インサイトvsプリウス、そしてi-MiEVとティーダを比較しました
エコカー減税とエコカー補助金により、落ち込んでいる新車販売も、エコカーについては販売増は期待できると自動車メーカー各社は懸命にエコカーの販売に力を入れていると思います。ちなみに、次の表が2009年5月と5月までの自動車販売台数であり、昨年より落ち込んでいます。
新車販売台数(2009年5月実績) 自販連・全軽自協・輸入組合調べ | ||||||
ブランド | 2009年5月販売台数 | 本年累計 (a) |
前年累計 (b) |
増加率 (a)/(b) | ||
乗用車 | トラック・バス | 合計 | ||||
ダイハツ | 32,718 | 8,990 | 41,708 | 259,747 | 289,853 | -10.4% |
日 野 | 0 | 1,134 | 1,134 | 9,865 | 18,221 | -45.9% |
ホンダ | 35,700 | 1,830 | 37,530 | 230,975 | 276,920 | -16.6% |
いすゞ | 1 | 1,855 | 1,856 | 14,203 | 26,813 | -47.0% |
レクサス | 1,815 | 0 | 1,815 | 7,444 | 12,788 | -41.8% |
マツダ | 10,523 | 2,122 | 12,645 | 78,076 | 115,726 | -32.5% |
三 菱 | 6,457 | 2,749 | 9,206 | 64,047 | 91,513 | -30.0% |
三菱ふそう | 0 | 1,246 | 1,246 | 9,564 | 16,305 | -41.3% |
日 産 | 32,189 | 5,673 | 37,862 | 243,733 | 328,704 | -25.9% |
日産ディーゼル | 0 | 324 | 324 | 2,253 | 5,303 | -57.5% |
スバル | 6,987 | 3,809 | 10,796 | 69,701 | 94,877 | -26.5% |
スズキ | 34,307 | 9,340 | 43,647 | 277,468 | 305,619 | -9.2% |
トヨタ | 72,277 | 8,226 | 80,503 | 472,773 | 667,938 | -29.2% |
外国車 | 11,621 | 150 | 11,771 | 64,604 | 88,599 | -27.1% |
合計 | 244,595 | 47,448 | 292,043 | 1,804,453 | 2,339,179 | -22.9% |
1) 比較するエコカー
エコカーで比較するなら、インサイトとプリウスを外すことはできず、そして2009年7月下旬から売り出す三菱i-MiEVを対象に加えました。日産も、減税・補助金対象となる車があると宣伝しており、その中でティーダを加えました。次の表が、カタログ等のデータから抽出した比較表です。(三菱i-MiEVは、軽自動車アイを電気自動車に変更しているので、他の3車種との同一ベースでの比較とはならないのですが、電気自動車ということで対象にしています。)
車種 | INSIGHT | PRIUS | TIIDA | i-MiEV | ||
タイプ | G | L | 15M | |||
メーカ希望小売価格 (消費税込み)円 |
1,890,000 | 2,050,000 | 1,674,750 | 4,599,000 | ||
10.15モード燃料消費 | 30km/L | 38km/L | 20km/L | 125Wh/km | ||
全長 mm | 4,390 | 4,460 | 4,250 | 3,395 | ||
全幅 mm | 1,695 | 1,745 | 1,695 | 1,475 | ||
全高 mm | 1,425 | 1,490 | 1,535 | 1,610 | ||
ホイールベース mm | 2,550 | 2,700 | 2,600 | 2,550 | ||
最小回転半径 m | 5.0 | 5.2 | 5.2 | 4.5 | ||
車両重量 kg | 1,190 | 1,350 | 1,150 | 1,100 | ||
室内 | 長 mm | 1,935 | 1,905 | 2,035 | 1,790 | |
幅 mm | 1,430 | 1,470 | 1,390 | 1,270 | ||
高 mm | 1,150 | 1,225 | 1,240 | 1,250 | ||
電池 | 容量(kWh) | 5.75 | 6.5 | N/A | 16 | |
タイプ | ニッケル水素電池 | ニッケル水素電池 | リチウムイオン電池 | |||
電圧 (V) | 100 | 650 | 330 | |||
モーター(最高出力kW) | 10 | 60 | 47 |
価格については、電気自動車i-MiEVが他の車の倍以上であること以外は、こんなものかなと感じる感覚です。大きさはi-MiEVを除いて、ほぼ同じです。なお、i-MiEVは乗車定員4名です。
