« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »

2008年11月27日 (木)

麻生節を楽しむ

無責任発言とのお叱りを覚悟で申し上げれば、「イヤー、麻生節って本当に面白いですね!」であります。

1) 直ぐに陳謝の麻生節

次の報道です。

日経 11月27日 高齢者医療巡る発言、首相が陳謝 民主・鳩山氏は批判

2) 元の発言についての各社報道

元の発言についての各社報道は、次の通りです。この中で、NHKはリンク切れが早いので、続きを読むに入れておきます。

日経 11月27日 「何もしない人の分何で私が払う」 高齢者医療に首相不満?
読売 11月26日 首相「何もしない人の医療費、なぜ払う」、諮問会議で発言
朝日 11月27日 「何もしない人の分を何で私が払う」医療費巡り麻生首相
NHK 11月27日 首相 医療費負担めぐり発言

3) 実際の発言内容

11月20日の経済財政諮問会議での発言です。各社報道の情報源はこの議事要旨であります。問題の発言は、11ページ目にあり、書き出すと次の通りです。

(麻生議長) 67歳、68歳になって同窓会に行くと、よぼよぼしている、医者にやたらにかかっている者がいる。彼らは、学生時代はとても元気だったが、今になるとこちらの方がはるかに医療費がかかってない。それは毎朝歩いたり何かしているからである。私の方が税金は払っている。たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金を何で私が払うんだ。だから、努力して健康を保った人には何かしてくれるとか、そういうインセンティブがないといけない。予防するとごそっと減る。

病院をやっているから言うわけではないが、よく院長が言うのは、「今日ここに来ている患者は 600人ぐらい座っていると思うが、この人たちはここに来るのにタクシーで来ている。あの人はどこどこに住んでいる」と。みんな知っているわけである。あの人は、ここまで歩いて来られるはずである。歩いてくれたら、2週間したら病院に来る必要はないというわけである。その話は、最初に医療に関して不思議に思ったことであった。

それからかれこれ 30年ぐらい経つが、同じ疑問が残ったままなので、何かまじめにやっている者は、その分だけ医療費が少なくて済んでいることは確かだが、何かやる気にさせる方法がないだろうかと思う。

4) 雑感

報道されているのが、麻生発言の主旨かというと、ずれているように感じます。経済財政諮問会議に出席はしていませんが、議事要旨は一次資料そのものですから、議事資料を読んで真意を読み取るしかないと思います。麻生首相は、健康増進に対するインセンティブを高めることを政策として考えるべきとして発言されたのだと思います。

一方で、年老いても運動し、健康でいることは、年老いても生き甲斐を感じ、生きる喜びを感じるような社会・世の中であることと思います。老人切り捨てでは、麻生発言にある「たらたら飲んで、食べて、何もしない人ばかり」になると思います。だから、この問題は保健医療制度の問題のみではなく、老人も立派に働いていける、社会の役に立っていける制度を樹立することが、その大前提であると思います。

私の感想のようなことを述べたら、新聞は売れない、TVニュースはチャンネルを変えられるで、やはり麻生タタキをして、KY(漢字ではなく空気)方針により、マスコミは長いものに巻かれろでしょうか?その点、ブログは気楽です。

しかし、麻生発言も支離滅裂で、前後の発言者の発言の流れからしても、麻生発言は何を言いたいのか、不明朗です。「67歳、68歳になっての同窓会」は、今のことと思いますが、「それからかれこれ 30年ぐらい経つ」とあるので、病院の近くに住んでいるがタクシーで来院する人達の話は30年前のことと思いました。

首相たる者は、正しい論理を持ち、論理的な発言をし、社会の先頭に立ち、社会が正しく発展し、人々全員が幸せになるよう、公務員の鏡となるよう、働く人であると私は思っています。だから、私の基準からすると、この人どうなるかな?であります。

続きを読む "麻生節を楽しむ"

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年11月24日 (月)

立正大学の148億円損失について

駒澤大の154億円損失については、11月19日の駒澤大学154億円損失に思うで書きましたが、立正大148億円損失の報道もありました。

時事通信 11月20日 資産運用で148億円含み損=9月末、大学に金融危機の影響-立正大
共同47ニュース 11月21日 立正大も含み損148億円 「学校経営には影響なし」

駒澤大と立正大の損失の大きさの差は6億円と5%もなく、似通っていると思います。そこで、共通点と相違点を比べ、この問題について考えてみます。

1) 確定と未確定

駒澤大は、10月末に損失となっているデリバティブ関連の契約を解約し、損切りをして154億円の損失を確定しました。一方、立正大は次の11月21日の発表(最新情報)の通り、評価損失であり、長期保有を基本としていると述べておられ、現在も保有しています。

立正大 最新情報 11月21日 立正大学の資産運用に関する報道記事について

すなわち、駒澤大は損失確定です。立正大については、損失とはならず、予定通りの運用収益を得ることができる可能性もあるが、逆に損失が更に拡大する懸念もあります。

2) スワップと仕組債

駒澤大の投資は、「金利スワップ」と「通貨スワップ」でした。立正大の投資について、時事通信の記事は、次のように書いています。

資産運用を野村証券や大和証券SMBCなど国内4社に委託している。運用資産は、国債、地方債、社債や投資信託のほか、豪ドルを組み込んだ仕組み債。これらの含み損は、今年3月末時点で約96億円だったが、足元の金融市場混乱や円高が直撃して拡大した。一般的には、仕組み債は、各種有価証券や不動産などの資産を組み合わせて組成する複雑な金融商品。

仕組債も、表面的には利回りの高い債券の様に思えるが、本質はデリバティブです。例えば、豪ドルの仕組債を考えると次の通りです。

1.豪ドルと円の交換レートに関して円のコールオプションを売る。
例えば、A$=100円のときに、A$=90円の円コールオプションを売る。コールオプションの料金は例えば、1A$につき、5円。

2.為替が円高/豪ドル安となり、90円以下になれば、円コールオプションを買った人は、100円につき、90円で割り算した豪ドルを渡せばよいのだから、オプションを実行する。結果は、90円以下にはならないという保証を5円で購入したことと同じである。

3.為替が円高/豪ドル安となり、90円以上であれば、円コールオプションを買った人は、オプションを実行せずに、その時のマーケット・レートで円を購入する。オプションを購入していなかった時と比べ、5円の費用が余分に発生しているが、90円以下にならない保証の対価として見合えば問題はない。

4.上記1.の取引と同時に、円建ての仕組債を発行する。仕組債の金利は、「通常の金利+オプションの価格ー手数料」とし、「万一、豪ドルが債券満期時においてA$=90円以下である場合には、A$相当の円貨で償還する。」との特約を付ける。オプション対価が上乗せされるから、満期が1年であれば、5%近い金利が上乗せとなる。

「A$=90円以下なんてなりませんよ!」と言って、債券を販売すれば、大変です。次のチャートがYahooの豪ドルと円の過去1年の交換レートです。現時点では、60円を少し切ったところ故、上で書いた90円のオプションが絡んでいれば、40円の損失ですが、オプション料の5円がカバーされて、35円の損失となります。

Ayenrate20081124

仕組債もデリバティブ組み込み商品であり、本質的には金融派生商品です。

3) ディスクロージャー

駒澤大も立正大も財務諸表を公表しています。しかし、財務諸表の公表が、ディスクロージャーに問題なしを意味せず、注記表を初め、必要事項の説明が実施されないといけません。ちなみに、立正大の2008年3月末の貸借対照表を見ると、有価証券が552億円であり、そのうち満期保有目的の債券が537億円です。この満期保有目的の債券の2008年3月末時点での時価評価額が440億円ですから、97億円評価損がありました。一般の債券も金利が上昇すると評価額が下がるが、18%も下がるのは仕組債の保有があると考えられます。

学校法人は、上場株式会社とは異なるので、同一基準での財務諸表の作成やディスクロージャーが適切とは考えませんが、11月21日の最新情報公表(プレスリリース)はやはりディスクロージャーの範囲が少なすぎると私は感じます。また、立正大学平成19年度事業報告書にも「資金調達の状況」はありますが、「資金運用の状況」はありません。(借入金は4億円しかないのですが。)

