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2009年8月27日 (木)

最高裁判所裁判官国民審査

衆議院選の投票日が迫ってきました。同時にあるのが、最高裁判所裁判官国民審査で、審査対象となる裁判官の氏名が記載されている国民審査の投票用紙に、罷免を求める場合は指定欄に×印をし、信任する場合には無記入で投票する。有効投票の過半数が罷免を求めた場合、異議訴訟を裁判所に提起可能な期間(結果の官報告示から30日間)を経過すれば、その裁判官は罷免される。(最高裁判所裁判官国民審査法)

1) 最高裁判所裁判官国民審査

最高裁判所の裁判官とは、最高裁判所長官1名と最高裁判所判事14名(裁判所法第5条)であり、その名簿はこの裁判所のWeb Pageにあります。

国民審査とは、次の憲法第79条2項に「その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し」とあり、この憲法条文により行われます。

憲法第79条
最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
② 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
③ 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
④ 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
⑤ 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
⑥ 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

2) 今回対象となる裁判官

対象となるのは、前回の衆議院選以降に最高裁判官に任命された人達であり、次の9名です。(うち竹﨑 博允は最高裁判所長官です。)

最高裁判官 就任時期
櫻井 龍子 2008年9月
竹内 行夫 2008年10月
涌井 紀夫 2006年10月
田原 睦夫 2006年11月
金築 誠志 2009年1月
那須 弘平 2006年5月
竹﨑 博允 2008年11月
近藤 崇晴 2007年5月
宮川 光治 2008年9月

憲法79条2項の続きに、「その後十年を経過した後」となっていることから、10年おきに同一の裁判官が国民審査の対象となります。しかし、最高裁判官全員が60歳代であり、裁判所法50条に定年が、「最高裁判所の裁判官は、年齢七十年・・・に達した時に退官する。」と定められています。従い、任官すると、その直後の衆議院選で国民審査を受けると任期をまっとうし、退官することととなります。

3) 憲法改正

憲法改正なんて言ったら、どうなるでしょうね?上の表のように、今回国民審査の対象となっている裁判官のうち就任後1年を経過していない裁判官が5人です。

各裁判官が、最高裁判所の裁判官として、どのような考えで、任務を遂行しているかは、いろいろな裁判においてどのような考えで、どのような判断をしたかの情報が、最も参考になるはずです。裁判所法「第二編 最高裁判所」の中の条文第11条(裁判官の意見の表示)に「裁判書には、各裁判官の意見を表示しなければならない」と定められています。従い、最高裁判所の判決文には、判決以外に参考意見や反対意見も、記載され、どの裁判官が判決と同意見であったか、反対意見であったかも書かれています。

例えば、2008年6月5日に国籍確認訴訟の最高裁判決を書きました。同ブログの中でも、リンクを張りましたが、判決文はこの裁判所のWeb Pageにあります。この最高裁の裁判は大法廷で開催され、15人全員の意見が、どのような意見であったかが、判決文書から読むことができます。ちなみに、この裁判において裁判官をしていたのは、今回国民審査の対象者のうち、涌井 紀夫、田原 睦夫、那須 弘平、近藤 崇晴の4人であり、4人とも多数意見(子供に日本国籍を与えるべきである。)であり、補足意見を述べた裁判官です。反対意見であった5人のうち、2人は昨年退官しました。退官した1人と残る3人のうち2人は、4年前の国民審査の対象でした。

2007年8月17日に日本国憲法といブログタイトルで、GHQが1946年2月13日に日本政府に提示した憲法草案と現日本国憲法の比較をしました。憲法79条は、ほぼGHQ草案の通りです。三権分立・民主主義・国民主権の具体案としてGHQは、この憲法79条を日本政府に示したのだと思います。

その当時は、InternetもWebもなかった。今、ネットで最高裁の判決文を読むことができる時代です。だから、「任命後2年を経過後初めて行われる」でも良いのではと、深く考えた訳ではないのですが、ふとそんな気がしました。上の表で、私は国民審査の対象となる裁判官の名前から、裁判所の各人のWeb Pageに飛ぶようにリンクを張りました。各人Web Pageの下に、”最高裁において関与した主要な裁判”と書かれている部分があり、判決に飛ぶことができるのです。しかし、最近就任された裁判官には、この部分がブランクになっています。判断に困るな~というわけです。

4) 蛇足

選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から投票日の前日までの毎日、期日前投票(公職選挙法48条の2)や不在者投票(公職選挙法49条)ができます。しかし、最高裁判所裁判官国民審査については、、投票日の期日前7日から投票日の前日までとなっており、先週期日前投票をされた方は、最高裁判所裁判官国民審査ができませんでした。

どこで、そんな議員と裁判官の違いが定められているかというと、最高裁判所裁判官国民審査法26条(期日前投票の場合)と最高裁判所裁判官国民審査法施行令14条(不在者投票の場合)です。裁判官国民審査の場合は、Xを付ける投票方法なので、対象となる裁判全員の名前が投票用紙に印刷されていなければならず、印刷の時間を確保するための様です。

今回の衆議院選は、8月18日公示で、8月30日投票日です。公職選挙法31条4項「総選挙の期日は、少なくとも十二日前に公示しなければならない。」の定めでの最短選挙期間に収めた選挙です。今の時代、印刷の時間短縮も十分可能と思うのですが。

期日前投票と不在者投票の違いをご存じですか?2003年6月11日公布、2003年12月1日施行の公職選挙法の一部を改正する法律で48条の2が付け加えられ、不在者投票に加えて期日前投票の制度が作られました。違いは、不在者投票は封筒で選挙管理委員会に提出するが、期日前投票の場合は投票箱に用紙を入れることになります。一方、不在者投票は、郵送も可能であり、出張で公示から投票日前まで、ずっと不在であっても、選挙管理委員会から投票用紙を取り寄せて、郵送して投票することも可能です。詳しくは、総務省のWebまたは選挙管理委員会のWeb等を見るか問い合わせいただければと思います。例えば、このニュースですが、この人の場合は、北海道9区ですが、東京都大田区役所田園調布特別出張所で不在者投票をしています。こんな方法もあるのですね。

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緊急地震速報の誤作動(誤報)

緊急地震速報誤報のニュースがありました。

日経 8月25日 緊急地震速報誤報、プログラム入力ミスが原因 気象庁

この件に関しては、様々なことを思ったので、書いてみます。

1) 原因

上に掲げた日経の記事は、「製造元の明星電気が24日に改修した。この際、緊急地震速報のプログラムについても処理を行い、入力単位を間違えた。」と書いてあり、製造元の改修作業のミスであったのです。しかし、単に群馬県伊勢崎市の明星電気とのみ伝えた他の報道もあり、私は当初気象庁からメンテナンスのみを請け負った業者かと思いました。この気象庁報道発表「緊急地震速報(警報)の誤報について(第2報)」 からしても、そのように読めてしまいます。

明星電気のホームページはここにありますが、2009年3月期売上高8,887百万円、純利益502百万円で気象関連、地震関連の計測機器等の製造をしている東証2部上場会社です。明星電気の本件に関する「緊急地震速報(警報)の誤報についてのお詫び」がここにあり、「緊急地震速報の機能及び精度向上を図る開発において、プログラムの一部手違いにより発生したものであります。」と書かれています。

これ以上の詳細は、不明ですが、メーカーだったら、製品検査や作動検査で確認するから、メーカーを信頼して問題ないと、通常であれば、考えます。しかし、発生した。何か問題があるのだろうか。あるいは、これぐらいのことは、許容すべき範囲であるのか。

どうしても避けられない確率的に生じるミスは、存在するのであります。誤警報の発信は、警報が出なかったことより、問題の程度は低いはず。又、緊急地震速報の一般提供は、2007年10月1日から始まったのであり、速報がない状態も考える必要があると思いました。

2) 緊急地震速報

緊急地震速報の気象庁の説明はここにありますが、次の点が特徴と思います。

A. 地震発生後の速報である。(地震予知ではない。)
B. 十分なデータを得てからの発表ではなく、精度的には劣る。
C. 「高度利用者向けの緊急地震速報」とテレビやラジオなどを通じて提供する「一般向けの緊急地震速報」の2種類がある。

そこで、更に気象庁のWebを見てみますと、このページに過去に出された緊急地震速報があります。2009年になってからは、23回出されています。その中の一番新しい2009年8月25日 06:37:04が今回の速報です。この緊急地震速報の内容によれば、一般向け緊急地震速報は地震波検知から21秒後の6時37分33.8秒に出されています。

