銀行の比較
銀行の比較をしてみました。
1) 利息を比較
6月9日のエントリー劣後債で、東京三菱銀行発行の劣後債利息の関連や、その少し前の5月27日のエントリーソフトバンク社債で社債利息のことを書きましたが、利息は気になるところで、比較をしました。
比較の対象とする銀行ですが、メガバンク3行は外せない。それに、都市銀行となっているりそな銀行、そして新生銀行とあおぞら銀行を加え、その上で、話題銀行として新銀行東京と日本振興銀行を加えることとします。日本にどれだけ銀行があるかは、この金融庁のページ(pdf)にあります。
預金は、6ヶ月と1年定期預金の2種類とし利息の比較を行いました。
6月定期 | 1年定期 | |
東京三菱UFJ | 0.12% | 0.20% |
三井住友 | 0.12% | 0.20% |
みずほ | 0.12% | 0.20% |
りそな | 0.12% | 0.20% |
新生銀行 | 0.22% | 1.10% |
あおぞら | - | 0.95% |
新銀行東京 | 0.12% | 0.20% |
日本振興銀行 | - | 1.10% |
基本的には、横並びですが、新生銀行とあおぞら銀行は利息が高くて、面白いですね。新生銀行は旧日本長期信用銀行であおぞら銀行は旧日本債券信用銀行であり、この中で、あおぞら銀行のみ銀行債を発行しています。例えば、この売り出しの案内であり、6月11日付の案内では0.28%となっています。
2) 銀行業績
2-1) 都市銀行
企業は不況であっても、誰かが資金援助を続行してくれれば、倒産はしません。何時の日か回復すれば、大丈夫と期待ができます。銀行も同じで、資金が続けば持続しますが、預金を集めるために、利息を高くすれば、コスト増となってしまう。不良貸し出しになり、与信関係コストを膨らませてもどうもならないのですが、魅力がなくて誰も預金が減少するのは避けなければいけない。どの業種も大変ではありますが、とりあえずメガバンクの持ち株会社3社とりそなホールディングを比較しました。
先ずは、連結貸借対照表です。決算短信とディスクロージャー資料から作成しました。
グラフに書くと次のようになりました。やはり、メガバンクは大きいのです。
果たして不良貸付が、どれぐらいあるかを判断するのが、次の表です。りそなは、少し不良債権の割合が大きいようです。貸倒引当金の額とその引当率も書きました。
単位:十億円 2009年3月 | MUFG | MSFG | みずほ | りそな |
破産更正債権及びこれらに準ずる債権 | 241 | 320 | 309 | 137 |
危険債権 | 656 | 678 | 595 | 367 |
要管理債権 | 293 | 196 | 478 | 164 |
金融再生法開示債権合計 | 1,190 | 1,194 | 1,382 | 668 |
正常債権 | 94,020 | 66,029 | 76,737 | 26,894 |
合計 | 95,210 | 67,223 | 78,119 | 27,562 |
開示債権比率 | 1.24% | 1.78% | 1.77% | 2.42% |
貸倒引当金及び投資損失引当金 | 1,222 | 1,078 | 890 | 441 |
引当金の引当率(引当金/合計) | 1.28% | 1.60% | 1.14% | 1.60% |
りそなについては、2006年5月に公的資金(3兆128十億円)の注入を受け、現在でも49.54%株主は預金保険機構であり、2兆085十億円が預金保険機構と整理回収機構からの資金注入が残っています。
2009年3月期は、基本的には全ての銀行でサブプライムの影響があり、赤字転落が多かったのですが、次の表が連結損益計算書です。りそなは、減益となったものの、赤字にはなりませんでした。
最後に、銀行の健全性を示すバーゼルII自己資本比率の比較表を掲げます。バーゼルIIの金融庁の説明はここにありますが、自己資本÷貸付等の金額と考えて下さい。Tier1比率は基本的項目の自己資本のみとするので、Tier1比率が常に低い比率となります。
自己資本比率の状況 (十億円) | MUFG | MSFG | みずほ | りそな |
Tier1自己資本 | 7,575 | 4,335 | 3,767 | 2,079 |
Tier2(算入額) | 4,218 | 2,421 | 2,794 | 771 |
控除項目 | 313 | 708 | 333 | 32 |
自己資本 | 11,480 | 6,048 | 6,228 | 2,818 |
リスクアセット | 97,611 | 52,727 | 58,984 | 20,945 |
