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2009年7月31日 (金)

カブドットコム証券の調査報告書を読みました

カブドットコム証券株式会社社員によるインサイダー取引に関しての特別調査委員会「調査報告書」が2009年7月28日にWebで公表されています。

カブドットコム証券 当社元社員に対する課徴金納付命令につきまして

参考となる発表は、証券取引等監視委員会の6月5日付け発表金融庁の6月26日付け発表であったのですが、その内容はよく解りませんでした。上のリンク先「当社元社員に対する課徴金納付命令につきまして」から特別調査委員会「調査報告書」がDownloadできるので、読んでみると恐ろしいことが書いてありました。

1) 個人の犯罪?会社の犯罪?

金融商品取引法違反で課徴金納付命令が出されているのは、個人ですが、会社のガバナンスが悪いために発生したと思いました。餌があるからと、それに手を伸ばすのは、犯罪ですが、本来餌があってはならない場所に餌があり、しかもその餌に手を伸ばして盗んでも、減る物ではなかったら。

情報とは、そんな物。例えば、書き写したとして、元の物は、何の変化も起こしていません。その情報を使って、何かをすることにより発覚する可能性があるだけで、盗んでも使用しなければ、発覚もしない。

問題のカブドットコム元社員は、2度出向しており、出向してた時は出向先の会社に忠誠心を抱くことができたにも拘わらず、カブドットコムに戻ると急激に会社への忠誠心は失われてしまった。(26ページ)

社長がワンマンで、理不尽。そんな会社の恐ろしさです。決して、カブドットコムだけのことではなく、社員による犯罪を生むリスクを感じました。参考までに、報告書23ページにも、次の様な記載があります。

斉藤社長の権威は絶大で、両専務をもってしても、社長の暴走を阻止するのは困難であったように見受けられる。社員の証言によれば、斉藤社長は、社員の前で両専務を怒鳴りつけることもあったようで、その力関係は明白であった。

なお、インサイダー取引をした社員に責任はないと言う主旨ではありません。

2. ネット証券はIT音痴

ネット証券業であることとコンピュータ、PCを使いこなしていることとは、無関係なのだと思いました。問題のカブドットコム元社員は、2回のインサイダー取引をしているのですが、その1回目は2007年3月5日に公表されたTOBです。

これを、彼は3月2日に知ったのです。知った方法は、会社のサーバーからです。何と、関連ファイルが社員にアクセス可能なフォルダーに入っていたのです。信じられないです。当該の文書には、パスワード保護のみであったから、他の関連ファイルから類推ができた。

ITの一番恐ろしい所は、簡単に情報が漏洩する所と思います。従い、ワンマン社長会社は気をつけるべきだし、取引先が、そんな場合も、慎重にすべきだと思います。アリコジャパンの顧客のクレジットカード情報の流出の原因は、少し違うと思うのですが、やはり今後の進展を見守る必要があると思います。

3. 委員会設置会社はガバナンスなしのリスクあり

カブドットコム証券株式会社は、委員会設置会社です。委員会設置会社と斉藤社長権威絶大は、矛盾するように思えますが、実は委員会設置会社はガバナンスなし会社に簡単に変身できることを証明したように思えます。

2回目のインサイダー取引に関するTOBは、11月14日17時発表であったのですが、当日の10時に斉藤社長が社員全員にE-Mailで、17時発表の内容を伝えたのです。まさか!であります。目的は、MUFG関係の証券関連業務に手を伸ばしていきたかったから、副代理業務を請け負った。その結果、社内でも、TOBの事実を知っている関係者数が前回より多かった。めんどくさい、E-Mail送っちまえだったのでしょう。

委員会設置会社ではなく、取締役の業務執行を監査する役割の監査役会が設置されている会社だったら、もしかして、このようなバカなことをする社長を牽制し、身をはってでも、防止すべく動いた監査役がいたかも知れないと思うのです。既に、大株主はMUJGであり、社長のご機嫌を取るよりは、この時に過半数を得るMUFGが望むことをする方が、役員にとっても社員にとっても賢い選択であったはずなのです。

MUFGは三菱UFJ証券を持っています。カブドットコム証券については、顧客だけで良かったのかも知れませんし、それ以外は、有能な社員がMUFGに参加してくれれば。初めから、斉藤社長は不要だったでしょうね。この辺りの、意図・構想を想像してみると面白いですね。

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2009年7月25日 (土)

地デジ移行・アナログ廃止まで2年 どうなるのかな?

総務省の地デジのホームページが次の所にあり、「2011年7月24日までに、アナログテレビ放送は終了し、デジタルテレビ放送に移行します。!」と書かれています。後2年です。

総務省の地デジホームページ

外を歩いて、上を見ても、地デジアンテナが据え付けられていない家を多く見かけます。不況で切り詰めた生活をしている身には、大変だと、書いてみます。

1) 地デジ受像器

総務省のこのWeb Pageには、「液晶テレビ13型 約5.5万円」とあるが、価格COMで見ると、液晶TVでもフルハイビジョン対応でなければ、中には2万円以下の物もあり、相当安くなっていると思えます。受像器は、従来の物を使用し、チューナーを通して視聴する方法もあるが、チューナーの価格は総務省Web Pageでは、「1万5千円程度から」となっており、価格COMでは、1万円以下のもあります。チューナーを使用して古い受像器を使用する場合は、古い受像器が早いうちに故障して使えなくなる可能性があり、新しい受像器を買うことになると思うのですが、フルハイビジョン対応であれば、22型以上で幾ら安くても5万円。普通は10万円以上といった感じです。

2) アンテナ工事

アンテナ工事が、費用を要する可能性があります。アンテナ本体は2-3千円です。しかし、1戸建てで、2階の屋根にアンテナがあり、これを取り替えるとなると、電気屋さんに数時間働いて頂かねばなりません。少し前には、5万円を下回らず、10万円近いと言われたこともありました。屋根ではなく、ベランダに取り付ける場合は、Webで探すと、1万円からと言った感じです。屋根に取り付け、アンテナケーブルも新品に取り替え、しかもケーブルの配線を壁に埋め込んだり、受像器を設置する部屋数が多かったりすると、それなりの金額を要すると思います。

2階の屋根に上って落ちたら大変だから、素人には危険で、ボランティアも成立しにくいです。

受像器とアンテナ工事を合計すると、幾ら安くても5万円。通常は、10万円は必要になると私は思うのです。更には、3千円以内でしょうが、リサイクル料金も必要です。低所得者にも同額ですから、負担は大きいと思います。

3) NHKとB-CAS

地デジで見ておられる方は、ご存じですが、受像器にもブルーレイ・レコーダー等もBS、CS、地デジ全て見るには、B-CASカードを、差し込み、申し込みをしないといけないのです。購入した時にだけ、すればよいので、煩わしくはないのですが、管理させているはずです。例えば、WOWWOWやスターチャンネル、CSの有料放送等は、B-CASを使ってコントロールしているはずです。また、コピー制御もB-CASを利用しているようです。

B-CASについて問題はあるものの、デジタルコンテンツの著作権保護と有料放送の維持を安くできるのであれば、一つの方法と考えます。私も、B-CASは難しすぎて、よく解っていません。

そこで、NHKは受信料金を支払わない人に、B-CASを使って、受信不能にするだろうか?多分、しないと思うが、可能なはずです。少なくとも、NHKは、受信機を購入した人や会社を全て知ることができるはずで、そのデータを使って、契約督促に走り回らせるような気がします。

有料放送の制御が可能であるから、むしろ積極的に利用して、最近始めたNHKオンデマンドのように、視聴している時のみの、有料放送に移行し、余り見ない人には安く、多く見る人には高い負担を。月極契約とスポット契約で金額を変えたり、様々なことが可能になると思います。

4) ワンセグ

ワンセグは、セグメント一つを使っての放送だから、ハイビジョン放送ではありません。従い、B-CASがありません。携帯電話でワンセグを見るのに、B-CASが不要なように。実は、ワンセグでNHKを見ていれば、B-CAS情報はNHKに行かないので、受信料支払いを逃れられる可能性があるかも知れないと思うのです。

ワンセグのみの受信機だとBSもCSも見れない。地デジのみです。インターネットの時代に、テレビ受信機が必要なのか?地デジ移行を機会にテレビを止める方法があります。災害時のように、どうしても見る必要が生じた場合には、携帯電話かワンセグ受信機のテレビを見る。考えれば、NHKもインターネットで見ていればタダだし、どうしてもの場合には、NHKオンデマンドがあります。民法も何か始めると思うし。さもないと、録画機に撮ってCM飛ばしで全員が見る。

5) アナログ1から12チャンネル(VHF帯)と53から62チャンネル(UHF帯)電波の活用方法

地デジに移行すると、現在のアナログの1チャンネルから12チャンネルと53チャンネルから62チャンネルの部分の電波帯が空きます。これを、どう使うかですが、この総務省の平成19年11月14日発表が最新の計画と理解するのです。チャンネル数で書くと、

