デルタの日本航空への出資
日本航空に関して何度も書いているので、やはり今回の報道に関しても、コメントをと思いました。
日経 9月12日 日航再建、思惑が交錯 デルタとの提携、国交省後押し
1) 航空法
日本航空は、当たり前ですが、航空法第100条の許可を受けて航空機を運航している会社です。ところで、航空法第101条(許可基準)第1項五号が、次の条文です。
五 申請者が次に掲げる者に該当するものでないこと。 |
そして、第4条1項は、次の通りです。
第四条 左の各号の一に該当する者が所有する航空機は、これを登録することができない。 一 日本の国籍を有しない人 二 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの 三 外国の法令に基いて設立された法人その他の団体 四 法人であつて、前三号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの |
日本航空の場合、航空輸送業務をしているのは日本航空インターナショナル、日本トランスオーシャン航空、ジャルウェイズ、ジャル エクスプレス、日本エアコミューター、北海道エアシステム、琉球エアーコミューターとジェイエアの8社であり、上場している株式会社日本航空は持ち株会社ですから、第4条1項四号の外資規制となります。従い、デルタが出資するとしても、33.3%以下です。
2) デルタの狙い
当然、様々なデルタの世界戦略の展開であることは、間違いないはずです。但し、航空法の規制により子会社にはできません。でも、ある程度の株数を持てば、相当の影響力を持て、日本航空と様々なデルタ路線に合致した提携を進めることができると思います。
8月20日の日本航空の経営健全化では、日本航空の現在の業績不振・赤字の最大の理由は世界不況による収入減と私は書きましたが、そうであれば現在の日本航空株価160円は魅力です。読売 9月12日 日航が詰め交渉、デルタ「500億円出資」打診かでは、500億円なんて数字もあがっていますが、500億円として1株160円では、300百万株強となり議決権のないA種株式を除く発行済み普通株式総数2,732株の10%を超え、デルタ出資後のデルタ出資割合は約10%となります。
約10%を取得して、有利なビジネスを展開する。そして、将来の売却もあり得ると思います。株価チャートを見れば、一目瞭然ですが、近年は右下下がりの一直線の感じですから。何年かすれば、株価300円位は十分あり得ると思いますから。
3) 日本航空の観点
日本航空の経営にとって一番大変なことは、私は資金繰りと思います。7月3日の日本航空と全日空の比較で書きましたが、2009年3月末時点における長期債務の1年以内に決済が必要な金額は次のように、2259億円です。
2009年3月末残高(単位:億円) | 日本航空 | 全日空 |
1年以内返済長期借入金 | 1,284 | 811 |
1年以内償還社債 | 520 | 300 |
1年以内決済のリース債務 | 455 | 118 |
合計 | 2,259 | 1,229 |
2009年6月期の第1四半期において、営業活動によるキャッシュフローは595億円の資金不足でした。長期借入金は借入増が623億円で返済額が284億円でした。返済より借入が多かったのです。日本航空の場合、借入金のなかで政策投資銀行からの割合が大きいので、他の企業と少し異なる点はあるでしょうが、経営者としては、不況だからと手をこまねいていてはならず、10%程度資本を受け入れて、新規提携関係を計ることはあり得ると思います。
デルタの資本を受け入れることは、国内不採算路線からの撤退が更に容易に進められることもあると思います。完全撤退でなくても、減便でも良いのですから。
4) オープンスカイ
オープンスカイの広まりが、これから先、どのような影響を与えるか分からない面がありますが、少なくとも競争は更に激しくなると思います。民主党政権になって、オープンスカイが更に進む可能性があると思います。そのあたりも、デルタの戦略に入っているのではないか。日本航空経営陣にとっても、日本政府から関与を受け、足かせをはめられ、自由が失われないようにするために、デルタの資本参加を意図している。
そんな可能性もあるのではないか。いずれにせよ、単純な○×ではなく、これからの航空産業の行方を見ていきたいと思います。
そう言えば、三菱MRJも胴体縦径を2インチ半大きくしました。100人乗りのストレッチ型も生産するのでしょうね。(三菱航空機 MRJ最新状況説明会)
| 固定リンク
コメント