2) コスト比較
エコカーと言っているのですから、燃費等を含んで比較しなくてはなりません。次の表が、上記のメーカ希望小売価格にガソリン代を1リットル150円であるとして仮定して、10万キロメートル走った場合の、購入費と燃料費を計算した結果です。
INSIGHT | PRIUS | TIIDA | i-MiEV | i-MiEV の前提 | |
想定走行距離 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | 100,000 | |
10.15モード燃料消費 | 30 | 38 | 20 | 125 | Wh/km |
10万km燃料消費量 | 4,000 | 3,158 | 6,000 | 15,000 | kWh |
ガソリン150円/リットル | 600,000 | 473,684 | 900,000 | 300,000 | 20円/kWh |
購入費 | 1,890,000 | 2,050,000 | 1,674,750 | 4,599,000 | |
合計 | 2,490,000 | 2,523,684 | 2,574,750 | 4,899,000 |
10万kmの実際走行に要する燃料消費は、10.15モードの20%増と仮定しました。i-MiEVは、ガソリンを消費しないことから、電力料金を20円/kWhとし、同じように20%のマージンを加えました。
結果は、INSIGHTとPRIUSがほぼ横並びです。そこで、今度はガソリン価格を100円から200円の範囲でグラフを書いてみました。
INSIGHTとPRIUSの線が交差するのは、1リットル190円です。ホンダvsトヨタのおもしろさを感じます。10年間の平均ですから、190円は高いかも知れないし、利息を考慮した時間価値を考えるとホンダがより有利。しかし、トヨタは、負けまいとPRIUSを最大限値下げして対抗していると思います。このグラフの比較で言えば、日常的に車を使い10万キロ以上走行するのであれば、PRIUSが有利で、土日のみの使用であれば、INSIGHTが有利かと思います。
3) メンテナンスを含んだコスト
ハイブリッドカーは、自分でメンテナンスはおろか、通常の自動車修理工場でもメンテナンス不可能と思います。1)に書いた表でPRIUSとINSIGHTを比べると、電池容量、電圧、モーター出力全てPRIUSが大きい値です。(電圧は、i-MiEVより高い。)通常の車の修理工場ではメンテナンスができず、メーカ指定・適合店でないとメンテナンスが無理だから、HiTech製品につきものの現象です。そうなると、INSIGHTとPRIUSのメンテナンスについては、価格や条件は同じかも知れませんが、可能性としては、PRIUSの方がHiTechだから、少しメンテナンスも高くつくかも知れません。
HondaファンはINSIGHT、ToyotaファンはPRIUSを選ぶのが間違いないでしょう。そうでない人は、色々悩んで考える。いずれにせよ、購入の際に、納得するまで、質問するのがよいと思います。現状では、納期が長くて、嫌なことを言うやつには、売ってくれないなんて変な気を回す必要はないはずです。
4) CO2排出・環境評価
10万km走行するとして、走行時に排出するCO2を計算しました。計算は、ガソリン発熱量34.6MJ/l、ガソリン炭素排出係数18.3tC/TJ、CO2換算44/12としました。
なお、製造時にCO2の排出はあり、さらには鉄板等の材料製造時のCO2,鉄鉱石や石炭の採掘・運搬に関わるCO2排出等を含んだLife Cycle Assessmentが必要です。そこで、PRIUSの環境仕様というページにCO2 LCA評価という絵があり、これをにらんでPRIUSの製造に係わるCO2排出量を3,000kgとしました。大雑把ではありますが、製造に係わるCO2は車体重量に比例するとして、INSIGHT、TIIDA、i-MiEVの製造時CO2を計算しました。結果は次の表の通りです。
なお、i-MiEVの走行時CO2排出量は、東京電力の販売電力kWhあたりのCO2排出量425kg/MWhを使いました。
INSIGHT | PRIUS | TIIDA | i-MiEV | |
走行時CO2排出量(kg) | 9,287 | 7,332 | 13,930 | 6,375 |
製造時CO2排出量(kg) | 2,644 | 3,000 | 2,556 | 2,444 |
合計(kg) | 11,931 | 10,332 | 16,486 | 8,819 |
またしても、INSIGHTとPRIUSの激しい競争です。一見、i-MiEVが低そうですが、i-MiEVは1回の充電で160kmの走行距離であり、これを伸ばすには電池を大きくする必要がある。そうなると、重くなる。価格が上がると同時に、燃費も悪くなる。更に言えば、石炭で発電をしたならば、INSIGHTやPRIUSに負けるのみならず、TIIDAとも良い勝負になってしまいます。