千葉県北東部、茨城県南部、茨城県北部、東京都23区、埼玉県南部、神奈川県東部、千葉県南部、千葉県北西部に震度4や5弱の予報が出されたのです。ところが、この緊急地震速報提供から主要動到達までの時間によれば、これらの地域は全て20秒以内の範囲に入っています。即ち、そもそも、揺れが始まった後に出された速報であったのです。

もう一つの例として、8月11日5時07分05秒に発生した駿河湾地震を見てみると、地震波検知から3.8秒後の5時07分14.9秒に一般向け緊急地震速報が出されています。静岡市等は地震主要動到達の時間がゼロであるが、震度4の小田原には地震主要動到達時間は10秒であったことから、揺れを感じる前に緊急地震速報を受けることができたかも知れません。

緊急地震速報が始まって以降で、最も大きな震度の地震であったのが、2008年6月14日08時43分45秒に発生した岩手県内陸南部地震でした。一般向け緊急地震速報は、地震波検知から4.5秒後の8時43分55.2秒に出されています。宮城県栗原市では、震度6になったようですが、地震主要動到達時間がゼロで、仙台市では10秒程度であったようです。

3) 緊急地震速報への対応

そもそも万能ではなく、本当に大きな揺れは、緊急地震速報の前であると考えた方が良さそうな気がします。

NHKなんかは、緊急地震速報を自らが伝える媒体でもあるので、緊急地震速報があれば直ちに対策をすれば被害を小さくできるようなことを言っていますが、そんな簡単なものではないと思います。むしろ、日常から地震に対して(転倒防止や補強等を含め)備えをしておくことが重要と思います。緊急地震速報(特に一般向けについて)は、参考情報であると考えた方が良いと思いました。

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2009年8月25日 (火)

八ッ場ダムを考える

ダムについては、3部作となってしまいました。やはり、八ッ場(「やんば」と読みます。)ダムを採り上げないと、問題から逃げることになってしまいそうです。

1) 八ッ場ダム

ダムは、群馬県吾妻郡長野原町に6年先の平成27年度(2015年度)の完成を目指して建設が進行中で、ダム地点は次の所です。

この場所に、(基礎岩盤から)高さ116mのコンクリート重力ダムを建設し、そのダムの幅は左右の岩盤との距離になりますが、ダムトップ(堤頂)で290.8mです。イメージとしては、ダム堤頂の標高が586mと理解しますので、現在の国道145号の道路面標高が約510mなので、現在の道路から見て76mの高さのダムが建設されます。

ダムの形や大きさ等は、ここに国交省八ッ場ダム工事事務所の「平成21年事業の概要」と題した2009年4月22日付記者発表資料があり、その最終ページに図面があります。

2) 八ッ場ダムの機能及び費用

この八ッ場ダム工事事務所のWebSiteに平成20年9月12日国土交通省告示第1121号の「八ッ場ダムの建設に関する基本計画」という文書があります。これが、現時点の八ッ場ダムの機能や費用を記載している書類です。なお、第3回変更であり、それ以前の文書も探してみましたが、Webでは見つかりませんでした。

八ッ場ダムの機能について、以下の表に纏めてみました。(純貯水容量と記載してるのは、水道用水と工業用水の貯水です。)

Yanbadam1

八ッ場ダムの総貯水量が107,500千m3であり、標高536.3mより低い部分の水17,500m3は、利用できず、それより上の90,000m3を利用する。この90,000m3のうち7月1日から10月5日までは洪水に備えてダム水位を555.2m以下で維持し、ダムより上流で大雨があった時は、555.2mから583,0mまでの水位変化によるダム貯水量65,000千m3をバッファーとして使い、下流への河川水の流出を制限する。

従い、洪水緩和(治水)と水供給(水道用水と工業用水)が目的です。11,700kWの発電設備を設置するが、基本計画書10ページには「発電のための取水は、洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道及び工業用水のための放流による場合を除いて行ってはならない。」とあり、発電は副産物・従産物であるので、上の表では省略しました。

建設費は、基本計画書で概算4,600億円とあります。なお、この費用分担について、割合が11ページ以降に記載されており、河川法による負担が2509億円(うち政府1673億円、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、栃木県と茨城県で836億円)。そして、水道・工業用水の負担額が2086億円で、これを群馬県(水道)、藤岡市(水道)、埼玉県(水道)、東京都(水道)、千葉県(水道)、北千葉広域水道企業団(水道)、印旛郡広域市町村圏事務組合(水道)、茨城県(水道)、群馬県(工業用水)と千葉県(工業用水)が分担します。

そして、群馬県(電気事業)が4.6億円の負担です。なお、この4.6億円は、電気事業のダム分担金であり、発電設備については一切含まれていません。

なお、更なる詳細については「八ッ場あしたの会」(ホームページ)の過大な財政負担というページに書いてあり、水道事業の政府補助の補正もされています。チェックはできていませんが、正しいと思います。

3) 八ッ場ダムの効果

3-1) 水確保

水道及び工業用水の確保に関する効果については、必要とする将来の水需要予測を検討する必要があり、膨大な量の情報や資料を入手する必要があると思うし、どこまでできるか不明なので、Give upします。現在水が不足していると理解していないし、将来の人口減少や、日本の産業構造の変化を考えると、水確保のために八ッ場が必要であるとは、感覚的に思えません。

むしろ水資源開発のリスクと恐ろしさを物語っているように思えます。八ッ場ダム工事事務所のWebによれば、1967年に実施計画調査が開始となり、1970年に実施計画調査から建設に移行になり、1986年に水源地域対策特別措置法に基づく国の指定ダムとして告示されたとあります。相当前に長い先の将来を想定して水需要が予測されたはずです。

3-2) 洪水緩和

八ッ場ダム工事事務所のWebには、「計画では、洪水期(7月1日~10月5日)に6,500万立方メートルの調節容量を確保して、ダム下流における計画高水流量、毎秒3,900立方メートルのうち約61パーセントに当たる毎秒2,400立方メートルの流水を調節し、ダム下流への放流量を毎秒1,500立方メートルに低減することになります。」と書いてありまし、基本計画の洪水調節も同じことが書いてあります。

利根川の大洪水の想定は1947年9月のカスリーン台風による洪水をベースにしています。最近の大雨・洪水の被害としては1998年9月の台風5号であったと、工事事務所のWebに書いてありました。そこで、吾妻川の村上水位観測所(群馬県北群馬郡小野上村村上字堀之内:JR吾妻線小野上駅付近)における河川水位と河川流量及び少し下流の神流川と合流した付近の八斗島(やったじま)観測所(伊勢崎市八斗島町:坂東大橋左岸下流400m)での河川水位と河川流量を台風5号による影響があった1998年9月16日から18日までについてグラフを書きました。

Agatsumamy19989_2 

八斗島における本日(24日)の水位はマイナス2.67mでした。9月16日の水位(グラフの茶線)12時に3.36mとなり、氾濫注意水位1.9mを超えたが、避難判断水位4.5mには達せず、当然氾濫危険水位4.9mにはなりませんでした。同じ3日間の村上における河川流量を見ると最大が9月16日9時の2,354m3/秒でした。八ッ場ダムがあれば、吾妻川の河川流量を下げることができたでしょうが、村上で最大2,354m3/秒であり、しかも計画においてコントロールするという1,500m3/秒を超えたのは、たったの5時間でした。この観測結果からすると、八ッ場ダムなんて意味がないと思えます。

八ッ場あしたの会のWebに、八ッ場ダムの住民訴訟において2008年7月29日水戸地裁の証人尋問に出廷した新潟大学の大熊氏による証人尋問調書と意見書が紹介されていました。(このページからダウンロードできます。)八ッ場ダムを必要とする根拠となってきたカスリーン台風洪水の際(1947年)、洪水流量は実測されず、過大に推測されており、それをもとにした国の治水計画には科学的根拠がないなんて、根底から狂ってきます。

意見書にあった2001年9月の吾妻川の大出水の時のグラフも書いてみました。1998年9月の時より増水した時間は長かったが、それでも、最大流量1802m3/秒であっただけで、私には特に大きな問題がないように思えました。

Agatsumamy20019

八ッ場あしたの会のWebに、次の上毛新聞のコラムが紹介してありました。一つの推測ですが、否定しきれない部分があると思います。

コラム『戦争がなかったら』 ―1999年9月15日の上毛新聞より―

「第二次世界大戦がなかったら、カスリーン台風の災害も起こらなかった。 戦中の食糧難を解消のため赤城山麓の開墾、エネルギー源のための木材の供出などで乱伐され、森林は消えていった。そこへ大雨を降らせたカスリーン台風の来襲。保水力を失った山はその水を一気に川に流すしかなかった。・・・(以下略)。」

