して流通させているのですから。

j事故米を米粉加工し、着色するとコストが高くなるからとの理由のようです。この理由こそ、コスト無視の考えで、食料に不正転用されれば、その問題解決の費用がはるかに高くなるのですから。

2) 事故米の用途

委員会での町田局長の答弁では、事故米の発生量は年間数千トン。合板用接着剤としての需要は年間15,000トンです。それでは、問題はあまりないと思える。飼料用あるいは肥料用として、問題はないのかどうか、分かりませんが、可能性はどうでしょうか?

3) メタミドホス汚染米

問題になっている事故米穀はメタミドホス汚染米が一番多いようですが、平成15年度に中国から輸入された。ところがメタミドホスの現在の基準は平成18年5月からであり、輸入時にはメタミドホスについての基準はなく、国内の残留農薬基準でも問題がなかった。(衆議院TVでは、初めから34分20秒頃からです。)

5年前だったら何も問題にならなかったとしたら、この騒ぎは何であろうかと思います。

4) 事故米穀の返送は正しいのか

正しいかも知れないです。しかし、騒ぎがあり、選挙があるから、無駄を承知での政治家の答弁である可能性も疑います。

「米粉加工し、着色するとコストが高くなる。」と言うのも、政治家が役人に対して予算削減のみを要求して、役人の言うことを聞かなくなったからと可能性はどうなのでしょうか。

根本的な部分が、よく分からない事件です。今見えているのは、表面だけで。18日の衆院農林水産委員会でも、ほんの少し見えたかなという感じです。

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2008年9月17日 (水)

保険会社AIGは証券会社とは異なりました

ついに米国連邦準備銀行(FRB: Federal Reserve Bank)はAIGへの融資を発表しました。リーマンとは異なりました。日経の記事と米国連邦準備銀行の発表です。

日経 9月17日 AIG、米政府の管理下に FRBが9兆円融資

FRB Press Release September 16, 2008

いや~米国ってすごいですね!と思いました。日本で言えば、日銀特融に相当するのでしょうか?簡単に「850億ドル融資しますよ」ですから。でも、条件も厳しいのです。

1) 金利: 3月LIBOR+8.5%p.a.

現在3月LIBORが2.8%p.a.位ですから融資金の利息は約10.3%p.a.です。一方、政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は、日経記事にあるように現行の年2.0%で据え置きです。落差が大きく、日本だったら、高利貸しと呼ばれるでしょうか?FRBの資金コストはゼロですから。米ドル札には、Federal Reserve Noteと書いてあるように、印刷すれば良いだけですから。

2) 返済期限2年

3) その他

担保は子会社の株式を含むAIG全財産。株主総会における米国連邦政府の株主としての投票権は79.9%であり、株主配当実施に対し拒否権を有する。

何故AIGについて、米国政府がここまで踏み込んだかですが、
・ 破綻した場合の影響が大きすぎる。
・ 現状において全貌が必ずしも見えていない。
というようなことと思います。例えば、Credit Default Swapと言う与信リスク保険を引き受けていたりして、その結果が本来機能すべき保険に影響がどの程度あるかが読めていないというような点です。

金融派生商品としてデリバティブ取引が生まれましたが、もともとデリバティブ取引は金融ではなくても、何であっても対象とできる性格を持っているのであり、天気を対象としても構わない。それからすれば、サブプライムだって、その一種と言えるわけで、表面だけでは分からない。必ずしも、悲観視だけする必要はないのですが。

この9月16日のあおぞら銀行のお知らせは、リーマンに対する債権が692億円あると述べていますが、担保と言っても不動産担保があるわけではなく、価格変動が激しいボラタリティーの高い金融商品が担保になっている可能性があると思います。いずれにせよ、様子見と思います。

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東証のアーバンについての決定

8月20日のブログアーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引を書きましたが、アーバンコーポレーションが行った6月26日付の発表について東証も次の発表を行いました。

東証からのニュース 改善報告書の徴求に関する東証の判断について -(株)アーバンコーポレイション-

同社が平成20年6月26日付にて行った開示(「2010年満期転換社債型新株予約権付社債の発行(第三者割当)のお知らせ」)は、一般の上場会社であれば、有価証券上場規程第502条第1項の規定に基づく、その経緯及び改善措置を記載した報告書の徴求事由に該当する不適正な開示であるものと判断」と記載あり、私と同じ意見ですが、「同社については、既に上場廃止(平成20年9月14日付)を決定しており、改善報告書は上場会社に改善を求める趣旨であることから、同報告書の提出は求めないものといたしましたので、お知らせいたします。」と記載あり、しっくりしません。

また、脚注には、有価証券上場規定509条は2008年7月7日からの施行であるから、遡及できないと記載されています。

509条は、この東証の2008年6月26日付発表 上場制度総合整備プログラム2007(第二次実施事項)に基づく業務規程等の一部改正についてにおいて発表され、7月7日より実施となっています。私が、8月20日のブログでも「上場会社でなければよいのかとの疑問も多少は残りますが」と書きました。7月7日に関係なく、上場会社であれば、自社の経営・事業内容について適切な情報開示を行うことが義務であるとの趣旨です。

金融証券取引法上の課徴金等が残っていますが、ある情報を隠していたのであり、虚偽記載のある発行開示書類を提出しての募集又は売出し(金商法172条)、虚偽記載のある有価証券報告書等の提出(金商法172の2条)、風説の流布等により相場を変動(金商法173条)などと言うには、少し違っていると感じます。それと、適時情報開示は取引所が真っ先に追求すべきであり、2008年7月7日からの施行で遡及できないとせずに、積極的に取引所として立ち振る舞うべきではないかと私は思います。

参考として、有価証券上場規定509条を続きを読むに入れました。

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2008年9月15日 (月)

リーマンの連邦破産法11条申請は予想範囲内

9月15日リーマン・ブラザーズは、連邦破産法11条の適用を裁判所に申請すると発表しました。同じ日、バンク・オブ・アメリカはメリルリンチの買収を発表しました。日経の記事と、Reuterの記事、そしてリーマンとメリルのプレスリリースを掲げておきます。

日経 9月15日 米リーマン、破産法適用申請へ バンカメはメリルを救済合併

Reuter Sep 15 Wall Street rocked by Lehman failure and Merrill sale

Lehman Brothers Press Release September 15 LEHMAN BROTHERS HOLDINGS INC. ANNOUNCES IT INTENDS TO FILE CHAPTER 11 BANKRUPTCY PETITION

