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2009年10月31日 (土)

菅直人氏には驚きました

菅直人氏とは、どうしようもない人なのでしょうか?次のニュースで驚きました。

10月31日共同47 家庭の太陽光電力全量購入を 来年度からと菅氏

「講演で菅氏は「国が1円も金をかけずに太陽光パネルが増える方法がある。全量固定価格買い取り制度だ。来年度から実施しようと思っている」と表明。ドイツの例を紹介した。」と言うのですが、電気料金の値上げとなれば、確かに政府の予算からの支出はなく、税金は投入されない。しかし、電気料金の値上がりは、家計の負担が増加し、企業にはコストアップとなる。

ドイツは、フィードインタリフの制度により、太陽光発電は飛躍的に拡大した。しかし、電力会社には負担は求めず、全て消費者が負担する制度である。風力や太陽光による発電は、需要に応じた発電ではできず、風や太陽というエネルギー源の変動により発電量が変化するのであり、バッテリーかどうかは別にしても他のStand-by装置の様な物が必要である。ドイツには、ノルウェーの水力発電という理想的な電源が存在しているから、可能であった。

昨日の太陽光発電からの電力買取48円が始まりますが始まる前の日本の制度は、RPS法(2002年6月公布の電気事業者による 新エネルギー等の利用に関する特別措置法)により電気事業者に対して、新エネルギーによる電源からの電気供給を義務づける制度のみであった。この制度は、電力会社が毎年の義務量を、費用を全て負担して、供給することであったから、税投入も不要であり、一方で目標量も確実に達成されていた。太陽光発電については、RPS法の目標量を超えて、導入しようとしたから、48円買取を実施することとした。

貧乏人は大変な世の中になってきているのかなと思います。南向きの一戸建てに住める人は、太陽光パネルを付けて、リッチになり、貧乏人は電気料金アップと物価高で苦しむ。そんな世の中が菅直人氏にとっては、よい世の中なのだろうが、庶民は全く違います。温暖化問題は、22世紀に悪い環境を残さないために、地球上の人々が力を合わせて取り組むべき問題です。政治家は、国内を向いて取り組むのではなく、米国を初め世界の国々が取り組むように働きかけることです。民主党が温室効果化ガス25%削減を言った時に、世界中が取り組むのであればと、世界に向けて働きかけるための、フレーズと私は理解しました。その意味で、大賛成でした。

パフォーマンスが好きな菅直人氏の個人プレー発言と思いますが、こんな訳の分からない人物は、今更どうしようもないのでしょうかと思ってしまいました。

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2009年10月30日 (金)

太陽光発電からの電力買取48円が始まります

1) 太陽光発電電力買取制度

太陽光発電からの48円/kWhでの電力買取が11月1日より始まります。誰が、そんなことを決めたかですが、経済産業大臣です。次の二階経済産業大臣告示です。

2009年8月31日付経済産業大臣告示278号

そんな権限が大臣にあるのかというと、大臣告示には本年7月8日公布の「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」第5条1項の規定に基づくと書いてあり、第5条1項は次の通りです。

第5条1項 経済産業大臣は、特定エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用の適切かつ有効な実施を図るため、特定エネルギー供給事業者が行う事業ごとに、非化石エネルギー源の利用の目標及び次に掲げる事項に関し、特定エネルギー供給事業者の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
一  推進すべき非化石エネルギー源の利用の実施方法に関する事項
二   再生可能エネルギー源の利用に係る費用の負担の方法その他の再生可能エネルギー源の円滑な利用の実効の確保に関する事項
三  その他非化石エネルギー源の利用の目標を達成するために計画的に取り組むべき措置に関する事項

私も、この5条1項が、そんな幅広い権限を大臣に与えているとは、読み切れていませんでした。しかし、電力買取価格のみならず、消費者が負担する太陽光発電買取結果による電気料金の値上げ幅まで、大臣が決定する権限を持っています。法律としては、政府に権限を与えすぎであり、公正な委員会を組成するような内容の法律にできなかったかと思います。なお、消費者負担については、告示278号の5ページ目に「当年度における転嫁の単価については、・・・・」と書いてあり、毎年度設定するとなっています。

ユニバーサルチャージならぬ太陽光サーチャージですが、大臣がそこまでの権限を持つとなると、物価統制のような気がしなくもありません。日本の電力料金は電力会社が経済産業省の認可を受けるが、主体は電力会社という方式(電気事業法19条)でした。即ち、電気事業は公共インフラであるが、事業主体は民間上場企業をとした制度です。更には、2000年の電気事業法改正により、大口電力(現在は50kW。但し、沖縄は2000kW。)は自由化され、大口電力の料金については大臣による認可もないからです。

2) 太陽光サーチャージ

太陽光発電を設置していない人にとっては、電気料金の値上げ幅の方が、気になります。料金関係については、経済産業省総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会・電気事業分科会買取制度小委員会が、料金に関する検討を行い、結論を出し、その結果、大臣告示となっています。ここに”買取制度小委員会「買取制度の詳細設計について」取りまとめ”と題した2009年8月25日付けの審議結果があります。なお、この調査会や委員会が、どの法令で設立され、どのような権限を保有しているかについて調査できていません。

8月25日付けの審議結果の5ページの一番下に48円の買取価格が書いてあり、サーチャージについては、2ページの脚注に「kWh 当たりの負担額は約0.1 円程度(制度導入当初)」とあり、資料2ページ(17/27ページ)にもう少し詳しい説明があります。但し、10ペ-ジに、「例えば、暦年ベースの買取総額を集計し、次年度に回収するスキームを基本とすることが適当である。」と書いてあり、2010年4月1日からの電気料金値上げです。

2010年4月からの値上げ幅は、0.1円/kWhと予想されます。月に300kWhの電力を消費する家庭であれば、月30円ですが、家庭用の電力のみならず、あらゆる電力が値上がりするので、物価に跳ね返ってくる部分もあると思います。

なお、将来のサーチャージ額ですが、7月12日の太陽光発電による電気料金の値上がりに書いたように麻生総理が4月9日に日本記者クラブで20倍にすると述べたのです。そうなると、逆さや分は20倍の2円/kWhとなり、毎月600円で年間7,200円の負担です。これに物価上昇が加われば、年間1万円今より電気代他出費が増えます。

麻生総理が言うように20倍になるか不明であるし、技術革新により太陽光発電設備も安くなり、買取価格が下がっていくので、逆ざやは単価においては小さくなるはずです。しかし、量の上では、増加するので不明ですが、基本的にエネルギー価格は今後とも上昇を続けると見て間違いはないと思います。

