オリックスの懸念
「火のない所に、煙は立たない。」でしょうか?オリックスの次のような、プレスリリースは気になってしまいます。
12月5日 証券取引等監視委員会への調査依頼について
12月9日 短期流動性について
Yahoo株価チャートを見ても、この6月間右肩下がりです。
1) 5年もの借入には13%以上の金利上乗せ必要
J-CDSの5年CDS(Credit Default Swap)のオリックスの参考値が1312.5ベーシスポイントです。年率の%では、13.125%です。通常金利に、これだけ上乗せしないとオリックスは資金調達ができないと考えるべき参考値です。
J-CDSの説明は、このCDS参考値公表制度要領(PDF)をご覧下さい。東京金融先物取引所が、発表している参考値です。CDS参考値は、このページから見れます。ちなみに、オリックスも6ヶ月前の6月中頃は1%強でした。6月以降の推移は、以下の通りです。
10月頃から急激にCDS参考値が上昇したのが分かります。CDS参考値は、貸倒リスク(倒産リスク)参考値とも言えるでしょう。オリックスの1312.5を分かりやすいように、他の会社と比較すると、自動車メーカーはトヨタ202.2、ホンダ231.4、日産514.8であり、低い会社として関西電力、中部電力、東京電力は46.0、46.0、46.66があります。
正直、1312.5は高いです。
2) オリックスの財務内容
ここに第2四半期報告書があります。2008年9月末までなので、CDS参考値が高くなる前です。しかし、貸借対照表は現在もほぼ同じと考えられます。8.9兆円の資産のうち、3.6兆円が営業貸付金で、リースは2.1兆円で、有価証券が1.2兆円あります。純資産が1.2兆円で、負債が7.6兆円です。負債の中で、短期借入金1.3兆円と長期借入金4.5兆円があります。
問題は、短期借入金のなかにC/P(コマーシャル・ペーパー)も入っていると思いますが、返済をするための資金調達のコストは、金利上昇が避けられないと思えることです。もし、5年CDS参考値が13%故、5%高くつけば、650億円の年間金利負担増であり、10%高ければ1300億円増です。赤字転落の可能性もあります。
有価証券の中に、日本・海外の地方債が2575億円あるのですが、CDO(Collateral Debt Obligation、オリックスはモーゲージ担保証券と呼んでます。)が4946億円あります。このCDOの中身は不明ですが、CDS参考値が13%になっている理由は、このCDOかも知れない。あるいは、営業貸付金3.6兆円の不良債権の割合が高いのかも知れない。このあたり、無責任に勝手なことを言ってはならず、慎まねばならないのですが、オリックスのCDS参考値1312.5ベーシスポイントから想像をたくましくしました。
3) 他にCDS参考値の高い会社
オリックスより高い会社があります。アイフル2870、武富士2480で、プロミス1300はほぼ同じ。他に1000以上の会社は、日本航空1550や、最近高くなってきて有名なソフトバンク1011が見受けられます。
消費者金融も大変なのですが、オリックスより貸付金利が高いはずなので、少しはましかな。でも、2000以上なんて、消費者金融が資金調達をサラ金からしているような感じに思えます。
4) 金融機能強化法の成立
金融機能強化法(賞味期限延長法)が12月12日日経 金融機能強化法が成立 予防的な公的資金の注入可能にの報道のように成立しました。12月10日のエントリーで書いたように、金融機能強化法が対象としているのは、金融機関であり、ノンバンクは対象外です。しかし、この日経12月12日 政投銀、CPを直接購入 政府検討、企業の資金繰り支援のように、政策投資銀行が企業のC/P(コマーシャルペーパー)を購入することもするようです。そうすれば、優良大企業の資金援助は可能です。
オリックスは、どうするかですが、オリックスの資金貸付先の支援も必要だから、多少は援助すべきと思えます。但し、市場を無視してはならず、その場合は、CDS参考値並の市場貸付金利でC/P買い取りをすべきと考えます。
オリックスはあおぞら銀行の株式を保有しており、9.09%保有株主です。しかし、政府支援は、あおぞら銀行に直接すべきです。
重要なのが、中小企業の金融支援ですが、私は金融機能強化法でするなら、信用金庫、信用組合といった本来の中小企業金融を行うべき金融機関を強化して実施すべきと考えます。但し、必要に応じて、信用金庫、信用組合の再編を推進し、合理的に金融がなされるようにすべきです。
5) ヤミ金融
心配なのが、ヤミ金融です。消費者金融の財務状態を調査していませんが、アイフル2870、武富士2480のCDS参考値なんて、利息制限法より高いので、資金調達が失われたと同然。タダでさえ、グレーゾーン金利の返還をする必要があるのに、新規消費者ローンなんて考えられない。
その結果が、どうなるのか。ヤミ金融がはびこることを恐れます。ヤミ金融なんて、消費者金融のように優しくはないです。グレーゾーン金利や出資法違反金利を取り戻そうとしても、不可能に近い。一方で、藁をも掴まざるを得ない人はいると思います。
ここは、地方自治体等で、生活支援金融をされておられる人達に是非頑張ってもらいたいと思います。政府も、金融機能強化法、大企業C/P買い取りのみならず、生活金融支援を頑張ってもらいたい。麻生総理の緊急記者会見なんてありましたが、残念ながら生活金融支援については、ほとんどないと感じます。自殺者多発なんて、嫌です。
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コメント
日興コーディアル証券でオリックスの122回社債が4.12%で売り出されているのを見て驚いて、CDSをキーワードにココにたどり着きました。1312.5は異常ですね。消費者金融で借金してビジネスしているような感覚でしょうか。オリックスの社債買わなくてよかった…。東京金融先物取引所でCDSの値が分かるとは知りませんでした。社債を検討するときにベンチマークにさせてもらいます。乗ってない企業の場合はどうしよう…。
投稿: quarter | 2008年12月15日 (月) 22時35分
quarter サン
日興コーディアル証券でオリックスの122回社債が4.12%となっていますね。(1.33%で発行された社債が。)
オリックスの122回社債は、2010年01月29日が償還日で、償還日まで1年2月を切っているのですが。
J-CDSの参考値は5年ものですから、1年強であれば4.12%になるのでしょうかね。いずれにせよ、理論ではなく、マーケットが決めるのだと考えるべきと思います。
オリックスについては、投資サイドもありますが、リースを受けていたり、借入をしていた場合です。オリックスから資金を借りている中小企業は、現情勢で銀行に行っても新規借入は難しいかも知れないですから。オリックスは、金融機能強化法の対象外ですから。最も、対象外だから、こんなにJ-CDSも上がっていると言えるのでしょうが。
投稿: ある経営コンサルタント | 2008年12月15日 (月) 23時21分