Merrill Lynch Press Release September 15 Bank of America Buys Merrill Lynch, Creating Unique Financial Services Firm

米大手インベストメントバンクが、本当にあっさりと破産法Chapter 11を申請したり、売却合意が成立したり、米国ってすごいんだなと思います。

日本だったら、再建策についてどうのこうのと、政府が資金注入しないと、倒産すると脅かして、甘い汁を吸おうとする輩が存在するだけではなく、そんな変な意見をマスコミが支えたり、与党はそれを後押ししたりして。破産法Chapter 11の存在理由は、社会が合理的に損失を負担し、再建すべき企業活動については、再建するためです。

それは、日本における、会社更生法も民事再生法も全く同じです。政府が破綻処理することは、社会の合理的な負担ではなく、税金による負担であり、本来は弱者救済に向かうべきお金を、破綻する企業を助けるために使うのであれば、税金を特定の企業関係者に使うことになるからです。ほんの数日前から、どうもリーマンについては、破産法Chapter 11もありうるのではと私は思っていました。インベストメントバンクに税金投入では米国において国民の批判にさらされるだろうと思っていましたから。(考えれば、日本にも税金の無駄遣い批判がありますが、このような論理での批判は余り耳にしないような気がします。)

破産法Chapter 11と日本の会社更生法、民事再生法が、どのように異なるかは、私も細部まで解っていません。Chapte11の場合は、それまでの経営者が引き続き止まることが可能であり、民事再生法に近いような気がしますが、債権者を含んだ委員会が再建管理計画についてより大きな権限を持っていると理解します。

なお、リーマンについて、Reuterの記事は、Citigroup、Bank of New York Mellonそしてあおぞら銀行みずほが大口無担保債権者として名前があがっていますね。

9月9日のブログ資本主義と社会主義で、ファニーメイとフレディマックの米政府による資本注入と連邦住宅金融局(FHFA)による経営陣の交代を書きました。これら2社は、米国政府特殊法人であったし、住宅金融のプライムの部分(サブプライムではない優良部分)のセカンダリー部分をやっていましたから、Chapter11はそぐわない面がありました。

自動車ビッグ・スリーは、本来ならChapter11ですが、余りにも米国社会に対する影響が大きいことから、「資本主義と社会主義」と8月9日に書いた次第です。

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2008年9月13日 (土)

朝日新聞 これはちょっと酷すぎませんか?

ネットのAsahi.comには出ていないようですが、本日の朝日新聞朝刊の1面と3面に「税から逃れるサラリーマン」という特集が出ていました。

サラリーマンに対する税が不当に高くなっているとの主張と理解しますが、トンデモ論であり、大新聞の特集とは思えないことから、ブログで私の反論を書きます。

1) マンション投資で節税が可能か

可能かどうかと言えば、節税となる場合もあるが、増税になることもあり、更には不動産価格が下落して、大損する場合もある。投資は、自由。節税目的としては、リスクが大きすぎて勧められないと思います。

マンションの賃貸所得は不動産所得で、不動産所得は、事業所得、山林所得及び譲渡所得と同様に、赤字(損失)となることがあり、所得税法69条(損益通算)により他の黒字の所得金額を赤字分で低くすることができます。しかし、不動産所得の金額は総収入金額から必要経費を控除した金額です。必要経費とは、売上原価と販売費・一般管理費で減価償却費を除き債務の確定した金額です。

朝日新聞のケースを考えると、家賃収入が2400万円とのことで、仮に価格2千万円のマンション1戸が家賃10万円(年120万円)で賃貸可能とするなら、4億円の不動産投資をしていなければならい。鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造の建物の税法上の耐用年数は47年であり、年間償却額は850万円。投資したマンション戸数が20戸なら、管理費が全部で年間240万円。投資を全額の50%を借入金でまかなったなら、初年度は利子のみで利率年3%として年間600万円。都合差し引き310万円の黒字である。

朝日新聞は花火大会の旅費も必要経費と言っているが、所得税法45条(家事関連費等の必要経費不算入等)により必要経費とできない。また、子供2人への給与支払いが合法といっているが、所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)により必要経費とはできない。57条に例外として青色申告の場合の事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例があるが、所得税法施行令165条とも照らして考える必要がある。結論としては、朝日新聞には「手伝わせた」とあり、事業に専従する親族とは言えないと私は解釈します。

310万円の黒字と計算したが、20戸も賃貸していると、賃借人とのトラブル発生の可能性もある。保守費用も積み立て時ではなく、支出時(資本的支出であれば、支出後の償却)に発生し、不動産所得が本当に赤字なら、支出がもっと多いのであり、自分の給与をつぎ込んででも補填する必要がある。借入金の借入期間は償却期間47年より短いはずであり、キャッシュフローはこれより苦しいのである。

そんな苦労をして、不動産投資をしますか?そうであるなら、マンションはもっと売れています。しかし、現実には、マンション販売会社の破綻が相次いでいます。

2) 経営コンサルタントは儲かるか?

女性経営コンサルタント(38)のことが3面に書いてあります。現実のコンサルタントは仕事が不安定で、悪いことをしなければ安定した高収入は難しいと思います。収入はともかくとして、高級車の購入、自宅の費用、海外旅行なんて法人所得の損金にはできませんよ。

法人の所得の計算は個人の場合とほぼ同じで、所得の金額の計算は法人税法22条に定められています。法人の場合は、家事関連費がありません。法人が自らの収入・収益とする益金と法人が自己のために支出する損金とにより所得が決まります。すなわち、高級車の購入、自宅の費用、海外旅行については、取締役が支払うべき支出であり、会社がそのような処理をしたとしても法人が負担すべき損金ではなく、法人税法上は取締役に対して給与を支払い、取締役が自らの給与で支出したと扱います。そして、この給与は定期同額給与のように損金としては認められません。また、所得税も課されます。

税務署に見つからなければ構わないとやっちゃうことは可能です。しかし、見つかる可能性は十分あります。何故なら、税務申告に財務諸表を添付するし、疑いを持たれれば、税務検査にやってきて、挙げ句の果てには正規の税金プラス加算税等が課されます。

3) サラリーマンから個人事業主?

