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2009年8月17日 (月)

GMの燃費誇大発表

次のニュースがありました。

日経8月15日 GM新型車、燃費計算で「世紀の誇張」か 米誌

8月6日に日産電気自動車リーフに関して、このブログ記事を書きましたが、日産とGMは、よく似ている点があると思う次第です。

1) 元のGM発表

新聞記事としては、次の日経と朝日を掲げます。そして、正確な批判をするには、元のGM発表に対してすべきであるので、元のGM発表を掲げます。

日経8月11日 米GM、新車投入を拡大 CEO会見、11年までに25車種
朝日8月12日 リッター98キロ「ボルト」 GMの電気車、10年投入
GMプレスリリース 8月11日 Chevrolet Volt Expects 230 mpg in City Driving

1ガロンで230マイルの燃費と言っていることから、1リットルで97.8kmに相当します。プリウスが38kmで、インサイト30kmですから、驚異的な数字です。

2) GMボルトの低燃費の理由

とても簡単です。GMボルトは、ガソリン・エンジンと電気モータの両方を積んだ車で、走行距離が短い場合(40マイル以内)は、バッテリーに充電した電気だけで走れるので、ガソリン消費はゼロとなるからです。

GMプレスリリースに"From the data we've seen, many Chevy Volt drivers may be able to be in pure electric mode on a daily basis without having to use any gas" と書いてあります。「アメリカ人の10人中8人は、通勤に使用して1日に40マイル(64km)以下しか走行しない。(nearly eight of 10 Americans commute fewer than 40 miles a day)がその理由であり、「毎日充電をして、走れば低燃費を実現できる。"The key to high-mileage performance is for a Volt driver to plug into the electric grid at least once each day,"という訳です。

1回の充電でGMボルトが走行できる距離が、40マイルですから、通勤と日常生活の往復と寄り道入れて1日40マイル以内の走行を続けていれば、ガソリン消費はゼロの超低燃費だと言うわけです。但し、時には遠出をしたりして、40マイル以上走り、ガソリンを消費することもあり、1ガロン230マイルの燃費(1リットル97.8km)の燃料消費になると言うわけです。

GMプレスリリースの下の方に、低燃費車として1ガロンで30マイル燃費の9車種と言っており、GMボルトのガソリンでの走行時の燃料消費は、これより悪いかも知れないが、仮にガソリン走行時の燃料消費が1ガロン30マイル(1リットル12.75km)として、年間の電気走行が10,000マイル(16,000km)であるとして、1ガロンで230マイルの燃費になるガソリンによる年間走行距離を計算するとたったの50マイル(80km)です。唖然とします。

一方、電気自動車としてのGMボルトの性能を三菱i-MiEVと比較すると、次の表の通りで、GMボルトは車体が大きい分、電気をより多く消費し、その為走行高距離も短い。電池もリチウムイオン電池でi-MiEVと同じです。

GM ボルト 三菱 i-MiEV
電力消費 156Wh/km 125Wh/km
電池容量 16 kWh 16 kWh
1充電走行距離 64km 160km

3) その他

次の表は、1km走行した時のCO2排出量です。発電方法によりCO2の排出量は異なるので、米国充電というのは米国環境省の電力CO2排出係数603CO2-kg/MWhを使って計算した場合で、日本充電は2007年度の電力事業者CO2排出量438,564,752CO2-tonと販売電力量958,128GWhから平均CO2排出量458CO2-kg/MWhにより計算した結果です。

ガソリンを全く使わず、電気だけで走ってもGMボルトは、米国充電なら、プリウスやインサイトよりCO2を排出する計算となりました。

1km走行時のCO2ガス排出量の比較(単位:グラム)
米国充電 日本充電
GM ボルト 100 71
三菱 i-MiEV 80 57
低燃費GM車(12.75km/l) 182
トヨタ・PRIUS 61
ホンダ・INSIGHT 77

太陽電池で、充電すればCO2排出はエネルギー部分については確かにゼロです。しかし、夜間は太陽電池は働かず、充電ができない。家庭用の3kW電池で充電した場合は、最短でも5時間20分ですから、通常は1日目一杯かかり、通勤には使えない。その上、雨や曇りの日はほとんど充電できないので、お休みをするか、CO2排出して発電された電気を購入するかです。

それ以外に、日本の場合は、ガソリン税が電気自動車からは、徴収できなくなるので、対策を考えなくてはならなくなります。一案としては、電気自動車については、購入時と車検時に、電気自動車税を徴収する方法です。そうしないと、道路建設とメンテナンスに一般財源を回すこととなり、消費税増税です。

考えれば、民主党のマニフェストも同じ類で、ガソリン暫定税率廃止と高速無料化は、消費税率アップに繋がるだけでなく、貧困層の切り捨てと富裕層優遇の方向です。党の基本方針とまるで方向が違うように私は思います。

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