3) 太陽光悪徳商法

やはり太陽光悪徳商法が、はびこっているようです。わざわざ経済産業省が呼びかけていますから。

経済産業省News Release 2009年10月8日 太陽光発電装置に関する消費者保護の取り組みについて

次の国民生活センターの報道資料発表は、悪徳商法の事例が6ケース書いてあります。

国民生活センター 報道発表資料 2009年10月7日 ソーラーシステムの訪問販売のトラブルが増加 -「売電収入」や「補助金」の過剰なセールストークに惑わされないで-

悪徳業者は、裁判でも訴えてくるから、大変です。例えば次の裁判例があります。(これは、70万円から100万円、あるいはそれ以上かも知れませんが、高く売りつけていた例です。)

平成21年9月17日判決言渡 平成20年(ワ)第6050号損害賠償請求事件

4) 太陽光発電の損得勘定

太陽光発電設備の費用は、幾らが妥当かと言えば、2)でリンクを張った2009年8月25日付けの審議結果の資料3ページ(18/27ページ)に書いてある3.5kWの設備で185万円か、それ以下だと思います。

幾ら買取収入が得られるかは、ここにSanyoの説明がありますが、1,169を掛けたのが年間発電kWhとなっています。これに、冷蔵庫等家屋内で消費した電力を引いた残りなので、審議結果の資料3ページは60%としています。そうなると、700を掛ければよいので、3.5kWの設備では年間2,450kWhであり、48円で買取収入が得られれば、117,600円です。年による変動もあるし、屋根が南から少しずれていることもあると思うので、これが最大限なのかも知れません。

いずれにせよ、審議結果の資料3ページ(18/27ページ)は、当然のことですが、実勢の数字です。これを参考にするのがよいと思います。但し、メンテナンスフリーではないことを認識しておいてください。台風が来て、物が飛んできて壊れる可能性もあるし、屋根に上って素人がメンテナンスすることは不可能です。それと、電池は直流ですが、利用や買取の際は交流なので、インバーターやそのコントロール関係もあります。これらも、専門家でないとメンテナンスができず、メンテナンスをすると、その年は買取収入以上の出費になるかも知れません。

将来の姿が見えにくいのですが、エネルギー価格は上昇するとの読みで、20年後を楽しみに投資するのが太陽光発電かも知れないと思います。但し、一方で、買取価格は国民全員による費用分担で支えているのであり、闇雲に進むのではなく、監視を続けて、必要があれば制度改正を行うことが重要と考えます。

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2009年10月27日 (火)

日本郵政は重要です

どうなっていくのかと、日本郵政の行く末を心配します。

日経 10月27日 日本郵政取締役に高井・坂氏ら

西川社長一人を交代させるだけではなく、色々な人の名前があがっています。誰が、こんなことをしているのかと思います。この毎日の10月24日記事 国際会計基準IFRSの暴走にある、トンデモ発言をしている亀井静香氏ですかね。金融についての素人が、方向違いの発言ばかりしているように思います。

この日経記事10月26日日本郵政の社外取締役、作家の曽野綾子氏にで、バカかと思っていました。曽野綾子氏は、司法制度改革審議会の委員をしていたことがあり、ここに平成11年7月27日開催の第1回議事録がありますが「いつもこういう場合に、傍聴という話が出るんでございますけれども、私は傍聴には基本的には反対です。」と発言しているのです。作家として、どう発言しても構いません。しかし、公的な仕事をする場合において、公開すべき事項は公開しなければなりません。その大原則に反対する人は、公的なポジションに就任してはなりません。

司法制度改革審議会は、小泉政権発足直後に組成されており、曽野綾子氏を選んだのは、小泉氏の趣味かと思っていましたが、亀井静香氏も同じ趣味とは知りませんでした。

1) 民主党は公共工事推進・拡大?

私は、民主党の方針は、大型公共工事を縮小すると思っていました。小泉改革の一つは、不必要な大型公共工事を、資金面から絶つことと理解していました。即ち郵貯と簡保の資金が自動的に政府へと流れていくのを避けることにあったはずです。

国債残高の推移は、この政府税調の資料が適当と思いますが、最後のページ(公債と書いていますが、普通国債です。財政投融資国際等を加えると更に金額が増加します。)にあるように2009年度591.9兆円で、GNPの190%です。国際比較も、こちらの政府税調資料の1ページ目にあります。ダントツ1位です。

国債保有に関する資料は、この財務省の資料の2枚目に保有者別内訳があります。平成19年度末、20年度末は郵貯と簡保が消えていますが、なくなったのではなく、注3にあるように市中金融機関に区分しているからです。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の貸借対照表では、2009年3月末で、それぞれ155.5兆円と69.7兆円の国債を保有しており、合計で225.2兆円です。40%近い国債に、郵貯と簡保の資金が回っていっているのです。ちなみに、公的年金と日銀が、それぞれ10%程保有しているので、純粋の民間資金では50%も国債を買っていないことになります。

郵貯と簡保に必要なことは、市場をベースにした企業経営です。

2) 委員会設置会社の取締役の義務

日本郵政は委員会設置会社です。取締役で執行役との兼任は西川氏と高木氏の2名で、あとの7名は、社外取締役で別に仕事を持っており兼任ではありません。これでガバナンスは大丈夫かは別にして、執行役を兼任していない取締役の義務は何でしょうか?監査役会がある会社の取締役の義務と変わらないと考えます。

ここにきて名前があがってきた人達は、日本郵政の取締役として適切なのでしょうか?評論家や批評家は、取締役としては不適切です。学者も同じです。日本郵政は持ち株会社であり、実際に業務を行っている郵便局会社、郵便事業会社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命等が事業として成り立っていくように、経営を図らねばならないのです。

ゆうちょ銀行とかんぽ生命が国債にのみ投資を続けるなら、他の金融機関との市場競争に敗れて倒産するかも知れません。金利が上昇する局面になった時、保有している国債は固定金利なので収益は増加しないが、預金利息は上昇します。逆ざやの恐れがあると思います。ちなみに、ゆうちょ銀行の2009年3月期の期末総資産196.5兆円に対して、経常収益は2.5兆円(1.27%)でした。三菱東京UFJ銀行は2009年3月期の期末総資産160.8兆円に対して、経常収益は4.2兆円(2.61%)でした。この時リーマンショックもあり、三菱東京UFJ銀行は債権償却等があり、経常損失0.1兆円になりましたが、金融機関の実力では、MUFGが上だと思います。