それと、現在運用中の大型ダムで、洪水調整力があるダムは、以下の表のように10あります。吾妻川を、ダムのない川として後世に伝える選択もあり得ると思います。吾妻川は、草津白根山に起因する酸性河川であったこともあり、ダムは建設されなかった。中和事業の為に、品木ダム(国交省 品木ダム水質管理所)はありますが、他に大きなダムはなく、ダムがないことも素晴らしい自然を残すことになると思います。

Tonedam2009

3-3) 水力発電

実は、八ッ場ダムの満水水位より高い位置(長野原町役場付近)で取水し、八ッ場ダムの下流約2.4kmで発電している東京電力松谷発電所があります。出力は、25,000kWなので、八ッ場ダム発電所11,700kWより大きいのです。なお、松谷発電所はと白砂川の水と川中発電所からの水も使用しており、発電後の水は原町発電所へ流しています。

下の写真が松谷発電所の写真で、中央下部の白い建物が発電所で、そこから左上に山に上がっていっている茶色の管が水圧鉄管です。

Matsuya

八ッ場ダムなしで、水力発電はできているのであり、ダムが発電に寄与する部分が多少あるが、それほど大きくないのです。むしろ、運転の方法(ダムからの放流)によっては、既存の水力発電(松谷発電所のみならず、下流の原町、箱島等も含め)の発電量を少なくする可能性さえあるのです。このことに関する衆議院議員塩川鉄也氏の2004年11月30日の質問書(この衆議院のWeb)と小泉純一郎内閣総理大臣の平成2004年12月10日答弁書(この衆議院のWeb)があります。

水が流れるから、発電することで良いのですが、副産物に過ぎず、既存発電所での発電量が減少するなら、それを差し引いた評価が必要です。なお、ダムの放流パターンが決まらないと発電と既存への影響の予測ができないので、原状では無理でしょうが、どちらにせよ、極めてゼロに近い点数のような気がします。

4) ダムとは地元にメリットなし

そんなことを言うと言い過ぎかも知れませんが、地元を狭く水没地域だとすれば、水没地域の住民にとっては、迷惑なだけと思います。洪水緩和も水資源確保も全て下流地域が恩恵を受けるのです。

だから、反対運動が発生するし、地元でも、市町村レベルや都道府県レベルになると関係者は多くなり、土建業者は工事受注が期待できるから賛成したり、また、直接の影響を受ける人は、実はそれほど多くない場合が多いと思います。長年にわたる賛成・反対の対立で疲れ果てたのが八ッ場ダムの地元と思います。

ダムは、地元にメリットなしとの考えで、計画するなら、地元の人々に対して手厚い保証を差し上げる。そのことにより、建設が早く終了するはずで、建設費もはるかに低くなる。バカみたいに、他の例や水準とかにこだわって、対立や反感が生じる。そんなことも、無駄な公共工事になっていると思います。

5) 今後のこと

八ッ場ダムは、民主党が無駄な公共工事として、あげている案件ですから、例え工事を続行するとしても、少なくとも見直しに入らざるを得ないと思います。幸い、ダムの本体工事は本年度の契約予定ですから、本体工事に手を付けずに凍結することも可能と思います。

但し、凍結しても地元に対する十分は補償はしなければなりません。公共工事は、損失を与えるプロジェクトであってはならないからです。

ところで、水に関する費用負担を2)に書きましたが、現制度では水は地方自治体の特別会計になっていると思います。また、「一抜けた。」は、他の自治体の負担が増えるので、抜けるに抜けられない変な構造ができていると思います。

八ッ場ダムは、問題の多いプロジェクトであると思います。その最大の原因は役人と政治家の癒着だと思います。今回も、調べてみて、なかなか資料が出てこないし、複雑怪奇な状態です。例えば、塩川鉄也氏の質問

改正河川法では、学識経験者の意見、住民の意見などを整備計画に反映することとしている。学識経験者の意見、住民の意見などを反映するための作業をしないまま、五十年以上も前につくられた八ツ場ダム建設計画を推し進めることは、改正河川法の趣旨に反すると思うがどうか。

に対しての政府(小泉純一郎氏)の答えは、次です。(読んでも、頭に入ってきませんが、原状問題なしの回答です。)

利根川水系に係る河川法(昭和三十九年法律第百六十七号。以下「法」という。)第十六条第一項に規定する河川整備基本方針(以下「河川整備基本方針」という。)及び法第十六条の二第一項に規定する河川整備計画(以下「河川整備計画」という。)については、これまで、その策定に必要な調査、調査結果の分析等を行ってきたところであり、今後とも、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第十条に規定する準則にのっとって、引き続き、その策定に向けて取り組んでまいりたい。
 また、河川法の一部を改正する法律(平成九年法律第六十九号。以下「平成九年改正法」という。)附則第二条の規定により、平成九年改正法の施行の際現に平成九年改正法による改正前の法第十六条第一項の規定に基づいて定められている利根川水系工事実施基本計画は、平成九年改正法による改正後の法第十六条第一項の規定に基づき利根川水系について定められた河川整備基本方針及び平成九年改正法による改正後の法第十六条の二第一項の規定に基づき利根川水系に係る河川の区間について定められた河川整備計画とみなすこととされており、八ツ場ダムは、利根川水系工事実施基本計画において利根川の洪水調節等のために必要な施設であると位置付けられている。

政権が代わる毎に、大型案件が推進と凍結を揺れ動くのは、国民として情けないし、あるべき姿ではありません。必要な案件は必要であり、優先度の低い案件は、そのように扱うべきです。私の提案は、役人がきちっとした評価書を国民の前に提出することです。国民が必要と認めているプロジェクトは、政権が代わろうとその評価は普遍です。多くの情報を国民に開示し、国民の支持を得る仕事を役人はすべきです。バカ政治家に、官僚タタキをされてはいけません。役人は、政治家のためではない、国民のための仕事をすればよいのです。

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2009年8月23日 (日)

大蘇ダムの漏水問題

ダムから水が漏れる。正確には、ダム湖からの水漏れであり、ダムから水が漏れるなら、ダム欠陥工事です。でも、多くの人は、ただ事ではないと考えると思います。しかし、考えようによれば、地表は水が漏れて当たり前で、水が漏れなければ、地下水は干上がります。従い、漏水も程度問題でありますが、タイトルにあげた大蘇ダムについての概況として次の大分合同新聞の記事を掲げます。

大分合同新聞 4月17日 たまらぬ水、あふれる怒り 大蘇ダム問題 

どう考えるかですが、ややこしさを理解するために少し新聞記事を掲げます。

7月29日 朝日 鳩山代表、熊本で大蘇ダム中止を示唆 「ムダなダム」
毎日(熊本) 7月31日 大蘇ダム:「計画通りの水確保」 九州農政局、秋に方針 /熊本

直ぐ前のダムの議論で、評価の必要性を書きましたが、大蘇ダムについての評価を私もできていないので、何も言えません。どのようなダムであるかについて私が調べたことを書いてみます。

1) 大蘇ダムの場所

大蘇ダムの場所は、熊本県阿蘇郡産山村なのです。大蘇ダムは、灌漑用水の取水を目的としたダムですが、灌漑用水を利用しようとする農地の大半は、竹田市荻町を初め大分県なのです。九州で、熊本県は、有明海に面しており、大分県は豊後水道に面しています。しかし、阿蘇山の近くは分水嶺が県境ではなく、少し熊本県に入っていることからのややこしさもあります。

下に、大蘇ダムを中心位置のYahoo地図を掲げます。大蘇ダムの南東が竹田市荻町になりますので、興味ある方は地図を動かして確認してみてください。JR肥後線に豊後萩という駅がありますが、その一帯です。

2) 竹田市荻町

竹田市荻町をYahoo航空写真で豊後萩駅を中心位置として、出しておきます。航空写真だと、農地であるか、山林であるかの見分けが簡単で、竹田市荻町には農地が多いことが分かります。

竹田市荻町の農地への農業用水の供給をどうしているかですが、荻柏原土地改良区(ホームページ)という土地改良法に基づく法人があり、竹田市荻町の南西にある大谷ダムの水を配分しておられます。荻柏原土地改良区のホームページを読むと、高原の農地の開発、水確保の歴史が書かれています。

3) ダム水漏れの状況

一番解りやすいのが、荻柏原土地改良区のWebに水土里ネット広報があり、その平成20年3月31日発行(No. 43)に次のグラフがありました。平成18年や平成19年は8月は400万トン以上貯水され、総貯水量430万トンのダムですから、ほぼ満水なのです。しかし、3月末に向けて貯水量が直線的に減少して、7月初めまでは実質ゼロ状態というわけです。

