アーバンコーポレイションに対する課徴金納付命令に係る審判手続開始決定
金融庁は、アーバンコーポレイションに対する課徴金納付命令に係る審判手続の開始を決定しました。
日経 10月10日 アーバンに課徴金命令、金融庁発動へ 虚偽記載で150万円
金融庁 10月10日 株式会社アーバンコーポレイションに対する課徴金納付命令に係る審判手続開始の決定について
アーバンコーポレーションの本件の関連は、8月20日に書いたアーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引が私なりに、全体像を書いたつもりで、その後9月17日に東証のアーバンについての決定や10月 6日にアーバンコーポレイション集団訴訟準備中を書いていることから、金融庁の決定に関連して、雑感を書きます。(エラそうなことを、書いていると思われるかも知れませんが、あくまでも雑感ですので、読み流してください。)
1) 課徴金の額
150万円は、少なすぎる気もしますが、課徴金を命じるとした金融証券取引法の172条の2は本年6月13日公布の平成20年法律第65号で改正されています。しかし、改正が未施行であり、改正の適用があれば、3百万円でした。なお、この平成20年法律第65号により改正を盛り込んだ172条の2(改正後は172条の4に条番号が変更)の条文を作成しましたので、参考として続きを読むに入れました。
平成20年法律第65号(金融商品取引法等の一部を改正する法律)の施行日は、基本は附則第1条により6ヶ月以内ですが、172条の2は附則第8条により施行日以後に開始する事業年度からの適用と了解します。
計算根拠は、アーバンコーポレーションが臨時報告書を提出した日が帰属する事業年度の平均株価を347.13円とし、これに発行株式数227,071,645株を掛けた788億2338万円の3/100,000である2,364,690円を算出し、これが3百万円以下であることから、3百万円を適用し、臨時報告書であることから第2項により1/2にしたと了解します。
参考まで、Yahoo株価チャートを上に掲げましたが、改正後であっても時価総額の10万分の6とか3です。正常な株式市場の維持に正確な情報開示が欠かせないと考えると、故意にされた虚偽の記載に対する課徴金としては、改正後の数字であっても、私は低すぎる気がするのですが、いかがでしょうか?
10月6日に書いた蛇の目ミシン株主代表訴訟583億円とは余りにも金額が違うものですから。もっとも、蛇の目ミシンは課徴金ではありませんが。
2) 刑事罰
金商法197条の2第6号に該当し、5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金もしくは併科という刑事罰が、これから問題になるのではと思いました。刑事罰が万能ではないのですが、172条の2による課徴金が課されるなら、197条の2もあるのだろうと思いました。
3) 情報開示
市場の健全な発展・発達は重要と考えます。情報開示は、そのために必要な、最重要項目であり、情報開示に問題があったアーバンコーポレーションのケースは問題がありすぎた。一般投資家を欺すような情報を開示することは、許されないと言うのが私の考えです。
toshiさんは、10月11日のブログで、平成20年法律第65号で改正による172条の2における追加である「記載すべき重要な事項の記載が欠けている」という部分が未施行であることから、「違法認定」において、どうしてもひっかかると述べておられました。
私の場合は、弁護士ではないので、気楽に述べますと、次の通りです。
臨時計算書の開示情報は、企業内容等の開示に関する内閣府令19条に規定されている「へ 新規発行による手取金の額及び使途」は内閣府令で定められた事項であり、改正前の条文でも、その範囲に入る。なお、アーバンコーポレーションの6月26日の臨時報告書の当該部分は以下でした。
本件取引により調達する資金につきましては、財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定です。
アーバンコーポレーションも、8月13日に訂正臨時報告書を提出して、次のように訂正している。
本件取引により調達する資金につきましては、割当先との間で締結するスワップ契約に基づく割当先への支払に一旦充当し、同スワップ契約に基づく受領金を財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定です。
金融証券取引法(法律第六十五号(平成20年6月13日)による改正)
(虚偽記載のある有価証券報告書等を提出した発行者等に対する課徴金納付命令)
第百七十二条の二四 発行者が、重要な事項につき虚偽の記載があるあり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている有価証券報告書等(第二十四条第一項若しくは第三項(これらの規定を同条第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)及びにおいて準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十四条第六項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書及びその添付書類又は第二十四条の二第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)において準用する第七条、第九条第一項若しくは第十条第一項の規定による訂正報告書をいう。第百七十八条第五項並びに第百八十五条の七第二項及び第三項以下この章において同じ。)を提出したときは、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該発行者に対し、第一号に掲げる額(第二号に掲げる額が第一号に掲げる額を超えるときは、第二号に掲げる額)に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、発行者の事業年度(当該発行者が第二十四条第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)に規定する特定有価証券の発行者である場合には、当該特定有価証券に係る第二十四条第五項において準用する同条第一項に規定する特定期間。以下この項及び第百八十五条の七第十九項において同じ。)が一年である場合以外の場合においては、当該額に当該事業年度の月数を十二で除して得た数を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
一 三百万円六百万円
二 イに掲げる額にロに掲げる数を乗じて得た額
イ 当該発行者が発行する算定基準有価証券(株券、優先出資法 に規定する優先出資証券その他これらに準ずるものとして政令で定める有価証券をいう。以下この号及び第百七十二条の十一第一項において同じ。)の内閣府令で定めるところにより算出される市場価額の総額(当該算定基準有価証券の市場価額がないとき又は当該発行者が算定基準有価証券を発行していないときは、これに相当するものとして政令で定めるところにより算出した額)
ロ 十万分の三 六
2 発行者が、重要な事項につき虚偽の記載があるあり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている四半期・半期・臨時報告書等(第二十四条の四の七第一項若しくは第二項(これらの規定を同条第三項(第二十七条において準用する場合を含む。)及びにおいて準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による四半期報告書若しくは第二十四条の五第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第四項(これらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による半期報告書若しくは臨時報告書又は第二十四条の四の七第四項(第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十四条の五第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)において準用する第七条、第九条第一項若しくは第十条第一項の規定による訂正報告書をいう。第百七十八条第五項並びに第百八十五条の七第二項及び第三項以下この章において同じ。)を提出したときは、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該発行者に対し、前項第一号に掲げる額(同項第二号に掲げる額が同項第一号に掲げる額を超えるときは、同項第二号に掲げる額)の二分の一に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。この場合においては、同項ただし書の規定を準用する。
3 前項の規定は、第二十四条の五第四項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による臨時報告書のうち投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすものとして内閣府令で定める事項を記載すべきものを提出しない発行者がある場合について準用する。
34 第一項ただし書(前項後段第二項後段(前項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。
| 固定リンク
コメント