ゆうちょ銀行は、GMのように、倒産すると影響が大きすぎて、倒産させられないことになるでしょう。しかし、その時に損失の付けが回ってくるのは、国民です。日本郵政の取締役の任務は極めて重いと思います。

3) 国民の手による郵政改革

今の日本郵政の取締役人事の動きは、6月の西川氏の人選を麻生総理が押し切った時の反動である気がします。政治家とは、気分で動き、将来のことや、国民のことを考えない。従い、国民がコントロールを取り戻さねばと思います。

冒頭にあげた日経の記事には、高井俊成氏の名前があり、何と私と同じ職業が書いてあります。この人をネットで引くと、丸石自転車や、駿河屋の架空増資事件で出てくる飯倉ホールディングスという会社名が浮かんでくるのですが、そのような人なのでしょうか?私と同じ職業の人は、ピンからキリまであり、トンデモ屋さんもいる業界なものですから。私は、この固有名詞の人をよく知りませんが。

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2009年10月26日 (月)

鳩山政権の税制改革

衆院本会議で、鳩山首相就任後初の所信表明演説がありました。例えば、次のリンク先でに全文を読むことができますが、下に抜き出した文章は全くその通りで、賛成します。

Nikketi Net 特集 政権交代 (10/26)鳩山首相が初の所信表明 国政の変革、政治主導で

政党や政治家のためではなく、選挙のためでももちろんなく、真に国民のためになる議論を、力の限り、この国会でぶつけ合っていこうではありませんか。

税制改革については、内閣府に税制調査会を設置することを9月27日の閣議で決定し、既に3回会合を持っています。閣議決定は、ここにあります。

1) 鳩山政権の税制改革の理念

党税調は持たずと言っており、自民党を反面教師にしています。確かに、自民党政権が利益調整政権であったので、利益調整を実施する重要な機能を党税調が持っていました。利益調整をせず、国民のためにまっしぐらに進むとの理念で党税調を廃止したと理解します。

第1回の税制調査会での、鳩山首相の冒頭の挨拶には次の文章がありました。(議事録はここにあります。なお、会議のビデオや資料等がここから見れたり、Downloadできます。)

・・・・・ある意味で「政治とは税なり」と、税の議論こそ政治家が真剣に行わなければならない最大のテーマだと思っておりますが、・・・・・、この国の未来に向けてあり得べき税制の在り方というものを真剣に国民のために議論していただき、結論を得ていただきたい、心からそのことをお願い申し上げます。・・・・

2) 税制改革の方向

第1回の税制調査会で、鳩山首相が10月8日付諮問文府企第241号(ここにあります。)を提出していますが、この諮問を読めば、税制改革の方向が分かります。

A) 番号制度の導入

是非早急に導入してください。国民にとって年金と健康保険は、重要です。税も国民にとって重要であり、統一番号を使って、給付も徴収も合理的に進められるようにすべきで、「消えた年金問題」が過去の失敗例を物語っています。10月26日の「あらたにす」でも、中央大学森信茂樹氏が「「番号」の導入を決断する時」を書いておられました。ここにあります。

B) 所得控除から給付付き税額控除へ

子供手当導入までに、導入するのでしょうか?月額2万6000円を支給するなら、子供2人で年間624千円。給付付き税額控除なら、税額が624千円以下の人は、税金を納付するのではなく、税金とは政府が支給してくれる金銭になる。面白い制度で、色々使えるかも知れないと思います。

一方で、消費税率を上げるために、消費税制度の低所得者に対する逆進性を解消し、負担を軽減するために、給付付き税額控除が言われていた面がある。給付付き税額控除の導入は、消費税率上昇に向かうことを加速するかも知れない。しかし、給付付き税額控除という制度を悪者にする必要はないと思う。

配偶者控除も中止し、夫婦合算課税か、共稼ぎでも専業主婦(夫)でも差がないようにしないと、例えばパート主婦の低賃金のような様々な問題が解決しにくいと思う。社会の変化に税制が対応しないといけないのは、法人税のみではなく、働き方とか生活に密接に関連した部分の税制改革は重要と思う。

給付付き税額控除は、番号制度がないとうまくいかないと思います。

C) 炭素税

ガソリン・軽油の特別税を廃止するなら、その代替となる税を考えるべきと思います。ガソリン・軽油の特別税の廃止については、何故廃止するのか、私は理解できない。一般財源になっているのだから、廃止するより年金・医療に回した方が、国民のためになると思うのだが。

高速無料化も同じで、料金が高すぎるなら、千円高速の廃止を含め合理的な料金が幾らであるかを、国民の前に資料を明示して、議論をするのが最初のステップだと思う。

炭素税も、議論が必要で、CO2削減策とも密接な関連がある。検討は必要であり、諮問は「環境負荷に応じた課税」と言っていますが、私は炭素税だと考えました。でも、来年3月に法を成立させるのは、性急すぎる。もう1年掛けるべきだと思います。そうなると、ガソリン・軽油の特別税の廃止も1年先送りがよいと思います。

D) その他

上記以外に租税特別措置法の見直しやたばこ税の増税がありますが、いずれにせよ、様子を見たいと思います。将来の明るい未来のための税制を作ってもらいたいと思います。

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2009年10月24日 (土)

吉本興業TOBのエンターテーメント

お笑いの吉本興業のTOBをクオンタム・エンターテイメント株式会社(資本金150万円)が、9月11日に発表し、同時に吉本興業も賛同を発表していました。

日経 9月12日 吉本興業へのTOB発表 投資会社

1) TOBの実態

最大37,485,962株~最小26,240,174株を1,350円で購入するので、506億円~354億円のTOBの規模ですが、これを資本金150万円の会社により実施するので、いかにも吉本興業的であり、裏があるように思えます。

TOB成立の場合には、クオンタム・エンターテイメントの資本金は増資され、次の会社の出資が合意されています。

株式会社フジ・メディア・ホールディングス 30億円
日本テレビ放送網株式会社 20億円
株式会社TBSテレビ 20億円
株式会社テレビ朝日 20億円
大成土地株式会社 20億円
京楽産業株式会社 20億円
ソフトバンク株式会社 15億円
株式会社テレビ東京 10億円
株式会社電通 10億円
株式会社フェイス 10億円
ヤフー株式会社 5億円
大成建設株式会社 5億円
岩井証券株式会社 5億円
            合計 190億円