1チャンネルから3チャンネル :テレビジョン放送以外の放送
4チャンネルから10チャンネル:移動(公共業務用、一般業務用)
11チャンネル、12チャンネル:テレビジョン放送以外の放送
53チャンネル、54チャンネル:陸上移動(電気通信業務用、公共業務用、一般業務用(10MHz 幅を高度道路交通システム用とする。))
55チャンネルから62チャンネル:陸上移動(電気通信業務用)

とのことで、この総務省のWebに絵があります。

地デジ以降の一つの目玉は、電波の空きです。空となった部分を、どう使うか?国際的な取り決めがない部分の電波帯は、その国の主権で決定できるわけで、主権者とは国民であります。そう考えた時、総務省の案で本当に良いのかな?総務省に、もっと説明して欲しいと思うのです。例えば、テレビジョン放送以外の放送と言うのも、よく解らない。ラジオかと思ってしまう。

BS放送で、テレビショッピングが多い。電波を、商品の販売目的に使っています。例えば、日本で見れない外国の放送が見れた方がTVショッピングより良い、と考える人が多いのではと思います。電波の使い方が主権者の手にある以上、テレビショッピングに使うのか、別のことに使うのか、国民が積極的に関与すべきと思います。

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2009年7月23日 (木)

「ライフケア高砂」の山口豪雨被害から学ぶ対策

7月22日のブログで土建国家反対論を書いたのですが、やはりそんな懸念があるようで、心配します。

日経 7月22日 裏山の砂防ダム建設、間に合わず 山口豪雨被害の特養ホーム

「山口県が砂防ダム建設を検討、2008年度から2年間の計画で調査に着手していたことが22日、分かった。」と書いてあり、川でない所から、土石流が発生したのであり、私は砂防ダムがあったとしても、別の箇所に建設をしており、多分役に立っていなかったと思うのです。

そもそも「ライフケア高砂」の土石流は、今でも水が出てきているようですが、多分裏山の小さな沢が、土砂崩れでせき止められ、その結果、流れが変わって、「ライフケア高砂」を直撃する土石流が発生したと思います。

対策の第一は、老人ホームのような施設には、敷地内に雨量計を設置しておき、アラームが発生すれば、第1段階では、全員2階に避難、第2段階で、体の不自由度な人から、他の施設への移動といった豪雨時の対策を平時から作成し、マニュアルに従って避難することが一番効果があるし、費用も安くて済むはず。地方自治体は、個別地点の雨量と危険度についての情報等を積極的に公開し、相談があれば、相談に応じることが最も重要と考えます。

必要があれば、地方自治体は、降雨と土砂崩れ、土石流、その他災害に関して、コンサルタント等専門家を起用して、対策を取ればよいのですから。砂防ダム一つの建設費で、相当多くの効果がある仕事が可能と思います。

なお、気象庁の防府地域気象観測所(アメダス)のデータがWebにあることから、防府の雨に関するグラフを書いてみました。

Houfurecipe20097

7月20日から7月23日までを示したのですが、雨は7月21日に集中しています。そこで、7月21日ついての部分のみを書いたのが次のグラフです。

Houfurecipe2009721

7月21日は、最低気温が9時です。午前0時と夜の12時が最も気温の高い日でした。朝の午前5時から降り始め、9時に最も激しく、8時から9時にかけては63.5mmの雨が降りました。前日の20日も多少は雨が降ったものの、大雨は21日なので、21日の累計雨量をグラフに書いてみました。

Houfurecipe2009721acm

5時から降り始めて12時-13時にかけて累計雨量が鰻登りになっていったことが分かります。「ライフケア高砂」を土石流が襲ったのは、昼食を終わりつつある時間ですから、13時前でしょうか?累計雨量が240mm(グラフ右軸)を超えた頃と思います。

累計雨量と豪雨被害との関係について、研究をすべきと思います。このようなことにこそ、金を使うべきです。危険地域については、累計雨量何mmで、どのような危険が高まり、どのように対処すべきか、検討をしておくべきと考えます。多分、被害損失より小さい金額で検討が可能であると思うので、効果は大きいと考えます。

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2009年7月22日 (水)

特別養護老人ホーム ライフケア高砂の豪雨被害

山口県では、豪雨災害により死者・行方不明者の方が合計で16人であると報じられています。

共同47ニュース 7月22日 山口の豪雨災害、死者6人に 行方不明の10人捜索

そのなかでも、特別養護老人ホーム「ライフケア高砂」では死者3人、行方不明4人と特に多くの死者・行方不明者が発生し、不幸な豪雨災害になっています。

情報が限られた中ですが、事故の教訓から学ぶべきことはないか、ライフケア高砂について考えてみました。

1) ライフケア高砂の場所

住所は、山口県防府市眞尾12151であり、Yahoo Mapで見てみます。

上が地図で下が航空写真ですが、縮尺が異なっています。なお、地図も航空写真も参考スケールが出ています。地図では、「ライフケア高砂」の表示がある所がその場所であり、航空写真では左の方に見える円形の建物が「ライフケア高砂」です。

2) ライフケア高砂を襲った土石流

地図には、南(下)から北(上)の方向に川が流れており、この川の氾濫と思えてしまうのですが、違うと判断しました。ライフケア高砂の東から、即ち川でもない山から土石流が襲ってきたと判断しました。理由は、次の航空報道写真です。

(1) MSN産経ニュースの航空写真

(2) 読売新聞の航空写真

MSN産経ニュースの航空写真では、手前・下の方がライフケア高砂の入り口で、土石流は丁度その反対側から、流れ込んでいます。読売新聞の航空写真は、写真の右が入り口で、左側から土石流が右に流れています。

上の1)で示した、Yahoo航空写真を見てください。ライフケア高砂の入り口は、道路に面した建物の西側(左)です。即ち、土石流は東から西に流れたのです。Yahoo航空写真を拡大していけば、ライフケア高砂の入り口のある場所が鮮明になります。

川でもない所からいきなり土石流がやってくる。恐ろしいと思います。

3) 土石流の予知

予知が全くできないのであれば、防ぎようがなかったことであり、対策も不可能です。しかし、何かあるかも知れないと考えると、ライフケア高砂の建設前は、どうであったかです。おそらく、棚田であると思います。Yahoo航空写真を見ても、周りは棚田であり、棚田の高い方の部分を削り、低い方に埋め立てて、整地をしてライフケア高砂を建設したのだと思います。

即ち、土石流発生の可能性を人々は予測していた。ある危険性を感じていたから、棚田として利用していたと思うのです。

先人の知恵は、とても深いと思います。古老が「自分は経験していないが、子供の頃に年寄りからXXで、▲▲の災害があり、恐ろしかったと聞いたことがある。」と言った時、それは100年に1度の自然災害を言っているのであり、それに対応し、そのような知恵で、人々は住む場所や農地や生活を自然に決めていっていたと思います。

先祖の経験が世代を超えて受け継がれて行っていた。勿論、現代では、そんな生活様式はなくなり、不可能に近い。しかし、記録を記録として残し、研究成果を成果として残して、多くの人が利用できるようにすること。地方自治体も、そのようなことに尽力し、自らがそれを生かすと同時に、蓄積した情報をインターネットを初め、広く公開することが重要と思います。

4) 対策

情報の蓄積と公開が最重要と思います。災害経験は、リスク情報であると考えます。建設地に、そのようなリスクがあるとした場合、発生した時の状況を想定します。例えば、もし大きな頑丈な防護壁で防げるなら、そんな対策も可能でしょう。あるいは、1階を無人にし、2階以上の構造とする等の対策も可能であったかも知れない。

それら以外には、センサーを山側に埋めておき、雨量や位置ズレを連続計測し、危険度が大きくなった時に、避難をする手配ができなかったか。最も、この様な対策だと、ライフケア高砂における雨量測定で対応できた可能性もある。

危険地に老人ホームのような施設を建設しないことも考えられる。但し、老人ホームが利益を生み出す事業ではなく、地価の安い場所に建設し、その分を居室の広さや、設備の充実に当てた方が良いこともあるので、複雑であります。

なお、一番馬鹿げた対策は、砂防ダムであると思う。今回の土石流の方向を分析して私が思ったことは、「土石流上流の発生箇所は、砂防ダムの候補地にはなっていない。」である。「砂防ダムが効果がない。」とは言わない。それは、個別のダム毎に効果を分析・判定すべきで、一般論で論ずるべきではないからです。土地利用で対応することも可能で、対応策には様々な方法がある。高齢化社会とは、土建国家で対応するのではなく、きめ細かい手作りの対応が必要であると考えます。

最後に、もう一つ心配なことが、山林対策です。山林は、水を供給し、CO2を吸収し、木材を生み出し、美しい景観を楽しませてくれる貴重な資源であり、災害削減にも大きな役割を果たしていると考える。しかし、杉を植林しすぎ、間伐を怠っている現状、集中豪雨に弱い山林となり、従来より豪雨危険度が増加していると思う。マイ箸運動なんかより、間伐材箸運動が、CO2削減にも、災害防止にも役に立つと思うのです。エセ環境運動が蔓延していると思うのは、思い過ごしでしょうか?