Midorinet

そこで、これでは、水田米作の水としては役に立たないとなります。一方、農水省の言い分ですが、実はWebから大蘇ダムやこの事業の名称である大野川上流かんがい排水事業の関連の情報が消滅してしまっているのです。その中で、見つけ出したのが、この九州農政局国営事業再評価第三者委員会(第2回) 議事録平成21年6月19日です。

水土里ネット広報とほぼ同じことが書かれていますが、「計画受益面積2,158ha のうち1,360ha を若干超えるぐらいに対しては10 年に1回程度の渇水時に対しても用水を安定的に供給できる見通しである。」となっています。

上のグラフが正しいとすると、農水省の説明が、甘すぎるように思えるのですが。

4) 感想

結論は書けないので、感想を書きます。大蘇ダムの漏水は初めから予想されていたはずです。火山中腹の土質は、水を通しやすい。荻柏原土地改良区の広報に書いてありますが、大野ダムも随分漏水するのです。ダム流入量0.35m3/秒で漏水量0.15m3/秒の記載は、40%以上の漏水となります。

漏水を見込んで、大蘇ダムの貯水容量等を決定しなければいけないのを、軽率でありすぎたのではと思います。このあたりの資料は全て存在するはずなので、検証可能なはずです。

それと、農業に関する基本プランは、どうであったのかと思います。米と野菜等の農地区分は、どうあるべきなのか、そのような基本案があってしかるべきだろうと思います。

政府は書面での約束はしていないでしょうが、荻柏原土地改良区の人達を含め大蘇ダムから農業用水供給を受けたいと思う人達に対して、約束に近い期待を与えていたのではと思います。そうであれば、責任論ではなく、契約の履行義務として、政府は水を供給するか、金銭で賠償するかの義務があると私は思います。

大蘇ダムが不要か必要か、何も解りません。代替案すら知識がありませんし。リスクについて適切な対処をしなかったと思います。食糧自給を唱えるなら、農業用水の確保は、極めて重要な課題であると確信します。

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2009年8月22日 (土)

ダムの議論

「脱ダム宣言」とか「ダム不要論」があります。しかし、本当の議論は、”Yes” or ”No”ではなく、個別のダムについて、その必要性、有効性、効果等を評価して決定すべきであると考えます。

ところが、そのような議論はなく、「単に必要だから推進する。」や「不必要であるから中止する。」の議論に終わっていると思います。必要か不必要かではなく、ダムにより期待する効果は何であるのかと、ダムにより失われるものは何であるのかを評価する必要があります。プラスとマイナスを評価して、最終評価をなすには、各項目を金銭価値に置き換えてプラスサイドかマイナスサイドかを見なければなりません。

但し、金銭価値に置き換えるに際し、換算レートと言うべきか、経済価値をどう見るかが各個人により大きく異なる可能性がある項目もあります。例えば、ダムは規模の差はあれ、水没地域を発生させます。この自然環境破壊について、天然林の中を自然河川が流れる風景が失われることを、幾らの価値喪失と見るか、単に観光収入○○円で評価しても意味がないはずです。勿論、建設地点により、大きく異なるし、希少生物の生息地だったら、また話も変わってくるでしょう。

ダムによる洪水緩和を期待している場合、ダムで洪水を100%防止することは不可能ですが、過去の河川統計を基に、何年に一度の洪水までは対処可能と期待洪水緩和量を予測しているはずです。一方、ダムによらず、堤防のかさ上げで対処をする代替案との金額比較、発生する被害の原状までの災害復旧費用や機会損失費用との比較等様々なことは可能です。勿論、人の命を金銭で評価することが含まれれば、その難しさはあります。

ダムによる水利用を考えた場合、ダムに貯水して、貯水の中から使った水が利用水となります。ダムから専用の水路や管路を設けている場合は、それを通じた供給量であり、ダムの下流で取水する場合は、ダム放流量に応じた取水となります。いずれにせよ、従来から河川を通常流れている水量もしくは関係当事者間で合意した最低維持水量を自然流量として河川に流した後の水量がダムにより確保できる水であります。降水量により、年格差も生じます。そして、水の経済価値も難しい部分を含んでいます。水は、必需品であると同時に、井戸や海水淡水化によってでも得ることが可能です。いずれにせよ、農業にはなくてはならない物であり、農地開発とは水との戦いでもありました。

水力発電については、必ずしも大きなダムを必要とせず、大きなダムは大きなダムとして、水力発電の利用方法として、利用価値が生まれますが、いずれにせよ水力発電は貯水を目的としないことから、ダムについてはフレキシブルです。なお、水力発電に大きなダムは不要と書いたことについて補足しますと、現存する日本の揚水を除く水力発電所の数は1500程ありますが、この90%以上が戦前に建設された発電所であり、小さいダムで取水している水力発電所です。(例えば、吉村昭の小説「高熱隧道」は、黒部川第三発電所建設が、そのテーマですが、建設された仙人ダムは総貯水容量682千m3の小さいダムです。下の満濃池や狭山池とも比べてみてください。)

金銭価値に置き換えて評価をするには、将来価値と現在価値を、割引価値計算を適用して考えると共に、将来の社会構造・経済構造の変化に伴う相対価値構造の変化も考慮する必要があると思います。

良いダムは、長期にわたり人々の役に立ちます。香川県仲多度郡まんのう町に、満濃池(総貯水容量15,400千m3、Wikiはここ)というため池があり、8世紀に建設されたそうです。あるいは、大阪府大阪狭山市の狭山池(総貯水容量2,800千m3 、Wikiはここ)というため池は、更に古く7世紀に建設されたようです。当然、人々が保守をし、時には新規建設と同じぐらいの大補修や洪水流出の際の復旧をして、守ってきました。

日本は緑豊かで、水も豊かな国と思います。ひとくくりで、”Yes” or ”No”としない個別プロジェクトの評価で決めるべきです。しかし、残念ながら、評価するための資料や、評価報告書を含めプロジェクトの情報公開の量がほとんどありません。

私の結論は、あらゆる情報を、せめてWebで公開してください。Webが、公開するにあたり、費用も安く、かつ入手する際も、安く簡単です。電子政府とは、国民のために、存在する手段です。Webを利用した情報公開を強く望みます。(電子政府の推進について

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2009年8月20日 (木)

日本航空の経営健全化

日本航空が過去最大の四半期赤字となったニュースに続いて、国土交通省が、日本航空の経営改善支援のための有識者会議を設置するとのニュースがあります。

日経8月7日 日航の4~6月期、最終赤字990億円 四半期で過去最大の赤字
日経8月18日 国交省、日航支援へ有識者会議設置

果たしてどうなのか、7月3日に書いた日本航空と全日空の比較に続き、今回も日本航空について書いてみます。

1) 日本航空の四半期業績(4月-6月)

日本航空の第1四半期の営業収入は3345億円で税引後純損失990億円でした。年間純損失4000億円近くなるので、巨額の損失であることに間違いはないでしょう。2009年3月期の業績が大赤字で話題になったトヨタの純損失は、4369億円でした。ちなみに、これより巨額の損失を計上したのは、トップが日立製作所7873億円、第2位野村HD7081億円、第3位みずほFG5888億円で、トヨタの次の第5位がパナソニック3789億円でした。なお、いずれも連結純損失です。

考えようによれば、いずれも超大企業で、これだけの赤字があっても存続できる優良企業です。日本航空も優良超大企業と言えるか、全日空と比較をしながら見てみたいと思います。2009年度第1四半期の日本航空と全日空の損益計算書(単位:百万円)を掲げます。

Jlana20091q

実は、日本航空のみならず、全日空も大赤字です。但し、営業損失、経常損失、税金等調整前純損失は日本航空の損失は全日空の約半分。しかし、税金を加味した純損失では全日空の損失額は日本航空の約30%になっています。その理由は、全日空が損失が繰越欠損金として将来の課税所得を相殺し、税負担を減額するとして、その対応額の法人税等の戻り187億円を計上していることによります。今後の税負担の見通し、即ち企業所得の計上が、確定的であったかどうかが、一つの明暗を分けてしまいました。

収入の減少に対して、事業費の減少が小さいことが分かります。航空輸送事業の特徴で、コストにおける固定費の占める割合が大きいからです。

2) 航空輸送事業の分析

セグメント情報によれば、日本航空の収入の86.9%が航空輸送事業であり、全日空は87.7%です。そこで、航空輸送事業の収支を比較をしてみると、次のようになりました。

