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2009年7月22日 (水)

特別養護老人ホーム ライフケア高砂の豪雨被害

山口県では、豪雨災害により死者・行方不明者の方が合計で16人であると報じられています。

共同47ニュース 7月22日 山口の豪雨災害、死者6人に 行方不明の10人捜索

そのなかでも、特別養護老人ホーム「ライフケア高砂」では死者3人、行方不明4人と特に多くの死者・行方不明者が発生し、不幸な豪雨災害になっています。

情報が限られた中ですが、事故の教訓から学ぶべきことはないか、ライフケア高砂について考えてみました。

1) ライフケア高砂の場所

住所は、山口県防府市眞尾12151であり、Yahoo Mapで見てみます。

上が地図で下が航空写真ですが、縮尺が異なっています。なお、地図も航空写真も参考スケールが出ています。地図では、「ライフケア高砂」の表示がある所がその場所であり、航空写真では左の方に見える円形の建物が「ライフケア高砂」です。

2) ライフケア高砂を襲った土石流

地図には、南(下)から北(上)の方向に川が流れており、この川の氾濫と思えてしまうのですが、違うと判断しました。ライフケア高砂の東から、即ち川でもない山から土石流が襲ってきたと判断しました。理由は、次の航空報道写真です。

(1) MSN産経ニュースの航空写真

(2) 読売新聞の航空写真

MSN産経ニュースの航空写真では、手前・下の方がライフケア高砂の入り口で、土石流は丁度その反対側から、流れ込んでいます。読売新聞の航空写真は、写真の右が入り口で、左側から土石流が右に流れています。

上の1)で示した、Yahoo航空写真を見てください。ライフケア高砂の入り口は、道路に面した建物の西側(左)です。即ち、土石流は東から西に流れたのです。Yahoo航空写真を拡大していけば、ライフケア高砂の入り口のある場所が鮮明になります。

川でもない所からいきなり土石流がやってくる。恐ろしいと思います。

3) 土石流の予知

予知が全くできないのであれば、防ぎようがなかったことであり、対策も不可能です。しかし、何かあるかも知れないと考えると、ライフケア高砂の建設前は、どうであったかです。おそらく、棚田であると思います。Yahoo航空写真を見ても、周りは棚田であり、棚田の高い方の部分を削り、低い方に埋め立てて、整地をしてライフケア高砂を建設したのだと思います。

即ち、土石流発生の可能性を人々は予測していた。ある危険性を感じていたから、棚田として利用していたと思うのです。

先人の知恵は、とても深いと思います。古老が「自分は経験していないが、子供の頃に年寄りからXXで、▲▲の災害があり、恐ろしかったと聞いたことがある。」と言った時、それは100年に1度の自然災害を言っているのであり、それに対応し、そのような知恵で、人々は住む場所や農地や生活を自然に決めていっていたと思います。

先祖の経験が世代を超えて受け継がれて行っていた。勿論、現代では、そんな生活様式はなくなり、不可能に近い。しかし、記録を記録として残し、研究成果を成果として残して、多くの人が利用できるようにすること。地方自治体も、そのようなことに尽力し、自らがそれを生かすと同時に、蓄積した情報をインターネットを初め、広く公開することが重要と思います。

4) 対策

情報の蓄積と公開が最重要と思います。災害経験は、リスク情報であると考えます。建設地に、そのようなリスクがあるとした場合、発生した時の状況を想定します。例えば、もし大きな頑丈な防護壁で防げるなら、そんな対策も可能でしょう。あるいは、1階を無人にし、2階以上の構造とする等の対策も可能であったかも知れない。

それら以外には、センサーを山側に埋めておき、雨量や位置ズレを連続計測し、危険度が大きくなった時に、避難をする手配ができなかったか。最も、この様な対策だと、ライフケア高砂における雨量測定で対応できた可能性もある。

危険地に老人ホームのような施設を建設しないことも考えられる。但し、老人ホームが利益を生み出す事業ではなく、地価の安い場所に建設し、その分を居室の広さや、設備の充実に当てた方が良いこともあるので、複雑であります。

なお、一番馬鹿げた対策は、砂防ダムであると思う。今回の土石流の方向を分析して私が思ったことは、「土石流上流の発生箇所は、砂防ダムの候補地にはなっていない。」である。「砂防ダムが効果がない。」とは言わない。それは、個別のダム毎に効果を分析・判定すべきで、一般論で論ずるべきではないからです。土地利用で対応することも可能で、対応策には様々な方法がある。高齢化社会とは、土建国家で対応するのではなく、きめ細かい手作りの対応が必要であると考えます。

最後に、もう一つ心配なことが、山林対策です。山林は、水を供給し、CO2を吸収し、木材を生み出し、美しい景観を楽しませてくれる貴重な資源であり、災害削減にも大きな役割を果たしていると考える。しかし、杉を植林しすぎ、間伐を怠っている現状、集中豪雨に弱い山林となり、従来より豪雨危険度が増加していると思う。マイ箸運動なんかより、間伐材箸運動が、CO2削減にも、災害防止にも役に立つと思うのです。エセ環境運動が蔓延していると思うのは、思い過ごしでしょうか?

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コメント

航空写真で見ると、。今回土石が流れ出てきた所は、微かに沢が形成されているようです。棚田が形成されている所から、山からの浅い部分に水脈があったようにも見受けられます。 そういう意味では、此処に建設すること自体が、防災への多額の投資を必要とする可能性があります。近年の砂防ダムは、ある程度の砂岩は通す設計に成っていますので、今回の地質は、花崗岩のマサ化の進行が進んでいたようです。

スギ、ヒノキであっても、森林防災の役目は持ちます。

http://www1.gifu-u.ac.jp/~joroken/soturonpdf/B20hisada.pdf

ヒノキ林における間伐区と無間伐区の遮断蒸発量の比較
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/15053/1/bkuf_089_001.pdf


「蒸散」吸い上げらられた水が葉などから水蒸気を放出する現象。

、「遮断蒸発」木に雨が降った際に、雨水が葉や枝に遮られて地表に落ちず、蒸発して空気中に戻っていく現象。

 35%を地中に浸透しますが、表土層の形成により、地下浸透せず、表層を流れてしまう事が、問題と成っています。
 表土層は、木々の落下物等が生物分解され、1cm1年の年月で作られるものです。 この部分が一時的な保水を持つわけですが。

これが、雨量の蒸発量の60%を占めます、光合成と関係を持ちますので夏季に渇水になるのはこのためです。

 
今回の様に、8時間で、230mmのような雨量では、森林防災の範囲を超える可能性が多きと思われます。 

投稿: omizo | 2009年7月31日 (金) 13時13分

omizoさん コメントありがとうございます。

この事故には、学ぶべき点や参考になるべき点が多いと思うのです。「反面教師」という言葉は、悪い印象を持ちがちですが、「失敗から学ぶ」が大切だと思います。そのためには、この事故の様々な点について時間と費用を要しても、調査・研究・分析しなければいけない。それが、最終的には、最も費用が安く、効果が高い対策を実施できる方法と思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2009年8月 1日 (土) 10時23分

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