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2009年7月21日 (火)

衆議院選挙の争点

本日、衆議院が解散され、8月30日に選挙がある。

共同47ニュース 7月21日 衆院解散、総選挙へ 政権懸け4年ぶりの決戦

予定通りと言えば、予定通りであるが、何を選ぶ選挙か、むなしい気もする。勝手な予想で言えば、政権交代が起こるのだろう。しかし、民主党政権とは、もしかしたら、自公政権よりもバラマキ政策を強める可能性があるように思えるからだ。

景気対策とは、税金を使って需要を増加し、企業利益・雇用・賃金上昇を計ることである。常に成功をするとは、限らないのではないか。景気対策のマイナス面を認識する必要があり、小泉政権が発足時人気があったのは、90年代の小渕政権による経済政策失敗の反動であったと思う。景気対策と言って税収以上に政府支出を増加させることは、将来の増税になる。勿論、収支均衡が全てではなく、妥当な範囲は赤字が許されるのであり、景気対策の中身と赤字の許容額についての論争がされるべきと思うが、納得できる論争がないと感じる。

それでも本当の最大のポイントは何だろうか?日本の将来の姿としての設計図というか基本構想のようなものと思う。小泉政権が、示したのは、米国型の小さい政府であった。今の自民党が示しているのは、実は訳が分からない。民主党の政策も、それによる将来像が理解しにくい。民主党は、4月8日に「生活・環境・未来のための緊急経済対策」というのを出したが、読んでも、多彩なことを言っており、基本戦略が分からない。

私は、2008年9月4日のエントリー経済成長と財政改革で、次のグラフを掲げた。国民負担率とは、税・年金・保険料の合計負担が国民所得(GNI)に対して何パーセントになっているかを計算した数字である。ここここに財務省の資料があり、財務省資料によれば、デンマーク70.9%、スウェーデン66.2%である。下のグラフによる日本は40%だから負担は低いが、米国よりは高い。但し、米国の負担率が低いのは、民間保険と民間年金がカウントされていないからであり、実質負担は高くなるのではと思う。政府保険・政府年金が良いのかの議論は別途あるとは思うが、高齢化社会が急速に進んでいる日本は、どうあるべきか?過去の延長線で同じことをしていては、破綻すると思える。

いずれにせよ、本当にして欲しい政策論争は、日本の将来の姿についてである。しかし一方では、小選挙区・比例代表選挙になってしまったから、大政党の幹部に下手に挑めば公認を得られず、小選挙区でも比例代表でも負けてしまう。つまらない世になってしまったので、選挙制度改革が必要かなと思ってしまう。

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2009年7月17日 (金)

臓器移植法の改正が公布されました

臓器移植法の改正が公布されました。(官報 7月17日)施行は2010年7月17日からです。私のエントリーに対して、主婦さん他から幾つかコメントを頂いたこともあり、改めて、書きます。

1) 改正内容

主要な改正条文は、次の第6条第1項であります。

第6条 医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。
 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。

ご安心して下さい。「脳死を人の死とする。」とは、どこにも書かれていません。各個人の意思は、最も尊重されるべきです。法文になくても、生きている人の死を尊重することは、憲法11条の基本的人権の尊重に他ならないし、他の憲法の条文においても同様のことが謳われれていると考えます。

2) 虐待を受けた児童に関する配慮(附則5)

附則5において、「虐待を受けた児童からの臓器提供防止のための対応する方策検討や措置」に関しての政府の義務を記載しています。虐待が疑われた場合は、いかなる時であり、それを解明せねばならない。臓器移植法が改正されたから、児童虐待が酷くなるとは考えませんが、逆に少なくなるとも思いません。しかし、臓器移植法改正を機に、対策を検討し、講じるのは良いことと思います。

3) 子供の脳死

今までの脳死判定基準を子供に対しても、そのままで適用するのかについては、検討をすれば良いと考えます。今回改正の対象となっていない6条4項に「臓器の摘出に係る第二項の判定は、・・・二人以上の医師・・・の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。」となっており、厚生労働省令に脳死の判断基準が委ねられています。

当然のこととして、子供に対する脳死判断基準について、1年間検討がなされると思います。

親は、臓器提供を拒否できるのです。自分の子供は、「誰が何と言おうと脳死ではない。脳死判定を受けたが、やはり拒否します。」は、ありと考えます。人の死を他人に強制することは、絶対あってはならないと考えます。

4) 今回改正の問題点第6条の2

報道も、ほとんど触れてなかったし、焦点が別の所にそれる可能性があるので、私もあえてブログで触れなかったのが、6条の2 親族への優先提供の意思表示です。脳死は、滅多になるものではなく、まして事前に脳死になることを予測するのは不可能です。脳死殺人が行われたら大変ですが、親族のためにある一人の臓器提供が軽率に要請される危険性も孕んでいます。

勿論、心臓死による角膜移植もあるので、「自分が死んだら、私の角膜をXXさんに」と遺言で臓器提供をすることも可能となり、故人の遺志が死後も尊重されることになり、良い面もあります。

今回も改正対象ではなく、そのままですが、第2条4項の「移植術を必要とする者に係る移植術を受ける機会は、公平に与えられるよう配慮されなければならない。」の公平原則に少し条文が加わりました。 この6条の2は、6月後の2009年1月17日からの施行です。様子を見ていきましょう。

5) クラスター爆弾禁止

本日公布された法律に「クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律」があります。クラスター弾等禁止条約批准に伴う国内法の制定で、本ブログに書くのは備忘録でありますが、次の日経記事には「同爆弾を大量に保有する米国や中国、ロシアは条約に参加しない意向を表明している。」とあり、平和国家日本として、世界をリードしていって欲しいと思います。

日経 6月10日 参院、クラスター爆弾禁止条約を承認 8年以内の廃棄が義務に

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2009年7月15日 (水)

高知医療センターPFI破綻

2008年12月19日に高知医療センターPFIでも問題浮上を書きましたが、高知新聞 7月7日病院PFI 「円満解約」の方針確認のように解消の方向に進んでいます。

円満解約と書いていますが、破綻でしょうと言いたいのであります。即ち、高知医療センターPFIは、巨額の赤字発生を続け、その解消の見通しが立っていなかったのですから。例えば、高知新聞 6月17日 高知医療センター 赤字21億円 との報道があります。

なぜ、PFI解消となったかですが、高知新聞 6月16日 高知医療センター PFI解消へ協議 の通り、オリックス子会社の高知医療ピーエフアイ(ホームページはここ)も赤字に耐えかねてギブアップを高知県・高知市病院企業団に申し入れたようです。

しかし、これらを県民や市民に対して今もだまし続けているような気がします。この7月9日の高知新聞の記事ですが、表題「高知医療センター 直営化後も努力必要」は、良いとして、本文の中に、「PFI事業終了による経費削減効果」と尾﨑正直知事が8日の県議会で発言したと言うのです。

それでは、PFI事業とは高くつく方式であると認めたことと考えます。その時々の都合で、何でも正当化する人々が存在するようです。それでなくても、高知医療センターPFIでは汚職もあったし。

高知新聞 2009年03月19日 薄い高知県市の当事者意識 高知医療センター前院長汚職有罪判決

PFIとは、無責任体制を生む土壌を持っています。「民間が入れば良くなる。」との理論は、正しくありません。自治体がやっても正しく管理すれば、効率の良い経営、品質の良いサービス提供が可能です。そこを「民ができることは民が」と言ったアホの言葉にのっかた人がいたのだと思います。

ところで、高知県・高知市はオリックス子会社の高知医療ピーエフアイに幾ら払うのでしょうか?【病院PFI】どこに問題があったのか という高知新聞の6月18日の記事によれば近江八幡市は病院PFI解消で20億円の損害賠償金を払ったようです。実は、病院PFIなので、病院の土地、建物、医療機器等全て高知医療ピーエフアイの所有物のはずです。従い、高知県・高知市はこれらの資産を購入しなければならないのです。2008年3月末の貸借対照表から推定して350億円から400億円程度ではないでしょうか?なお、最新の2009年3月末の貸借対照表と同日に終了する年度の損益経書については、Webを探したが見あたりませんでした。

高知県民、高知市民のお金なのですよね。

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2009年7月14日 (火)

落ち目の党は、大丈夫か?