Jlanaat20091q_2

上の表の前年同期比を見ると、両社の間で、さほど大きな差がないことが分かります。特徴は、国際旅客収入の減少です。日本航空の場合は、国際旅客収入が従来から国内旅客収入より大きかった。両社とも落ち込みが大きいのが、国際旅客と国際貨物であり、その影響は業務構造の違いの結果、日本航空の収入の減少の方が大きかった。

コストを比べると、収入減少が大きいから多少はそれに比例する部分もあるが、日本航空の方が、コスト低下は大きく、日本航空の努力の結果もあると思います。

3) 航空輸送事業の収入減についての検討

次のグラフは、全日本空輸の第1四半期決算説明資料からのコピーで、国際旅客収入について説明している部分です。旅客数の減収が大きいのですが、特にビジネス客の減少が大きく、しかも単価(YとCの加重平均と思いますが)の減少も見られる。

Ana20091qinternational_2

国際旅客収入の減少は、航空輸送業者の営業努力が足りないからではなく、世界的な金融危機と不況によるビジネス客の減少と同時に、企業の費用削減によるビジネスクラスからエコノミークラスへの移動が生じていることによる影響があると思います。

日本航空の決算説明資料には同種のグラフがないので、同社の月次輸送実績から、次のグラフを作成しました。Yクラス、Cクラスの区別がないので、国際線と国内線の区別で作成しました。

Jalpassenger20091q_2 

旅客の輸送人数・距離は日本航空月次輸送実績にあり、2009年度の第一四半期を1年前の2008年度第1四半期と千kmあたりの単価で比較しました。

日本航空の旅客輸送平均収入(円/千km)
2008年1Q 2009年1Q 前年同期比
国際旅客 13,640 9,043 66.3%
国内旅客 20,670 20,137 97.4%

国際線は、平均収入単価が低くなっており、全日空の上のグラフの単価の4月-6月が60%と70%の間にあり、全日空の場合とほとんど同じと思います。同じでなければ、乗客は安い方に流れるのであり、国際線は2社の市場争いのみではなく、多くの航空会社間の争いであり、自然に市場は形成され、当然の結果と思います。

4) 日本航空の今後

決して暗くないと思います。今回は、国際線の単価の下落の影響が大きく出たのが、大赤字の一番大きな理由と考えます。特に、今回の国際的不況の一番激しく出ているのが、金融関係であり、金融関係者の多くは、国際的に飛び回っていた。会社として利益を大きくするには、成功報酬でも何でもいいから、連中を目一杯働かせる。ビジネスクラスに乗せて、休憩を取らせず、時差も関係なく働かせるのが会社の方針でした。そんな人達の多くが職を失ったりしたのです。日本の国際的に動き回っている金融関係者も同じで、仕事が少なくなれば、出張を減らすのは当然です。

世界不況が何時までも続くわけではありません。近い将来に回復への軌道に乗り始め、2-3年先には回復したと言える状態になると思います。その時に、日本経済が回復しているかどうかについて、私は余り自信がありません。しかし、日本経済が回復していなくても、世界経済が回復すれば国際旅客輸送は、ほぼ元に戻ると思います。世界経済が復活すれば、世界経済を飯の種に、ビジネスマンも金融関係者も世界を駆けめぐります。日本のビジネスマンも金融関係者も同じです。

成田に発着枠を一番多く持つ会社が日本航空です。その結果、漁夫の利が転がり込む。これが、私のシナリオです。そうなった時に、利益を享受するように、生き延びて行かなければなりません。

5) 日本航空の悲観材料

日本航空の悲観材料こそ、冒頭にあげた国土交通省を初め、政府および政治家の介入の可能性です。郵政民営化については、郵便事業という政府か民間か、どちらがよいかグレイな部分がありましたが、航空輸送事業は民間事業であるべきです。何故なら、Open Skyも存在する多くの国の航空輸送事業との市場競争だからです。市場競争原理により発展させていくべき事業に政府は介入すべきではありません。

例えば、2009年6月の国内線で座席利用率の一番低かったのは沖永良部ー与論で17.9%、次が伊丹ー種子島18.4%でした。離島空路は必要ですが、沖永良部から日本航空は2日3便運行し、与論からは那覇に4便です。ワースト2の種子島からは、鹿児島に1日3便運行しており、赤字の伊丹ー種子島直行便を運行する理由はないと思うのです。

過去1年間で、運行を中止した国内路線が15あり、第1四半期決算説明補足資料によれば国内線での今後の減便が6便で増便が1便とあります。不採算路線の損失を正常な利益を出せている路線の利益で埋め合わせることは、おかしい。株式会社としては、不採算路線は、撤退であり、存続するのであれば、補助金による支援や搭乗率保証を受けるべきです。しかし、政府保証や政府支援を受けていれば、極めて不自由になります。

政府、役人、政治家にとっても企業の採算は重要です。しかし、時には、それ以上に大事なものが、政府、役人、政治家には存在します。不採算路線から撤退する自由を失ったら利益計上体質には変質不可能です。国際線にしても、National Flagの時代ではなく、自由競争の時代です。利益が生まれる、即ち利用者が最も利用する路線の運行を増加し、利用者の利益になることをすれば、国際線においても、定時運行や安全性の信頼を得ている日本航空であれば、高収益を確保できるはずです。逆に、日本航空がLCC(Low Cost Carrier)と競争して勝てるとは思いません。成田の発着枠を最大限に生かした戦略を建てること。それは、民間企業でないとできないと思います。

少し開港が遅れた富士山静岡空港に日本航空は6月4日から、福岡3便、札幌1便を運行していますが、6月の座席利用率は福岡57.7%、札幌84.8%でした。福岡便はやはりもう少し高い座席利用率が欲しいでしょうが、現状これ位かもしれません。しかし、6月は初就航効果による高い利用があった可能性があり、見通しによっては、撤退を決めるべきと考えます。但し、富士山静岡空港については静岡県による搭乗率保証があり、実際に受領できるか、いつまで続くか、様子を見る必要があると思います。静岡県にも財政問題はあるはずだし、それを良いことに、継続するだけが能ではないと思います。

3)の最後の部分に千kmあたりの平均単価の表を書きましたが、航空機はバスより安いし、国際線になると新幹線よりはるかに安いのです。従い、もう一つの課題が日本国内の輸送をどうするのかの基本線です。航空機、鉄道、バス、乗用車が存在する。空港と鉄道と道路の整備の調和です。現状では、高速道路を建設し、新幹線網を拡大し、空港を建設しているが、統合的な基本プランはなく、調和が取れていると思えない。現在日本において、旅客機が使用可能な空港は富士山静岡空港を含めて98あり、茨城空港開港で99になります。本当は、航空機、鉄道、バス、乗用車の棲み分けが必要です。狭い日本、そんなに空港作ってどうするの?です。主要空港から鉄道と高速道路が便利よく伸びていれば、空港の数を減らす変わりに、主要空港を大きくする。そうすれば、航空輸送費も低くなるはずです。

旅客輸送の基本プランこそ、国土交通省の仕事です。基本プランを国民と事業者に示し、活発な意見や批評を受けて、よりよい基本プランに発展させる。国土交通省以上に政治家が悪かったと思いますが、政治家の言うことを聞かない、正しいプランを作成し、国民に投げかけるのも役人の仕事として重要です。

日本航空の健全経営は、基本プランではありません。基本プランの中での、事業者の市場競争が健全経営を育むのです。従い、現取締役(経営陣)に政府援助を受けて再建しようという人が存在するなら、危険なことと思います。私だったら、執行役としてCFO(Chief Financial Officer)を外部から起用し、相当の権限を与えます。それで、必死になって経営健全化に取り組みます。また、場合によっては、政府援助を受けるより、民事再生法を選ぶ決断をするのが、本当の経営者であると思います。

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2009年8月17日 (月)

GMの燃費誇大発表

次のニュースがありました。

日経8月15日 GM新型車、燃費計算で「世紀の誇張」か 米誌

8月6日に日産電気自動車リーフに関して、このブログ記事を書きましたが、日産とGMは、よく似ている点があると思う次第です。

1) 元のGM発表

新聞記事としては、次の日経と朝日を掲げます。そして、正確な批判をするには、元のGM発表に対してすべきであるので、元のGM発表を掲げます。

日経8月11日 米GM、新車投入を拡大 CEO会見、11年までに25車種
朝日8月12日 リッター98キロ「ボルト」 GMの電気車、10年投入
GMプレスリリース 8月11日 Chevrolet Volt Expects 230 mpg in City Driving