立正大は、独立監査人として新日本有限責任監査法人の名前があります。財務諸表の監査をされていると理解します。2009年3月末の財務諸表がどのようになっているか、興味あるところです。

4) ガバナンス

駒澤大のところで書いたように、学校法人のガバナンスが、私立学校(学校法人)の多くに共通する問題と思います。ガバナンスは学校法人・自らが、そのルールを打ち出していくべきと考えます。問題が発生し、世間が騒ぎ、政府・文部科学省が介入権を持つようになるというのは、避けるべきと考えます。

大学は、学問の自由やその権利を守るべきです。そのためには、多くの人々の支持を受けることが必要であり、問題が発生しない仕組みを自らが作り上げていくことが重要と考えます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月23日 (日)

医師には常識欠落の人が多い

「医師には常識欠落の人が多い」というのは、実は正解である気がしました。

経済原則からすれば、人は楽をしてお金・物・サービスをたくさん得たいと考える。超過勤務をして、身を粉にして働いて、得られる物は,少しばかりの自己満足で、場合によっては、損害賠償の訴訟を訴えられ、下手をすると業務上過失致死だと刑事罰を問われ、投資とリターンが見合わない。

例えば、次の岩手日報の10月18日の記事です。月54時間の超過勤務についても、当直勤務の時間は算入されていない可能性があると思いますが、長時間労働であります。

医師超勤、月54時間 県立病院の過酷さ浮き彫り

医師の勤務状態に関する調査として、ここにアンケート調査結果があります。このアンケートは、舞鶴地域医療あり方検討委員会が2007年7月に、舞鶴市民病院、舞鶴医療センター〈国立病院機構〉、舞鶴共済病院〈国家公務員共済〉、舞鶴赤十字病院〈日本赤十字社〉の公的4病院の医師に対して実施したものです。配布数101のうち回収数48です。

「3.回答者の勤務状況①過去1か月間の当直回数」という部分からして、1月の平均当直回数が平日1.7回、休日1.1回の合計2.8回と理解しました。そして、「③当直明け勤務の状況」という部分からして、当直明けの日も90%の人は通常勤務である。「4.曜日ごとの勤務状況」の勤務時間の平均値を合計すると週77.8時間となります。

小児科医・中原利郎さん(当時44歳)が1999年に自殺したことに関連する病院運営者立正佼成会の使用者としての安全配慮義務違反をめぐり、妻のり子さんが、東京高裁の判決を不服として11月4日に最高裁に上告されたそうです。

CBニュース 11月4日 医師「過労死裁判」で遺族ら上告

中原医師の労災適用についても労働基準監督署は労災とは認めず、遺族が行政訴訟を起こして認定を得ています。(共同 2007/03/14共同 2007/03/28判決文 要旨)安全配慮義務については、この2008/10/22のニュースの通り、1審東京地裁に続き東京高裁も請求を棄却しています。

常識からすれば、勝訴には相当の困難があると思えます。しかし、そこに常識を越えた、愛情みたいなものを感じます。

常識で考えれば、医師なんてやってられないと感じる場合が、多いのではと思います。このことは、医師のみにあてはまるのではなく、多くの場合にもあてはまることと思います。社会に貢献するなら、他人に役立つなら、自己満足でも他人に迷惑にならないなら、非常識と言われようが、自分の信じること、自分の愛のために、発言し、行動する。それでよいのだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月20日 (木)

割り箸事故東京高裁無罪判決

1999年に杏林大学付属病院で、4歳の保育園児ののどに綿菓子の割りばしが突き刺さっているのを見落とし死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた医師に対する控訴審判決が東京高裁であり、検察側の控訴を棄却し無罪とする判決が出されました。

読売 11月20日 割りばし事故、2審も元杏林大病院医師に無罪…東京高裁

2月28日のこのエントリーで、東京地裁の民事裁判の原告の請求を棄却する民事裁判の判決(損害賠償の責任はなし)について私の感想を書いたことからの備忘録です。東京地裁民事裁判の判決文は、ここそしてここ(全文)にあります。

今回の東京高裁刑事裁判の判決文も、Webに出てくると思うので読んでみたいと思います。なお、医療事故に関する刑事責任については、私は意図的な犯罪と認められる場合と重過失に該当する場合に限定すべきと考えています。なお、重過失致死罪とは次の刑法211条1項です。

業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

医療事故の刑事責任追及に関しては次のことが言えると思います。

1 医療関係者に対する刑事処罰による医療事故防止について効果は期待できない。
2 刑事責任を厳しくすると、治療効果とは関係なく、リスクの高い治療が避けられることとなる。
3 個人責任の追及は現在のチーム医療にそぐわない。
4 刑事責任の追及が、医療関係者の自己保身に走らせると、原因解明と再発防止に向かわない。
5 刑事罰よりも医師免許取消のような行政処分の方が適切である。

裁判員制度が来年2009年5月21日から始まりますが、医療に関する刑事責任追及にどう思われますか?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

どうしようもない麻生政権

KYが最近は「漢字読めない」を意味するらしいことは、知っていましたが、次のニュースには驚きました。

読売 11月19日 「医師、社会常識欠落している人が多い」首相が問題発言

麻生首相は19日午後、首相官邸で開かれた全国知事会議で、地方の医師確保策に関連し、「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、医師の確保は大変だ。もっとも社会常識が、かなり欠落している人が多い。とにかくものすごく価値観が違う。そういう方をどうするか、という話を真剣にやらないと……」と述べた。」とあります。

記事の下の方に、発言の要旨が書いてあるので、要旨の部分を続きを読むに入れておきます。

11月13日に書いた二階経産省の聞き逃せない発言のみかと思ったのですが、政治とは何をすべきかが全く解ってらっしゃらないのだなと感じます。「一部にはおられる。」位であれば、そうかもしれないと思いますが、この発言だと医療をつぶしてしまうなと思います。私の知っている限りでは、多くの医師の方は、懸命に努力をされ、使命感で頑張っておられます。しかし、やはり人間であり、限界は存在する。数字を使った分析をしての発言であれば、耳を傾けることができても、この発言ではどうしようもないですな。

続きを読む "どうしようもない麻生政権"

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年11月19日 (水)

駒澤大学154億円損失に思う

駒澤大学がデリバティブを使った資産運用に失敗して154億円の損失を出したニュースがありました。

日経 11月19日 駒沢大、デリバティブで154億円損失 金融危機が直撃
朝日 11月29日 駒大、資産運用損失154億円 キャンパス担保で穴埋め

企業の売上高に相当する学校法人駒澤大学の平成20年度学生生徒等納付金収入が168億円なので、年間売上高に匹敵する損失を出したことになります。

1) 損失の理由

報道を総合すると、「金利スワップ」と「通貨スワップ」の計4商品を外資系金融機関2社と昨年度に契約し、このスワップの損失が膨らみ154億円の損失で損切りをして、10月末に解約したとのことです。

高金利運用をするためにCDMを購入したのかと思ったら、どの報道もスワップでした。スワップとは交換なので、交換時は等価交換です。基本的なスワップの利用方法は資産運用ではなく、リスクヘッジです。金利スワップであれば、長期固定金利と短期変動金利の交換等であり、通貨スワップであれば、ドルと円を取り決めた時期に取り決めた交換レートで交換する等です。

資金運用をスワップで利用する例は、次のような場合です。

A. 円資金で国債等の運用を行っている。しかし、円金利は安い。

B. 円金利が安いからドルで運用する。円で1%の運用がドルで5%の運用に相当するなら、スワップを行うことにより1%の円運用は相手に渡すが、5%のドル運用を得ることとなる。

C. 但し、同時にドルのリスクも来ることから、将来満期になった時のドルの交換レートがその時のスポットレートとなる。そこで、通貨スワップを締結して、ドルを渡し、円を入手するスワップを組む。

うまくいくように勘違いしそうですが、実はC項として書いた外貨スワップのレートは、運用金利差が影響するから結果は損得なしです。むしろ、厳密に言えば、同じ通貨の調達と運用の金利差および手数料が発生することから、損をします。