自己資本比率 | 11.76% | 11.47% | 10.56% | 13.45% |
Tier1比率 | 7.76% | 8.22% | 6.39% | 9.93% |
2-2) 他の4行
他の4行についても、同じように、連結貸借対照表他を作成しました。単位は、都市銀行4行と同じ十億円で書いています。
単位:十億円 2009年3月 | 新生銀行 | あおぞら | 新銀行東京 | 日本振興銀行 |
破産更正債権及びこれらに準ずる債権 | 40 | 43 | 16 | 3 |
危険債権 | 179 | 113 | 17 | 13 |
要管理債権 | 66 | 14 | 0 | 0 |
金融再生法開示債権合計 | 284 | 170 | 33 | 16 |
正常債権 | 5,593 | 3,315 | 166 | 300 |
合計 | 5,877 | 3,485 | 200 | 331 |
開示債権比率 | 4.82% | 4.88% | 16.74% | 4.72% |
貸倒引当金 | 193 | 130 | 35 | 3 |
3.28% | 3.73% | 17.54% | 1.03% |
都市銀行4行と比較すれば、不良債権の割合が大きくなっていますが、特に、新銀行東京はダントツであります。新銀行東京の株主は東京都ですが、新生銀行とあおぞら銀行に対して注入された公的資金も未だ残っていますし、預金保険機構が贈与した金額は長銀に対して3兆235十億円で、日債銀に対して3兆141十億円と、それぞれ天文学的金額が贈与されました。これを考えると銀行の恐ろしさです。
自己資本比率の状況 (十億円) | 新生銀行 | あおぞら | 新銀行東京 | 日本振興銀行 |
Tier1自己資本 | 580 | 525 | 47 | 21 |
Tier2(算入額) | 327 | 26 | 3 | 11 |
控除項目 | 104 | 67 | 3 | 0 |
自己資本 | 803 | 484 | 47 | 32 |
リスクアセット | 9,621 | 4,172 | 153 | 333 |
自己資本比率 | 8.35% | 11.60% | 30.78% | 9.65% |
Tier1比率 | 6.03% | 12.58% | 30.52% | 6.34% |
3) 新銀行東京の問題
自己資本比率の状況だけからすると、新銀行東京は健全となるのですが、リスクアセットが少額であるだけで、次の表のように貸付をしていないからです。預金の半分しか貸付をしておらず、貸付金と有価証券を比較すると有価証券の方が大きいのです。一方、貸付を膨らませすることができるかというと、不良債権の率は一番高いのです。
貸付金/株主資本 | 貸付金/預金 | 貸付金/有価証券 | |
東京三菱UFJ | 12.0 | 0.77 | 1.91 |
三井住友 | 25.1 | 0.86 | 2.27 |
みずほ | 27.6 | 0.91 | 2.34 |
りそな | 13.1 | 0.83 | 3.31 |
新生銀行 | 9.8 | 0.98 | 2.70 |
あおぞら | 6.5 | 1.33 | 3.09 |
新銀行東京 | 3.7 | 0.50 | 0.75 |
日本振興銀行 | 14.9 | 0.78 | 6.41 |
融資をしないと、利益を生み出せない。しかし、無茶な融資をすると、不良債権が膨らんでいく。新銀行東京は、本来であればもっと中小企業向けの融資が伸びていないといけないのですが、相手企業を審査し、問題が生じればコンサルタントでも何でも雇ってよみがえらせるような、そんなことをしなければならないのですが、萎縮して悪循環に陥っているように思えます。貸付金残高も1年間で210億円減少しています。一方で、有価証券が250億円増加しているので、この銀行は貸しはがしの先頭を行っており、中小企業の敵のような気もします。
まもなく都議選ですから、有権者がどう反応するか楽しみです。
4) 日本振興銀行問題
日本振興銀行は、上の分析からすれば、正常に思えます。しかし、SFCG(旧商工ファンド)からの債権買取で有名であり、2008年3月期と比較をしたのが次の表です。すごい増加をしていることが分かります。
貸出金なんて1年間で3.8倍ですから。債券を他の金融機関から買い取ることに問題はなく、その様な方法で業績を伸ばす方法もありますから。しかし、SFCGが同一の債権を日本振興銀行以外にも2重に譲渡をしているのであれば、姿はまるで異なってきます。
しかし、一方で、甘いビジネスはないのであり、新銀行東京は貸出金が減少しているのです。やはり、ここまで増加しているとなると心配です。
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