1ガロンで230マイルの燃費と言っていることから、1リットルで97.8kmに相当します。プリウスが38kmで、インサイト30kmですから、驚異的な数字です。

2) GMボルトの低燃費の理由

とても簡単です。GMボルトは、ガソリン・エンジンと電気モータの両方を積んだ車で、走行距離が短い場合(40マイル以内)は、バッテリーに充電した電気だけで走れるので、ガソリン消費はゼロとなるからです。

GMプレスリリースに"From the data we've seen, many Chevy Volt drivers may be able to be in pure electric mode on a daily basis without having to use any gas" と書いてあります。「アメリカ人の10人中8人は、通勤に使用して1日に40マイル(64km)以下しか走行しない。(nearly eight of 10 Americans commute fewer than 40 miles a day)がその理由であり、「毎日充電をして、走れば低燃費を実現できる。"The key to high-mileage performance is for a Volt driver to plug into the electric grid at least once each day,"という訳です。

1回の充電でGMボルトが走行できる距離が、40マイルですから、通勤と日常生活の往復と寄り道入れて1日40マイル以内の走行を続けていれば、ガソリン消費はゼロの超低燃費だと言うわけです。但し、時には遠出をしたりして、40マイル以上走り、ガソリンを消費することもあり、1ガロン230マイルの燃費(1リットル97.8km)の燃料消費になると言うわけです。

GMプレスリリースの下の方に、低燃費車として1ガロンで30マイル燃費の9車種と言っており、GMボルトのガソリンでの走行時の燃料消費は、これより悪いかも知れないが、仮にガソリン走行時の燃料消費が1ガロン30マイル(1リットル12.75km)として、年間の電気走行が10,000マイル(16,000km)であるとして、1ガロンで230マイルの燃費になるガソリンによる年間走行距離を計算するとたったの50マイル(80km)です。唖然とします。

一方、電気自動車としてのGMボルトの性能を三菱i-MiEVと比較すると、次の表の通りで、GMボルトは車体が大きい分、電気をより多く消費し、その為走行高距離も短い。電池もリチウムイオン電池でi-MiEVと同じです。

GM ボルト 三菱 i-MiEV
電力消費 156Wh/km 125Wh/km
電池容量 16 kWh 16 kWh
1充電走行距離 64km 160km

3) その他

次の表は、1km走行した時のCO2排出量です。発電方法によりCO2の排出量は異なるので、米国充電というのは米国環境省の電力CO2排出係数603CO2-kg/MWhを使って計算した場合で、日本充電は2007年度の電力事業者CO2排出量438,564,752CO2-tonと販売電力量958,128GWhから平均CO2排出量458CO2-kg/MWhにより計算した結果です。

ガソリンを全く使わず、電気だけで走ってもGMボルトは、米国充電なら、プリウスやインサイトよりCO2を排出する計算となりました。

1km走行時のCO2ガス排出量の比較(単位:グラム)
米国充電 日本充電
GM ボルト 100 71
三菱 i-MiEV 80 57
低燃費GM車(12.75km/l) 182
トヨタ・PRIUS 61
ホンダ・INSIGHT 77

太陽電池で、充電すればCO2排出はエネルギー部分については確かにゼロです。しかし、夜間は太陽電池は働かず、充電ができない。家庭用の3kW電池で充電した場合は、最短でも5時間20分ですから、通常は1日目一杯かかり、通勤には使えない。その上、雨や曇りの日はほとんど充電できないので、お休みをするか、CO2排出して発電された電気を購入するかです。

それ以外に、日本の場合は、ガソリン税が電気自動車からは、徴収できなくなるので、対策を考えなくてはならなくなります。一案としては、電気自動車については、購入時と車検時に、電気自動車税を徴収する方法です。そうしないと、道路建設とメンテナンスに一般財源を回すこととなり、消費税増税です。

考えれば、民主党のマニフェストも同じ類で、ガソリン暫定税率廃止と高速無料化は、消費税率アップに繋がるだけでなく、貧困層の切り捨てと富裕層優遇の方向です。党の基本方針とまるで方向が違うように私は思います。

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2009年8月15日 (土)

裁判員制度の裁判

1) 初の裁判制度の裁判

初の裁判員制度の裁判となった8月3日に始まった東京地裁での、東京都足立区の隣人女性殺害事件裁判で、藤井勝吉被告(72)は、求刑懲役16年に対して、6日の判決は懲役15年でした。これに対して、被告は上告をしました。

時事ドットコム 8月13日 初の裁判員事件で被告控訴=隣人殺害、判決に不服

裁判を受ける権利は、極めて重要な権利です。従い、私は上告に対して何らの意見を差し挟みません。

しかし、お節介屋は、いるようです。次の読売の記事や産経は、「東京高裁の裁判長で作る研究会が7月に発表した論文は、「明らかに不合理な判断と認められる場合以外は、1審の判断を尊重する方向で考えることになる」とか「最高裁の司法研修所は裁判員裁判の1審判決について、「できる限り尊重すべきだ」とした研究報告書を公表」 とか述べている。読売 産経MSN しかし、実際にどのように研究会や司法研修所の研究報告書で書かれているか探しましたが、見つかりませんでした。

いずれにせよ、一般論を論じることは間違いです。裁判とは、裁判官・裁判員が自分の良心と憲法に従って、判決を下すべきです。被告が控訴したなら、その控訴を受けて、良心に従って判断すべきです。

なお、足立区隣人女性殺害事件は、裁判員裁判である必然性は、あったのだろうかと思います。殺人の事実については、争われておらず、量刑のみの判断であったのですから。そこに、6人もの一般人が裁判員として、多数決どころか2/3の絶対多数で参加して判決を下すのですから。(この裁判は、量刑のみの判断であり)正直違和感を感じます。

この初の裁判員制度の裁判を含め、IZAが詳細な記録をWebに出しています。ここに、「初の裁判員裁判」のニュース一覧があり、膨大な資料があります。

2) 2件目の殺人未遂罪での裁判員裁判

この裁判は、8月12日に懲役4年6月判決が出されました。やはり、起訴内容については、争いが無く、量刑についての裁判でした。

時事ドットコム 8月12日 裁判員2件目は懲役4年6月=殺人未遂事件判決-さいたま地裁

裁判員の反応として、時事ドットコムから記事を拾うと、裁判員になられた方々も様々な感想をお持ちのようです。

時事ドットコム 8月12日 2件目判決は懲役4年6月=裁判員「重苦しい制度」-殺人未遂事件・さいたま地裁
時事ドットコム 8月12日 「すごく疲れた」「分かりやすい」=戸惑い、真摯な言葉も-職務終え裁判員経験者ら

量刑の判断でも死刑や無期と言った重大な事件なら別ですが、何年にするか、執行猶予があるべきかを、裁判員の参加を得て裁判をしなければならないのだろうかと思います。裁判官3人に裁判員6人ではなく、裁判官3人と裁判員2人でも良かったと思います。そして、高等裁判所での裁判や民事も裁判員が参加するようにすれば、制度的にもスッキリする気がします。そもそも、自民党と民主党が、国民不在で、両党の妥協で作った法律だから、どうしようもないのかなと思います。

3) 再審がなされなかった獄中死亡の三鷹事件死刑囚竹内景助

8月14日に共同通信が次の記事を配信しました。

共同47 8月14日 三鷹事件元死刑囚が自白経緯詳述書簡を発見

記事には、"竹内景助元死刑囚が、弁護団長を務めた故布施辰治弁護士にあてた手紙8通や返信などが14日までに見つかった。「私まで否認したら(裁判所が)全被告を有罪にするだろう」などと、“自白”に至った心情や経緯が記されている。”とあります。

記事の下の三鷹事件の説明にも、”捜査当局は日本共産党の組織的犯行と断定し、運転士ら10人を起訴。一審判決は非党員の竹内景助被告の単独犯行とし、無期懲役を言い渡した。党員9人は無罪。竹内被告は控訴審で死刑判決を受け、55年に最高裁で確定した。”とあります。1949年の事件で、政治的な力が働いていた可能性もありますが、警察・検察が見込み違いで突っ走る恐ろしさです。

裁判員も、犯人ではないにも拘わらず、犯行を認めてしまった、あるいは自白がふらつく被告の裁判にも参加します。良心に従って判断するのですが、一生背負い続けることになるかも知れません。

裁判が身近になったことは良いことだと思います。一方で、立法府である国会は身近にあるのでしょうか?国民が法制定にもっと参加できる制度・社会を目指す議員を私は支持します。もう一度よく考えて、候補者を選びたいと思います。