レバレッジを効かせ、証拠金の何倍かの規模にすることと、オプションを組み込めば、バクチ性が高まります。通常は、反対取引を実行して何時でも精算可能です。但し、オプションの反対取引なんかは、相当の逆ざやが生じる可能性があり、リスクが大きいこととなります。

駒澤大学のケースもそのようなことと思いますが、朝日の記事に「17日の臨時理事会で、経理担当者の責任が議論されたが、まず、契約のいきさつや商品の詳しい内容などを調べるため、調査委員会を設置」とありますので、調査委員会の報告書が公表されるまで、待ちたいと思います。

2) デリバティブに手を出した理由

学校法人が、資金運用で利益を生み出す義務はないはずです。なぜ、デリバティブを使って利益を生み出そうとしたかです。デリバティブそのものは、ヘッジ手段として利用することも可能であり、有用ですが、運用手段としては疑問がある。

駒澤大学の平成19年度決算を見るとデリバティブ運用損650万円があるものの、デリバティブ運用益1億6195万円が計上されており、資産運用収入として平成19年度は合計19億3792万円が計上されている。平成19年3月末の貸借対照表を見ると、企業会計において投資その他の資産に該当するその他の固定資産が約165億円あり、流動資産のうちに有価証券が約60億円含まれている。結果、225億円の投資に対し19億円の運用収益故8.4%の運用を行ったこととなる。

平成20年度の予算を見ると、運用収入が24億円となっている。30年国債でさえ、2.28%程度の現在のマーケットで8%以上の運用益をあげる予算となっていることによりリスクがあっても高収益のデリバティブに手を出すことになってしまったと言うことはないのかと思う。過去に高金利の時に購入した債券があり、満期保有目的債券のように時価評価せず、償却原価法を適用して高金利が得られることになっている場合もある。詳細を知らないので、調査委員会の報告書を待たねばならないが、もし無理な資金運用計画になっているとするなら、原因は計画そのものにもあると思う。

経理担当者の責任として片付けると問題の本質を見誤ることになるだろうと思います。

3) ガバナンス

企業を含めあらゆる組織にとって最重要なことは、ガバナンスの確立と思います。ところで、駒澤大学には、経済学部、法学部、経営学部があり、それぞれに大学院が設置され、法科大学院も存在します。この事件の一番の皮肉は、ガバナンスについて研究を行い、教育をしている大学で生じたことです。また、デリバティブについても同じで、研究・教育の対象であったのですから。

駒澤大学には、今回の事件を教訓として、ガバナンス上の問題点と改善点を明らかにし、今回の事件を他の関係者にも公表し、教訓を社会に広げていただきたいと思います。財産目録を見ると223万m3の土地が簿価171億円となっていることから、m3当たり7,661円です。全ての土地が世田谷区駒沢ではないでしょうが、m3当たり10万円とすると2000億円を超える含み益があることとなります。154億円の損失は駒澤大学の存続に影響があるとは思えず、これを生かすべく、その教訓とすべき事項を公表願いたいと思います。

一般企業の場合は、競争相手に企業秘密が漏れることとなり、公表が困難な事項も多いと思うが、私立大学の場合は、一般企業と比べれば制限を受ける事項は少ないし、具体的事例を通じての研究は最も得られる成果が大きいと思います。

私の言うガバナンスとは、私立学校法の学校法人の場合のガバナンスは、どうあるべきかを含みます。公益法人改革により12月1日から「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」と「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が施行となります。株式会社の場合は、もまれてガバナンスができあがっている部分があるが、従来の公益法人は善意の運営が前提となっており、ガバナンスが弱い部分が相当あることを懸念します。

ガバナンスは問題が起きることにより強化・発展・確立されていく部分があると思います。これを機会に駒澤大学がガバナンス強化に貢献願いたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

日本経済の予測

11月17日に内閣府が、国民経済計算の速報値である四半期別GDP速報を発表しました。ここから辿れます。日経の解説は次の通りですが、私もこれからの日本経済をこの速報をベースに考えてみます。

日経 11月17日 2008年度は実質0.3%減、7年ぶりのマイナス成長に・NEEDS予測

1) 2008年度はマイナス成長

2008年7月~9月のGDPの前期比伸び率はマイナス0.4%でした。ここ10年余りの間の2005年度からの毎四半期GDPの前期比伸び率は、次のグラフの通りです。ちなみにボトムは1998年1月~3月のマイナス7.6%で、その次が2001年7月~9月のマイナス4.3%でした。2008年4月から6月がマイナス3.7%であったのですが、とりあえずは1998年1月~3月や2001年7月~9月ほどは悪くないといった現状です。

Gdp200811_2 

年間でどうなるかの予測ですが、2008年10月から2009年3月までの期間の四半期GDP成長率(年換算)を横軸として2008年度の年間成長率の予測計算の結果を現したのが、次のグラフです。

Gdp200811_4 

2008年7月~9月と同じマイナス0.4%が続く場合は、2008年度の成長率はマイナス0.3%弱となり、マイナス2.0%程度で続く場合は、年度の成長率はマイナス2.0%程度になると私の計算は予測しています。2008年10月から2009年3月の下半期は、上半期の成長率よりも低くなると考えられ、日経のマイナス0.3%の予測より厳しいと私は予想します。

2) 2008年7月~9月のGDP

2006年10月からの2年間8四半期の間の要素毎の寄与度(前期比年換算)をグラフにしてみました。ピンクの棒が輸出から輸入を差し引いた純輸出ですが、2008年1月~3月までは輸出がGDP成長を牽引していました。2008年4月以降は輸出がマイナスの要因となっています。(なお、各寄与度を全て合計すると、全体の伸び率と一致します。)

Gdp200811

民間設備投資は2008年に入った頃よりマイナスであり、2008年7月~9月でプラスであったのは、民間最終消費支出と民間住宅投資でした。

3) 個人所得の見込み

厚生労働省の勤労統計調査の現金給与(全産業)の前年同期比を、一番最初の四半期GDPのグラフと同じ期間について表示したのが次のグラフです。本年初めは、1.5%程度となったこともあったのですが、再びゼロに近くなりました。

200811

次のグラフは、内閣府の国民経済計算の雇用者報酬と厚生労働省の勤労統計調査の現金給与(全産業)の四半期データの前年同期比を同一グラフで表示したものです。

200811  

雇用者報酬と現金給与は、統計の手法が異なっていますが、ほぼ同じ傾向でした。2008年1月~3月をピークに下がってきています。厳しい経済情勢の中、それほど上がるとは思えず、むしろ下がる可能性があると思います。

やはり全体的に暗いと思います。一つには、内需拡大と言っても、日本は国債・公債の残高が大きすぎて、これ以上増発すると金利上昇が発生し、国債のジャパンプレミアムなんてなったらいよいよ暗くなるなと思ってしまう。小さい政府の場合は、政策としてできることは限られてしまうが、国債残高が膨らんでいるから、いよいよ何もできないと思う。

そうなると、米国においてオバマ新大統領景気が発生してくれたり、今や世界の消費の中心地中国の景気上昇の恩恵が日本に回ってくるのを期待するしかないのかも知れない。G20の結果を考えると、日本って決して明るくないんですよね。合意声明文を読んでも、日本がリードできる部分がほとんどなくて、ついて行くの大変だなと思うようなことばかり。ついて行かないと取り残されるのですから、日経のマイナス0.3%の予測はオプティミスティック過ぎるだろうなと思ってしまいました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月16日 (日)

これからの経済対策

すこし大げさすぎるタイトルを付けてしまいました。20国首脳会議(G20)が終了しました。次のホワイトハウスのWebにその宣言文があります。日経、ロイターの英語と日本語の記事も掲げておきます。

Office of the Press Secretary, November 15, 2008 The White House: Declaration of the Summit on Financial Markets and the World Economy

日経 11月16日 金融安定化へ「あらゆる追加的措置」 金融サミット
ロイター 11月16日 金融サミットでは追加的措置強調、市場は即効性乏しいと評価
Reuter Nov 16, 2008 World leaders urge fast action on financial crisis

具体的内容が薄く抽象的事項が多い合意であるとの批判はありますが、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、トルコ、英国、米国そしてEUの20国という多くの国の政府(EUも通貨を発行していることから政府としておきます。)による合意であり、抽象的表現が多くなるのはやむを得ず、むしろG20で集まって会議をし、合意をしたことに意義があることと思います。