私なんか絶対損だろうと思うのですが。サラリーマンだから、被雇用者の権利が様々な法律で守られています。例えば、労災もそうですし、失業保険も、また健康保険や年金も有利になっています。組合経由での権利行使や、組合を作る自由も存在する。

個人に力があり、サラリーマンでいるよりは独立した方が、収入が増加し、待遇が良くなる場合もあります。しかし、それは力のある人にだけ通用し、多くの人は、個人事業主になると言えば、会社は低賃金で解雇も自由になると喜ぶでしょうね。また、力のある人だって、将来とも現在の状態が持続するか不明な部分があります。リスクを冒しても、個人事業主として独立するかは、個人の選択です。

4) 本当に必要なこと

朝日新聞は的外れな議論をしています。私に言わせれば、「税務署はそんなに甘くはないですよ!」です。もし、朝日の記述が事実なら、「税務署よ法を正しく執行せよ!」、「法の正しい執行は、公平で皆が幸せになる社会をつくることである。」であります。考えりゃ、税務署のコンプラになってしまいました。

しかし、コンプラ議論は、税務署より朝日新聞の方が、もっと重大なようです。コンプラを呼びかけるのではなく、法律違反を奨励しているのですから。

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レックスホールディング株式買い取り価格の東京高裁決定文

レックスホールディングのMBOに関連しての株式買い取り価格について、その買い取り価格を不公正であるとして裁判で戦っておられた少数株主の方の主張をほとんど認める決定(私は、そのように理解したのですが、未だ決定文を十分に読めていないので、間違っていたら、ごめんなさい)を9月12日に東京高裁が出しました。(東京地裁の2007年12月決定は会社側の主張を認めていました。)参考記事は、次の日経です。

日経 9月13日 レックスのMBO、株買い取り価格引き上げ 東京高裁

この判決文が、次のアドバンテッジ被害者牛角会ホームページからダウンロードをすることができます。(まだ裁判所Webには載っていないので、ダウンロード先の紹介です。)

アドバンテッジ被害者牛角会ホームページ

なお、昨年3月17日にMBO - Management Buy OutということでMBOや今回のレックスホールディングのMBOに関して、書いたことがありましたので、その関連です。

(追記)
会社法172条1項における裁判所による価格の決定であることから、決定という言葉が正しいので訂正しました。

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2008年9月12日 (金)

JR尼崎事故

兵庫県尼崎市で起こった2005年4月の乗客106人と運転士1人の死亡、562人の重軽傷を招いたJR西日本福知山線脱線事故について、兵庫県警が8日、JR西日本の山崎正夫社長(1999年から事故当時を含め現在も代表取締役社長)を含む歴代幹部9人と、死亡した運転士を業務上過失致死傷容疑で神戸地検に書類送検したとのニュースがありました。

読売 9月10日 福知山線脱線、JR西社長ら業過致死傷容疑で書類送検

衝撃的な事故であっただけに、このJR尼崎事故の教訓は何であるかを、航空・鉄道事故調査委員会の調査報告書から読み解いてみます。

航空・鉄道事故調査委員会の福知山線塚口駅~尼崎駅間 列車脱線事故の調査報告書及びその添付資料はこの調査委員会のサイトからダウンロードできます。

1) JR西日本が言っていることは不十分

JR西日本が本年8月4日、5日の被害者へ説明会で、配布した文書がここにあります。読んで感じたことは、(1) 乗務員の教育と管理を含む運転士の問題と(2) ATSの整備が遅れていた問題が前面に出すぎており、昨日の社会保険庁不祥事の矮小化と同様に、事故原因の矮小化がなされていると感じました。

事故調査報告書は本文だけ250ページもあり膨大ですが、まじめに読みました。

2) 事故の様子

事故当時の電車の速度をグラフに書いてみました。

Photo_7      

青の線が、事故列車の速度で、本来はピンクの線の速度で運転されるべきでありました。事故時間は9時18分54秒と推定されています。このグラフの左端が事故地点の手前1380mで、ここで運転士はアクセルに相当する力行ハンドルを離し、以後は惰行運転か、ブレーキを掛けるかでした。事故地点は、半径304mの右カーブを約2/3過ぎつつある地点でした。このカーブが始まるのは、事故地点の手前172mであり、カーブの制限速度は70km/hでした。それまでの制限速度が120km/hであったことから、70km/hに落としてカーブに進入するためには事故地点の約1000m手前でブレーキを作動させ始める必要があった。

事故列車の先頭車両は事故地点手前100m付近からカーブの内側車輪が浮き始めたと推定されます。上のグラフで、200m地点がカーブが始まる付近と考えてください。なお、赤線がカーブの部分とその転覆限界速度105km/hです。

運転士が本格的にブレーキを作動させ始めたのは、190m手前からで、3.6秒後には最大ブレーキとした。しかし、既に事故地点に60mまで迫っていた。

3) カーブ速度違反に関して

事故地点手前200mのカーブ開始地点に列車は116km/hで進入したと推定されています。これに関連することをあげると。

(1) この地点のカーブは1996年12月までは、半径600mであった。
大阪府、大阪市、兵庫県、尼崎市、JR西日本、関西電力等が出資する第三セクターの関西高速鉄道株式会社が大阪東西線を建設しJR西日本の電車が1997年3月に走ることになったので、連絡駅尼崎の連絡を良くするために、600mカーブを304mカーブへときついカーブに付け替えてしまったのです。

(2) レールのカント
鉄道線路のカーブはカーブの外レールが内レールより高くなっています。この高低差をカントと呼びます。事故地点のカントは97mm(約9%の傾き)で、304mカーブの場合は60km/hに相当します。70km/hに対しては、135mm必要であるが、60mmがJR西日本の許容範囲との規定あり、70km/hであれば許容範囲に入る。

(3) 116km/hでの横G
単純に計算すると0.35Gですが、カントに打ち消される部分があり、0.26Gとなります。これもグラフを書きました。

G

速度ゼロの時は、カントによりカーブの内側へのGが作用し、60km/hで打ち消されて横Gはゼロとなり、120km/hでは0.28Gとなります。事故報告書では、105km/hの速度を超えると脱線転覆と計算していることから、この速度を出した場合の横Gが0.2Gとなることから、グラフ上に赤線で示しました。