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戦争責任

終戦の日がやってきました。戦争の責任は誰にあるのか、せめて終戦の日ぐらい、少し考えてみて良いように思います。

1) 戦犯

東京裁判により戦争犯罪人であると判決を受けた戦犯に対して戦争責任を押しつけて解決はしない。東京裁判とは、1945年7月26日の米、英、支三国宣言であるポツダム宣言第10項の「吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ」を実施したとも言える。

日本国民が、戦争についての責任者を処罰した裁判ではなかった。但し、日本国民自らが、戦争犯罪者を捕らえ、日本の法廷で裁判をできる状態にあったかを考えると、大いなる疑問が生じる。本土決戦が唱えられ、反対すれば、非国民とののしらなければならないキチガイ状態にあった。犯罪人の正しい捜査、検挙、公正な裁判すら日本人の手で実施できなかった状態であったと思う。

例えば、「日本は神国である。神風が吹く。天皇陛下のために死ぬことが至福である。」と教えた教員が、ほとんど全てであったと思う。普通に考えれば、根拠が無く、説得力を持たない。だから、これが正しいのだと強権を使っても、無理矢理たたき込む。今から考えると、キチガイ沙汰に思えるが、教員自身がそのような教育をしないと、職を失うどころか、村八分・国八分になってしまうから、頭を使わないようにして、誰かに魂を渡し、奴隷になる。

天皇陛下とは、便利な言葉であった。権威を笠に着て「天皇陛下のXXXX」と言えば、間違ったことでも、相手をねじ伏せ、自分の言うことを聞かすことができる。そんな日本の当時の社会こそ、日本を戦争へと導いた最大の原動力であったし、最も反省すべき点であると思う。

2) 零戦

これも一つの例であるが、零戦は優れた戦闘機であったと言われる。しかし、本当にそうであるのか、考えてみたい。零戦は、長距離飛行と運動性能で優れていた。

長距離飛行能力は、侵略目的に使うことであった。実際の戦争では、長く伸びきった補給路の護衛につくことになり、搭乗員の疲労・消耗を生んでいった。運動性能が良いことは、小さい半径で回れることであり、大きなGがかかったり、運動性能を生かした高い戦闘力は熟練搭乗員の操縦により発揮される。熟練搭乗員を失い学徒兵が操縦する零戦は、単なる飛行機であり、使い物にならない。可能な戦闘は、神風攻撃となってしまう。

Wikiを探していると、空母エンタープライズに神風攻撃をする1945年5月14日撮影のこの写真がありました。その結果、この写真のように前部エレベータが飛び、ダメージを受けたが沈没はしませんでした。

日米の技術力・生産力を考えれば、その差は明白であったのですが、当時の日本には、適度の性能で、誰にでも比較的容易に操縦が可能で、大量生産に向き、部品供給やメンテナンス容易というようなシステム全体で考える発想は貧困であったと思います。自分の周りしか見ない近視眼で、それ以上の部分は、自分に都合の良いように解釈してしまう。

今の日本人が同じような状態になってしまっている気がします。戦争に向かうとは思わないが、破滅に向かって進んでいる可能性があると思います。

3) 現在の政策

自民と民主の公約とマニフェストを見ると無茶苦茶で、戦前状態にあると思います。民主党のマニフェストに、中小企業の法人税を11%にすると書いてあるが、現行の18%で良く、法人税を納付できるような利益が生まれる社会にして欲しいのです。ガソリン税暫定税率廃止や高速道路無料化のCO2増加政策を言いながら、見通しのない2020年CO2排出25%削減や、お金持ちに対しても子供手当の支給を言う。キチガイ沙汰です。

自民も全く同じで、更にマスコミもそれを後押しする。根拠のない嘘をばらまく。戦前の日本とよく似ていると思います。

自民が勝てば、今と同じ状態が続くと思えるから、今回は一度民主が勝つ。しかし、政策は無茶苦茶だから、破綻する。そこを乗り越えて、よりまともな政党や社会が誕生する。そのようなことに期待を繋がなくてはならないのかと思います。

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2009年8月 7日 (金)

保守主義

本日、新聞と一緒のタイミングで配布されたのか、ある候補者のビラ(XX国会報告と書いてある。)が入っており、驚くことが書いてあり、驚愕しました。(馬から落馬です。)

1.一院制導入

一院制を導入し、500議席の国民議会のみとすると書いてあります。2007年8月17日に日本国憲法とのエントリーで書きましたが、GHQが作成し、1946年2月13日に日本政府に提示した日本国憲法の草案では国会は一院制でした。最終的に、日本は二院制を採用しました。

一院制がよいか、二院制がよいか、議論があると思います。国民的議論もないのに、「国会レポート」と書いた文書で、一院制を唱えるのは、おかしいと思う。その理由については、何も言及されていない。憲法は、権力者を縛るものである。議員が、こんなことを言っているのは、よくありません。

二院制の良さは、保守主義かも知れません。両院で審議され、可決されることで、新たな法が制定されるのです。法とは、国家権力です。国家権力に委ねた方が良いことがあるので、それらのことを法で定める。従い、保守的でなければいけない。なお、保守主義とは、改革をしないことではなく、改革にあたっては、一時の感情で決めるのではなく、その改革の利益と不都合を現実の事態と過去の例を検討して、最善の手段を決定することです。

2.道州制

道州制で10兆円以上行政経費を節減と書いています。道州制とは何か?全く解りません。憲法60条に「行政権は、内閣に属する。」とあります。憲法92条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」です。

日本において、地方自治体は都道府県と市町村です。市町村合併も、問題はあるようですが、各市町村が独自の判断で合併することで良いでしょう。必要なら、都道府県も独自の判断で合併すればよいのです。都道府県の行政単位を残して、道州制とは経費が増加するだけというのが通常の判断です。

道州制になれば、金持ち道州と貧乏道州の格差が開き無茶苦茶になると思います。狭い日本、そんなに地方で区分をしてどうなるの?であります。日本全体・日本人全体が幸せになることや世界全体が幸せになることが重要と思います。

3.保育園・幼稚園無償化

追加財源1兆円と書いてあります。財源をどうするかと、何故この政策なのかが分かりません。将来展望がないまま、唱えているから、理解不可能です。少子化対策とは、イコール高齢化社会対策でもあります。

悪く言えば、低賃金でこき使って、おまえらの保育園や幼稚園は無償だから、低賃金で当然と言える社会、首切り・リストラが当然の社会の実現を目指しているようにも、思えてしまうのです。ここらの、政策や展望が全く見えませんから。

4.基礎年金国庫負担75%

財源をどうするのでしょうか?消費税でしょうか?いずれにせよ、税金であることは間違いがありません。財政分析の数字がない議論には、乗らないようにしましょうと言います。

税金でまかなってよいと思います。金持ち減税を止めるなら、それも一つだし、低所得者還付方式の消費税もありかも知れません。国民全員の基礎年金番号と納税番号により、所得を適切に把握し、不公平が生じないようにし、かつ本当に支援が必要な人を支援できるようにすることは必要と思います。

5.病院たらい回し解消

不適当な表現であるたらい回しを使っていますが、それはそれとしても、原因に遡って、対処するようにしないと解消は無理です。

実は、一つの解消方法は、「小泉改革」でした。その将来方向は、「金持ちしか十分な医療を受けられない。貧乏人は、それなりの医療で我慢する。」でありました。国民が、このような状態を選択しても一つの解決です。

一方で、現在の医療体制を維持するなら、大増税を行うべきです。多分、公的医療保険料のアップは、もっと難しい気がしますから。そして、手を付けなくてはいけないのが、医師の育成であり、この為には10年以上を必要とし、もしかしたら医師育成体制の充実もせねばならないので、20年ぐらいして初めて有効になると思います。そんな悠長な話です。過去の政策の結果は、そんな長期間を経過してグサリとささってくるものです。

病院で患者を受け入れようとしても、受け入れることが不可能な状態となった時、開業医がいるから大丈夫とはなりません。必要な医療を受けることができるようにすることは、その医療(何がその医療であるかは、議論が続きますが)が提供できる体制を作ることです。

恐ろしいことは、「病院たらい回し解消」と言って、医療提供体制を疲弊させ、医師の逃亡を増加させ、完全に医療を崩壊させることです。それだったら、「小泉改革」の「貧乏人はそれなりの医療」で「病院たらい回しがあって当然」の方が、比較上では、良いのかも知れません。

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2009年8月 6日 (木)