11月10日のバラク・オバマ政権のCHANGE政策の中で、「オバマ政権の経済政策の課題は、マネーゲーム資本主義に対するルール整備であると思う。ルール整備は、規制ではない。参加者に対する公平なルールであり、公平なルールこそが自立的な発展をもたらすのである。」と書きました。経済政策は、容易なものではなく、政府が下手な関与をすることが悪影響をもたらすこともあります。何もするなということではなく、必要なルールを整備し、正しい監視を行い、必要なコントロールをすることであるからです。

本日、harry_gさんのブログヘッジファンドと金融危機(議会証言より)が、11月13日米議会にヘッジファンドのマネージャが呼ばれ、証言した内容について書いておられます。ブログの記述は、少し長いのですが、非常に面白く、金融に関心がある方には、一読することをお奨めします。

例えば、次のようなことを書いておられる部分があります。

Q あなた方の中には、サブプライム危機の発生を予想して大きな利益を上げた人がいるが、ウォール街とワシントンが完全に見過ごしたと言える金融危機を、どのようにして察知し、また回避することが出来たのか?(注:Paulson、Herbingerが特に大きな利益を上げたと言われています。)

A 一生懸命働くこと、格付機関から独立した、独自のリサーチを行うことで、ミスプライシングを発見すること。明らかにAAAではない債券に、AAAの格付が与えられていた。(Paulson氏)

私は、知りませんでしたが、1年以内保有の株式等の売却益について、米国では高い税率になるようですね。面白いと思います。日本では、法人と個人とで扱いがずいぶん異なり、法人の場合は、通常の所得の扱いです。個人の場合は、租税特別措置法により別扱いとなり、株式の保有期間に拘わらず同一で低い税率です。デイトレーダーを非難した人がいましたが、1年未満は高く、1年以上については低い税率にする等して長期保有を有利にすれば良いと思います。

でも、租税特別措置法の特例を中止すれば、通常の累進税率の摘要となり、長期保有の場合は税率がその1/2になりますが。ただ、この場合の長期保有は5年以上です。だから、当面の措置として、租税特別措置法で上場株式や投資信託、債券等について1年を適用することにしても良いのです。カラ売り規制なんて変なことをしても、弊害もあるのであり、短期売買についての税率で対応する政策の方が賢いように思えます。又、その方が、変な仕手戦の防止や反社会的勢力への対応にも有効だと思いますが。そして、何よりも、会社の正常な発展を支援する長期的観点の投資家を優遇することになります。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

定額給付金の良い側面

一つ前の評判悪い定額給付金で、新聞各社の社説を紹介し、定額給付金の評判の悪さや問題点を書きました。しかし、世の中のことは、別の角度から見ると違ってくる。日本の学校テストのように○×で評価すると誤ってしまう。多面的な評価を行い、賛成・反対のみならず、次のステップへの発展につなげていくことが本当の姿と思います。

そこで、定額給付金について考えた場合、次のような良い点があるのではと思いました。(これを良い面と言うのは、やはりおかしいのかな?)

(1) 多くの日本国民に政府財政政策について考えさせてくれた

平成20年度の予算は、この財務省のWeb(pdf)にあります。歳入及び歳出をまとめたのが次の表であり、最右欄は、租税及び印紙収入について、その主な内訳を書き出しました。

平成20年度予算    (単位:億円、カンマ位置は兆)
支出 歳入 租税及び印紙収入
一般歳出 47,2845 租税及び印紙収入 53,5540 所得税 16,2790
地方交付税交付金等 15,6136 その他収入 4,1593 法人税 16,7110
国債費 20,1632 公債金 25,3480 消費税 10,6710
歳出合計 83,0613 歳入合計 83,0613 相続税 1,5550
揮発油税 2,0860
その他の税 5,0570
印紙収入 1,1950
合計 53,5540

表を眺めてみると、2兆円は大金です。丁度大騒ぎの揮発油税(現行の1リットル48.6円のガソリン税のみで軽油取引税を含まず)とほぼ同じです。なお、消費税は4%分が含まれています。1%は、地方税なので、含まれていない。

2兆円は、どう使うのが納税者・国民のためになるのか?本日のNHK日曜討論で自民党柳澤氏は、定額給付金は税額控除であると言われていました。所得税の所得控除の方式を税額控除の方式に変更するのであれば、所得税法を改正する提案をすべきであると考えます。

(2)面白い政局

この朝日新聞の世論調査(11月11日報道)は、「8、9の両日実施した総選挙に関する連続世論調査(第4回、電話)によると、・・・定額給付金について、「必要な政策だと思う」は26%にとどまり、「そうは思わない」が63%と、否定的な見方が圧倒的だった。」と書いています。

63%の人々が反対している場合、そんな政策を唱えている人達は、選挙で負けると通常であれば考えられる。勿論、世論調査と選挙結果とイコールとは限らず、また真に必要であれば、信念を曲げないことも重要です。一方で、野党は反対するに際し、それなりの政策案を出していく必要があります。野党案が、2兆円を節約し、長期的な展望を示す案でも良いのであり、どのようになっていくか興味を沸かせます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月15日 (土)

評判悪い定額給付金

定額給付金について、ほとんど全ての新聞が13日の社説で取り上げています。主要新聞の社説と社説文の締めくくりの文章をあげてみます。

日経11月13日 疑問だらけの定額給付金
景気は一層冷え込むことが予想され、財政政策も一定の役割を果たすことが求められる。だが厳しい財政事情を考えれば、おカネは有効に使うべきだ。2兆円の定額給付金は賢明なおカネの使い方とはいえない。

朝日11月13日 定額給付金―ふらつく麻生政権の足元
この構想は、いよいよ支離滅裂なものになっている。発足間もない政権の統治能力そのものが問われる事態だ。

読売11月13日 定額給付金 迷走の末に地方丸投げとは
「政局より政策」というのが、麻生首相が解散を先送りしたうたい文句だ。その結果、こんな政策が出てくるようでは、首相の指導力が問われよう。

毎日11月12日 定額給付金 支離滅裂な施策はやめよ
政策目的が不明確で、効果も疑わしく、財政にも負担をかけるような定額給付金は白紙に戻すべきだ。生活対策というのならば、低所得層などに対象を絞った減税や、大胆な非正規雇用対策を講ずるのが責任ある政治の務めではないのか。

産経11月13日 定額給付金 誰もが納得する配り方に
給付金は衆院選対策の色彩が濃かったが、早期解散を先送りした以上、少しでも景気対策に役立つ方法を考えたい。

私の主張に近いのが日経や産経ですが、多くの地方紙の社説も傾聴すべき指摘をされています。その様な中のいくつかを掲げておきます。

北海道新聞11月13日 定額給付金 迷走の末のばらまきだ
国民の生活を底上げするには、一回限りの給付金ではなく、社会政策の充実や低所得者層に絞った支援策を講じるのが筋だ。

信濃毎日11月13日 定額給付金 白紙に戻して検討を
定額給付金を歓迎する声もあることは確かである。ただ、低所得層に対する生活支援ということであれば、最低賃金や非正規雇用など働き方の改善と併せて検討しなければならないはずだ。そこが見えないままでは、景気の後押しにもなりにくい。
 本来は国民の信任を得た政権が実施すべき課題である。緊急という名のもとに、税金のばらまきになってはまずい。

高知11月12日 【定額給付金】国民は冷静に見ている
一九九九年に配られた「地域振興券」では、新たな消費に振り向けられたのは使用額の約32%だった。今回の調査は、定額給付金では景気刺激は不発に終わり、振興券の二の舞いになる可能性を示唆している。
 財政が厳しい状況下での多額の支出には、国民が納得できるだけの合理性と支持が要る。多少の時間はかかっても実効性を上げることが第一だ。

沖縄タイムス11月13日 [定額給付金]まともな政策か疑問だ
給付金支給をめぐるドタバタぶりは、見通しのきかない国の行き先と、政治への不安を増長させた。首相の指導力にも疑問符が付いただけでなく、与党の政権担当能力さえ疑わせるような迷走ぶりだ。

新潟日報11月13日 定額給付金 混乱の種をばらまくのか
こんな訳の分からない制度では批判と混乱を招くだけだろう。景気浮揚につながるはずもない。もはやご破算にするしかない。・・・・・・
自ら明確な指示を出さず、流れに任せる麻生首相にリーダーの資格はあるのか。「選挙の顔」として選ばれた首相の限界がきたとしか思えない。

これからどうなるのでしょうか?定額給付金の行方、解散総選挙、そして衆議院選の結果は?