クオンタム・エンターテイメントは、日経記事にもあるように、ソニーの元最高顧問出井伸之氏が社長です。但し、TOBが成立しても吉本興業の現大﨑洋他の経営陣は引き続き、取締役として留任することが合意されています。

TOB資金が506億円~354億円故、最大316億円が不足しますが、これについては三井住友銀行、住友信託銀行及びみずほ銀行から極度貸付限度額合計300億円の融資を受ける予定となっています。

誰が主役であるのか、糸を引いているのか、分かりつらいTOBです。なお、TOBに対して賛同する吉本興業の発表はここにあり、クオンタム・エンターテイメントのTOB発表も添付されています。

2) TOB反対株主

最初は、時事通信の記事を掲げます。

時事ドットコム 10月19日 吉本興業TOB中止求め提訴=「少数株主の権利侵害」-大阪地裁

TOBに反対する株主がここにホームページを立ち上げられ、ホームからたどっていくと、その内容は実に面白いのです。

例えば、次の文章も。

吉本興業株式会社は、関西から笑いの文化を生み出した企業であり、上場後、これらの笑いの文化が好きな庶民達によって育ってきた企業である。その笑いの文化を愛し育ててきた多数の個人株主から、その株主の地位を、大手メジャーのテレビ会社やファンドに言わば「身売り」するのが、今回の「TOB」の姿である。

通常だとTOB価格の妥当性が争点となるのでしょうが、それのみならず、TOB後に、全部取得条件付種類株式とし、少数株主の持ち株数では、普通株式が交付されないように、2/3以上の多数決株主総会特別決議で少数株主を排除することが、権利の濫用であるとの点も、裁判所の見解が聞きたい。会社法で出てきた考え方であり、是非争って欲しいと私は思います。

被告らが共謀してなそうとしている「全部取得条項付種類株式」制度を用いて株主総会の特別決議により株主権を多数決によりはく奪することは、この制度が予定している目的に反し、それを濫用して違法に株主権の侵害をなす行為である。

300億円の買収ローンにしても、吉本興業の負債になるのであり、その問題点について述べているのも、面白いと思いました。(300億円は、クオンタム・エンターテイメントが借入れるのであり、吉本興業ではないが、吉本興業が100%子会社となれば、連結で考えれば、同じ。しかも、クオンタム・エンターテイメントの発表には、合併するとあるので、頭の体操をさせてくれます。)

金融機関等の買収ローン総額300億円についても、これがLBOとして買付者の100%子会社となり、合併した後、被告吉本が返済する額となる(手持ち資金が豊富なため短期間で返済できる)。被告吉本が300億円を支払って非上場になって資本構成を変え、新たな株主(メディア、キャリア等の投資家)との繋がりを持つためのコスト、資本支出として、合理性のある額なのか。

3) TOB期日

TOBの期間は、10月29日までです。どうなっていくのか吉本興業のエンターテーメントを見てみたいと思います。

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2009年10月23日 (金)

JR西日本の社外取締役

JR西日本については、事故調査委員会に組織的に接触し、尼崎事故に関する調査報告書を有利にするように働きかけた疑いがあると連日のように報道されています。

読売 10月23日 JR西元社長も事故調と接触、情報入手組織ぐるみ

マスコミは触れていませんが、社外取締役の責任は、どうなのかと思いました。

現在のJR西日本の取締役は14名で、うち5名が社外取締役です。この社外取締役のうち、尼崎事故が起こった2005年(平成17年)4月の時点で、就任していたのは平成12年6月から取締役の立石義雄氏(オムロン会長)と同時期の平成12年6月から取締役の野村明雄氏(大阪瓦斯会長)の2名です。

社外取締役が、実際の業務において、どこまで立ち入れるか、疑問はあります。しかし、単に取締役会に出席して、その席上で自らの知識、経験等を生かして、取締役会の意義を高めるのみが、社外取締役の活躍であってよいのでしょうか?会社法の、社外取締役の定義は、単に次の2条1項15号の定めです。

社外取締役 株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。

非常勤とは定めていないし、取締役会への出席義務のみとしていません。取締役会で、業務執行を行う取締役を決定するのであり、非常勤取締役を決定しても構わない。立石氏と野村氏は、JR西日本の取締役への選任前に、別の会社の重要な役職にあり、株主総会での選任においても、非常勤であることが暗黙の了解であったと言える。

しかし、これでよいのだろうかと深い疑問を抱きます。社外の眼で、経営にあたる取締役を加えて、経営とガバナンスをよくしようとする考え方が、社外取締役制度と思います。JR西日本の場合で言えば、国鉄から民間会社となり、国鉄時代とは違った眼を入れた。鉄道会社にとって最重要である安全についても、社外取締役は期待されることが大きかったと思うのです。

立石氏と野村氏への非難ではなく、社外取締役の現状についてです。会社は、ガバナンス強化とのうたい文句で、社外取締役を提案する。しかし、社外取締役の活動は、形骸化するよう仕向ける。本業を別に持っている兼任の取締役は、取締役会で提起される問題だけでも大変で、ほとんど余裕は出てこないのが実状と思います。

社外取締役とは、経験なんかより、常勤で業務を執行し、問題意識を持ち、意欲的な人を選ぶべきではないか。この10月21日 日経 社外取締役、兼務が過半数 日経調査、「3社以上」も4割なんかは、「社外取締役の人材不足が顕著になっている。実態はすでに人材枯渇の状況にある。」と書いていますが、時間の取れない片手間で取締役をする人を社外取締役にしても、どれほど優秀でも、意味がないことをJR西日本は、組織として、我々に教えてくれているのではと思いました。

団塊の世代の大量定年時代です。優秀な方が、大勢おられると思います。そんな人を取締役として選任し、会社の業務全般にわたり社外取締役として監視し、業務改善、ガバナンス強化、コンプラ他様々なことについて提案してもらうのです。

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あるあると消費者委員会と花王の不思議な関係

日本の消費者保護は、大丈夫でしょうか?