冒頭の事故列車の速度のグラフにも赤線で105km/hを引きましたが、カーブ部分のみが対象であり、カーブ部分のみで赤線を引いてあります。

4) 問題点

(1) カーブのスピード超過についての認識

速度超過して転覆するような事故は、経験とか一切なかったので、考えたことがなかった。過去に起きた曲線における速度超過による列車脱線事故は知らなかった。」とJR西日本の代表取締役鉄道本部長で鉄道主任技術者の人が調査委員会に対して述べています。(報告書172ページ)

実際に起こった事故として報告書には例えば1996年12月函館線での300mカーブにおけるJR貨物のコンテナ貨車20両全数の脱線脱線事故があげられています。117km/hで脱線したようですが、簡易計算の結果では最大積載量の貨物を積載した状態では97km/hですが、空車状態で157km/h と脱線速度が大きく異なります。その他、1974年鹿児島線事故では、カーブ内側への脱線であって、外側への転倒ではなかった。だから、主任技術者の認識には、そのような頭があったのかも知れません。

このあたり、もしかして、車両の性能が上がって高速でカーブを走れるようになった。性能が悪ければ、外側に転倒する前に、脱線して止まっていた。そんなことを思います。簡単な計算で、危険かどうか判断がつくにも拘わらず、思いこみが優先してしまったのだろうと思います。

事故地点のカーブの70km/hの制限速度の根拠は、300m以上350m未満のカーブが65km/hの制限で、これに5km/hを加算した70km/hが制限速度であったのです。従い、カーブが始まる事故地点200m手前までは制限速度120km/hで、そこで70km/hになる。(報告書97~101ページ)

だから、事故列車の運転士が速度違反をしたのはたった200mの距離だけだったのか?

JR西日本が事故当日に発表した転覆限界速度は133km/hと105km/hより28km/hも大きく、一方、調査委員会が行ったアンケート調査による運転士からの回答では60%以上が110km/hと答え、50%以上は120km/hと答えたことから、実際の転覆限界速度105km/hは正確に認識されていなかった(報告書194ページ)。会社における技術事項の全権限を保有しているに近い主任技術者すら、解っていなかったのだから、全社的に無茶苦茶デゴザリマシタ。

(2) 実現不可能な時刻表(ダイヤ)

列車の加速度、ブレーキ性能、制限速度、停車時間等を考慮して時刻表を作成し、そこには余裕代も当然盛り込むはずです。ところが、余裕代どころか、制限速度オーバーを常時強いる時刻表で列車が運行されていた。嘘!と言いたいのですが、本当!です。

コンピュータで計算する際に加速性能を事故車両よりもよい電車のデータを使用し、ブレーキ性能も高い性能をインプットして計算した。(報告書145ページ)さらに、線路の勾配も誤ったデータインプットがなされていた。次の表が時刻表で、右から2番目の宝塚9時3分45秒発の5418Mが問題の列車です。途中駅の停車時間は、中山寺15秒、川西池田20秒、伊丹15秒の合計50秒で、走行時間15分35秒の合計16分25秒で、尼崎着9時20分10秒の計画です。

Photo_8

もう一つ、この時刻表の左端の3016Mという列車ですが、問題の列車の1分30秒前に発車することになっています。列車が前にいる場合は、信号機が赤になるので、安全距離が確保され緑になるのを待つ必要がある。宝塚駅を出て551mの地点に踏切があり、この踏切遮断機作動時間も関係し、調査委員会が実測したところ、3016Mが出て、出発信号が緑になるのに平均93秒かかった。列車が出発するのは、運転士の判断ではなく、車掌が安全確認をして、運転士に指示をすることとなっています。問題の5418Mは常時遅延運転であったと思います。

事故前65日間のデータ分析では運行時間の遅れが平均23秒で、出発時間の遅れが平均101秒であった(調査報告書付図52と53)。合計すると平均124秒の遅れです。

時刻表の意味ないじゃんと思いますが、トンデモナイです。上の時刻表の終着駅を見てください。問題の列車は東西線に向かうものの、他の列車は東海道線。実は、尼崎駅は、東海道線、福知山線、東西線が交わって、しかも互いに相互乗り入れをしていたトンデモナイ駅です。事故現場のカーブを304mに作り替えたのは、東西線開通を機会に同じホームで同じ方向にする赤坂見附駅状態にしようとしたのです。ところが、そればかりか、銀座線と丸ノ内線が、混じり合って、銀座線の池袋行きや丸ノ内線の上野行きを作ったばかりか、さらにもう一本線路が多いからゴチャゴチャです。

結果、列車の遅れは、それぞれのダイヤ混乱を引き起こすことになるから、運転士にプレッシャーがかかっただけだと思います。普通にしていても、守れないダイヤ。従い、速度違反は日常のことであったと私は想像します。(もしかしたら今も)

では、運転士の運転マニュアルはと言うと、あいまいでした。運転士は京橋電車区の所属であったが、基準運転図表がマニュアルに相当し、極めて単純(付図42)であるばかりではなく、私には最高速度100km/hと読め、これでは使い物にならないと思います。大阪支社の輸送課長は、「電車区では発生した事故への対応等が優先され、基準運転図表等の作成作業をする余力がなかった」と事故調査委員会に答えています。(60ページ)

(3) ATS(Auto Train Stop)

事故が発生した当時、マスコミはJR西日本のATS設置の遅れが、事故の原因であるように報道し、今もJR西日本は、それを言い逃れの材料にしているように思えるのです。実は、事故現場のカーブに設置されていなかったが、事故を起こした列車にはATSが設置されていたのです。そして、東西線にも設置されていた。設定速度が間違っていたから、ブレーキが低い速度で作動していたのです。多分、これも列車遅延の一因であったと私は思うのですが。なお、設定速度の間違いについては、JR西日本は誰一人として問題視していなかったのです。もしかしたら、認識すらしていなかったり、自動ブレーキを掛けるATSを知らない人達がほとんどだった可能性もあるからあいた口がふさがらない状態です。

5) 真の事故原因

今まで読み進んでいただいた方は、運転士個人の責任することは、JR西日本が余りにも無責任すぎると思われるのではないでしょうか?ATSについても、それ以前の問題がありすぎると思います。