NB Onlineの吉田鈴香氏の7月14日記事 民主第一党でも不安。人材不足が最大の問題に「宮崎県知事の東国原英夫氏は1998年10月、16歳の少女に対して児童買春したことが後日分かっている。」と書いてあったので、Webを見てみました。

Wikiで東国原英夫を検索すると、確かに「不祥事」なる項目に色々書いてあります。ニュースを検索すると、東国原英夫では見つけにくいが、「そのまんま東」で検索すると、ZAKZAK 2004年10月1日 そのまんま東のマネジャー“淫行”逮捕 というのもあり、記事のタイトルはマネージャーですが、下の方に「少女相手では、東さんも10年10月、児童福祉法違反で東京・渋谷のイメージクラブが摘発された際・・・」とあります。

落ち目の党は、このような人に、立候補を要請し、「首相にしてくれるなら」と言われ、世も末であります。

冒頭に掲げました吉田鈴香氏の書かれておられることには、賛同します。落ち目の党に言いたいことは、「選挙はタレントを担いで勝つものではない。」であります。評価できる政策を掲げることです。別の政党のマニフェストを実現不可能なことを言っているとの主張をされておられるのですから、自党は実効性ある有効な政策を掲げ、その政策で選挙を勝負すべきです。

この際、負けても良いではないですか?立派な政策を掲げ、その政策を参考にして、他の党が実現を計っても良いし、その更に次の選挙で一貫性をもって戦っても良いのですから。ホリエモンで失敗したのですから、同じ失敗をしないこと。解散で、本格勝負ですよ。

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2009年7月12日 (日)

太陽光発電による電気料金の値上がり

こんなタイトルで書き始めると驚かれるかも知れません。次のニュースです。

日経 7月9日 太陽光発電、電力買い取り価格を2倍に 経産省小委が初会合

太陽光発電を高く買うための、財源をどうするかというと、電気料金の値上げです。検討されている案は、普通の家庭で、月に100円、年1,200円です。そこまでして、太陽光を普及させる必要があるのか、国民的な合意が形成されているのか等を書いてみます。なお、毎日新聞のWeb記事には、値上げ部分も書かれているので、毎日の記事も掲げておきます。

毎日 7月10日 太陽光発電:余剰電力買い取り義務化、年内に--経産省

1) 経済産業省総合資源エネルギー調査会買い取り制度小委員会

経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会が買い取り制度小委員会を発足させることを、5月25日の委員会で決定し、その第1回の買い取り制度小委員会が7月9日に開催されました。その結果開催された小委員会討議についての報道です。議事録は、未だWebにないのですが、情報を総合すれば、ほぼ全容は掴めます。(なお、開催通知はここにあります。設置に関するメモはここ

例えば、次の発言が5月25日開催の総合資源エネルギー調査会における伊藤委員(電機事業連合)の発言です。

伊藤委員
系統対策に関して、現時点の技術においては、4月に麻生総理の演説でも述べられた「2020年に太陽光発電20倍」という大量の太陽光発電を系統側に受け入れることは不可能。日射量や気温の変化等の条件を加味しながら全国の様々な条件にてデータを収集し分析を行う必要がある。コスト面、時間の面でも時間がかかる。
負担と水準について、数十円~100円程度とはあくまで標準世帯の価格であるがどうしてもその値が一人歩きをしてしまっている。家庭用のみでなく、産業用、公共用の負担分についてもしっかり計算をすべき。国がしっかり説明責任を果たすべき。

様々な課題があるのは確かで、国民的コンセンサスを得ないと大変です。政治家に決着させようとすると、政府負担=税金投入から増税になります。税で払っても負担方法の1種なので、同じかも知れませんが、競争原理や経済合理性が働かなくなって国民負担が増加することになりかねません。

2) 総論賛成・各論反対

CO2削減については、総論では多くの賛成があるものの、具体策になると、他の更に効果的な方法があり、自分・自社はやれることを精一杯努力しているとの議論になります。私は、公平にするために、炭素税を課して、炭素税の財源で、CO2削減の様々な政策を実施すべきとの意見です。

太陽光発電買取制度についても、貧困層の犠牲・負担による富裕層優遇になる恐れもあります。即ち、自宅の屋根に太陽光発電を設置して高値電力販売が可能なのは、1戸建てに住む富裕層であり、アパート暮らし・マンション暮らしの貧困層は電気料金値上げで生活が苦しくなると言う考え方です。

7月10日のエントリー 原油価格の安定化(か?)で、原油を初め鉱物資源は有限であると書きました。一方、太陽は人類より長く存在し、その利用に価値があるのは確かです。一方、現在太陽光エネルギーを全く利用していないのかと言うと、水力が利用できるのは、太陽が地球に降雨をもたらしていることからであり、風力も同じです。植物は、光合成により太陽のエネルギーで空気中のCO2を有機物に変化させているのであり、バイオマスの利用と言っても実はそのエネルギーは太陽から来ています。だから、太陽熱・エネルギーの利用とは、太陽電池に限らないのです。本当に何が良いのだと言うことを研究すべきと考えます。そのためには、多くのことを試すべきと考えます。

3) 太陽光発電計画

麻生総理が4月9日に行った日本記者クラブでの「新たな成長に向けて」というスピーチがあります。その中で、麻生総理が次の発言をしています。

《(1)太陽光世界一プラン》
 その第一として、最も力点を置きたいプロジェクトの一つが、太陽光世界一プランであります。太陽光発電の規模を、2020年までに今より20倍にします。

今現在いくらあり、どうなるの?でありますが、ここに、経済産業省資源エネルギー庁の「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法の平成19年度の施行状況について」というNews Releaseがあり、2008年3月末で太陽光発電は合計1,432,407kWとなっており、平成19年度の太陽光発電から電力会社等に販売された電力量は660,625,835kWhです。平成19年度の年間設備増加量が202,698kWでしたから現在は1,700MW程度でしょうか?麻生総理は、これを34,000MWにすると言ったのです。同じ率で電力供給が増加する場合は、13,000GWh以上になるし、公共施設に設置した場合は、電力消費をはるかに超えて発電する設備となる可能性もあり、15,000GWh位になるかも知れません。

日本は、現在いくら発電して、いくら消費してるかは、次の表を参照下さい。(資源エネルギー庁の統計から作成しました。)

   平成20年度 日本の電力供給と需要バランス (単位:GWh)
単位:GWh 10電力 卸電力 自家発等 合計
水力 56,135 19,224 7,243 82,602
火力 486,884 102,709 167,474 757,067
原子力 235,161 10,446 0 245,607
新エネルギー 5 0 2,843 2,849
合計 778,185 132,379 177,560 1,088,124
他社購入/(▲)卸販売 167,621 ▲113,891 ▲47,686 6,043
揚水発電電力消費 ▲7,766 ▲1,279 0 ▲9,045
自家消費 0 5,097 102,510 107,607
家庭向け等 285,283 0 5 285,288
事務所・小規模工場 46,756 0 1 46,757
6kV以上の自由化電力 556,895 12,115 26,875 595,884
販売電力合計 888,935 12,115 26,880 927,929
電力消費量合計 888,935 17,211 129,390 1,035,536

もし、15,000GWhを現在より24円/kWh高く買うとして、それを1,000,000GWhの消費で平均分担するならば、0.36円/kWhとなります。しかし、そんな単純な計算でよいかというと、電力安定供給の投資が追加で必要なので、相当に大変な計算(シミュレーション)が必要です。例えば、上の表の10電力と卸電力の設備の合計は、233,623MWです。これで、揚水発電の電力消費を差し引いても901,520GWh年間電力供給を行っています。勿論、太陽光の場合は、家庭内で消費した後の電力なので、家庭内消費を加える必要がありますが、それでも35,000GWh程度です。同じ新エネルギー・再生可能エネルギーでも、風力発電やバイオマス発電は、それぞれ設備1,816MWと1,924MWに対して、発電量は2,744GWhと3,165GWhです。一方、太陽光は34,000MWで、15,000GWhですから、とても効率の悪い発電です。

何故かというと、太陽がある時だけの発電だからです。「雨が降れば、お休みで!」という歌の通りで、また夜もお休みします。そういう太陽光発電の休憩時バックアップが必要なのです。バックアップは無料ではありません。例えば、家庭に太陽光発電を設置しても、電力会社から供給を受けるための電線は必要です。

4) 太陽光発電メーカ

3.5kWの住宅用太陽光発電設備を設置するとして、現在新築で185万円、既築設置で225万円程度のようです。(参考資料)太陽電池メーカには、どのような会社があるかですが、ロイター 6月29日 太陽電池の国内特需で日本メーカーに復権の機運は多少日本メーカに気を使った書き方かと思いますが、この記事にあるように、独Q-Cells SE、米 First Solar, Inc.、中国Suntech Power Holdings Co, Ltdが1位から3位までです。例えば、中国Suntech Powerは江蘇省無錫市にあり、2001年に設立、2002年に事業開始した会社です。業績は下のグラフのように、右肩上がりの高成長です。ニューヨーク証券市場に上場し今や世界企業で、資金調達でも、問題はないはずです。

Suntech_power20097

世界不況克服に向けて日本から世界の太陽電池メーカへの事業促進策です。世界中のメーカが競争してくれないと、価格は下がりませんから、世界メーカの競争が日本で生じることは歓迎すべきです。さもないと、日本メーカも日本でしか通用しない田舎会社となり、GMの後を追いかけることになると思います。

なお、設置を計画されておられる方は、メンテナンスのことは、十分納得するまで業者と打ち合わせして下さい。素人には、メンテナンス不可能です。例えば、太陽電池で発電するのは、直流です。それを回路で交流に変換します。3.5kWの出力は、火災を発生させるに十分ですし、点検のために屋根に上るのさえ、普通は無理です。50年間無償修理を約束させ、支払いは50年分割払い、メンテナンス不履行時支払い相殺可能とか交渉しますか?多分、業者は受けないでしょうね。しかし、そのぐらい真剣な検討をすべきと思います。