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年11月14日 (金)

朝日新聞天声人語に対する苦言

朝日新聞の次のリンクの11月14日の天声人語です。(1週間を経過すると、有料になるかも知れません。)

11月14日付朝日天声人語

奥田碩トヨタ自動車相談役が、座長を務める11月12日の政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」において、年金や医療問題をめぐる報道について「新聞もそうだが、テレビは朝から晩まで厚労省の話を毎日やっている。あれだけ厚労省だけたたかれるのは異常な話」と批判したことについて書いています。

11月11日の天声人語の中に、不適切な記述があると考えます。例えば、次の部分です。

国民から負託された公権力の運用に、厳しい目が注がれ、批判が起きるのは健全なことだ。メディアはそれを担っている。役目を知らぬ奥田氏ではあるまいに、一体どうしたことか

メディアとは、マスメディアのことと思うが、批判する役目は、マスメディアのみではないはず。奥田氏の発言内容についての参考報道として次の共同の記事を掲げます。

共同 11月12日 奥田碩氏、報道を批判 「厚労省たたきは異常」

企業がスポンサーとならない自由は、私はあって良いだろうと思います。TV局は、ニュースについては、スポット広告のみのスポンサーなしででやればよいのです。新聞は、正しい報道をしていれば、販売部数が伸び、広告収入が得られます。これが基本と考えます。

なお、奥田氏の発言の内容そのものの是非については、発言の詳細やその前後の討議も分かっていないので、ここでは議論をしません。

私の言いたいことは、マスメディアが批判を担っているとするなら、マスメディア以外の人々も批判をする権利を持っていることです。大東亜戦争へと導いていったのは、軍部のみではなかった。マスメディアも、戦争協力一色に近かったと理解します。そこには、そのようなになってしまった理由が存在したと思うし、その責任をマスメディアのみに追わせることは間違いと考えます。しかし、マスメディア自身も自ら十分に反省をし、自由な批判が起こるように努力すべきと考えます。

もう一つは、「自分が批判することは正しくて、他人が批判することは間違い。」のような主張はすべきではなく、どの部分が正しくないのか、自分の意見はどうかと、具体的に個々の論点をあげ、エビデンスを示して論じるべきです。論理的思考なくして、議論することは、軍国主義一色の戦前の日本のある時の状態みたいであり、朝日新聞が最も避けようとしていることと思っていました。

ところで、「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の構成員名がこの書類の2ページ目にありますが、大熊 由紀子 国際医療福祉大学大学院教授、元朝日新聞論説委員という方がおられます。他に、読売新聞東京本社専務取締役・論説委員長も構成員となっておられます。奥田氏の発言に対してどのような発言・反論をされたのでしょうか?元論説委員が構成の1員であったことから、朝日は懇談会の議論の詳細を取材することが可能であり、批判するなら、具体的な議論をして欲しかった。大新聞の伝統あるコラムであるだけに、残念です。

まさか、田母神元幕僚長と同じように扱っていないと思いますが。奥田氏は公務員ではなく、自らの意見を述べることに制約は受けません。公務員は全体の奉仕者です。自衛官は、軍隊の一員であり、自らの意志でいかなる決定をすることも許されません。そのことにより、国民の信頼・信任が得られるのであり、他国からも侵略のための武力ではないと受け入れられる。天声人語が田母神元幕僚長のレベルと同じになると懸念します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月13日 (木)

二階経産省の聞き逃せない発言

次のニュースです。

産経MSN 11月13日 二階経産相も失言で、発言撤回

発言内容は、「二階経産相は搬送拒否の問題に触れ、「医者のモラルの問題だ。相当の決意を持ってなったのだろうから、忙しいだの、人が足りないだのということは言い訳に過ぎない」と、発言した。」と記事にあります。

そこで、発言そのものを探すとTBSのニュースにありました。次の11月10日17:35のニュースです。なお、Web魚拓も見つかりましたので、リンク切れの時は、Web魚拓(動画なし)をクリック下さい。

TBS 11月10日 妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え
TBS 11月10日 妊婦受け入れ拒否、夫が再発防止訴え(Web魚拓)

発言撤回で許される発言ではないような酷すぎる発言と思うことから、書いてみます。

1) 産科医の現状

墨東病院での妊婦受け入れ困難による悲しい事件については、10月24日の都立墨東病院における妊婦死亡で書いたように、都立墨東病院の産科医不足があります。

関連する事項を、私なりに整理してみると、次のようになります。(もし、医師の方が見られて、間違いがあれば、指摘下さい。)

a. 健康な人でも、突然体調が悪くなることがある。(例えば、脳卒中・・・・)

b. 周産期の妊婦の体調が突然急変することはある。(周産期とは、妊娠22週から生後満7日未満までの期間です。)

c. 周産期妊婦は、1人の生命ではなく2人の生命である。2人共助けるよう尽力するのが医療である。

d. 周産期妊婦の手術が必要であったり等した場合には、先ずは胎児の帝王切開による出産を実施するのが通常である。例えば、妊婦への麻酔・投薬等が胎児に対して悪影響を及ぼす可能性もあり得る。

e. 妊娠満期の40週より早い37週未満で生まれた新生児を未熟児と言いますが、周産期妊婦の体調急変は37週未満で起こることがあります。例え、満期40週での出産であっても、妊婦が重体であった場合は、新生児集中治療室(NICU)がある医療施設での出産が望ましい。

f. 体調急変した妊婦の出産は、産科医のみで対応できず。小児科医、妊婦の病気の科の医師(脳外科等)も同時に共同して対応する必要があり、更に妊婦用のICUが必要なこともある。

この辺りで、要求が過度になりそうな気もします。現実には実際に起こった時に医師がどう判断するかですから、一般論のみで議論すると間違う可能性があると思います。しかし、周産期妊婦の急変があったら、対応が大変なことは理解できます。

昔は、どうであったかと言うと、母子共に命を亡くすことがありました。厚生労働省の統計に人口動態統計というのがあります。この統計における周産期死亡率の推移は次のグラフの通りで、2007年の死亡率は1000の出産に対して3.0でした。ところが、今から20年前の1988年は、その倍以上の6.5であったのです。私は、医師の方々の尽力を高く評価します。

2007

2) 医師の超過勤務

医師の超過勤務について東洋経済On Line 11月11日が、取り上げていました。墨東病院の産科医の11月の勤務時間についてYoshanのブログ 新小児科医のつぶやきが分析しておられます。Yoshanさんの分析によれば、11月は330時間とかの勤務です。11月は祝日が2日と土日が10日あるので、普通の人は18日間の勤務で、1日8時間労働とすると144時間です。従い、330時間労働とは、キチガイ的労働をされています。

しかも、都立の病院の医師の賃金は、民間病院と比べれば、嫌になるほど安いみたいです。勤務医が、駅のそばのビルで開業医となり、夜間勤務をせず、土日は休むという生活にあこがれるのがよく解かります。勿論、開業のために、借金をすることとなり、患者が来なければ、収入はなく、リスクがあります。それでも、夢のない勤務医より、人間的生活がしたくなるのではと想像します。

そんな状態に医師を追い込んでいることは、社会にとってマイナスだけです。医師が不足しているから、医学部の定員を増加しても、それだけでは解決になりません。医師並びに医療従事者の方々に、喜びや誇りを持って働いていただけるようにすることは、重要と思います。

3) 不適切発言

私からすれば、二階俊博の発言は、トンデモの見本であり、兵庫県知事の方がよっぽで可愛いです。他人の苦しみや努力を理解できない人は、議員になるべきではないと思います。