本来であれば、運転士から問題点の指摘が上がってくるべきであった。そのような会社の社風にしなければならない。何故なら、運転士・車掌と整備員が現場の働き手であり、働き手の意見や感覚を重視しない会社はつぶれます。国鉄時代はつぶれなかった。しかし、分割民営化されても実は公共交通機関だからつぶれません。国鉄生え抜きの人が社長になり、民営化したといってお飾りの社外役員を迎えている。

民営化してJR西日本は、国鉄よりも良くはなっていない。国労、動労をつぶせた。結果、運転士、車掌、整備士は会社の奴隷にすることができた。事故報告書を読むと、そんなストーリーもあり得るのではないかと思うような気分です。事故者に対する再教育(日勤教育)とは何であったのでしょうか?私なら、マニュアル作りをさせます。マニュアルは働く人が自分の仕事のために作成して、最もよいマニュアルが作れます。そんなマニュアルがあれば、東西線は片町線とのみ乗り入れ。福知山線は大阪駅でストップ。無理して事故を起こしても、迷惑を掛けるだけ。そんな人としての対応が取れたかも知れないと思います。民営化して、大阪府や関西財界の雑音を聞かざるを得なかくなったのかな。

なお、民営化には無駄な新規路線投資を抑え、人事政策、企業経営その他合理的に推進する方法であり、賛成です。反対なのは、腐った民営化をした経営者です。一刻も早く退陣し、有能な人達に譲るべきです。なお、JR西日本会長は住電顧問倉内氏(72)、山崎社長は国鉄生え抜き65歳です。事故について言えば、ご遺族の方に最大の金銭的償いをだすことと思います。それしかできないので。そして、その相手には、この運転士も含めるべきであろうと思います。JR西日本が発表した転覆限界速度133km/hより遅い116km/hでの進入でした。

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2008年9月10日 (水)

社会保険庁不祥事の矮小化は好きではありません

毎日の9月10日社説は次でした。

毎日 9月10日 社説:厚生年金改ざん 「組織ぐるみ」の実態解明を

9月5日のブログ信頼できる年金と政府歳出削減の両立で、歳入庁による一元管理を書きましたが、制度欠陥の指摘をせずに、社保庁に原因の改善のみを訴えても、有効ではないと考えます。ちなみに、厚生年金の記録改ざんに社会保険事務所職員が関与していたという調査結果の政府発表に関して読売も次の解説記事を載せていました。少しは踏み出しているかも知れませんが、大差はないように思います。

読売 9月10日 [解説]厚生年金記録改ざん 社保庁ぐるみ疑惑も 政府、被害回復に責任

1) 日本の厚生年金の制度欠陥

最大の制度欠陥は、社会保険庁が保険料を徴収する仕組みであると思います。厚生年金保険法82条2項に「事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。」となっており、保険料は事業主(雇用者)が納付義務を負っています。徴収義務を負っているのが誰か、書かれていないのではと思います。最も、滞納の場合のみを規定すればよいので、厚生年金保険法86条1項に「保険料その他・・・の規定による徴収金を滞納する者があるときは、社会保険庁長官は、期限を指定して、これを督促しなければならない。」とあり、強制執行についても89条に「保険料その他この法律の規定による徴収金は、この法律に別段の規定があるものを除き、国税徴収の例により徴収する。」とあります。

保険料は、給与金額(厳密には標準報酬月額)に一定割合(現在は15.35%)を掛けた比例で決まります。従って、事業主が不正をした場合に、どのように防ぐか。逆に言えば、善意に余りにも依存しすぎではないかと思うのです。

年金記録改ざんが社保庁職員が知らないうちに、事業者から、そのような自分の給与金額を減らした虚偽の申請が出されていれば、どうなるのでしょう?しかも、自分の給与明細には実金額で計算した保険料が差し引かれていたら。頭に来ますよ。

あり得ます。社会保険庁が、個人に問い合わせをして、調査する制度ではないからです。せめて、年1回社会保険庁から保険料払込明細が、全員に送付される。それだけでも多少の改善になると思います。

2) 強制調査・強制執行

厚生年金保険法89条の国税徴収の例とは、国税徴収法に準じてとの意味です。いずれにせよ、納付期限前の徴収はあり得ず、従い担保の概念は馴染みません。税については、裁判所の執行命令なしに、一定の手続きで税務署は強制執行が可能です。滞納処分や強制執行もそうですが質問・調査についても、不正をしていないのに、されることを望みません。でも、社会正義を守るためなら、どこか一つに限って欲しいと思うのが普通と考えます。

会社を含め雇用主は、会計帳簿を保管する義務を有し、法人税と勤務者の給与・ボーナスの支払いに関して税務署に対して申告を行います。また、財務諸表も提出するのであり、厚生年金に関する全部のデータは税務署にあります。一元管理して、効率的にし、経費を安くすれば、年金の受取額を増えるでしょう。不審な場合は、調査をしてください。それが、国民(国民というと厚生年金を支払っている外人を含まないみたいで嫌ですが)を守ることになりますから。

最終的には国民背番号制がよいと思うものの、その実効性を高めるには、社会保険と地方税の徴収一元化もしなければいけない。可能な所からでも手を付けて欲しいと思います。

三笠フーズによる工業用の事故米の食用転用も、そんな事故米が手にはいるなら、誘惑に駆られた人も、もしかしたら多いのではと思います。犯罪を誘発する制度を作ってはいけないと思います。

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2008年9月 9日 (火)

資本主義と社会主義

古くさいエントリータイトルを付けましたが、最も新しい話題として考えることができます。

1) 米連邦住宅抵当公社の救済

ニュースとしては、日経を参照下さい。

日経 9月8日 米住宅公社、資産を圧縮 優先株20億ドルを政府が近く取得

20億ドルの情報源は不明で、このReuterの記事のReuter Sep 8 U.S. mortgage bailout faces tough deadline to end crisisは、次のように最大1千億米ドルとも書いてあり、そうなると10兆円になります。

So as part of the plan, the Treasury took $1 billion of preferred senior stock in each company to boost their capital but its equity stake could reach as much as $100 billion in each and will be senior to both existing preferred and common shares.