数字を使わずに感覚で考えてしまう場合の環境問題の恐ろしさです。電気自動車は排ガスを出さないから、クリーン。しかし、その電気は、どうやって作ったの?です。同様な、説明がこの環境省のWebにある低排出ガス車の開発 (トヨタ自動車)にありました。20ページですが、燃料電池車は燃料製造時のCO2排出量が多いため、ハイブリッドカーよりもCO2排出量はLife Cycle Assessmentをすると多くなるとあります。
イメージで、環境を考えると誤ります。環境は数字を使って考えないといけません。
5) エコカー減税とエコカー補助金
どうでも良い話かも知れませんが、エコカー減税とエコカー補助金の法的根拠について触れておきます。エコカー減税は、本年3月31日公布の地方税法改正(法律第9号)の第12条の2の2(自動車取得税の減税)と同日の3月31日公布法律第11号の中の租税特別措置法第90条の12(自動車重量税の免税等)によるものです。全額免税となるのは、電気自動車、ハイブリッドカー、CNG車、高性能ディーゼル車です。ガソリン車は、燃費性能により75%免税又は50%免税あるいは適用が受けられないかです。
エコカー補助金は、5月29日に成立した平成21年度補正予算による環境対応車普及促進事業費 357,216百万円です。その内容は、この経産省、国交省の説明にあります。ハイブリッドであるかどうかは関係なく、燃費基準達成車には補助金が出ます。最も大きな補助金を受けられるのは、大型トラック・バスで90万円(中古からの乗り換えの場合は180万円)です。
自動車取得税と自動車重量税の免税あるいは軽減が受けられるのは、乗用車のみならず基準を満たせば、トラック・バスも可能です。
ちなみに、2007年度の温室効果ガスの排出量確定値が2009年4月30日に発表されました。温室効果ガスの総排出量は1,374百万トン。うち非エネルギー起源を含めCO2が1,304百万トン。運輸部門のCO2排出量が249百万トンです。このうち乗用車が126百万トンで、貨物車が90百万トンです。合計で、日本全体のCO2排出量の16%強となります。ここをねらい打ちでしょうか?
中には年間10万km以上走行するトラックもあるわけで、リッターあたり4kmの燃料消費率を5kmに伸ばすことができれば、年間5,000リットルの節約となります。金額では年約50万円。CO2で年約13トンの節約です。だから、積極的に免税、税軽減、補助金を推進すべきだと言えます。問題は、財源です。今は、一般財源を使っており、継続するには、私は、炭素税を他の省エネ・低炭素政策財源用も含めて導入すればよいと思っています。かつては、石油業界は炭素税に真っ向から反対していました。しかし、現在は、そんな強い反対はできない。昭和シェル石油は、このように太陽電池をやっていますし。どの企業も、既得権益を守るより、新しい世界にどう立ち向かうかがより重要な時代です。
ところで電気自動車の場合、ガソリン税と軽油取引税を現状では払わずに済みます。電気自動車が多くなってくると、道路予算の財源はどこからもってくるのでしょうか?
6) これから
これからも未だ開発が進むと思いますが、ToyotaとHondaはすごい会社であり、F1レースを日本でしているような気がしました。i-MiEVの車体重量は、1100kgですから、軽4輪「i」の900kgと比較すると200kg重くなっています。エンジンが電気モーターに置き換わり、電池が搭載された結果ですが、電池の開発とブレーキ作動時の発電をしてのエネルギー回収を含む電気関係のコントロールがハイブリッドカーと電気自動車のキイポイントだと思います。
ハイブリッドカーは、現状では日本生産でしか対応できない。海外生産をする場合、Hondaの方が、HiTechを押さえている分だけ、有利ではないかと思うのです。いずれにせよ、米国メーカはハイブリッドカーを生産できない。ヨーロッパメーカもディーゼルに力を入れていた分だけ、対応が遅れている。当面世界でToyotaとHondaの2社独占が続くのではないか。多分、HiTechの度合いが少し低いHondaの方が、海外生産も台数増産も対応が容易である気がします。
ハイブリッドカーになると下請け企業も変わってくる。現在、PRIUSの電池はパナソニックでINSIGHTが三洋電機。双方ともニッケル水素電池。車メーカか電池・電気制御メーカか、どちらの技術力が高いかによっても、主導権は異なってきて、これからの絵は微妙に変わる。ハイブリッドカー、電気自動車、水素燃料電池車がこれからどのような戦いになっていくのだろうか。最も、電池素材となる希少金属の問題もあり、その点では俄然中国有利になったりして。
2)に掲げたグラフにおいて、ハイブリッドが有利ですが、比較しているTIIDAは非常に良い燃費の車なのです。グラフは、税優遇や補助金を計算に入れていない比較ですから、ハイブリッドカー恐ろしきやです。先進国間の貿易で、車に関税・非関税障壁は存在しないし、エコカーですから、皆賛成する。内燃機関と電動機の2つのエンジンを持ち、その上に燃料タンクと電池を持つ2重投資の見本みたいに思えたハイブリッドカーでした。今では、こんな姿になっているのですから、これから先はいよいよ分からないかも知れませんが。
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