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2008年10月21日 (火)

不思議な鉄道京阪「中之島線」

大阪で京阪電気鉄道の中之島線が10月19日に開業しました。

Nikkei Net Kansai 10月20日 京阪中之島線が開通──鉄道ファンら500人、門出祝う

1) 中之島線の路線

ここにあるように4駅が開業しているが、実は「北浜駅となにわ橋駅」及び「淀屋橋駅と大江橋駅」は、ほとんど同じ場所にあり、もともと京阪電鉄なので、京阪電鉄が2駅間並行して走ることになり、実質の延長は2駅約1.5kmしかない。


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何故半分の距離で済む淀屋橋駅からの延長をしなかったかについては、ここにNikken Times 特集インタビュー 中之島高速鉄道(株) 坂本富司雄社長として、坂本社長が次のように答えておられました。

ルートに関しては「何故淀屋橋から延伸しないのか」とよく質問を受けますが、これは延伸先に同じレベルで地下鉄御堂筋線が位置しており、もしそこから延伸するとなれば莫大な費用と時間がかかりますから、事実上不可能です。現在の天満橋駅からの分岐延伸は、同駅には番線が4つあったことから、その2つを利用しようとしました。

天満橋駅というのは、京阪電鉄の嘗てのターミナル駅であり、淀屋橋駅から延長しないとなると線路分岐を取れる工事可能な地点としては、天満橋駅になってしまったと理解します。(次の建物の下が京阪電鉄天満橋駅です。)


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2) 工事費と税金

この大阪府の資料によれば3ページ目の左下あたりに1500億円とあります。そうなると、実質では1.5kmの建設なので、1kmの実質建設費が1000億円です。同じ資料の2ページ目ですが、国庫補助金25.2%と書いてあります。すなわち、日本国民の税金が378億円使われました。

この東京都交通局のWebによれば、大江戸線の都庁前~新宿間の建設費が343億円/kmのようです。

都営地下鉄の路線別建設費

項目区間建設キロ
(km)
全線開業建設費
(億円)
キロ当たり(億円)
線名
浅草線 西馬込~押上 18.7 昭和43年 864 46
三田線 三田~西高島平 22.8 昭和51年 1,450 64
三田~白金高輪 ※1 1.6 平成12年 763 474
新宿線 新宿~本八幡 24.8 平成元年 5,822 235
大江戸線 新宿~光が丘 13.9 平成 9年 3,989 286
都庁前~新宿 ※2 28.8 平成12年 9,886 343

※1 白金高輪~目黒は帝都高速度交通営団(現東京地下鉄株式会社)が建設
※2 都庁前~新宿間は、東京都地下鉄建設株式会社が建設

単純比較は良くないと思います。しかし、税金を投入する以上は、それが有効なのだと国民に対して説明が必要です。「地下鉄御堂筋線がじゃまになったから、二重投資になっています。」と説明しているのみであれば、だめであり、例えば、新しい地下鉄を淀屋橋から何故建設できなかったのか、ゆりかもめのような新交通システムでは何故ダメか、経済的有効性や投資効果がどうなるかを数字で示すべきであります。

私は、鉄道はエネルギー効率の面を初め多くの点で優れているし、税金が投入されること自身が悪いとは思いません。しかし、たった1.5kmの中之島線に税金を378億円投入するなら、地方の赤字ローカル線の補助金に少し回しても良かったかも知れないとの気持ちになってしまいます。但し、気分で決めることは良いことではなく、数字を示して国民の了解を取るべきです。

3) 上下分離?

大阪の人は、頭が変なのかなとも思いますが、道路公団でそんなことをやるから仕方がないのかなとも思います。

しかし、私は上下分離なんて絶対反対です。金銭勘定を誤魔化す時に、財布を複数用意して、都合良く使い分けます。上下分離とは、それを許すことです。何故、京阪電気鉄道に線路もトンネルも全て保有して事業をさせないのか?京阪電気鉄道は、一流の鉄道会社と思います。補助金を出す相手として問題があるとは思いません。

京阪電気鉄道に建設補助金と運営補助金を支出すれば、それで良いはずです。責任と会計報告が一体となって初めて有効な事業経営が可能です。

地方自治体による天下り先が好きというか、無駄が好きというか、中之島線を調べると無茶苦茶とチャイマッカーと思いました。このNikkei Net Kansaiの記事も面白いです。

