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2008年9月 4日 (木)

経済成長と財政改革

NB-Onlineが実施した読者1万人アンケートの結果として次の首相への期待は「経済成長」と「財政改革」であったとのことです。

NB Online 9月3日 国民の要望は経済成長と財政改革の“二兎”

1) 日本景気の現状

現状をよく反映したアンケート結果と思います。8月14日エントリーの景気対策を求めるなかに、次のグラフを入れましたが、この先が不安になります。

Gdpjapan20088

それと次の雇用者報酬(実質報酬、季節調整済)のグラフは、2008年第2四半期はついに前年同期比マイナス0.1%になったことを示しています。

Gdp200808analys2

個人に対する分配を上げないと景気の先行きは暗いと思います。

2) 定額減税

公明党が掲げている定額減税が今年度で実施されることになると思います。当然、個人消費を増加させる方向であり、景気対策にもなると思います。但し、減税だけで済むほど、政府の財政事情は甘くはないようです。

3) 借金大国日本

こちらに、財務省作成の一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移があります。税収は、平成2年(1990年)の60.1兆円が過去最大で、平成20年度予算で税収が53.6兆円。2011年度のプライマリーバランスをゼロにするとの話がありますが、プライマリーバランスのゼロとは国債発行額と国債償還額をゼロにするのであり、国債の利払いは含まれていません。従い、国債を新たに発行して利払をしていくのであり、国債発行残高は増加を続けるのです。だから、会社で考えると、有利子負債が増大している状態で、もし売上と利益が、それ以上に伸びてないと不健全な状態です。

ここに財務省作成の公債残高の推移 があります。平成20年度末553兆円は、GDPが514兆円ですから107.5%です。平成5年(1995年)は、GDP496兆円に対して公債残高172兆円で35%と健全でした。他国との比較として財務省のWebの債務残高の国際比較(対GDP比)ここにあります。日本が借金大国で、イタリアも借金が多いが現時点では日本より少なく、カナダなんかは借金を減らしています。住むなら、当然借金の少ない国に住みたいと思います。

なお、債務残高の国際比較(対GDP比)は日本が181.6%と私の計算より大きいのですが、理由は181.6%がOECD/エコノミック・アウトルックによることと国債以外の債務が入っていることによると思います。ちなみに財務省が2008年6月末現在の残高として発表している債務残高はこちらで、848億円です。

4) 国民負担率

借金の話で嫌になりましたが、国民負担率の話をします。国民負担率とは、税プラス社会補償負担の国民所得(GNI)に対する割合です。税は法人税等を含めた全ての税であり、税に加えて社会補償負担である健康保険や年金の負担を含めて負担率を計算したのが国民負担率です。なお、GNIがGDPと、どう違うかというと、外国での稼ぎがGNIには入っており、逆に日本で働く外国人の本国送金や外国からの投資に対する本国への金利や配当金が差し引かれていると考えてください。

財務省のグラフはここにありますが、私もグラフを作ってみました。

0809

潜在的国民負担率と書いたのが、「国税+地方税+社会保障負担」に更に「財政赤字」を含んだ率であり、財務省のグラフの「財政赤字を含む国民負担率」と同じです。国債を発行したならば、名目経済成長率が国債の利子率と同じとしても、その元本償還は将来の負担になります。従い、赤字国債の発行は、税を払ったことと似通っているのです。このあたり異論があると思いますが、世界中の国を見渡して、こんなに巨額の赤字放漫経営の政府はないのであり、放漫経営のツケがそのうち回ってくるだろうなと私は心配してしまうのですが。

5) 国民負担率の国際比較

財務省のWebを利用します。ここに日本、米国、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの6国比較が、ここにOECD28国比較があります。米国は、医療にしても民間医療保険の割合が大きいことと、政府よりもボランティア的な組織による社会保障を目指す面があるので、国民負担率は低く、OECD28国中で26番目です。日本は、23番目で米国と余り変わりません。高いのは、ヨーロッパ諸国で、デンマークの73.7%はすごいものです。

政府の制度になんか頼らないなら、国民負担率は低い方がよいのでしょう。戦前の日本がそうです。歳取った親を育てるのが長男の努めだとして、政府は何もしない。今や日本は、核家族を通り越して、個人ベースの社会に入って行っていると私は思います。負け犬なんて言葉は、もはや昔。離婚時の厚生年金の分割は、あたりまえ。やはり、社会の変化に社会保障制度も対応して行かなくてはならない。社会保障制度の維持や発展のためには、国民が必要な負担をして行かなくてはならない。逆に、それができなければ、破綻であり、惨めなことになると思います。

デンマークの国民負担率は世界一高いと書いたのですが、この8月29日のNB Online-Business Week デンマーク、「世界一の幸福国」に認定 経済力と社会福祉の適正なバランスが確立しているとの評価によれば、デンマークは世界一の幸福国です。ここに、この記事からリンクが繋がっている世界の10大幸福国のスライドショーがあります。試しに見てみると面白いです。

例えば、自然が美しいというのも幸福国のバロメータの一つだと思います。自然をつぶして、開発して、赤字国債を発行してというのは、夢がないどころか、負の遺産を作っているだけの気がします。せめて日本を幸福国に少しだけでも近づけたい。そう努力をしたい。こんな風に考えると、定額減税なんて小さすぎて、もし、将来その分の税金が増えるなら、ありがたくもない話になります。

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