5) CO2削減は容易ではない

書いてきたように、CO2削減は容易ではありません。地道な努力が必要です。

一つの、例として太陽光発電に類似した設備に家庭用燃料電池エネファームとか称するのがあり、補助金も出るようです。燃料電池だから、CO2は出ないと勘違いをされておられる方もいると思います。しかし、燃料に都市ガスを使用するのですから、CO2を排出します。都市ガスの主成分はメタンCH4であり、Cが存在します。燃料電池としては、CO2を発生しないものの、水を加えてH2を製造し、化学式で書けば次の反応です。きちんとCO2を排出します。

CH4 + 2H2O → 4H2 + CO2

ちなみに、1立方メートルの都市ガスで、2.2kg強のCO2をエネファームは排出します。そのまま、都市ガスを燃焼する場合と全く同じです。そんな話、聞いたことないって!イエ、パナソニックのWebにも次の説明があります。

水蒸気改質法で水素を取り出す場合、炭素を含んだ化石資源からの改質であるため、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)が発生します。一酸化炭素(CO)は燃料電池の化学反応に悪影響がありますので、水を加えた変性反応や、酸素を加える浄化反応などで、二酸化炭素(CO2)に換えます。

エネファームと太陽電池の双方を設置すると、家庭で必要とする電力をはるかに上回る電力が発電できる。エネファームは、46円/kWhの対象ではない。そこで、家庭内の部分は、エネファームで発電し、太陽光発電部分を全量46円/kWhで売ろうという不逞の輩がいるようです。相当な悪人で、エネファームでさえ、何らCO2の発生を少なくする設備でないにも、拘わらずその上を行くのです。

エネファームは、発電だけをとれば、発電効率33%とディーゼル発電よりも、はるかに発電効率が悪く、CO2大量発生設備です。何故、エコになるかというと、温水を作るから、温水と発電を合算すれば熱効率が上昇し総合効率で計算してエコとなります。但し、好きな時に温水が作られるのではなく、発電時のみです。温水なので、貯蔵が可能というわけです。エネファームの場合は、1日10kWh発電するとして、1日350リットル程度の温水が生産される。タンク容量が200リットルとかですから、毎日350リットル不必要であろうが、温水をせっせと使いまくる生活になります。夏は温水が余り、冬は温水が足りないということもあり得ます。所詮ガス代を払うのですから、温水は不要でも使わにゃ損となるかも知れません。考え方次第ですが、どちらにせよ、エネファームと太陽電池と双方設置のキチガイ沙汰は防止するようにせねばなりません。

ちなみに、資源エネルギー調査会新エネルギー部会の議事録等もそのような事態は防ぐ方向になっています。なお、太陽光発電促進のための、電気料金値上げについて、その方向ではありますが、値上げ幅を含め、例えば、自家発電・自家消費のユーザーにも負担させるのか、6kV以上の自由化電力についてどうするか等、様々な部分が未だ決まっていません。しかし、多くの人が感心を持つべきだし、うまい話ばかり聞かされていたが、実は全員に負担がくると驚かれる方もいると思うので、少し長くなりましたが本エントリーを書きました。

今度の政権は、まじめに炭素税導入をしてくれないかな。そうすると、こんなゆがんだストーリーから少し楽になれるかも知れないのに。

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地方への税源移譲には反対をすべき

判決文の「事業年度の法人税」を「事業税」と読み違えていましたので、本エントリーは削除します。

ご迷惑をお掛けしました。

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2009年7月10日 (金)

原油価格の安定化(か?)

7月 3日のエントリー 日本航空と全日空の比較の中で、シンガポール渡しのジェット燃料の価格チャートを掲げ、日本航空の燃油価格ヘッジのことを書きましたが、原油価格が乱高下をしている現状であります。

1) 原油価格

2001年以後の原油価格チャートを掲げます。

Uscrude20097

8年半の価格の動きですが、どう感じますか?これを見れば、株なんてバカらしくやってられないよと感じるかもしれません。次に、本年1月1日以降の原油価格チャートを掲げます。なお、こちらはOPEC原油バスケット平均価格としました。(価格は、基本的に同じです。別の価格も出しておこうと掲げました。)

Opec_crude200907

そして現在の原油価格として次のブルームバーグ・ニュースを掲げます。

7月10日 NY原油時間外:週間ベース1月以来の下落率に-ドル高で魅力薄れる

今年になってからの価格は、40ドルから始まって現在60ドルですから、半年で50%高です。

2) 原油需給量

一方、需給量は、それほど変動していないのです。原油生産量のグラフが次の通りです。

Worldoilprod2007

生産日量が73百万バレルであり、年間42億キロリットル強に相当します。8年半の間で生産量の最小と最大の差は10%です。一方、価格は9倍です。原油は、食料と同じように重要です。いくらが正当な価格かは、誰も言えないが、価格変動が大きすぎると思えます。

3) 市場価格コントロール

株なんかやるより、原油で儲けた方が簡単だと1)で書きました。しかし、株と異なるのは、タンクが必要なことです。従い、もしやるなら先物の売買のみに徹することです。それと、日本航空と全日空の比較で書いた石油製品に関するデリバティブ取引から生じる原油や石油製品の先物市場に対するインパクがあると思います。デリバティブ取引は、金融商品であり、原油等を渡したり、引き取ったりせずに、契約した条件での差額決済です。デリバティブ取引を提供した証券会社等は、リスクを取るわけではないので、何ならかの形で先物商品市場等に繋ぎます。デリバティブ取引を否定はしませんが、行き過ぎると実需を超えた架空取引による市場価格の乱高下を生み出すと思います。

本日、商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部改正が公布されました。経済産業省の法案国会提出時の2009年3月3日プレスリリースがここ説明)にありますが、「市場及び相場操縦手法の国際化、複雑化等に対応するため、相場操縦行為に関する罰則を整備するとともに、海外当局との情報交換手続を規定することにより、国際的に協力して市場を監視できる仕組みとします。」と言っておられます。

米国の場合は、商品先物市場を監視するのがCFTC(Commodity Futures Trading Commission)です。CFTCが、原油等の市場監視を強化するとして7月7日に声明を発表しました。”Aggregate Position Limits and Review of Hedge Exemptions for Energy Futures Markets”と言っておられます。日経の記事とCFTCの声明は次の所です。

日経 7月8日 原油先物の持ち高制限、米取引委が導入へ 市場の透明性高める

CFTCの声明 July 7, 2009 Statement by Chairman Gary Gensler on Speculative Position Limits and Enhanced Transparency Initiatives

原油価格はエネルギー価格の中心であり、世界中の人々の生活と産業に影響を与えます。一国での取り組みは意味がなく、少しでも対策を見つけていただければと思います。もしかしたら、世界不況の原因はサブプライムではなく、原油価格ではないかと思ったりします。

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2009年7月 9日 (木)

JR福知山線脱線事故で山崎正夫社長起訴

JR福知山線脱線事故で、神戸地検は8日、JR西日本の山崎正夫社長を起訴というニュースがありました。2008年9月19日に兵庫県警による書類送検に関してこのJR尼崎事故を書きました。今回は、この書類送検を受けた神戸地検による起訴であることから、書きます。ニュースとしては朝日をあげておきます。

朝日 7月8日 JR西社長を在宅起訴 宝塚線事故「安全対策怠る」

1) 起訴は妥協?

そんな印象を持ちました。警察が神戸地検に書類送検したのは、死亡した運転士を含め10人です。何故、現社長(実際には昨日まで)で当時常務取締役鉄道本部長であった山崎氏のみを起訴したのか、妥協と思いたくなってしまいます。

尼崎事故は、2008年9月19日のエントリーで書いたように、JR西日本の会社組織の問題が引き起こしたと思います。乗客の安全よりも乗客に対する表面的な満足度の提供を会社として重視してしまったのです。

600mカーブを304mカーブへと付け替えたのは、1997年3月に開業する大阪府、大阪市、兵庫県、尼崎市、JR西日本、関西電力等が出資する第三セクターの関西高速鉄道株式会社の大阪東西線へJR福知山線の電車を乗り入れ、更には神戸方面から来た電車と方向を同じにして尼崎駅での乗り換えを便利にするためです。この対応に、間違いはありません。その結果、安全対策の強化が必要であれば、必要な安全対策を適切に講じたかです。

私も、安全対策は不十分であったと考えます。しかし、刑法の業務上過失致死傷に該当する行為と認定できるかについて、疑問に思うのです。そして現在生きている他の8人は、何故起訴しなかったのかです。私は、会社組織の問題、すなわち組織犯罪と考えることから、もし一人とするなら当時の社長山崎正夫氏が起訴されるべきと思います。

勿論、私は、山崎正夫氏が刑事罰に該当すると言っているのではありません。誰も刑事罰に問うべきではないと考えます。但し、JR西日本が、この事故を起こした原因者であり、責任者です。従い、JR西日本は十分な賠償を遺族や怪我をされた人々にすべきです。そして、安全な鉄道をJR西日本として作り上げると同時に、事故から学んだ教訓を他のJR鉄道会社のみならず、私鉄を初め世界中の鉄道会社に伝えるべきです。会社のみならず書類送検された9人は、無報酬ボランティアとなっても、鉄道の安全のために尽くすべきであると考えます。