なお、9月7日に発表を行ったのは、連邦住宅金融局(FHFA - Federal Housing Financing Agency)であり、その発表はここにあり、7ページに”Third, as the conservator, FHFA will assume the power of the Board and management.”と記載あり、FHFAが米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の経営を肩代わりします。

2) ファニーメイとフレディマック

日経は、公社と書いています。但し、日本流の公社ではなく、投資家が出資・保有する上場会社です。参考にチャートを掲げますが、当然のこととして9月8日に株価は大暴落で、1ドル以下になりました。

Fnm0809

Fre0809

何故上場会社を公社と呼ぶかですが、Government-Sponsored Enterprise (GSE)とされているからです。このSponsoredの意味は、保有ではなく、連邦法により設立された特殊法人との意味のようです。Wikiの説明はここにあります。また、ファニーメイのAnnual Reportで、説明が書かれた箇所を続きを読むに入れておきました。

日本の考え方では、公社、公団があり、それ以外に特殊法人として○○基金などという名称の法人があったり、独立行政法人というのがあったりで、地方自治体と民間が出資している第3セクターなる株式会社があったりしますが、米国GSEというのは、面白い考え方の仕組みだと思います。

3) 米国的社会主義

実は、一旦ことあれば政府が介入する可能性がある会社を特殊法人として、設立するやり方は米国的社会主義なのかなと思いました。

処で、次のReuterの「米国ビッグスリー自動車メーカが500億米ドル(5兆円)の連邦政府からの低金利融資を求めている。」との記事です。

Reuter Sep 8 Auto giants face tough road to $50 billion in aid

研究開発のためと言っても、実は赤字補填ではないのかと疑うのですが。メーカが、政府低利融資って、訳が分からなくなります。オバマとマケインによる大統領選を控えて、票を目指す中で、どのような結果になるか、私もよく分かりません。

本日のエントリータイトル「資本主義と社会主義」って、今の米国を見ていると、そんな単純なものではないと思いました。

続きを読む "資本主義と社会主義"

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価格下降にどう立ち向かうか

こんなエントリー名を付けると間違っていると思われるかもしれません。街角の景気感覚は、次の日経の記事に代表されていると思いますから。

日経 9月8日 8月の街角景気、指数5カ月連続低下 原油高が企業や家計圧迫

原油価格もずいぶん安くなりました。1バレル100米ドルになってきましたから、まもなくガソリンスタンドの店頭価格も158円になる計算です。(米ドル為替108円の計算です。)8月11日のブログの原油価格のチャートを9月3日まで伸ばしました。

Wticrude20080908

原油以外に食料の値上がりが盛んに言われておりますが、こちらも少し落ち着いてきました。例えば、このInternational Grain CouncilのWebのチャートをご覧になってみて下さい。一時の最高値は終わったと思います。

それ以外の商品については、この日経 9月6日 資源運搬船、運賃急落 5月最高値の半分とあるように、ばら積船(Bulk Carrier)のチャーター料が下がっています。次のBaltic Exchange Dry Indexのチャートは、このInvestment Tools.comにあります。

Balticexchange0809

5663でも2006年1月頃と比べると倍以上ではありますが、日経が報じるように今年5月と比べると半分になりました。

ばら積船とは、袋にも入っていないし、梱包もされていない貨物を運ぶ船で対象は穀物や肥料、石炭が主体です。鉄鉱石を運ぶ場合もあると思いますが、鉄鉱石は比重が大きいので、日本への輸入の場合は、鉱石運搬船が主体と思います。ばら積船は、いずれにせよ、原料の海上輸送だと言えます。従い、運賃が下がっていることは、輸送量が減少していることを意味し(新造船の増加も同じ傾向ですが)、世界全体の景気が少し後退しているのではないかと思います。

例えば、中国のオリンピック後の景気後退と言うべきか、むしろ建築ラッシュの終了により需要が減少する。日本への影響は、米国サブプライムより大きい可能性もあると思います。鉄鋼の需要が減少する。アジア新興国にとっても、中国は大きな貿易相手です。だから、アジア同時不況に入ったりして。

景気対策と言って、目先のことばかり、足下のことばかり、しゃかりきになっています。せめて数ヶ月、あるいは半年、1年ぐらい先を考えて計画しないと失敗になると私は思います。政府の景気対策だけではなく、企業の経営についても当てはまると思います。

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2008年9月 7日 (日)

パキスタン大統領選挙終了

パキスタンの大統領に故ブット元首相の夫であったアシフ・アリ・ザルダリ共同総裁(53)が有効投票数の約7割を獲得し圧勝、当選したとのニュースがありました。

共同ニュース 9月7日 新大統領にザルダリ氏 ブット氏の夫、パキスタン

共同の記事のように「ザルダリ氏は当選後に演説し「独裁から民主主義を取り戻すという妻の夢を達成できた」と述べた。」のでしょうが、そう楽観的に考えられないと言うのが私の感想です。

次のロイターのザルダリ氏の大統領選勝利報道の最後の方ですが、"Mr. Ten Percent"という単語が現れます。

Reuter Sep 6 Bhutto's widower goes from prison to presidency

妻が首相であったときの公共事業において10%の賄賂を常に要求した男という意味です。勿論ザルダリ氏は否定しています。しかし、噂になっても不自然ではない状況だったとは言えます。パキスタンは、ロイターの文章を引用すると”大地主と貧民と欧米留学エリートとその他の人々”(the feudal class and the poor and the Westernized elite and the rest)の国と私も感じます。人口比率では、勿論貧民がほとんど。だから、イスラムの信仰に厚く、米国流儀には反発し、むしろイスラム原理主義にシンパシーを感じる人がいると思います。

もう一つ、パキスタン大統領選ザルダリ氏勝利に関連して、パキスタンからブログメッセージを発信しておられるパキスタン在住30年のオバハンのオバハンからの気まぐれブログが面白いです。

9月6日 ザルダリ大統領

9月3日 ブット元首相の夫、ザルダリが大統領…

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2008年9月 5日 (金)

信頼できる年金と政府歳出削減の両立

本日は、他のブログや記事の引用をさせていただきます。次のNB Onlineの記事です。

NB Online 9月5日 次期首相のITの“情識”に期待 国民総背番号制の導入決断を

ITに最も乗り遅れている分野が、政府の個人に対する行政サービスの分野と思います。政府が、個人情報を管理することについて、懸念される方も多いと思います。しかし、現実を見ないでの議論はすべきではないと考えます。合理的なITとなっていなかった厚生年金は1人1番号で管理されていないことがあり、結局その不利益は被保険者と国民の負担となっています。年金特別便だと言って、なぜ多大のコストを税金や保険料と年金で負担しなければならないのでしょう。