63年には天満橋―淀屋橋間で営業開始し、西進を進めてきた。」それなら、西進できるように、地下鉄御堂筋線と立体交差できるように、最初から計画して線路を地下深く下げておけばよいのに。

同線は西九条を経て最終的には新桜島まで延伸する計画があるが、計画立案から時間がたっているにもかかわらず事業化のめどは立っていない。」それなら、新交通システムで良いではないか。

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コメント

建設費については、中之島新線の建設にあたって、既存の天満橋から淀屋橋間の線路で中之島新線とほぼ併走している部分について移設する必要が生じたり、川との兼ね合いでトンネルの工事に手間がかかったりで、経費が通常より増大したという側面はあるのだろうと思います。

あと、淀屋橋について御堂筋線より深い位置に既設路線を構築しておけば良いではないか?と言う点については、元々京阪は御堂筋線との接続若しくは乗り入れを見越して、路線の深度を合わせたという経緯があったと伝え聞いたことがあります。
もっとも当該の計画は、当時における大阪市の「市内高速交通モンロー主義」によって断念する事となり、中之島方面への延伸が天満橋を起点とする事の遠因になったとか。。。また、当該モンロー主義については、行政当局よりも寧ろ市議会が積極的に当該方針の堅持を続けた(市民の多数意見も議会方針を支持するものだった。)という経緯もあって、一概に行政を責める訳にもいかないという事情があるような訳でして。。。

京阪淀屋橋駅の深度の件は、伝え聞く情報故に確度について決して保障できませんが、大阪市の「市内高速交通モンロー主義」は事実です。東京圏に比して大阪圏で鉄道事業者間の相互乗り入れが活発でないのはこの政策方針に由来しますし、京阪に限らず近隣の鉄道事業者も同じように壁にぶつかって来ましたから。

投稿: 匿名希望 | 2008年10月22日 (水) 14時12分

匿名希望さん コメントと共に色々な説明・解説をありがとうございます。

大阪では、来年3月に阪神なんば線が開通予定ですが、なんば線は阪神と近鉄が乗り入れ可能となるから、山陽電鉄の姫路から神戸を経由して、奈良、伊勢志摩や名古屋が一本の線路で結ばれる。工事費は、なんば線が1000億円に対して中之島線が1500億円。果たして、費用とか効果とか、どんな計算をしているのか、補助金を負担する政府(国交省)、大阪府、大阪市は説明をすべきと思い、書き始めました。

中之島線もなんば線も両方とも大阪府・大阪市が絡む第三セクターです。第三セクターに出資する際は、事業の採算性を納税者に説明し、その後は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書といった財務諸表をNetで公開すべきと思います。しかし、残念ながらNetで見あたりませんでした。

私は大阪の地下鉄は東京より進んでいると昔は思っていました。京阪が淀屋橋に乗り入れたのは、1963年ですから。1963年当時に、東京で運転されていた地下鉄は銀座線と丸ノ内線以外では、日比谷線が北千住から東銀座まで、浅草線が押上から新橋まで開通していました。日比谷線が日比谷につながり全線開通したのは1964年で、浅草線の京急乗り入れは1968年です。1970年万博の頃にも、大阪の地下鉄は相当発展しましたから。

中之島線で思うのは、いっそのこと御堂筋線と京阪の淀屋橋駅を外に出ずに、簡単に歩いて乗り換え可能とし、御堂筋線と京阪の淀屋橋駅の下に中之島線淀屋橋駅を作れば安くできたし、それで十分ではないかと思うのです。Suica/Ikoca/Pasmoといったカード乗車券の時代ですから、乗換駅に改札も不要と思います。

色々考えさせてくれる中之島線です。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年10月22日 (水) 16時20分

大阪のこれからの都市開発計画上、中之島線の建設はほぼ必須かと思われます。
新交通システムや地下鉄新線だと郊外への直通が不可能ですし、余計に採算が危ぶまれるだけです。
中之島以遠への延伸についてですが、京阪の方針としては西九条まではなんとか開通させたい、とのことです。
いつか実現することが期待できます。

投稿: 匿名 | 2008年10月29日 (水) 00時31分

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