1) あるあるで変な証言をした人物が消費者委員会の委員

消費者委員会の委員名簿がここにあります。その中の、田島眞・実践女子大学生活科学部教授が「あるある」で「レタスが眠らせる効果がある。」と証言していたとのことです。その告発を書かれたのが、健康食品管理士認定協会理事長の長村洋一氏(鈴鹿医療科学大学大学院・教授)で、ここにあり、さらにその本文はここにあります。名前と顔が隠してありますが、田島眞氏に間違いはありません。

ブログでは、松永和紀blogがあり、実は松永和紀blogで、私も知りました。

2) 不可思議の花王エコナ

エコナクッキングオイルなんて知りませんでしたが、突然エコナ関連製品に関する花王株式会社からの失効届の提出についてを消費者庁が発表して知りました。

「特定保健用食品(特保)」とは何であるかですが、この東京都福祉保険局のWebによれば、健康増進法26条(特別用途表示の許可)の許可を受けた販売に供する食品です。

少なくとも、花王は、お墨付きをもらって高く販売し、利益を得ることを意図したはずです。

NBOnline 10月20日 虚実ない交ぜ“消費者主権”が、指摘しているのですが、消費者団体などがエコナ発売当時から「ジアシルグリセロール」というエコナの主成分が発ガン物質であると問題視していたとのこと。しかし、実はエコナには、別の発ガン物質が含まれていたと言うのです。

植物油脂を加工して製造される人工ミルクに、発ガン性の疑いが濃い「グルシドール(以下G)」に構造が近いグリシドール脂肪酸エステル(GE)が含まれ、GEが仮にGに変化するという「最悪のケース」においては健康被害が無視できず、「リスク評価を進めるべき」という見解をドイツの公的機関が、発表した。これを受け厚生労働省は、花王に調査を指示。花王が独自に調査して、エコナにはほかの食用油よりも高い水準でGEが含まれていることが判明した。その結果、特保を取り下げたと言うのです。確かに、この消費者庁の文書には、「グリシドール脂肪酸エステルが高濃度で含まれることが判明し」と書いてあります。やはり、エコナは黒に近かったのでしょうか?それを、政府は特保だと認定した。

健康増進法26条に書かれている特別の用途とは、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用であり、これで健康食品のお墨付きを政府が与えるというのは、行き過ぎであると思います。バランスの取れた食事が一番よいはずです。

花王は、エコナクッキングオイルを、植物性加工油脂、グリセリンエステル、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)、(原材料の一部に大豆を含む)と説明しています。エコナとは、Edible Coconut Oil of NAGASEのことで、椰子油を主成分としていたのではと思います。対策としては、バランスの取れた食事が一番よいはずで、特保は多分価格が高いから止めた方がよいように思いました。(特保とは、リスクが低いことが保証されている訳ではない。ちなみに、薬もリスクがあるが、治療という重要なリターンの期待がある。)

3) そう言えば、あるあるのスポンサーは花王

これを思いつくと、花王から遠ざかりたくなりました。

4) 消費者委員会

消費者委員会とは、消費者庁及び消費者委員会設置法で 設置された委員会です。消費者保護をするにあたり極めて重要な委員会ですが、委員の選定はやはり極めてずさんであったと思います。

だれが、決めたか。麻生太郎です。(やはり!)法第6条の「委員及び臨時委員は、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に関して優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」に従い、9月1日に任命しています。

では、鳩山君が首にできるかというと、できないと私は思います。何故なら、この委員会は政府とは独立しており、政府の消費者行政を監視し、意見を述べる委員会だからです。消費者庁とは別の組織です。総理大臣は任命できるものの、辞任させる権限はないし、持つべきでないと思います。

そもそも、この消費者委員会の任命を総理大臣とすることがおかしいのです。立候補者に対し、国民投票で決めればよいと思います。そうすると、どの様な人か、その意見や、熱意、経歴等も全て国民に明らかになります。国民の為の消費者行政が、総理大臣のための消費者行政にしてしまうのでは、意味がありません。だから、あるある捏造田島眞氏が就任したのですが。

ちなみに、法案に対し、日弁連は「委員の任命は「両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命」と修正すべきである。なお、委員は兼職禁止について規定すべきである。」との意見書を2008年11月19日に出していました。兼職禁止も賛成します。消費者保護を片手間にして欲しくありません。

ところで、今の委員の首を切る方法ですが、自ら辞めてもらうことが一つですが、それ以上に重要なことは法改正だと思います。私が言うように、選挙で選べないなら、せめて日弁連が言う改正を民主党政権が直ちにして欲しいと思います。

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2009年10月21日 (水)

所得格差の拡大

次の報道からです。

読売 10月20日 日本の「貧困率」15・7%、OECD中4位

1) 貧困者は増加している

上の読売の記事よりは、この厚生労働省のグラフがよく判るのですが、1998年の貧困率は14.6%であったのが、2001年に15.3%となり、2004年は14.9%に下がったものの、2007年は15.7%と右肩上がりです。貧困者とは、所得を低い者から並べて真ん中の者の50%の所得以下である者としています。所得とは、税引後、社会保険負担差し引き後であり、年金を受給している場合は、年金も所得に加え、生活保護費も所得としています。これらを世帯単位でカウントして、その上で世帯の人数の平方根で割り算をした金額です。4人家族で100の所得は、一人あたり50とし、5人家族であれば44.7であり、3年家族であれば57.7です。

2) 各国比較

OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics - ISBN 92-64-05604-1 がここからDownloadできます。このOECD Factbook 2009による各国比較です。なお、OECD Factbook 2009では、日本の貧困率は14.93%としています。(2004年の数字かも知れません。)各国比較をグラフに書きました。

Oecdpovertyrate2007

デンマークやスウェーデンの3倍以上ですから、日本は、貧困者が多いのです。もう少し、観点を変えて、日本の14.93%が貧困層ですが、この貧困層の平均所得が真ん中の所得の人と差が幾らあるかを貧困層所得差(Povery Gap)とOECDは呼んでいます。日本の貧困層所得差は、34.7%であり、これも次のグラフのように、差が大きい方から7番目で、トップクラスです。

Oecdpovertygap2007

OECD Fact Book 2009にジニ係数もあることから、同じようにジニ係数のグラフを作成しました。

Oecdginicoef2007_2 

ジニ係数は、中間所得者を含めた全体の姿における所得格差であり、別の指数として、高所得上位10%に入るための所得金額が、低所得下位10%になってしまう人の所得金額の何倍になっているか(P90/P10)と、真ん中の所得の人の所得金額が低所得下位10%になってしまう人の所得金額の何倍になっているか(P50/P10)を表したのが次のグラフです。