(IRS)歳入庁により、所得税、法人税等の国税は勿論のこと、都道府県民税や市町村民税、国民年金、厚生年金、健康保険等一切の手続きが一元化すれば、(徴収側、納付側双方の)経費も安くなるし、(役所と納付者の双方の)不正も働きにくくなる。現実の話として、消費税は税務署が単一窓口として機能しています。多くの方は、消費税を5%と思っておられるかもしれません。しかし、実は消費税4%と、その25%である1%の地方消費税があり、地方消費税を含め、税務署に申告書を提出し、税務署に納付します。その上で、政府が都道府県に地方消費税分を分配し、都道府県は市町村の取り分を再度分配します。ところが、法人住民税は都道府県と市町村の双方に申告書を提出し、それぞれに納付する。

日本の制度は訳が分からない。ITがなかった時代において合理的であっても、現在においても合理的とは言えないことがある。2003年5月30日に行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律が公布されました。個人情報の保護に関する法律と同時でした。個人情報の保護に関する法律は民間が個人情報を取扱う場合の保護であり、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律は、その法律名の通り、行政機関が保有する個人情報についてであります。

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律も公布から5年以上を経過し、施行からも3年以上を経過しています。法律文が完璧であるかの議論はさておき、国民総背番号制を早く導入して、政府支出を抑え、国民に対する行政サービスを高めて欲しいと思います。

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密約

最近私のブログの中に検索フレーズランキングが出ています。右の最近の記事、バックナンバーの下です。1位は、「銚子市立総合病院」ですが、私自身驚いてるのが、6位の「蓮見喜久子」で、1年以上前の2007年7月18日の外交交渉 西山事件のアクセスを最近頂いております。

本日の朝日新聞の社説が沖縄密約―政府は文書を公開せよでした。

密約とは、秘密にした約束。秘密とは、当事者のみの約束であり、他には一切のディスクローズをしないことです。従い、個人の間では、特に何でもないのです。企業でも、そんなことは沢山あるし、会社間で機密保持協定を締結して何かをすることもあります。但し、企業の場合は、その実施・実行に関連した人達には、機密にできません。積極的に機密保持の内容を理解して実施・実行する必要があります。

しかし、機密にすることにより他の関係者や当事者に誤解を与える結果になる事項は、そもそも機密の対象としてはならないはずです。例えば、製品に欠陥があって、代金を払ってもらえない。しかし、念書を出して、相手に融資をし、その金で売掛金を回収した。違法ではないですね。財務諸表にも、適正に表示され、情報開示されているなら、問題はないのでしょうね。但し、この場合は、密約ではありません。

政府の場合は、企業の株主に相当するのは国民であります。国民に対してディスクロージャーが適正になされているかは、常にチェックする必要があると思います。但し、情報の非対称性が極めて大きいのも事実であり、国民の政府に対するディスクロージャーのチェックと言っても現実には難しいなあと思います。

そこで、上の朝日新聞の社説ですが、「自民党政府が密約を認めないなら、民主党は、政権交代を通じて歴代政権のうそを暴くと国民に公約してはどうか。」と書いています。そうだな。確かな野党も必要だろうが、政権の交代というのも、適正な政府のディスクロージャーを推進するには、良いだろうなと思いました。政権交代してもディスクロージャーが進まないなら、そんな党はいらないよ。

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選挙の季節

9月3日に米国副大統領の共和党候補としての受諾演説を党大会でアラスカ州知事サラ・ペイリン氏(Sarah Palin )が行い、本日4日にジョン・マケイン上院議員が大統領候補としての受諾園税津を4日に行いました。米国は、完全に大統領選挙の季節に入ったと思いました。

日本も、福田氏の後の総裁選びを自民党は、22日に実施するとのことです。日本も、これから選挙の季節に入っていくのだなと思います。多分、衆議院選も近いだろうと。

自民党総裁選の最有力候補は麻生氏のようですが、この9月5日のヤメ蚊さんのブログを読むと、麻生氏の部落差別発言を書かれています。その『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』という発言は、魚住昭氏の著書「野中広務 差別と権力」からの引用と書いておられるし、魚住昭氏も直接その発言あった会合に出席されていたわけではないのですが。

本当であるなら、問題ある発言だなと思ったものですから。

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2008年9月 4日 (木)

経済成長と財政改革

NB-Onlineが実施した読者1万人アンケートの結果として次の首相への期待は「経済成長」と「財政改革」であったとのことです。

NB Online 9月3日 国民の要望は経済成長と財政改革の“二兎”

1) 日本景気の現状

現状をよく反映したアンケート結果と思います。8月14日エントリーの景気対策を求めるなかに、次のグラフを入れましたが、この先が不安になります。

Gdpjapan20088

それと次の雇用者報酬(実質報酬、季節調整済)のグラフは、2008年第2四半期はついに前年同期比マイナス0.1%になったことを示しています。

Gdp200808analys2

個人に対する分配を上げないと景気の先行きは暗いと思います。

2) 定額減税

公明党が掲げている定額減税が今年度で実施されることになると思います。当然、個人消費を増加させる方向であり、景気対策にもなると思います。但し、減税だけで済むほど、政府の財政事情は甘くはないようです。

3) 借金大国日本

こちらに、財務省作成の一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移があります。税収は、平成2年(1990年)の60.1兆円が過去最大で、平成20年度予算で税収が53.6兆円。2011年度のプライマリーバランスをゼロにするとの話がありますが、プライマリーバランスのゼロとは国債発行額と国債償還額をゼロにするのであり、国債の利払いは含まれていません。従い、国債を新たに発行して利払をしていくのであり、国債発行残高は増加を続けるのです。だから、会社で考えると、有利子負債が増大している状態で、もし売上と利益が、それ以上に伸びてないと不健全な状態です。

ここに財務省作成の公債残高の推移 があります。平成20年度末553兆円は、GDPが514兆円ですから107.5%です。平成5年(1995年)は、GDP496兆円に対して公債残高172兆円で35%と健全でした。他国との比較として財務省のWebの債務残高の国際比較(対GDP比)ここにあります。日本が借金大国で、イタリアも借金が多いが現時点では日本より少なく、カナダなんかは借金を減らしています。住むなら、当然借金の少ない国に住みたいと思います。