多分検察は、「人が死んでいるのに、誰も起訴されないのはおかしい。」との世間様の声を考えて、現社長を生け贄にすると言う妥協をしたのかと勘繰りたくなります。

2) 304mカーブと600mカーブ

上の朝日の記事が、「カーブの付け替えで時速120キロから70キロに急減速しなければならなくなり」と書いていることから、グラフを作りました。

Jrwamagasaki20096

上のグラフにおいて、緑線が600mカーブの時のカーブの外向きに発生する横Gです。青線が304mカーブの場合です。304mカーブとした結果、横Gは約2倍になりました。そして、転倒する危険性のある赤線と110km/hあたりで交わることとなりました。600mカーブの緑線であれば、交わることはなかったのです。(赤線はカント(カーブの左右のレール高さの差)を現在と同じ97mmとしており、600mカーブの時には、50mm程度のカントであった可能性もありますが、その場合でも0.05G程度の影響であり、120km/hで転倒危険範囲には入りません。)

このような技術的な分析の結果を踏まえて、神戸地検は鉄道本部長であった山崎氏を刑事罰で起訴をした推測します。しかし、上のグラフは素人の私でさえ作れたのです。多くの鉄道専門技術者がいるJR西日本にとっては、赤ん坊の手とあそぶようなものであったと思います。JR西日本には、カーブの半径に対して最高速度を規定する社内規則があったのです。だから、本部長が、このカーブは制限何キロメートルと決める必要はなかったのです。むしろ、社内規則を違反してまでダイヤ回復を運転士に強要してしまう社内体質にこそ問題があったと思います。

2008年9月19日のエントリーの(2)で書きましたが、違反をしなければ実現不可能な列車ダイヤがJR西日本には存在したのです。ミスを犯して、ダイヤ作成者が、そんな計画を作ってしまうことはあり得ます。しかし、ミスをチェックする人と組織が存在しなくてはならないし、ミスの修正がなされる組織でなければなりません。仮に、誰も気がつかなくとも、実際に列車を運転する運転士・車掌は気がついていたはずと思います。可能性としては、運転士・車掌は気づいていても、奴隷制度であり、懲罰的な日勤教育(再教育)が待っているから不正を正すように動かない。

3) 本当に必要なこと

本当に必要なことは、安全な鉄道をつくることと思います。事故から教訓を学んで将来に役立てることができなければいけない。

神戸地検がATSを設置していないことが原因と主張したとしても、それは検察としての一見解に過ぎません。JR西日本の組織的な欠陥により発生したところが大きいと書きました。組織の欠陥が関係する場合、その欠陥を浮かび上がらせるためには、幹部を初めJR西日本の方々が真摯に事故を見直すことが必要と思います。

事故が起こると誰が悪い、誰の責任だと考えがちですが、組織的な欠陥が絡む場合には、事故原因が明確にならない可能性があり、更には原因を間違えて特定してしまううことさえあり得ると思います。2008年9月19日のエントリーは、航空・鉄道事故調査委員会の調査報告書を読んで書きました。様々な角度からの分析がなされています。しかし、JR西日本の組織に、どう欠陥が存在したかについては、余り書かれていません。航空・鉄道事故調査委員会としての限界と思います。

そのような限界を乗り越えて、教訓を導き出せるのは、JR西日本であると考えます。そのためには、起訴された山崎氏を初めJR西日本の方々の協力が必要です。それは、同時に自らと組織について十分に問いたださねばならない。そして、そのことこそ、尼崎事故の本当の反省であり、人としての生きる姿と思います。しかし、刑事罰に問われるなら、鉄道の将来の安全より、自分の身が大事となります。神戸地検も、私が書いているこのような意見があることを承知して起訴をしたと思います。刑事罰よりも事故防止の方が、重要であることが社会的に認識されることが重要と思います。日本では、その様な法を作るしか解決がないのでしょうか。

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2009年7月 8日 (水)

アフガニスタン援助についてのNHKクローズアップ現代も問題ありすぎ

2日連続でNHKに対する不満を書きたくもないのですが、本日のNHKクローズアップ現代「7月8日(水)放送 混迷のアフガニスタン(2)日本の復興戦略」を見たら、書かざるを得ないと思いました。

NHKクローズアップ現代は、冒頭で「アフガニスタンのチャグチャランPRTへの文民支援チームの派遣」を取り上げ、アフガニスタンは治安悪化により軍隊との共同で援助をしないと援助効果が上がらない。日本の援助の方式である軍隊を伴わないような国際援助は、米国の強い意見に代表されるように、アフガニスタンの様な国に対しては効果が薄いと言うような主張が感じられました。

まさに驚きです。途上国援助について理解が全くなされていなのではないか?軍隊を外国に動かすことは、何を意味し、どのような結果をもたらすかをNHKの人達とは、考えられないのだろうか?日本の外交方針についても考えられない。日本国憲法を、どう考えるのかなと思いました。

まず、チャグチャランPRTへの文民支援チームの派遣については、この外務省のプレスリース2009年4月17日に書かれていますので、これを参照下さい。残念ながら、政界中どこでも治安が良いとは限らず、援助を実施するに際して軍の支援が必要な場所は存在します。従い、外国の軍隊と協力することが時には必要です。しかし、それが全てではありません。

ゲストとして招かれていたのが、JICA理事長緒方貞子氏で、緒方氏はNHKの挑発には乗らず、信念を述べておられました。本日のNHKのクローズアップ現代の制作方針で良かったこと。それは、緒方氏をゲストとして招いたことでした。

なお、私がNHKの言っていたことで、多くを変だと思いましたが、それについて少しだけ私のコメントを書いておきます。

1) NHK曰く:日本の援助はアフガニスタンで効果ある援助活動ができていない
外務省のWebには、2001年9月以降総額約17.8億ドルとあり、その中に、治安の改善:総額約3億6,000万ドルがあげられており、DDR及びDIAG:約1億4,900万ドルとあります。DDRは、Disarmament, Demobilization and Reintegrationであり、DIAGはDisbandment of Illegal Armed Groupsです。タリバン時代に地方軍属が武器を保有していたのを武装解除したのです。日本が、武装解除を中心になって実施した。誇らしいことと思います。そのようなことに、日本の方で先頭を切って行われた方がいらっしゃるのです。

2) NHK曰く:アフガニスタンの治安はタリバン時代より悪化している
緒方氏も述べていましたが、タリバン時代には多くの難民がパキスタンとイランにいました。その難民のほとんどは、アフガニスタンに帰国しました。何を物語っているのでしょうか?

3) NHK曰く:JICAはアフガニスタン事務所の人数を減少させている
緒方氏も述べていましたが、選挙の際の暴動が心配だから避難することとした。長期的に見ることが必要です。それと、実は、人数からすれば、他のJICAの事務所と比べても、現在のアフガニスタン事務所は人数が多いのです。仕事があるから、当然ですが。でも、勤務している人達は大変です。NHKの人達には、分からないでしょうが。

4) NHK曰く:米国は日本に軍隊の派遣を求めている
緒方氏は、自分自身では、オバマ政権になってからそのようなことを聞いたことがないと述べていました。ネオコン・ブッシュ政権とオバマ・クリントン外交は少し違うと私は思います。そもそも、米国の政策をそんな単純とは思いません。米国の要求以前に、日本の政策がなければなりません。

でも、考えてみると、外交政策なんて、NHKには難しすぎて、無理なのかな?

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2009年7月 7日 (火)

誤報道を続けるNHKの臓器移植法

NHKが臓器移植法について相変わらず誤報道を続けているようです。Web魚拓に取りました。

NHKニュース 7月7日 19時26分

「A案は脳死を一般に人の死とすることを前提にしており」との表現が何度もあります。A案とは、衆議院で可決された法案であり、私の6月23日のエントリーにその全文を掲げています。NHKの法解釈は、ねじ曲げた解釈であると考えます。

A案の場合でも、臓器移植の場合のみ脳死が死となるのであり、臓器移植を行う時しか脳死判定が実施されない。そして、本人が脳死による臓器提供を拒否していれば、脳死判定はない。更には、ICUで治療を受けなければ脳死は生じないし、いかなる場合でも脳死判定が必要である。様々な条件が満たされた時のみ、脳死による臓器提供が行われる。実は、A案でも、極めて少ない。だから、少々嘘を言っても構わないとして、NHKは嘘をつき続けるのでしょうか。

つくづく嫌になりました。A案も直接に臓器移植の場合に、脳死を死とするとしているのではなく、法案の文章は「医師が臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。」としているのです。なお、ここに引用した、この「医師が臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。」の部分もA案による改正部分ではなく、元の法制定時の法の文章です。

感情のみで発言し、報道することの恐ろしさです。

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2009年7月 6日 (月)

アマゾンのネットビジネス

前のエントリーの続きです。アマゾン(Amazon.com Inc.)のForm 10-K (Annual Report)を読んでいると、ネットビジネスは未だ更に拡大すると思いました。最近3年間の業績と売上、営業利益のグラフを掲げます。