Oecdinterdecile_ratio2007

比較の対象となっている国の中で、日本より所得格差が大きいのはメキシコ、トルコ、ポルトガル、米国、ポーランドの5国のみです。

3) 税制改革

所得格差を縮める一番優れた方法は税であります。高所得者から、税を徴収して、低所得者を優遇する。上の比較グラフを見ると、日本の所得税がいびつであると感じます。高所得者が優遇されていすぎるのです。1億円以上の高額所得者(収入ではなく所得です。)には、現行の最高税率を引き上げて例えば50%の税率を1億円を超える金額については適用する。

民主党政権は、子供手当支給で来年度予算が膨らんでいますが、もし半額支給するなら所得税の扶養家族控除を半額に減額して、増税を図るべきと思います。全額支給の際は、扶養家族手当を廃止すべきで、所得再配分を図っていくべき。そうしないと格差が拡大する一方と思います。租税特別措置法にも手を付けると民主党政権は言っていますが、是非証券税制を一般の所得と合算するように、証券に関する租税特別措置を廃止して欲しいと思います。そうすれば、株が値下がりして売却した場合には、所得から差し引けるので、税が安くなるし、預金の利息も租税特別措置を廃止すれば低所得者は預金で差し引かれている税が戻ってきます。それと、高額相続財産がある人の相続税の増税をすべきです。一定以上の財産を相続することに対して、現状のような低い相続税率で妥当かです。(税率を上げても税収全体に対するインパクトは小さいが、全くの不労所得ですから、一定の住居、農業を含め事業を継続する為の資産を超える相続には、相続税を課さないと不合理性が拡大すると思います。)

上の所得倍率のグラフを見て、P50/P10は一番低いのがチェコで1.74で高いのメキシコの2.86です。一方、P90/P10は、低いデンマークの2.72と高いメキシコは8.53で差が大きく、日本もP90/P10は4.77で高所得者の所得金額が非常に高いのです。貧困層の増加がある一方で、高所得者は高額の所得を楽しんでいる日本。正しい対処をしないと、1000円高速みたいに、変な結果を生み出す政策ばかりしている日本になりかねないと思いました。

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2009年10月14日 (水)

前原さん言っちゃいましたね

自公政権では、大臣がそんなことを言うはずがなかった。でも、

日経 10月13日 「羽田、国際ハブ空港に」 国交相表明、成田など活用焦点

多くの人が、誰かが言い出すと思っていたが、誰も先頭を切りたくなかった。羽田で4本目の滑走路(D滑走路)が完成し、年間の発着能力が現在の約30万回から約41万回に増えることになる2010年10月まで1年になりましたから、直前に言い出したら、混乱は更に大きかったはずで、タイミングとして丁度良かったのだろうと思います。

1) ところでどうなるか

国交省東京空港整備事務所のWeb(ホームページはここ)を見ると羽田の平成15年度離発着回数は300.1千回になっており、完成により増加可能なのは11万便である。(1時間あたりでは、現在の最大29便を41便に増加させることができる。)一方、成田空港は、成田国際空港株式会社の有価証券報告書によれば、2008年度は離発着回数191,331回でした。

現実には、新規あるいは増発の羽田乗り入れ希望国内便もあり、成田に乗り入れたがっている外国の航空会社もあると理解する。

どのように振り分けるかですが、単純なのは、滑走路により区分することです。羽田はA滑走路3,000m、B滑走路2,500m、C滑走路3,000mと工事中のD2,500mの4本であり、成田はA滑走路4,000mと延長工事中のB滑走路2,500mです。3,000mの滑走路で、離陸できる飛行機とできない飛行機と、区別されるかどうかですが、このJLのWebを見てください。これだとB747の離陸滑走距離が3,250mになっています。但し、少し古いので、このNHのWebを見てください。B777の離陸滑走距離が3,580mとなっています。なお、JLもB777を保有しています。ここには離陸滑走距離が書かれていませんでしたが、離陸に関する性能は同じと考えてください。

ところで、B747やB777の場合に、3,000mはダメで、3,500mや4,000mの滑走路が必要かというと、3,580mの滑走距離になるのは、例えばロンドンやニューヨークに飛ぶ時で、シンガポール程度なら燃料積み込み量が55トン程度少なくて済み、機体が軽くなるので、滑走距離は2,500mでも大丈夫となります。従い、滑走路が3,000mあれば、アジアには大丈夫で、オーストラリアやインドも大丈夫と思います。米国西海岸あたりだとは微妙ではないかと思います。

飛行機の性能が関係するので、政治的に変えようとしても変わらない部分です。

2) 羽田と成田

羽田に、それほど多くの国際線が移るかというと、羽田の国際線ターミナルはそれほど大きくはなく、余り多くは移らない気がします。現在の最大の不便さは、羽田と成田の間の移動です。ところで、同じように2010年度完成を目指して成田新高速鉄道が工事中です。(ホームページはここ)最高160km/hで走り、都心と36分で結ぶと言うのです。この都心とは、どこかですが、京成上野又は日暮里です。現在の北総線が空港に延長され、京成が走るのですが、それなら、押上から地下鉄に入れば、京急と連絡され、成田ー羽田が1本の鉄道で乗り換えなしに、高速・短時間で繋げるべきと思います。

成田は、国内線がほとんどなく、地方と外国の間は羽田と成田を使うと、とても不便です。羽田・成田高速鉄道を実現するのが良いと思います。

3) 千葉県問題

千葉県知事や成田市長は、おさまりません。対立は、良くないのです。それでなくとも、成田問題こそ、対立の歴史であったのですから。羽田と千葉県は無縁ではありません。羽田空港に着陸する際に、否が応でも千葉県の上空を3000ftから6000ftで飛ばざるを得ないことが多いのです。深夜便は、東京湾沿いになんとか、海の上を飛んで着陸する計画ですが、風向きの都合で、千葉県上空に入らざるを得ないかも知れない。

対立する必要もないので、話をすれば解決すると思います。

4) 関空問題

関空は、A滑走路3,500mとB滑走路4,000mですから、実はハブ空港として日本で最も好都合な空港です。この滑走路を生かせるかどうかは、関空の経営力なのでしょう。

どうすればよいか。簡単です、日本唯一の東アジアのハブ空港として売り出すのです。その為には、大阪空港(伊丹)を閉鎖して、関空に人が集まるようにする。大阪空港が、存続している理由は、エゴでしかなく、もし存続するなら大阪府に税金の負担を願う。なお、関空の2008年度の離発着回数128千回でした。

どちらにせよ、大阪府が経営をすればよいのであり、前原さんが突き放したのも正しかったのかと思います。大阪府が関空をハブ空港として経営できるか、府税を投入し続けるか、興味があります。