なお、債務残高の国際比較(対GDP比)は日本が181.6%と私の計算より大きいのですが、理由は181.6%がOECD/エコノミック・アウトルックによることと国債以外の債務が入っていることによると思います。ちなみに財務省が2008年6月末現在の残高として発表している債務残高はこちらで、848億円です。

4) 国民負担率

借金の話で嫌になりましたが、国民負担率の話をします。国民負担率とは、税プラス社会補償負担の国民所得(GNI)に対する割合です。税は法人税等を含めた全ての税であり、税に加えて社会補償負担である健康保険や年金の負担を含めて負担率を計算したのが国民負担率です。なお、GNIがGDPと、どう違うかというと、外国での稼ぎがGNIには入っており、逆に日本で働く外国人の本国送金や外国からの投資に対する本国への金利や配当金が差し引かれていると考えてください。

財務省のグラフはここにありますが、私もグラフを作ってみました。

0809

潜在的国民負担率と書いたのが、「国税+地方税+社会保障負担」に更に「財政赤字」を含んだ率であり、財務省のグラフの「財政赤字を含む国民負担率」と同じです。国債を発行したならば、名目経済成長率が国債の利子率と同じとしても、その元本償還は将来の負担になります。従い、赤字国債の発行は、税を払ったことと似通っているのです。このあたり異論があると思いますが、世界中の国を見渡して、こんなに巨額の赤字放漫経営の政府はないのであり、放漫経営のツケがそのうち回ってくるだろうなと私は心配してしまうのですが。

5) 国民負担率の国際比較

財務省のWebを利用します。ここに日本、米国、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの6国比較が、ここにOECD28国比較があります。米国は、医療にしても民間医療保険の割合が大きいことと、政府よりもボランティア的な組織による社会保障を目指す面があるので、国民負担率は低く、OECD28国中で26番目です。日本は、23番目で米国と余り変わりません。高いのは、ヨーロッパ諸国で、デンマークの73.7%はすごいものです。

政府の制度になんか頼らないなら、国民負担率は低い方がよいのでしょう。戦前の日本がそうです。歳取った親を育てるのが長男の努めだとして、政府は何もしない。今や日本は、核家族を通り越して、個人ベースの社会に入って行っていると私は思います。負け犬なんて言葉は、もはや昔。離婚時の厚生年金の分割は、あたりまえ。やはり、社会の変化に社会保障制度も対応して行かなくてはならない。社会保障制度の維持や発展のためには、国民が必要な負担をして行かなくてはならない。逆に、それができなければ、破綻であり、惨めなことになると思います。

デンマークの国民負担率は世界一高いと書いたのですが、この8月29日のNB Online-Business Week デンマーク、「世界一の幸福国」に認定 経済力と社会福祉の適正なバランスが確立しているとの評価によれば、デンマークは世界一の幸福国です。ここに、この記事からリンクが繋がっている世界の10大幸福国のスライドショーがあります。試しに見てみると面白いです。

例えば、自然が美しいというのも幸福国のバロメータの一つだと思います。自然をつぶして、開発して、赤字国債を発行してというのは、夢がないどころか、負の遺産を作っているだけの気がします。せめて日本を幸福国に少しだけでも近づけたい。そう努力をしたい。こんな風に考えると、定額減税なんて小さすぎて、もし、将来その分の税金が増えるなら、ありがたくもない話になります。

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2008年9月 2日 (火)

福田総理の突然の辞任

なぜ福田氏は突然総理辞任を宣言したのか、昨日の福田氏の説明は私にとって納得できるものではなかった。こんな時、海外の報道を読むとバイアスがかかっていないから、ストレートで面白いものです。例えば、

New York Times September 2, 2008 In Japan, a Leadership Vacuum

TOKYO — Prime Minister Yasuo Fukuda’s abrupt resignation, the second by a Japanese premier in under a year, underscores the chronic leadership vacuum plaguing the world’s second-largest economy, even as it threatens to slip into recession.

Washington Post September 2, 2008 Japan's Premier Resigns Position After 11 Months

MANILA, Sept. 1 -- Japanese Prime Minister Yasuo Fukuda, after less than a year of listless leadership over a sour economy, said Monday that he was resigning to prevent a "political vacuum" that could further weaken Japan's government.

Wall Street Journal September 2, 2008 Another Japanese Leader Quits as Recession Looms

TOKYO -- Prime Minister Yasuo Fukuda abruptly resigned Monday less than a year after taking office, prolonging a period of political deadlock as the world's second-largest economy flirts with recession.

BBC 1 September 2008 Japan PM in surprise resignation

Japan's Prime Minister Yasuo Fukuda has announced his resignation during a news conference at his official residence.

なぜ福田氏は、辞任をしたのか、今言えない事情がないとするなら、リーダーシップを持ち得なかった人と評価せざるを得ないのだろう。ガソリン特別税にしても、早い時期に一般財源化を持ち出していれば、自民党の内部からの反発を受けても、民主党の一部は造反して賛成してくれたかも知れない。支持をした国民も、いたはずだと思う。

自民党内の勢力に気を使いすぎたから?でも、首相になったのだから、党の勢力に振り回されるより、公務員の長として、国民のために働いて欲しかった。

言えない事情があるとすれば、何であろうか?まさか党内や、連立相手の公明党からもいじめられ嫌になったと言うことではないと思うし。法案が通らないのは就任したときから分かっているし。解散をしたくないのであれば「俺の首を切れと言って横になってでも、押し通せば良いのだし。」

もしあるとすれば、密約ですか?ならば、誰とでしょう?自民・民主・国民新党をごちゃ混ぜにして仕切り直す再編が、あり得るかも知れないと思います。それを見越しての辞任は考えすぎでしょうか?

いずれにせよ、自己の利益ではなく、国民のためを思って活動・行動して欲しいと思います。その様な政治家を私は支持します。福田氏の辞任について、現状のままであれば、この民主党ニュースにある「1カ月前の内閣改造は何だったのか、12日の国会召集を決定したばかりであるなかでの辞意表明は何なのか、「あまりにも国会軽視、国民無視の手法に強い憤りを禁じえない」」という鳩山由紀夫氏の批判が正当に思えます。

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