救急搬送に関してITが機能していないとの話がありますが、これもお門違いと私は思います。1)のaからfに書いたようなことをITで伝えるより医師が電話で説明する方が、患者の状態を正確に伝えることが可能であり、効果的で適切な判断が下せると思います。ITであれば、情報は限られ、刻々と変化する患者の状態と受け入れ側の状態を反映できないのですから。医療崩壊をITの問題だとする姿勢は本質を見誤ると思います。

墨東病院の報道には、週刊文春の取材が関係している可能性を書きましたが、週刊文春の11月20日号は「妊婦たらい回し事件」最終結論 石原都知事は妊婦と遺族に謝罪せよ!となっています。読んでいませんが、東京都の責任を書いていると想像します。

調布市の飯野病院からの妊婦を杏林大病院が受け入れられないことがありました。産経MSN 11月5日 【妊婦重体】「緊急性は低いと判断した」 杏林大病院が会見 多摩地区も、以前から医療提供が困難な地域になっており、起こるべして起こった事態です。この妊婦を受け入れたのが、産経の記事にもありますが、墨東病院です。調布から墨田区まで結構距離があります。医療関係者は、このように協力して、医療を提供してくれています。しかし、この件で、NHKはケシカランと思います。ニュースでは、墨東病院のことを、「別の病院」と言っていました。世論操作をする報道はケシカランと思います。

最後に、二階発言に対して行った全国医師連盟の文書がここにあります。

| | コメント (5) | トラックバック (2)

BNPパリバによるアーバンコーポレーションとの取引

8月20日にアーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引を書いており、題名を逆にして本日は、書いているようです。BNPパリバが、アーバンコーポレーションとの取引に関する外部検討委員会の調査結果を公表しました。ビー・エヌ・ピー・パリバ証券会社による2008年11月11日の発表は、ここにあり、同ページ下部の報告書概要(PDFファイル)をクリックすると報告書がダウンロードできます。

上記についての報道としては、日経 アーバンコーポ破たん前の重要情報、パリバが非開示促す朝日 BNPパリバ、アーバンの資金調達でインサイダー取引に該当の可能性毎日 BNPパリバ:「インサイダー取引も」アーバン株売買でがあります。

BNPパリバは、発表文に次のように書いておられ、インサイダー取引規制に抵触しないと判断されています。

尚、本報告書中のインサイダー取引に関する記載について、一部報道でインサイダー取引に該当する可能性が高いとの記事がありましたが、これは委員会の見解とは異なるものと思われます。外部検討委員会より補足の説明を別途受領致しました。弊社と致しましては、本件はインサイダー取引規制に抵触するものではないと判断しております。

本日は、toshiさんのブログyuraku_loveさんのブログ会計ニュースコレクターさんGrande's Journalさん等多くのブログで本件について述べられておられました。私なりに考えてみます。

1) BNPパリバによるアーバンコーポレーションとの取引

どのような取引であったかの概要を頭に入れておく必要があるので、簿記の仕訳的に表現します。(財務諸表としての仕訳ではなく、概要を整理するための仕訳です。)

(A) BNPパリバ

私の頭に浮かぶ、BNPパリバから見た取引は次の表の通りです。

年月日 摘要 借方 貸方 備考
科目 金額 科目 金額
2008.7.11 2010年満期転換社債型新株予約権付社債(CB)の買受け アーバンCB 300億円 現金 300億円 300億円をアーバンに支払い
2008.7.11 スワップ契約の支払い受領 現金 300億円 金銭債務 300億円 金銭債務額は、スワップ契約実行に応じ確定する。
2008.7.11以降 アーバンCBの株式への転換 アーバン株式 150億円 アーバンCB 150億円 CBの転換の 株式への転換
2008.6.26~2008.7.11以降 アーバン株式の売却 現金 101億円 アーバン株式 101億円 CBの転換又はアーバンからの借株を市場売却
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 91億円 現金 91億円 スワップ契約に基づきアーバンに支払い
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 49億円 アーバン株式 49億円 スワップ契約に基づく変動差額
2008.6.26~2008.7.11以降 スワップ契約の実行 金銭債務 10億円 当期利益 10億円 スワップ契約に基づく利益
2008.8.13 民事再生法申請による期限の利益喪失 金銭債務 150億円 アーバンCB 150億円 スワップ契約解除に伴い権利義務相殺(相殺特約)

表中の年月日の順序が変になっていますが、スワップ契約は2本締結され、6月26日から7月11日の期間を対象としたスワップ契約1と7月11日以降を対象としたスワップ契約2の2種類であり、アーバンからBNPパリバへの支払いはスワップ契約1及びスワップ契約2の双方とも7月11日でした。実質は、1本のスワップ契約です。

(B) アーバンコーポレーション

私の頭に浮かぶ、アーバンから見た取引は次の通りです。

年月日 摘要 借方 貸方 備考
科目 金額 科目 金額
2008.7.11 2010年満期転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行 現金 300億円 社債 300億円 300億円をアーバンに支払い
2008.7.11 スワップ契約の支払い実行 金銭債権 300億円 現金 300億円 金銭債券額は、スワップ契約実行に応じ確定する。
2008.7.11以降 転換社債の株式転換 社債 150億円 資本金等 150億円 資本金等は、資本金及び資本準備金
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 現金 91億円 金銭債権 91億円 スワップ契約に基づきアーバンに支払い
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 損失 49億円 金銭債権 49億円 スワップ契約に基づく変動差額
2008.6.26~2008.7.12以降 スワップ契約の実行 損失 10億円 金銭債権 10億円 スワップ契約に基づく契約差額
2008.8.13 民事再生法申請による期限の利益喪失 社債 150億円 金銭債権 150億円 スワップ契約解除に伴い権利義務相殺(相殺特約)

上記は、整理であります。300億円の転換社債を発行し、そのうち150億円が転換されたものの91億円しか現金が入金せず、59億円はスワップ契約による株式価格差やスワップ手数料のようなものでなくなりました。資本取引・損益取引の混同はなんて、難しいことは考えていませんので、ご了承下さい。

スワップ契約の内容は、アーバンがBNPパリバに300億円を支払い、BNPパリバはアーバン株のその日の出来高の12%~18%にVWAP(その日の平均市場価格)を掛けた金額の90%をアーバンに支払う契約です。CBの方は、1株344円の固定金額で株取得となり、BNPパリバは市場価格で売却し一見損失となるが、その見合いがスワップ契約の差と等しいわけで、更に90%相当しかアーバンに支払わないから10%儲かります。

アーバンから見ると、一見損ですが、初めから株価下落を覚悟して、時価増資をし、手数料を10%支払ったのと同じです。もし、スワップ契約を隠しておけば、BNPパリバがCBを引き受けて資金援助をしたように誤解が生まれれば、株価下落は少ないか、うまくいけば、株価上昇も期待したのかも知れません。

2) BNPパリバはインサイダー取引に該当するか

最終的には、裁判所が決めるのでありますが、私の無責任発言においては、「抵触」とはならないだろうと、思います。理由は、BNPパリバ自身の発言がそうであることと、インサイダー取引のリスクは大きすぎるので、BNPパリバ自身も負わないだろうと思うことです。

別の言葉で言えば、上の仕訳にあるように10億円を短時間に儲けたのです。最終的には、8月13日の仕訳のように特約により債権・債務相殺でチャラパーです。あえてリスクを冒す必要がない取引をBNPパリバは仕組み、契約し、実行することに成功したのです。BNPパリバの発表によると、利益は総額11億7977万円です。

しかも、問題視されることが予想された取引です。村上代表ではないですが「金商法、インサイダー取引のプロ」です。アマチュアのアーバンが冒しても、BNPパリバは冒さないと思います。

但し、BNPパリバの関係者が個人で、アーバン株を売買していれば、別です。しかし、市場で最大300億円の株を売り込む話です。従い、値下がりが確実なわけで、売りを行うために、借り株ができなければならないことから、個人でインサイダー取引をしようとしても、普通より困難だったと思います。

アーバンの関係者であれば株を保有していたと思えることから、むしろインサイダー取引の恐ろしさは、そちらに向かう可能性もあるのではと思います。

3) BNPパリバの問題点

外部検討委員会は、インサイダー取引については、判断する立場にないので判断を差し控えるとしています。しかし、他の点については、問題点を指摘しています。

(A) アーバンによるスワップ取引の非開示

私も当初よりこの点を問題にしたし、金融庁の臨時報告書と有価証券報告書の虚偽記載による合計1231万円の課徴金もスワップ取引に関して虚偽の記載を行ったことによる課徴金です。

