公立病院の生産性は医療法人と比べて高い
「公立病院の生産性は医療法人と比べて高い」と述べている論文がありましたので、紹介します。
ESRI Discussion Paper Series No.210 日本の医療サービスの生産性:病院の全要素生産性とDEA分析
上記のESRIのサイトからダウンロードできます。ESRIとは、内閣府経済社会総合研究所(Economic and Social Research Institute, Cabinet Office)であり、論文は、研究者である東京大学工学系研究科教授(内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官) 元橋一之氏が執筆されておられ、内閣府経済社会総合研究所の見解を示すものではありませんとの断りがありますが、一つの見方であると言えます。
自治体病院については、私も何度か取り上げていますが、基本的にはこの日経の「やさしい経済用語の解説」地方公営企業のように、多くの病院が赤字であり、この朝日岩手版3月23日「地域医療はいま」4 命の現場に経営視点のような報道が多くなされています。
経営といった時に、何が一番重要なのかは「継続すること」と考えます。継続に関して、最も重要なことは「必要性」であると思います。例え、赤字が大きくても、必要であれば、何としてでも継続していかねばならない。赤字だからと、閉鎖するのは、簡単です。必要でなければ、それで構わないが、必要であれば、赤字であっても継続していかなければならない。それが、経営者の義務であり、出資者を初め、多くの関係者を説得しなければならない。単純な継続ではなく、規模縮小や他医療機関との連携や、方向転換もあるので、単純ではないし、個々の状況により様々ではあります。
少なくとも単純に「公営・公立は非効率であり、民間がよい。」とすることは、誤りであると考えます。生産性とは、インプットに対するアウトプットの評価であり、単純にインプットのみを数量で割り算したコスト単価ではありません。医療とは、常時一定のサービスを受けるのではなく、それが必要な時に受けられるかが重要です。アウトプットに対する評価は他の製品やサービスとは相当異なる側面を持っています。
良い医療制度を築いていきたいのですが、医療崩壊が叫ばれ、現状維持すら難しいのでしょうか?
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コメント
日本の医療法人病院には中小病院が多く、公立病院と民間病院を比較すると中規模以上の病院と中小病院を比較してしまい、公立病院の経営効率が良く見えてしまいますが、規模の問題ではないでしょうか。
診療行為は全て人の手でおこなわれますから、病床当りの職員数が多いほど生産性が良いはずです。
VHJ グループなどの民間病院は1日当り1病床で7万円から10万円の売上ですが、100床当り200名の職員がいます。
公立病院は100床当たりの職員数が60名から120名と少なく、医師と看護師で8割以上を占め、栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床工学士などの医療技術職の数が少ないために専門性の低い医療行為がおこなわれています。
栄養士や薬剤師、理学療法士の業務までが看護師によっておこなわれる医療の質を高いとは言えないはずです。
生産性を医療の質と言ってもいいし、利益と言ってもいいと思いますが、公立病院で充分提供できているでしょうか。
公務員給与が高ければベッド単価を高く保てば黒字のはずです。
赤字の説明が納得できれば良いのですが、100床当りの職員が120名であれば医療行為の量も少なくなってベッド単価は低くなります。
投稿: 近森正昭 | 2009年3月30日 (月) 16時48分