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2008年12月15日 (月)

近江八幡市は病院のPFI解約方針

1月30日のエントリー 近江八幡市PFI病院の倒産の恐れで書いた近江八幡市立総合医療センターのPFI契約を解約する方針を近江八幡市が決定したと報道がありました。

朝日 12月14日 病院PFI、初の契約解除 近江八幡市、違約金20億円

20億円は、誰のお金だと言いたい所です。1月30日に書いたことから、続けます。

1) 病院の平成19年度決算

こちらの近江八幡市の公営事業の状況の数字によれば、平成19年度の病院事業は27億57百万円の赤字で、一般会計からの繰入が8億5千万円です。人口が68,267人(平成17年)の近江八幡市ですから、一人4万円強です。従い、金額的には定額給付金より大きい。近江八幡市の全員が、定額一時金を市に寄附しても、赤字が埋まらない。あるいは、一般会計より繰り入れた8億5千万円を人口で割ると12,500円弱になり、丁度定額給付金と同じぐらいです。なお、平成19年度の損益計算書を続きを読むに入れておきます。

こちらに、平成20年9月10日開催の近江八幡市議会定例会の議事録があり、議事録によると次の通りです。(午後3時4分再開後の日本共産党加藤昌宏議員の質問に対する平野幸男総合医療センター事務長の答弁からです。)

 単位:百万円 平成17年度決算 平成18年度決算 平成19年度決算 平成19年度予算
医業収益 7,620 7,548 9,357 8,673
医業費用 7,418 7,780 12,114 9,795
医業損益 202 -232 -2,757 -1,122
医業外収入 201 836 - 782
医業外費用 392 742 - 1,036
経常損益 11 -138 -2,757 -1,376
年度未処理欠損金 11 -299 - -2,658

医業収益は予算と比較して7.9%増となっているが、費用は23.7%増となっている。こんな経営ってあるんですか?と思います。

2)PFI解約は当然

議事録を読み進むと、解約以外考えられなくなります。これでもPFIを続行しているなら、背任行為に思えます。議事録の次の部分です。

(加藤昌宏君) それでは次に、PFIとの交渉の問題について。
 市の直営という問題については、基本的には双方が一致されたということですが、あり方検討委員会もそうですけれども、監査委員もそうですけれども、直営とSPC委託との費用の試算について提案されていましたが、そういう内容について検討、計算されたのか、お伺いをしたいと思います。

総合医療センター理事(岡田一君) 直営の場合とSPCとの委託との経費の違いということでございますね。この分の違いにつきましては、いわゆるそれぞれの委託業務につきまして、SPCの経費という部分が入っておりますので、少なくともその部分については、直営の場合は安くなるということでございます。ただいずれにいたしましても、各業務ごとの見直しというふうな部分でございますね。例えば清掃であるとか、あるいは警備であるとか、そういうふうな部分につきましても、それぞれの業務の見直しというものは必要になると思います。
 以上でございます。

直営の方が安くなると明確に答えています。この質疑の後に、PFIの金融に関することにも話が及ぶが、当然明確な答弁はできません。もともと、PFIとして、民間に投げていたのだから、近江八幡市の手が届かない所ですから。

3)何故PFIであったのか

1月30日に書いたように、何故PFIを選んだのか、その説明をした文書が私には見あたりません。例えば、ここに近江八幡市の平成13年5月付の「近江八幡市民病院整備運営事業実施方針」があります。PFIについての説明は、1ページ目に次のように書かれています。

さらに、本事業は、民間事業者の資金、経営能力及び技術的能力の活用による効率的な病院整備・運営の実施と、市民に対する創意工夫に満ちた良質な病院サービスの提供の実現を目指すべく、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11 年法律第117 号。以下「PFI法」という。)に基づき実施するものとする。

ごまかしが行われていたのではと思えてしまいます。更には、ここに、平成13年6月8日付の「近江八幡市民病院整備運営事業実施方針等に関する質問回答集」があります。しかし、この中に、私が見た限りでは、何故PFIかの回答はありませんでした。

最も、そうかも知れないのです。この近江八幡市立総合医療センターの病院の経緯という文書によれば、「平成13年03月PFIによる新病院建設決定」と書いてあるのです。順序が逆であります。事業の基本方針を決定することが、最重要であるのに、決定後に、質問を受け付け既定路線を走ろうとしていたように思えます。

4)今後すべきこと

先ずは、PFIの解約ですが、その前に、近江八幡市民に対して、20億円の解約金・違約金の根拠を説明すべきです。そして、解約しなければ、更に損失が広がり、この事態に至った以上20億円で解約することが最小限度の損失で抑える方法であることを説明すべきです。私が、近江八幡市のWebを見た限りでは、残念ながら見あたりませんでした。(20億円は、近江八幡市民一人当たり3万円弱の金額です。

何故PFIを選択してしまったのか、損失の予測、リスクの予測等々はできなかったのか。適切な事業計画、事業計画の検討、PFIとしない直接経営等の代替案との事業比較、計画段階における適切な情報公開、公聴会はなされていたのか。課題は、限りなくあります。市民の税金で行う事業であるからには、適切な事業推進が必要です。この調査を実施することが、必要であり、またその調査報告書を公開することです。(サイゼリヤやアーバンコーポレーションについて、多くのアクセスを頂いていますが、サイゼリヤやアーバンコーポレーションもあのような情報公開は実施しています。)

PFIは、民間事業であり、地方自治体は損をしないとの考えがあったとしたら、大間違いです。むしろ病院を現時点では認められていない株式会社が経営するよりも不合理な制度がPFIであるとも言えます。何故なら、PFI事業とは、フレキシビリティーが働きにくい事業だからです。私は、病院をPFIで実施することは、勧めません。

万一、PFIによる事業実施の決定プロセスにおいて違法行為があったなら、損害賠償を求めざるを得ないと思います。なお、実施方針には、財団法人 日本経済研究所と株式会社 病院システムをアドバイザーとして起用すると書いてあります。この人達は、何ものでしょうか?少なくとも、アドバイザーが提出した報告書を全て完全公開すべきと考えます。もし、間違った提案をしていれば、アドバイザーに対しても損害賠償を求めるべきです。(そこまで責任を持った信頼できるコンサルタントを起用すべきです。コンサルタントも、大変で、人ごとではありませんが、無責任なことを言ってはならないと、心して私は仕事をしています。)

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コメント

平成13年当時に誰がPFIを選択したのか?

答えは簡単です。
当時の市長です。
市役所職員は市長の方針に従っただけですね。
逆らえば左遷・降格です。
そのような市長を選んだ市民の責任です。

投稿: NSR | 2009年1月28日 (水) 00時26分

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