アマゾン(Amazon.com Inc.)の最近3年間業績(単位:百万米ドル)
2006 2007 2008
売上高 10,711 14,835 19,166
売上原価 8,255 11,482 14,896
売上総利益 2,456 3,353 4,270
販売費及び一般管理費 1,956 2,504 3,177
営業利益 500 849 1,093
ストックオプション対価費用 101 185 275
その他収入(費用) ▲10 ▲9 24
税引前利益 389 655 842
その他営業外収入(費用) ▲12 5 59
法人税等 187 184 247
持分法利益(損失) 0 0 ▲9
当期純利益 190 476 645

次は、米国内と米国外の2つのセグメントに分けた売上高と営業利益のグラフです。うらやましくなる右肩上がりです。

Amazon20068

本屋の店舗以上に本の種類があり、ネットで探せて、注文して、配達してくれる。日本国内については、地方格差を一気に相当解消してくれました。感心します。

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アマゾンの税金

ネット本屋のアマゾンは、米国の会社であることは知っていましたが、日本で本屋商売をしているのは、子会社の日本法人と思っていましたが、米国法人が直接日本で本屋を開いていたのですね。知りませんでした。

朝日 7月5日 アマゾンに140億円追徴 国税局「日本にも本社機能」

思いつくことを書いてみます。

1) 課税の根拠

日本の出版社が出している本を日本人に売った場合、通常であれば利益(所得)の源泉は日本にあり、日本で税金を払わなくてはならないと考えるべき気がします。しかし、税は気分ではなく、税法に従い、課税されるのであり、税法を調べる必要があります。ところで、アマゾンは、米国ワシントン州シアトルに本社を置くNASDAQ上場(略称AMZN)のAmazon.com Inc.であり、であり、日本の本屋商売は、この会社の在米国子会社がしていると理解します。

朝日の記事には、「日本の顧客との商品契約はこの米関連会社と結ぶ形で、売り上げも米側が得ていた。」とあり、在米国子会社が日本で本屋商売をしている形を採っているようです。この場合は、日米租税条約が関係するのであり、日米租税条約の第7条第1項が次のようになっています。

第七条
 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる

恒久的施設という言葉が使われており、日米租税条約の第5条で定義がなされており、第5条第4項には、次のように書かれています。

 1から3までの規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まないものとする。
(a)企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
(b)企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
(c)以後省略

即ち、倉庫は恒久的施設ではないとされています。

但し、そんな単純な問題ではないはずで、多分日本にあるアマゾンの倉庫を保有しているのは、日本のアマゾン子会社か、あるいは保有しておらず、貸倉庫を利用しているとしても、そこに発注しているのは日本の子会社と思います。

ところで、消費税はどうしているのでしょうね?消費税法第4条は、「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。」であり、事業者の定義は第2条1項四号で、単に「個人事業者及び法人」となっているだけですから、外国法人も納税義務があり、納税していると思いますが。

2) 報道は「今分かった。」 しかし、アマゾンは、1月30日に発表

Amazon.com Inc.は、NASDAQ上場ですから、日本の有価証券報告書に相当するForm 10-K (Annual Report)を発表しています。2008年については、2009年1月30日に出していますが、その73ページ(Note 12—INCOME TAXES )に、次の記載があります。

In addition, in 2007, Japanese tax authorities assessed income tax, including penalties and interest, of approximately $119 million against one of our U.S. subsidiaries for the years 2003 through 2005. We believe that these claims are without merit and are disputing the assessment. Further proceedings on the assessment will be stayed during negotiations between U.S. and Japanese authorities over the double taxation issues the assessment raises, and we have provided bank guarantees to suspend enforcement of the assessment. We also may be subject to income tax examination by Japanese tax authorities for 2006 through 2008.

119百万米ドルですから、140億円になんとなく見合うのではと思います。アマゾンは、銀行保証を差し入れたとありますから、正攻法で交渉しているのだと思います。最も、それは当然のことであります。何故なら、日本で納税する場合は、米国で外国税額控除が取れるからです。米国で外国税額控除を受けるためには、誠意を持って交渉することです。

3) 日米交渉

二重課税防止の観点なしで解決はできず、政府間の真摯な交渉は重要と思います。そもそも、日米租税条約が作られた時代には、Webがなかった。改定交渉でも、その解決策が示されないと条約文章に盛り込むのは、困難と思います。

ネットビジネスの場合、クレジットカードで直接外国企業に支払うことが簡単にできてしまう。購入した物は、日本国内でのみ移動することがある。同様なケースが他にもあると思います。2)で掲げたアマゾンのForm 10Kの税金の部分の直前の文章には、フランス、ドイツ、ルクセンブルグ及び英国における税務調査は終了していないと書かれています。これらの国々では、何がどう問題になっているのか分かりませんが、同様の背景があるのでしょうか。

どう考えるかですが、アマゾンに感謝すればよいのではと思いました。相手の外国会社がケイマン島の会社であった場合、租税条約の適用はないのですが、同種問題があった場合の扱いについて、私も自信がありません。アマゾンであるから、逃げたりはしない。従い、ネットビジネスに対する最適な課税の方法を作り上げる良い機会と思います。

もし、ケイマン島のような法人課税の低税率あるいは無税国を経由して合法的な税逃れができるのであれば、問題は相当深刻です。国税局さん頑張ってください。

なお、この問題を、日本の法人税率が高いから生じたと間違いをしてはなりません。

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2009年7月 4日 (土)

橋下知事に360万円賠償を命じる判決を読む

選挙の道具として、某党がコンタクトをしているタレント知事の一人が橋下タレント知事でしょうが、7月2日に広島高裁は光市事件弁護団4名に対する橋下知事から各人90万円、合計360万円の賠償金支払いを命じる判決を出しました。

日経 7月2日 橋下知事に360万円の賠償命令 「光事件で懲戒」控訴審

最高裁まで争われるかどうか知りませんが、判決文が橋下弁護士による懲戒請求扇動被害弁護団のホームページからダウンロード可能であり、読みました。

橋下タレントの主張は、「2007年5月27日放送のTV番組「たかじんのそこまで言って委員会」(よみうりテレビ製作)での発言内容は、言論の自由の範囲であり、損害賠償の責めを負う内容の発言はしていない。」であります。

一方、弁護団の主張は、「そのTV番組の中でなされた橋下発言は、根拠なく懲戒請求を扇動する不法行為であり、刑事裁判における弁護人の存在意義と弁護士懲戒制度の意義を傷つけるもので、刑事弁護を引き受けることを萎縮させ、ひいては憲法上保障された被告人の弁護人依頼権を害することになり発言を看過することができない。」であります。そして、光市事件の弁護団(22名)の構成員の一部である弁護士4名が、個人として各人300万円の損害賠償を求める民事訴訟を広島地裁に提起したものです。

広島地裁は、各人に対し200万円(合計800万円)の支払いを命じる判決を2008年10月2日に出し、橋下タレントは、これを不服として、広島高裁に控訴しました。今回、この控訴審の判決が出されたのです。読むと、その通りと賛同することが書かれていました。その部分を紹介します。(判決文において、控訴人が橋下タレントです。)

判決文31ページ
控訴人は,圧倒的影響力をもつテレビ放送という媒体を利用し,虚偽の事実(発言オ)をない交ぜにして,本件弁護団には懲戒事由があるとの表現で弁護方針を批判し,懲戒請求への積極的参画を呼びかけることで弁護団への非難を誇張して表現しつつ,視聴者に積極的に非難に加わることを求めたものといわざるを得ない。

判決文31ペ-ジ
控訴人の上記懲戒請求の勧奨は,弁護士懲戒制度の本来の趣旨目的を逸脱し,多数の者による理由のない懲戒請求を集中させることによって,被控訴人らを含む本件弁護団の弁護方針に対する批判的風潮を助長し,その結果,被控訴人らの名誉感情等人格的利益を害するとともに,不当な心身の負担を伴う弁駁,反論準備等の対応を余儀なくさせたものと評さざるを得ず,控訴人は,このことについて,不法行為責任を免れないというべきである。

32ページ
控訴人は,刑事弁護の経験を持つ弁護士として,刑事弁護人の職責やその困難性を身をもって知るという,本件番組には唯一弁護士の資格を持つコメンテーターとして出演していたのであるから,刑事弁護人の職責を適切に紹介した上で,自説を述べるべきであったといえる。それにもかかわらず,控訴人は,適切な説明や紹介を十分にしないまま,本件弁護団の弁護方針や内容に対する他の出演者らの疑問や批判に同調し,弁護団への批判的意見を懲戒請求制度に絡めて開陳し,それにとどまらず,番組視聴者に懲戒請求を勧奨した。もとより,控訴人が本件弁護団の弁護方針,弁護活動に対する批判的見解を述べるのは,表現の自由の範囲内においては何ら答められるべきものではないが,テレビという大きな影響力をもっメディアの番組において専門家として発言する以上,発言内容に慎重を期すべきは当然であり,正確かつ客観的な情報を提供した上で,自説を披涯すべきであったと考える。

その通りと思います。

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2009年7月 3日 (金)