日産がインチキ商法を始めたかな

とんでもないインチキを日産は始めたと思いました。2009年8月2日の日産が次の発表をしました。

日産自動車、手頃な価格とニーズを満たす電気自動車「リーフ」を公表 日産とモビリティの新たな一時代を構築

私は、もう誰にも日産自動車を奨めません。

1) 環境評価の嘘

確かに走行時には、排出ガスを出さず、ゼロエミッションです。しかし、充電時には、発電所で燃料が消費されます。6月29日のインサイトvsプリウス、そしてi-MiEVとティーダを比較しましたで書いたように、東京電力のWebでは、供給電力1kWhにつき425グラムのCO2排出となっています。

日産は、「簡単で便利な充電方法にも取り組んでいる。「リーフ」は、急速充電器を使えば、30分以内で電池容量0%から80%までの充電が可能となる。」と宣伝しており、車のユーザーが電源を指定できるわけでないので、もしかしたらCO2を多く排出する石炭火力だったりしたら、ハイブリッドカーよりCO2の排出力が多くなります。

2) 三菱i-MiEVより悪いと予想される環境性能

三菱i-MiEVは軽自動車です。現状では、三菱も頑張ったが、やはり軽自動車が精一杯であったのです。それを乗り越える日産と評価したいのですが、比べてみると、i-MiEVより全ての点で劣っていると思えます。

車体重量が、i-MiEVより相当重いと思えるからです。80kW/280Nmを発揮する電気モーターを搭載と日産の発表にはあります。i-MiEVは、47kWです。日産車は、5人乗り5ドアハッチバックですから、i-MiEVより車両重量が重いのは当然ですが、走行距離をi-MiEVと同じ160kmとしているから同じリチウム電池を使い、電池重量も思い。

当然、燃費も悪いはずです。但し、電力の場合は、ガソリン税や軽油取引税がないので、その分確実にエネルギー費用は安くつきます。

エコカーではなく、税金ちょろまかしカーであります。将来は、充電ステーションで電気自動車を充電すると電気自動車電気税がかかるようになるのでしょうか?電気自動車からも、道路建設や道路整備に必要な費用をまかなう適切な税金を徴収すべきであります。

3) CO2ライフサイクルアセスメント

電気自動車を製造するにも、電池を製造するにも、原材料である鉄板や、種々の部品を製作するにもCO2が排出されます。ゼロエミッションとは、使うべき言葉ではないはずです。

むしろ、原材料を含めたCO2のライフサイクルアセスメントが求められています。例えば、原子力発電も決してゼロエミッションではありません。太陽光発電の場合も、ゼロエミッションではなく、短期間の使用では、製造時のCO2排出を発電時に取り戻すことができないかも知れない。CO2ライフサイクルアセスメントをしっかりやっていかないと、日産のようなごまかしが我々の中に蔓延してしまう。やった者勝ちの恐ろしい世界になる気がします。

4) 日産民事再生法

GMが最後の段階でも唱えていたのが、電気自動車であったので、日産も民事再生法申請が近いのかなと疑ってしまいます。電気自動車には、高い技術力は不要であるというのが一般的です。高性能電池の開発が大きなウェイトを占めます。

今の日産にそんな技術力があるのかなと、ゴーンの宣伝を聞くと「こりゃないわ」と思えます。口だけで、説得力がないと思えるので。そうなると、日産・ルノーのXXがあり得るかなと思えました。GMもChapte11を申請しましたから。

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2009年8月 1日 (土)

小選挙区制の廃止を望む

民主党のマニフェストに続き、自民党も政権公約を発表。それぞれ、次の所にあります。

民主党 Manifest

自民党 政権公約 政策Bank

1) 国民不在の政策

国民不在の政策と言えば、両党の人達が否定することは、確実です。しかし、両党ともその選挙公約を読むと、むなしいという気持ちが先に立ってしまいます。これが本当に国民が望んでいることなのかと疑問を持つのです。

自民党は、民主党のマニフェストを財源の裏打ちがないといったような否定キャンペーンをしています。しかし、この自民党の否定キャンペーンは、更にむなしく感じます。何故なら、過去4年間の実績が、そう思わせるからです。「自民党政権の政策は、良くなかった。だから、今度は民主党にやらせてみるか?でも、期待はできないな。」との思いがあるから、自民党が訴えれば訴えるほど、そんな気持が増長させられるように思います。

日本で一番深刻な問題。それは、少子化でも何でもありません。政治不信だと思います。若者が政治に関心を持たないのは、政党が堕落しているからではないかと思うのです。少子化は、寿命が延び、高齢化したことや、社会や価値観の変化等様々なことが重なり合って生じているのであり、政治は少子化問題・高齢化問題を簡単にコントロールできないし、個人の自由に関する部分は、コントロールすべきではありません。

しかし、政治不信は全く異なる。コントロールしなければならない事項です。その政治不信の最大の原因は、小選挙区制に起因している部分が相当に大きいと思います。2大政党政治とは、日本の今の制度のままだと、2大政党の幹部の独裁制にすぎないと思えます。2大政党の幹部ににらまれたら、議員になれない。公明党が、議員になれるのは、自民と選挙区調整していることと、比例区があることでしかない。こんな政治で、議員は誰の方を向いて活動をするか?政党の中で出世すること、発言力・影響力を増大させることしか関心がなくなる危険性があります。

国民には、様々な意見と人が存在し、それらを集約し、良い方向に育て上げ、リーダーとなる人が政治家のはずです。政党の政治家候補の公募は、開けているように思える。しかし、その政党幹部の眼鏡にかなった人が党の公認を得て、立候補するのである。その結果、国民の方を全く見ない政治家を育てていることにしか他ならない。4年前の何とかチルドレンが誰の方を向いて政治をしたのかじっくり考えれば、どうだろうか。

2) 小選挙区制の否定

小選挙区制の2大政党政治とは、国民の多くが、どちらかの政党に何らかの形で関与し、その政党の政策立案に関わる社会状態があって、意味があると思います。そうでない、日本の社会において、小選挙区制は意味のない制度と思います。ボス制度を助長し、ワンマン体制を助け、国民にあきらめと絶望を抱かせる制度と思えます。

小選挙区制度において、議員と国民の距離は、明らかに遠ざかったと思います。同じ政党から、複数の候補者が立候補して、競い合って、何か悪いことがあるでしょうか?先日東京都議改選がありました。ある選挙区では、定数5人に対して、自民や民主の候補者が複数立候補して、競っていました。同じ政党であっても、同じ主張をしていては、ダメなので、「自分はこうなんだ」と訴えかける。

日本でも、1994年2月細川内閣時代に公職選挙法の一部を改正する法律が成立し、中選挙区制が消滅し、小選挙区・比例代表制になりました。史上何番目かの、最悪政権であったと思います。突然消費税率アップを言い出したりしましたが、小選挙区になったから、何でも可能と判断したのかな?

大東亜戦争に進んでいく、その前の日本の戦争準備時代以前は、日本に2大政党時代があった。その2大政党時代とは、正義や真理や、国民の幸福より、政略が優先し、2大政党が足の引っ張り合いをした。それが、国粋主義を蔓延させた部分が多いと思います。

多数の政党が存在して、何が悪いのですか?何も悪くないはずです。

3) 政治家を志望する国

多くの人が政治家を志望する国を私は理想の国と思います。金銭欲でもなく、名誉欲でもなく、社会貢献欲で政治家を多くの人が目指す国を作りたい。

社会貢献欲ってあるのか?あります。多くの人が持っています。自分の仕事を、金銭を得るためのみではなく、少しは世の役に立っているから、続けていると考えておられる方は多いと思います。政治家とは、社会に対する影響力が大きい仕事です。だから、政治家を志す。ある国で、その様な考えで、政治家の秘書として働いておられる方にあったことがあります。日本のように、政治家の秘書は、冠婚葬祭係ではないから、政策立案やそのための調査のために、自分の時間を全て割くことができ、そうした結果を次の政治に役立てることができるのです。

バラクオバマを当選させた力は、あの国の若者力による部分が大きかったと思います。日本でも若者が政治に参加し、政治活動をする。残念ながら、今の選挙制度は、政治ボスのための制度であり、心ある人の政治参加・政治活動の妨げになっていると思います。

民主党が8月30日の衆議院選で勝利するのでしょう。しかし、その政権はいつまで持つか?政界再編が、あるような気がします。その時に、私のような考え方を持つ人が、どれ程集まるか?政界再編で何も代わらないなら、細川内閣と全く同じ。世の中、悪くなっただけに終わらせては、いけない。そのためには、国民一人一人がしっかりと意見を述べるべきと思います。 

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