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2008年12月10日 (水)

金融機能強化法の改正案が12日成立の見込み

金融機能強化法の改正案が成立する見込みとなりました。

日経 12月9日 金融機能強化法の改正案、12日に成立へ 自民、民主が合意

1) 成立に合意と言うが

面白いですね。報道では「11日の参院財政金融委員会で採決するが、この委員会とその翌日の12日に開催される参院本会議では野党の反対多数で否決され、同日中の衆院で再可決成立することで固まった。」と言うのですから。

中身より、メンツみたいな感じでしょうか?

2) 改正と言うが

改正と言うが、賞味期限延長法の様な気がします。例えば、この法案に書いてあるのは、次の第3条第1項のような条文です。分かりやすいように、その下に、第3条第1項を掲げておきますが、「平成20年3月31日まで」を「平成24年3月31日まで」と変更しただけです。

第三条第一項中「平成二十年三月三十一日」を「平成二十四年三月三十一日」に改め、「第十五条第一項」の下に「及び第三十四条の二」を加え、同条第二項中「平成二十年三月三十一日」を「平成二十四年三月三十一日」に改める。

預金保険機構(以下「機構」という。)は、金融機関等(銀行持株会社等を除く。以下この章において同じ。)から平成二十二十四年三月三十一日までに当該金融機関等の自己資本の充実のために行う株式等の引受け等(当該金融機関等が銀行等である場合にあっては、株式の引受けに限る。)に係る申込み(第十五条第一項並びに預金保険法 (昭和四十六年法律第三十四号)第五十九条第一項 、第六十九条第一項、第百一条第一項及び第百五条第一項の規定によるものを除く。)を受けたときは、主務大臣に対し、当該金融機関等と連名で、当該申込みに係る株式等の引受け等を行うかどうかの決定を求めなければならない。 

3) 農林中央金庫

上に掲げた第3条1項に該当する金融機関等とは

1 銀行、2 長期信用銀行、3 信用金庫、4 信用協同組合、5 労働金庫、6 信用金庫連合会、7 信用協同組合連合会、8 労働金庫連合会、9 農林中央金庫、10 農業協同組合連合会、11 漁業協同組合連合会、12 水産加工業協同組合連合会、13 銀行持株会社等ですが、最後の銀行持株会社が除かれていることから12種類ですが、色々あるものです。

この法案は、11月5日衆議院財務金融委員会で可決された際に附帯決議がなされています。附帯決議の内容は、続きを読むに入れておきましたが、農林中央金庫と新銀行東京に関連して附帯決議がなされています。

そのうちの一般の人に馴染みが薄いのが農林中央金庫です。馴染みが薄いのは、当然のことで、何故なら出資者は会員である農業協同組合(JA)、漁業協同組合(JF)、森林組合(森組)、およびそれらの連合会、その他の農林水産業者の協同組織等で2008年3月31日現在で4,260団体ならびに優先出資者となっている金融機関、証券会社等です。現在の資本金2兆160億円のうち、会員による出資金が1兆9910億円で98.8%が会員による出資です。また、預金が2008年9月30日現在で38兆3119億円ありますが、この預金の大部分は会員である出資者で、そのうちでも農業協同組合関係が85%以上を占めています。

農林中金の2008年9月末の連結貸借対照表がここにありますが、その概略は、純資産が2.4兆円(うち資本金が2.0兆円)で負債が55.6兆円です。そして、この負債と純資産の合計58.1兆円に対する資産は、貸出金8.8兆円、有価証券32.9兆円、それら以外が16.4兆円であり、56.7%が有価証券での運用です。

農林中金は、農林中央金庫法により設立された法人であり、農林中央金庫法第1条には、「農林中央金庫は、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合その他の農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関としてこれらの協同組織のために金融の円滑を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資することを目的とする。」とその目的が定められています。農林水産業と農林水産業者のための組合組織としての金融機関であり、農林水産事業に資金貸し付けがなされるのが本来の姿であると思います。しかし次の表(農林中金ディスクロージャー誌より)のように、貸付金の相手に農林水産事業者は少なく、しかも貸付金より有価証券が大部分といびつな形になっています。

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日本の農業は、自給率が低下し、働き手が高齢化し、価格競争力が多くの農産物で失われておりと悪循環に陥っていると思います。その結果が、農林中金の財務状態であり、預金はあるが、その運用は有価証券となっているという変な形になっていると考えます。有価証券が多い為に、2008年9月末のその他有価証券評価差額金は1兆円のマイナスです。その結果は、この1兆円を超える資本調達です。仮に32.9兆円の有価証券が10%価値が下がれば、3.3兆円なので、増資後の純資産が1兆円増加しても3.4兆円なので、ほぼ同じです。最も、1兆円キャッシュが増えても、どうするかまた問題が増えます。有価証券の明細を分析していないので、これ以上述べることはしませんが、実情は大変だと思うし、その原因が日本の農林水産業の構造的問題に起因しており、経営が悪かったと単純に言える状態ではないことを指摘しておきます。農林中金に関しては、金融機能強化法なんてレベルではない、農林水産業振興基本法のようなものが必要ではないかと思います。

4) 金融機関に対する資本増強

金融機能強化法の改正案が成立するのでしょうが、実際に個別の金融機関の再編や資本増強は何時になるのか興味があります。即ち、現在の状況では、自民党は衆議院選で負ける可能性があります。そうなると、今回民主党が反対するものの、実は資本増強時の与党は、民主党、あるいはXX連立だったりして。そう考えると、皮肉の皮肉、訳が分からない。

金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 農林中央金庫及び農協系統金融機関は、本法に基づく公的資金注入の対象となることにかんがみ、貸出し等の金融業務の実施に際しては、厳正な政治的中立性を確保すること。

 一 農林中央金庫をはじめとする農協等系統金融機関の農業融資及び資金運用の実態については、その一層の開示に努めること。また、農林中央金庫については、その使命にかんがみ、農林中央金庫に対し公的資金を注入した場合には、農林水産行政に深く関わった理事長については、その報酬等の処遇情報は、自主的な開示がなされるよう、強く促すこと。

 一 公的資金注入を受けた協同組織中央機関等については、その内容を、国会に報告すること。

 一 農林中央金庫をはじめとする農協等系統金融機関は、農業者等の育成、農林水産業の発展を図ることを使命としていることにかんがみ、その資金については農業者等に対する金融の円滑化を一層図るとともに、市場運用については、十分留意するものとすること。

 一 地方公共団体が支配株主となっている金融機関については、支配株主である公共団体がその資本の充実について一義的に責任を持つこととすること。

 一 改正法の運用に当たっては、その趣旨である「中小企業の金融の円滑化や地域における経済の活性化」を旨とし、経営者の責めに帰すべき事由により経営難に陥った個別金融機関の安易な救済を目的とする運用は厳に慎むこと。

 一 改正法の趣旨である「中小企業の金融の円滑化や地域における経済の活性化」を確実にするために、政府答弁に基づく「金融検査マニュアルの見直し」の迅速な実施と周知徹底を行うとともに、政府において中小企業の資金繰り状況の把握に努め、その結果に基づき、速やかに必要な対応に努めること。

 一 中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしを防止し、地域への貢献や中小企業に対する金融の円滑化などの情報を積極的に開示するよう、金融機関に対して要請する。

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