日本航空と全日空の比較

次の2つ最近のニュースが、興しろいと思いました。

日経 7月1日 日航、政投銀などと1000億円の融資契約締結

日経 6月30日 日航優遇「公平性欠く」 全日空、国交省に申し入れ

そして、全日空は、この7月1日のプレスリリース「新株式発行並びに株式売出しに関するお知らせ」の通り、537,500,000株の増資を発表。この増資により払込を受ける金額は、本日の株価320円を基準にして90%を払込金額にすると、1548億円となります。

次の様な、日本航空と全日空を「財務格差一段と 増資か公的融資かで明暗」なんて記事もあったので、両社を比較してみました。

日経 7月2日 全日空・日航、財務格差一段と 増資か公的融資かで明暗

1) 2009年3月期業績

日本航空と全日空の連結損益計算書は次の通りです。

Jalana20097

収入の規模からすると、全日空が71%なので、適切な比較が可能と考えます。また2社とも収入のなかで航空輸送収入が88%を占めています。(両社とも、航空輸送収入のグループの内部収入を含めていますが、旅行事業への内部収入と思いますから、実質航空輸送収入でよいと思います。)今年度と昨年度の航空輸送収入を2社についてグラフにしたのが次です。

Jalanarev20097

国内輸送に関する収入は両社ともほぼ同じで、国際線輸送に関する収入で日本航空が全日空より大きく、旅客収入は2.4倍です。ちなみに、収入を輸送した人数と距離および重量と距離で平均単価を求めると次の表になりました。距離が長いと単価は安くなるはずなので、簡単には言えませんが、日本航空の国際線旅客はほんの少し安いのでしょうか。そして、国内線は、その逆の感じです。いずれにせよ、それほど大きな差があるようには、感じません。

日本航空と全日空の旅客と貨物の平均収入単価
JAL 2008/3 JAL 2009/3 ANA 2008/3 ANA 2009-3
国際旅客(円/人km) 12.5 13.5 14.6 15.0
国際貨物(円/トンkm) 43.0 43.6 42.9 41.7
国内旅客(円/人km) 21.3 21.3 18.5 18.6
国内貨物(円/トンkm) 70.3 76.5 68.7 71.2

2) 両社の航空輸送事業収支

航空輸送事業の事業収支を書いたのが次の表です。(航空輸送費用には、航空輸送事業に関わる販売費及び一般管理費も含んでいます。)

Jalanaplf20097 

さほど、変わらない感じですが、日本航空は609億円の損失で、全日空は48億円の利益です。一つ言えるのは、燃油費が、日本航空の場合は、収入の落ち込み6.0%に対して23.4%の増であり、一方全日空の場合は、収入の落ち込みは5.5%と日本航空と余り変わらないが、燃油費は14.0%増で押さえることができています。

収入単価の低い国際線が多い日本航空に、燃料単価の上昇インパクトは大きくなることがその要因と思います。一方、航空機減価償却費と賃貸料は燃料単価の影響は受けず、長距離の国際線が多い日本航空の方が、コスト中に占める割合も低く、日本航空が償却費・賃貸料合計で10.0%で、全日空は13.9%です。なお、両社の保有航空機の比較表も作成しました。

Jalanaplane20093 

このあたりから言える一つのことは、新素材を多く使用した軽くて燃油費が安くて済む航空機に機材を変更していくことが、経営戦略として欠かせない。全日空も今回発表した増資の資金使途は、航空機購入を含む設備投資資金に充当と言っています。ちなみに、全日空はボーイング787型機を55機購入するとしており、総投資総額は7181億円。今回の増資額の4倍以上になります。発表から計算すると飛行機の単価は777型機が150億円、787型機130億円となります。

3) 両社の貸借対照表

2009年3月末の両社の貸借対照表を示したのが次のグラフです。Jalanabs20093

売上規模が日本航空2兆円で全日空1.4兆円ですから、総資産額が売上高にほぼ一致するあるいはより大きい会社です。

なお、日本航空の2009年3月末期の財務諸表において、ファイナンス・リース取引を、有形固定資産とリース債務として貸借対照表に計上せずに、賃貸借取引として処理しているリース取引があり、注記情報からこの部分を、比較の目的で資産・負債に組み替えました。この結果は、資産増2806億円、負債増2886億円となり株主資本が80億円減少となっています。このベースにおける両社の借入金、社債、ファイナンス・リース取引を抜き出したのが、次の表です。

Jalanaltloan20093

債務について、一つ言えるのは、1年以内に返済期限、償還期限が来る長期資金債務が日本航空に2,259億円あり全日空の1,229億円の倍近くあることです。日本航空は、この返済・償還のための資金が必要です。

4) 燃料ヘッジの失敗

これまで見た範囲では、それほど大きな差はなかったのですが、貸借対照表における両社の純資産の部が次の通りです。

Jalanaequity20093

貸借対照表全体で見ても、3)に掲げたグラフのように、日本航空の純資産の部は小さいのですが、その原因は、評価・換算差額等にあり、その中でもマイナス2018億円と圧倒的マイナス金額を誇っているのが、繰延ヘッジ損益です。

流動負債として計上されているデリバティブ債務1263億円と関係があり、多分内訳としては出ていないが、固定負債はその他固定負債1793億円の中に隠れていると思います。その他固定負債が前年度末より703億円増加しているので、合計すると1966億円になり2018億円に近くなります。

Webでは見つかりませんでしたが、2009年3月3日の日経で「相次ぐデリバティブ損失 原油乱高下でヘッジ裏目」と題して、2008年12月末時点で日本航空が約2,400億円、全日本空輸が約1,000億円の繰延ヘッジ損失が発生していると報じられています。そこで、これが何かですが、次のジェット燃料価格のチャートを見てください。

Jetkeroseneprice20095_2 

燃油に関するデリバティブ取引とは、先物の燃油価格をあらかじめFixしてしまうことと考えてください。もし、将来の市場価格が上がれば、購入価格上昇を避けられるが、逆に下がってしまえば、高値の燃油を購入することとなります。日本航空の消費する年間燃油量は、45百万バレル程度と推定されます。このうちデリバティブ取引で押さえているのが決算説明会資料からすれば、80%-90%になるようです。そうなると、36百万バレル-40百万バレルが1年以内にデリバティブ取引の決済となるはずで、US$35/バレル程度の値差になると思われ、デリバティブで押さえたのは、平均US$90-US$100/バレルでしょうか?実際のオペレーションでは、期間の長短が組み合わさっており、金額としては「価格差X数量」であるので、3月末時点で存在したデリバティブ取引に関わる対象燃油量はもっと少なく、一方更に高い価格で押さえている可能性もありますが、実態は、分かりません。日本航空は、2009年度の計画を燃油価格をUS$76.2/バレルで作成しているので、このデリバティブ取引がなければ、もっと利益が出る計画であったはずです。

いずれにせよ期末時価で損益を換算すると赤字が2018億円増加するということです。燃油価格が上昇するとデリバティブ取引による損失が少なくなるわけですが、一方、会社全体としてどうなのか?単純では、ないはずです。例えば、世界景気がよくなれば、国際線を運行する航空輸送事業は利益が見込めるのであり、その場合は、国際的燃料価格は上昇するはずです。本来、マーケットは、それ自身の中に、オフセットの方向に働く部分があります。例えば、円高で輸出企業は打撃を受けるとしても、実は輸入原材料や輸入原材料から作られる物は、価格が下がることになります。本来複雑な要素が絡み合っているにも拘わらず、どの時点でFixしているか等よく知らないので言えない部分が多いのですが、80%-90%をデリバティブ取引で固定してしまうのは、行き過ぎであると思います。

本来は、経営者が説明すべきです。コンプライアンスや内部統制が完璧であっても、経営者はその経営判断についても問われるのであり、株主代表訴訟がそのために存在すると私は思っています。

5) 退職給付引当金、退職給付費用

退職給付引当金、退職給付費用に関して、日本航空と全日空で差があるので、見ておきます。次の表を、2009年3月期財務諸表の注記から抜き出して作成しました。

Jalanaemplob20093

日本航空の方が数字が随分大きいのですが、その原因には退職金、年金の水準のみならず他の要素も入ってくるので、よく解りません。そして、費用とした671億円も販売費及び一般管理費に退職給付費用は119億円しか計上されておらず、残る552億円はどうしたのか、私は掴めていません。

退職給付については、日本航空の大きな課題のはずです。従業員にとって水準を下げることは、受け入れることはできないと思います。但し、一方で、年金資産が4000億円存在することは、会社にとっても従業員にとっても強いことと思います。

なお、退職給付債務から年金資産を差し引くと、退職した従業員を含めた債権金額となりますが、これも同じく4000億円です。GMを考えれば、最悪は年金債権の一部を出資株式に転換し、組合が取締役を出すのも面白かったりして。4000億円は、株主資本より金額が大きいのですから。

6) 政府保証の政策投資銀行からの借入

日本政策投資銀行等からの総額1000億円の借入で、そのうちの政策投資銀行約600億円の80%について政府保証を得ることについては、おそらく数多くの交渉の結果として、そうなったはずで、それで良いと思います。

但し、日本航空から政府に対して正当な保証料が支払われる必要があると思います。保証料がどうなっているか、調べずに書いていますが、民間会社に保証料免除はおかしいと思います。中小企業も、信用保証協会に保証料を払っていますし。

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