報告書は、「アーバンは当初はスワップ部分を開示する意向を示していたが、最終的に「非開示」とする姿勢に転じています。その経緯は明らかではないが、BNPパリバが非開示とするよう働きかけたことも一因となっていることが十分に推測されます。」と書かれてあり、推測がありうるとのことです。

BNPパリバからアーバンに対して開示を勧める文書は残っていなかったと判断してよいと思います。そこまで、すべきかの議論はありますが、もし私がBNPパリバに勤めていたとすれば、自分自身の身の安全のために、個人名の文書でよいから、何か残したかも知れません。めちゃくちゃな個人主義であり、KYせずとの非難があるかも知れませんが、仕事とはそれほど冷酷かも知れません。

(B) ガバナンス

もっとも難しいものです。インベストバンクなんて人が次から次へと変わっていく。チームでやっている面もあるが、個人プレーの方がずっと大きかったりです。でも、そこを外銀なんかよくやっているなと逆に思ったりします。

多分、BNPパリバも相当にしっかりしたガバナンスを構築されておられたと思います。それでも、完璧には行かず、そしてガバナンスの最重要点は、その組織の長です。長が、しっかりしていれば、未然にあるていど感じて、行動をします。組織の長(子会社であれば、子会社のCEO)に求められる役割で、最大の仕事は、顧客との関係ではなく、その組織のガバナンスの弱点を補うことと私は思います。

それからすると、リーマンを買われた野村さんも大変だな。でも、野村さんだから、やり遂げられるかなと思います。

4) 今後

今後は、どうなるのでしょうか?朝日の11月12日は金融庁、BNPパリバを行政処分へ アーバン増資巡りなんて書いていますが、行政処分まで行くのでしょうか?分かりません。

刑事罰には、未だ誰も問われていないが、あり得るのか?検察の方も、ウォッチして追いた方が良いのでしょうか?私にとっては、沈みゆくアーバンコーポレーションに乗っかっているアーバン経営者が最後の悪あがきをしてしまった事件と思えます。従い、一般投資家を欺して、金をとったホリエモンの私のイメージとは少し異なっています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月10日 (月)

バラク・オバマ政権のCHANGE政策

米大統領選でバラク・オバマ氏が勝利して1週間が経とうとしています。なお、このブログを書いている時点で、ミズーリ州において、ジョン・マケイン氏が5,800票強リードしているものの、同州の選挙が未だ最終確定してないようですね。もっとも、ミズーリ州の選挙人(electoral votes)数は11であることから、同州の結果を含まない投票結果が364対162ですから、マケイン氏が勝っても364対173です。

バラク・オバマ氏は選挙活動の標語としてCHANGEを掲げていました。現ブッシュ政権に対する不満が勝利の一因であったと思いますし、CHANGEとは現ブッシュ政権の政策からの変更と考えます。勿論、変更が困難・不可能という政策もあるはずで、バラク・オバマ政権のCHANGE政策とは何かを考えてみたいと思います。

1) 経済成長

次のグラフは、1990年から2008年第3四半期までの米国の四半期GDPの前期比成長率(年率換算)の推移を示しています。

Usgdp199020083q

大統領選の年は、8年前の2000年が現ブッシュ大統領の選出年であり、そのさらに8年前の1992年がクリントンで、その4年前の1988年がブッシュ父でした。大統領選の1992年、2000年、そして今年の2008年は、丁度が米国経済が悪かった時と重なっています。

多分、オバマ大統領になれば、米国景気も回復に向かうのではと期待されます。

2) 連邦政府予算

同じ1990年から2008年までの連邦政府予算のGDP比の推移が次のグラフです。

Usbudget19902008

このグラフを含め予算関係の年は、米国連邦会計年度であり、2007年とは2006年10月1日から2007年9月30日までの1年です。

Off-Budgetは、主として年金関係であり、収支のブレはあまりなく、常に少額の黒字を継続中です。On-Budgetは、クリントン政権で赤字幅が縮小し、2000年にごくわずかの黒字となったが、それ以降は赤字に戻りました。その要因の一つである個人所得税と法人税の税収推移は次の通りです。(連邦税のみであり、州税の個人所得税と法人税は含んでいません。)

Usfederaltax19902008

オバマ政権の政策として、やはり高所得者と中間層への課税強化は、あり得るのではと思いますが。

3) 軍事費

オバマ政権の予算関連の政策としては、軍事費の削減があり得ると思います。軍事費の推移をグラフにしました。

Usdefense19902008

丁度ブッシュ大統領になってGDP比で3%から4%へ、予算の中の割合で15%から20%へと増加しています。1年という短期間ではないが、元のクリントン政権の終わり頃の割合に戻す可能性があると思います。そのための手段としては、対話と同盟国への働きかけと思います。

4) 経済政策

世界中がオバマ政権誕生後の経済政策を見つめていると思います。その中で、注目すべきは、金融危機対策ではなく、自動車ビッグスリー対策がより大きな当面の課題だろうと私は思います。ビッグスリーで失敗すると、大量の失業発生と共に、医療・年金の破綻から社会不安へと動く危険性があると思います。バラク・オバマ氏が、これからどのようなブレーンを集め、打開策・解決策を打ち立てていくかが興味あるところです。但し、一方で自動車問題は、あまりのんびりとしていられないので、どのように動くか分からない部分が多い。しかし、米国が必死になっても生き延びさせねばならない産業と思います。

金融関連で言えば、米国の資本主義が余りにも発達しすぎて、マネーゲーム資本主義の色彩が濃くなり過ぎた面がある。但し、資本主義自身とは、そもそもマネーゲームと言える部分があり、マネーゲームをうまく取り込むことにより、資金供給や生産、将来の投資が適切に実施され、社会が発展するようにコントロールしているとも言える。常にルール改正と新ルールを逆手利用した新手法との追いかけっこの面がある。そのサイクルがPC・ITと言った世界に金融工学が加わり、発達速度がやけに速くなり、ルールが追いついていないことになっていると私は感じる。

オバマ政権の経済政策の課題は、マネーゲーム資本主義に対するルール整備であると思う。ルール整備は、規制ではない。参加者に対する公平なルールであり、公平なルールこそが自立的な発展をもたらすのである。ルール作りは、容易ではなく、何年かを要するし、またそれを更に発展させ、手直しすることも必要である。

バラク・オバマが大統領に就任すれば、あれだけCHANGEと言っていたのだから、相当変わるのではと思い書いてみました。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年11月 9日 (日)

定額給付金の行方

定額給付金に関するニュースを見てみると、

日経11月7日 経財相、定額給付金の辞退案に反対 政府内で意見の違い
日経11月9日 ゆれる麻生節 歯切れはいいが…調整不足を露呈

と言う現状ですが、この行方は、どうなるのかなと思います。

(1) 所得税

定額給付金を受領したら、所得税や住民税はどうなるのでしょうか?雑所得として、課税所得に算入されるのか、それとも宝くじのように、非課税所得になるのでしょうか?

ちなみに、宝くじについては、「当せん金付証票法」13条により所得税を課さないと定められています。定額給付金を配布するとなると、その配布を実施する法律で、「所得税を課さない。」と定めるのでしょうか?