5) 地方空港のハブ選び

地方空港は、インチョンをハブ空港として考えるべきとの気がします。インチョン空港は3,750mが2本と4000mの合計3本の滑走路を持っています。富士山静岡空港も、インチョンに1日2便ですから。それに、富士山静岡空港は、新幹線の線路の上にありますから、静岡県が新幹線駅を建設し、JR東海に「こだま」を止めてもらったら、新幹線と空港とその先のハブ空港に繋がります。現実に財務的に成り立つかどうか検討が必要ですが、地方空港は地方空港としての身の振り方を決めて行かざるを得ないと思います。

所詮、政府なんて信頼できないですから。無理筋は、政権が変われば、反故にされると思った方がよいのです。次の地図は、富士山静岡空港が新幹線の上にあることを示しています。

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2009年10月12日 (月)

市町村合併の評価

この記事も読んでいて、興味があります。

河北新報 10月12日 平成の大合併 成果期待外れ7割 宮城県内35市町村

河北新報が、宮城県で平成の大合併があった県内35市町村の議員と合併の議決に参加した元議員を対象にアンケートを実施したのです。

合併してよかったかについて、現職議員は「そう思う」が57.8%、元議員は「そう思わない」が56.0%というのは、自分の今のポジションの影響があるのかなと思いました。

でも、合併前に期待した以上の成果が上がっているかについては、議員、元議員ともに否定的な回答が多く、元議員は「成果が上がっていない」が82.7%に上ったと書かれています。

三位一体の改革という変な運動で、合併すれば、合併特例債が発行でき、償還については元利とも30%だけすればよいと言う、政府から金がもらえるバラマキ政策で平成の大合併が推進されました。バラマキをもらっても、「そう思わない」と「成果が上がっていない」が多くあり、適正な合併効果を検証する必要があると思いました。

地方政治の良さは、市民・住民が直接参加できるようなきめの細かい地方政治を実現できることと思います。合併して、大きくなれば、きめの細かさは、どう考えても失われると思うのです。でも、最終的な選択は、そこに住んでいる市民・住民の方々で、その決定を尊重する必要があると思います。

多くの市町村が一つになる合併もありました。宮城県では、栗原市は迫町、鶯沢町、金成町、栗駒町、志波姫町、瀬峰町、高清水町、築館町、若柳町、花山村の10町村の合併でした。

合併の議決に参加した議員・元議員の方々は、多くのことを体験しておられるのであり、将来のために、ご自分の意見を幅広く是非公表をお願いしたいと思います。Webやブログがあり、自費出版より費用が安くすむ方法もあることですから。

河北新報に、「詳報を14日付から掲載します」との文章があり、楽しみにします。なお、道州制なんて、意味があるのだろうかと思います。この観点でも、考えてみたいと思います。

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岡田外相アフガニスタン訪問

どのマスコミも、これを報じています。参考として、読売。

読売 10月12日 岡田外相、アフガン民生支援強化…大統領に表明

この関連で現実のある側面を一番率直に述べているのが、「パキスタン在住30数年のオバハンが、気まぐれにお届けいたします!」と紹介がある「オバハンからの気まぐれブログ」と思います。紹介します。

オバハンからの気まぐれブログ  パキスタン軍による「核兵器の管理」

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広島市と長崎市による2020年オリンピック招致検討委員会

広島市と長崎市の市長が、広島市役所で記者会見して、発表しました。どのような発表であったかは、広島の地方紙中国新聞が一番正確なはずと、中国新聞を掲げます。

中国新聞 10月12日 20年五輪招致検討委を設置へ

2020年のオリンピックの招致検討委員会を近く設置すると発表し、その理由は、。平和の祭典であるオリンピックの被爆地開催の意義を前面に掲げ、両市を中心にした複数都市での開催の可能性を探るためです。

1) 招致運動と開催の意義

あると思います。今に至るも、核兵器は2都市にしか使用されていませんから。その2都市が、核兵器のない世界をオリンピックの招致運動をすることにより、また、開催が決定すれば、オリンピックの開催と併行して世界に訴える。

核兵器廃絶は容易ではないと思うし、様々な意見が、存在する。世界で、色々な意見で議論されることもよいと思います。碑文の「過ちは繰返しませぬから」の議論も生じるかも知れません。私には、主語は「私たちは」です。碑文を読んだ全ての人であり、日本人も、米国人も、それ以外の人もです。

ポツダム宣言を即座に受諾していれば・・・、軍事目標を狙ったのではなく一般市民の大量殺戮・・・・、それ以上の犠牲者が出ることを防いだ・・・、1945年7月16日ニューメキシコ州での原爆実験(The Trinity Test)成功について日本は知らなかったであろうが、マンハッタン計画で原爆を開発中であることを日本は知っていたはず・・・・、1945年6月の沖縄戦終結(硫黄島玉砕は3月17日、戦艦大和撃沈は4月7日)以降は、日本の指導者層は敗戦を考えていたはず・・・・   様々あると思います。現代的な観点では、核不拡散条約による5国の核保有特権はいつまで続けるべきか・・・、テロリストが核兵器を保有する可能性・・・   勿論、原子力発電やプルトニウム問題もあります。ふたをせずに、情報を出し合って、議論することが重要と思います。

広島・長崎オリンピックは、開催できなくても、招致運動で、核廃絶を訴えるだけでも、意義があるように思います。

2) 招致運動費用と開催費用

2016年東京オリンピック招致運動に東京都は、寄附で集めた50億円と税金100億円を支出したと思うのですが、こんな巨額の金額を負担できるのは、東京都だから可能であったと思います。同じ、2016年オリンピックに立候補したシカゴは、招致運動から開催まで含め、一切税金を使わないと宣言していたと理解します。

商業主義との批判は、あるでしょうが、税金を使わないことも、正しいと思います。寄附とボランティアにより開催するのは、ダメでしょうか?寄附をする企業は、スポンサーとして名前を出して、広告宣伝費相当額を寄附しているだけとの考えるべきかも知れません。しかし、核廃絶を目指す広島・長崎オリンピックに賛同して寄附をすることも、美しいと思います。

東京都みたいに、模型を作ったりと、無駄使いをせずに、ボランティアに依存したりすれば、招致費用は極力安く抑えることも可能と思います。東京都と異なりネームバリュー抜群の広島・長崎ですから、費用を抑え、市民からの税金を使わない招致運動を目指して欲しいと思います。

