ミサイル防衛システムで迎撃する破壊措置命令とは何?
本日のNHKニュースが、よく解らなくて困っています。
NHKニュースはWebに掲載されている時間が短いので、文章は「続きを読むに」入れておきましたが、「北朝鮮が人工衛星の打ち上げを名目に長距離弾道ミサイルの発射に踏み切る構えをみせていることを受けて、日本国内に落下してきた場合に備え、ミサイル防衛システムで迎撃する破壊措置命令を自衛隊に発令することを決定しました。」との報道です。
何が政府により決定されたのか、政府のWebも見ましたが、今のところ私は発見できていませんが、読売新聞には次の記事がありました。
タイトルは、NHKとほぼ同じなのですが、本文の中に、「命令期間は4月10日までで、自衛隊法82条の2の3項に基づき、閣議決定を経ずに発令された。」と書かれています。そこで、自衛隊法82条の2の3項は次の通りです。
防衛大臣は、第一項の場合のほか、事態が急変し同項の内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため、防衛大臣が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、同項の命令をすることができる。この場合において、防衛大臣は、その命令に係る措置をとるべき期間を定めるものとする。
内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領とは、何かとの部分はありますが、少なくとも北朝鮮からロケットが発射されれば、直ちに迎撃・破壊するとまでは、読めないのです。更には、自衛隊法82条の2の1項に、「弾道ミサイル等」の定義として「弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)」と定められており、北朝鮮からロケットが発射されても、人工衛星打ち上げのロケットであれば、、「弾道ミサイル等」に該当しないから、迎撃・破壊はできないものと考えます。仮に、日本法でそのように定めてあっても、国際的に通用するか、認められるか問題がありすぎると思います。
少なくとも、北朝鮮ロケット問題は、共産党が主張している、「外交的努力を尽くすことが重要」というのが、正論であると思います。それと、世界がどう見ているか、比較的第三者的にいると思えるBBCのニュースのリンクも掲げておきます。
しんぶん赤旗 3月27日 北朝鮮「ロケット」発射問題 自制求める外交努力こそ重要
BBC 24 March 2009 N Korea warns over rocket launch
ところで、政府は外交努力をしていないのか?私は、しているはずと思っています。自衛隊法82条の2の3項に基づく発令は、これを出しておかないと、自衛隊も動くに動けないから出したまでと思っています。いずれにせよ、どのようになるか見てみたいと思います。
NHKニュース 3月27日 8時48分
破壊措置命令 発令を決定
政府は27日朝、安全保障会議を開き、北朝鮮が人工衛星の打ち上げを名目に長距離弾道ミサイルの発射に踏み切る構えをみせていることを受けて、日本国内に落下してきた場合に備え、ミサイル防衛システムで迎撃する破壊措置命令を自衛隊に発令することを決定しました。
北朝鮮は来月4日から8日までの間に、事実上長距離弾道ミサイルの発射に踏み切る構えをみせており、発射に失敗して日本国内に落下してきた場合、10分程度で着弾するとみられています。このため政府は27日朝、麻生総理大臣をはじめ関係閣僚が出席して安全保障会議を開き、自衛隊法に基づきミサイル防衛システムで迎撃する破壊措置命令を自衛隊に発令することを決定しました。これを受けて、浜田防衛大臣は命令を正式に発令することにしており、自衛隊はイージス艦を日本近海に展開させるとともに、ミサイルが上空を通過するとみられる東北地方に迎撃ミサイル「PAC3」を配備する作業に取りかかり、海と陸から迎撃する態勢を整える方針です。政府は、北朝鮮を想定して、平成15年にミサイル防衛システムの導入を閣議決定し、配備を進めてきましたが、実際に破壊措置命令を発令するのはこれが初めてです。
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コメント
まず、今回の破壊措置命令は、「人工衛星打ち上げ」という事態に際して無条件に迎撃措置を執るというものでないのです。
命令の要旨は、「人工衛星打ち上げ」の成功・失敗に拘わらず、日本の領土内に「ロケットの全部或いは一部」が落下すると見込まれる場合に限って、当該ロケットを構成する巨大な構造物がそのまま落下する事を防ぐ目的で発出された命令です。
要するに、万が一何等かの事情で領土内に落下するのなら、空中で破壊して細かい欠片が落ちてくるように対処した方が、そのまま落ちてくるより被害は低減出来るだろうという主旨なのです。
したがって「人工衛星の打ち上げ」が、当該国の目論見通り成功すると判断できるという事であれば、仮に打ち上げが実行されても、何の手出しもしないという事で、打ち上げ行為そのものが対象である命令でないわけです。防衛権の行使でなくて、ある意味では警察権の行使による防災活動です。
各種報道を視ていても、番組の送り手が実は理解不足なのでは無いでしょうか?と思うこと頻りです。
※一応、「人工衛星の打ち上げ」という当事国において公式に発表されている言い回しを使いますが、実際はミサイル技術の試験と見ています。
投稿: 素人の浅知恵 | 2009年3月29日 (日) 22時04分
先刻の投稿は外したかも知れないので、捕捉を。
当該の条文中「弾道ミサイルその他その落下により」という部分の解釈として、「航空機を除く」の部分と「その他」の部分が重要で、「落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体」であれば、航空機を除いて何でも良いと解されています。
敢えて、「弾道ミサイルその他」と書いてあるのは、立法時点に於いて最も想定される事態がミサイルだからであって、この条文の主眼は、「その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のもの」すべてなのです。
投稿: 素人の浅知恵 | 2009年3月29日 (日) 22時11分