あるいは、雑所得として扱われるなら、給与等の金額が2千万円以下の給与所得のみの人は、所得税法121条により確定申告を要しない所得となり、実質非課税となります。支払われる対象者が、各個人であれば、本人の所得がなければ、配偶者が高額所得者であっても所得税・住民税の課税はないこととなる。

もっとも、「高額所得者に辞退を呼びかける形」よりは、まだ良いかも知れない。税の上では、辞退しましたと宣言し、実際には受領するといった形を防止する策が、ボランティア的制度だと構築できるのかなと思いますから。

それからすると、定額給付金を支給するには、法律を制定する必要があるのだから、「速やかに実施するためには・・・」との議論もおかしいと思う。住民税は、賦課方式で、市町村課税当局から各個人に納付書が送付されている。何故、納付書の送付が可能かと言えば、各個人の所得が捕捉されているからであり、高額所得者を対象外とすることも容易に可能なはず。この辺りも、今後国会に移れば議論されるのかなとも思います。

(2) 根本解決

定額給付金の効果はともかくとして、根本解決とは思えない。もし、根本解決なら、将来にわたっても継続すればよいのですが。消費税か何かで「増税をして、後で毎年一人12,000円をキャッシュ・バックしまーす。」なんて、どこかのキャンペーンみたいです。

税金はキャッシュ・バックのために集めているのではないはず。思うに、今の日本の問題として、農業人口の高齢化と若年層労働問題がある。若年層労働問題とは、フリーター・低賃金・不安定雇用の問題である。若年層労働問題の原因は、若年層の問題ではなく、社会の問題であり、政治の問題であると考える。この解決のために、若年層を農業に引き寄せることである。農業問題は、食糧問題のみならず自然環境問題でもあるはずだし、日本の地方を維持していくに重要な問題である。

高齢化した農業従事者を助け、農地を借り受け、耕作・生産・出荷する。現状において、採算性を見込むことは困難と思う。そこで、そのような組織、法人をつくり、活動することを税金で支援する。その組織・法人は若者を雇用し、OJTで訓練する。若者は、日本の農業の将来像を考え、発展させる。そんな夢に向けての支援活動も税金の一つの使い方ではないかと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月 6日 (木)

小室哲哉事件の特捜のねらい

本日は、toshiさんのブログが、私のブログが書いたことに触れて書き出しておられたので、驚きました。

toshiさんのブログや会計ニュース・コレクターさんのブログもなんとなく触れておられました。年利60%の高利資金貸付が存在していたとなると、その証拠を確保するために特捜が動いたのかなと、私は思いました。

日経 11月5日 小室容疑者、年利6割で借金 現金入手急ぎ犯行か

読売 11月4日 小室哲哉容疑者ら3人逮捕、著作権巡り5億円詐取の疑い

日刊スポーツ 11月5日 小室哲哉容疑者逮捕、悪質手口明るみに

A. Cホールディングスのホームページはここにあります。2008年3月末中間期の連結貸借対照表をみると、資産152億円で、そのうち現金預金が34億円、土地25億円、投資不動産22億円で、その他が71億円です。一方、これ対し、負債は12億円であり、純資産額が139億円の負債がほとんどない会社です。

日刊スポーツには、「かつて仕手戦の舞台となった投資・建設事業持ち株会社から“高利融資”を受け・・・」とあり、年利60%相当の融資があったのでしょうが、おそらく単純な金銭消費貸借契約ではなく、株式の現先売買を組み込んだ複雑な目くらましの契約で、その資金使途も相当特殊であった気がします。そうであれば、特捜が小室事件で乗り出してきたのが、分かります。

それと、日本経済も不況に入ろうとしていますが、生じる現象は下請けいじめです。銀行の貸し渋りは、貸倒懸念先に真っ先に生じるが、下請けいじめは場合によっては、下請け全社に対してです。いじめられている会社は、発注先から「景気が回復すれば、元に戻す。」と言われれば、受けざるを得ない部分があり、自分自身の役員報酬なんて、とっくの昔にあきらめているが、さらに地獄に堕ちていく。それを、ヤミ金融が待ち受けているとしたならば。特捜のもう一つの狙いは、ヤミ金融に対する一罰百戒なのでしょうか?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月 5日 (水)

小室哲哉逮捕って変な事件ですね

小室哲哉逮捕って私には、全然ピントこないです。比較的色々書いてあるのが、次の朝日の記事でした。

小室哲哉氏、逮捕へ 著作権譲渡話めぐり5億円詐取容疑
小室哲哉容疑者ら逮捕 著作権巡り5億円詐取認める

自作の曲や歌詞など806曲の著作権を10億円で譲渡する内容の仮契約を兵庫県芦屋市の男性投資家(48)と結び、5億円をだまし取ったようですが、一つ目はこんなことで、5億円もだまし取れるのかと思いました。仮契約を締結した対象曲のうち、主な約300曲の著作権をそれ以前にトライバルキックスなど2社に譲渡していたというが、それなら、その事実は直ぐに判明したはず。調査もせずに、5億円を払ったのだなと思いますが、世の中には欺される人がおられます大型のオレオレ詐欺事件ということでしょうか。

ところで、これだけだったら、詐欺罪ではあろうが、何故特捜部なんでしょうか。著作権法77条により著作権の移転は、登録しなければ、第三者に対抗することができないと定められているが、トライバルキックスなど2社への譲渡についても、登録がなされていなかった。そして、小室哲哉は昨年10月、投資家に対する5億円の債務がないことの確認などを求める訴訟を神戸地裁に起こしたともあり、仮契約自身も相当曖昧であったのでしょうか?

未だ報道されていない部分が隠れているような気がしました。特捜部がわざわざなもので。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2008年11月 2日 (日)

日銀利下げと株価

10月31日に開催の日銀の政策委員会は、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を年率0.3%前後とすることを決定しました。日銀発表は以下です。

日銀発表 10月31日 金融政策の変更等について

1) 賛成・反対は4:4ではなく7:1の多数賛成?

当初ニュースを知った時、4:4の同数で、現状維持の委員が4名おられたが、賛成者に白川総裁が回っていたから、この引き下げが決定したのかと思いました。でも、このロイター・ニュース10月31日 日銀が政策金利0.3%に引き下げ、総裁「1カ月で経済・金融変化」によれば、「決定に反対したのは4人だったが、白川総裁は決定会合後の会見で、このうち3人は0.25%への利下げを主張したことで反対に回ったことを明らかにした。1人は現状維持だった。」と報道しています。

0.5%から0.3%とするか、更に引き下げ幅を大きくして0.25%にするかについては、それほど大きな違いはなく、今後の金利政策の柔軟性を高めておくためには、0.25%より0.3%の方が、一応は大きかったかなと思う程度です。いずれにせよ、政治的圧力とは無関係に、日銀独自の判断として政策委員会の決定をされたと思うことから、支持いたします。

参考まで、ロイターに2005年1月からの政策金利と消費者物価上昇率のグラフがありました。ここをクリックすると出てきます。

2) 金利引き下げの影響

私は、一番インパクトがあるのが、為替レートと考えます。為替レートは、いくらが妥当なのかは極めて難しいのですが、不況下の円高というのは、望ましくないというか、普通ではないことと思います。今の日本の不況は、その原因が米国発だと麻生総理は言っておられますが、私にすれば、そんな単純ではなく、10月22日に世界は大不況に突入か?で書いたように、もっと広範囲な地球規模の世界同時不況であり、むしろ日本は今のところ傷が未だ浅い状態のような気がします。

世界が同じように不況になるなら、外国為替レートは動かないはずですが、金利の影響があり、米ドルやユーロが利下げをした中で、円金利を据え置いたままでいると、どうしても円に資金が集まり、その結果円高が進行すると考えます。

3) 株価と外国為替レート

最近のマーケットは、株安と円高の同時進行です。株価と為替を同じチャートで重ねて見るとよく分かります。左軸は日経平均で、右軸が米ドル為替レートです。

Nikkeiexrusd0811

8月初めまでは、為替レートは比較的安定しており、株価は緩やかな下降であった。それが、8月に入ってから動きはほぼ同一となり、9月末頃から急激な下落となっていった。ユーロについても、同様にチャートを作ってみましたが、ほぼ同じです。

Nikkeiexreuro0811

円高となっているのは、円を買う動きの方が活発であることが、その原因のはずですが、その円資金がどのような形で保有されているのか、現状がよく見えていません。とりあえず円高の流れを抑制するとなると政策金利を低くすることでの対処しか有効でないような気がします。

1米ドルが100円を切り83円位までいったのは、1995年5月頃でした。1990年代の為替と短期金利、長期金利がどうであったかのチャートを掲げておきます。ちなみに、1995年5月に月間平均レートが83.19円/U$となり、この時のオーバーナイト金利(月平均)は1.31%でした。為替が100円/US$に戻ったのは、1995年10月であり10月のオーバーナイト金利は0.47%でありました。

Exrateinterest0811a

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年10月 | トップページ | 2008年12月 »