<追記>

広島・長崎両市の発表の背景には、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞決定があったとおもいます。米国大使館のWebに、オバマ大統領の2009年4月5日のプラハ演説の仮翻訳日本語版が出ていましたので、紹介します。

オバマ大統領の2009年4月5日のプラハ演説の仮翻訳 (英文はこちら

道は、決して平坦ではなく、演説の中で具体的に触れられているのは包括的核実験禁止条約(Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty - CTBT)の米国の批准を積極的に推しすすめることです。CTBTの批准すら米国はしていなかった。共和党は、反対しており、ブッシュ政権下では批准は望み薄であったという現実です。ただし、今でも中国は批准をしておらず、インドやパキスタンは署名すらしていない。ロシアは、2000年6月に批准をしています。(各国の署名、批准の状況はここにあります。)

そんな現実ですが、現実を一歩でも前進すべく努力をすることは重要であり、演説では「米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします。(So today, I state clearly and with conviction America's commitment to seek the peace and security of a world without nuclear weapons. )」であり、私は支持をするし、歓迎します。

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2009年10月10日 (土)

橋下知事メール事件(紀の川大堰)

このニュースは、私には、どう考えても、大阪府職員の方が正しく、知事をリコールするのが正当に思えます。

朝日 関西 「物言いが非常識だ」橋下氏、職員の反論メールに激怒

Fifty(J-CAST)ニュースに、詳しく出ていました。

Fityニュース 10月9日 橋下知事に「『お前』メール」 府職員に100人もいる!

1) 知事の対応

知事は、処分を検討するように指示したとのことですが、明らかに行き過ぎであり、不当行為であります。何らかの処分を知事がするなら、この職員は裁判で戦って欲しいと思います。アホ弁護士の知事だから、裁判すれば、勝てると思います。光市事件弁護団も勝っています。(参考)そして、大阪府民には、知事のリコールに動いて欲しいと思います。これぐらいやったって、知事を首にならないとか、弁護士資格を剥奪されないなんて考えるのは、酷いと思います。

民間企業であれば、こんな上司は直ぐに左遷です。民間企業に勤めたことがない知事は、無茶苦茶言っております。民間企業なら、もっとも重要なことは、お互いの信頼関係です。役所でも、全く同様です。

約380億円の大阪府の税金が無駄になることについては、府民に説明すべきであり、職員に当たり散らして、方向がまるで違います。もっとも、他にも変なタレント知事が、どっさり存在しますが、タレント知事がバカなことをすれば、リコールをしたい。

2) 紀の川大堰

Yahoo地図で示します。和歌山市内で、紀ノ川の河口から6km程あがったあたりで、JR阪和線の橋梁の少し下流です。

堰とダムの違いは、本質は同じで、建設地箇所が下流であって、高さが低く、多くの場合は、取水をする箇所に設置されているのが、堰です。

平成21年度末の完成予定ですが、本体は完成しており、使っています。ここが国土交通省和歌山河川国道事務所のホームページで、その事業の経緯に、「平成16年10月 試験湛水実施・暫定運用開始(継続中)」と書いてあります。残っているあるいは施工中の工事は、河道の掘削や、JR橋梁の架替など関連工事です。

国交省のWebでは確認できていませんが、報道にある総事業費1028億円の大部分は支出済みと思います。完成してから、大阪府は、不要ですと手のひらを返したと言うわけです。しかも、自分の川の水ではない、隣の和歌山県の水を頂くプロジェクトです。国土交通省和歌山河川国道事務所のこのページには、「しかし近年、渇水が頻発しており、平成2年、6年、7年とあいついで発生した渇水では深刻な水不足が生じました。特に平成6年の渇水では海南市域で断水が生じるなど、国民生活及び社会経済活動に甚大な影響を及ぼしています。」だから、紀の川大堰が必要で、貢献すると書いてあります。和歌山県に、水が余っているわけではないのです。大阪府に回すより、川の水は下流に流すのが自然の姿です。和歌山市や海南市の紀ノ川の水を昔から使っておられた人々が、川の水を使用する権利を保有しているのです。

知事は、大阪府民のみならず、和歌山県民にも深く頭を下げるべきです。そして、国交省の事業ですから、政府の税金が投入されています。日本国民全員に頭を下げるべきです。

まるで、方向が違っているアホ知事の見本。でも、他府県の人は、リコールができないから悲しいです。

追記

上のYahoo地図で、航空写真を選び、縮尺を拡大していくと、完成している紀の川大堰を見ることができます。完成している公共事業への参加中止の問題も含め、大型公共事業の進め方について、これを機会に検討をすべきだと思います。そのような調査を実施し、報告書を公開すべきと思います。運輸事故調査委員会のように事故だけが対象ではなく、公共工事を国民の為に進めるための監視機関の必要性を感じます。

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2009年10月 9日 (金)

台風18号とダム貯水

10月7日に八ッ場ダムなくても心配ありませんを書きましたので、台風18号が通り過ぎた後の、報告です。

台風18号は余り雨は強くなかったようですが、それでも利根川のダムには、ある程度の貯水がされたと言うべきか、ダムで流量を調節して河川水を受け止めています。次の表に、10月7日午前0時と10月8日夜23時のダムの貯水量の対比を書きました。

Tonedam2009108

調節水量は34百万立方メートルでした。従い、八ッ場ダムの65百万立方メートルの洪水調節容量はやはり結構大きな数字です。本当に必要なのかな?政府の説明を、聞かねばなりません。

今年は、もうこれ以上大きな台風は来ないだろうと思うのですが。最近の例で、利根川のダムで洪水調節の幅が大きかったのが、丁度3年前の10月6日から9日にかけての豪雨でした。(参考

その時の利根川のダムの貯水量を書いたのが次の表です。

Tonedam200610

3日間で70百万立方メートルを調整しました。この時で、10ダム合計70百万ですから、八ッ場ダムの65百万は、驚異的に大きな数字です。なお、五十里ダムが、5百万立方メートルのマイナスになっているのですが、変なことをしたのではなく、次のグラフを見れば分かります。特定の時間で比較しているから、マイナスになってしまったのです。

Ikaridam200610

過去のデータにあたれば、あたるほど、八ッ場ダムの必要性に疑問が深まります。疑問を解く分析をした報告書の公開を望みます。

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2009年10月 7日 (水)

光市母子殺人事件実名表記本の出版(その2)

不思議な事件でして~!

著者の増田美智子さんという方は、以前から、色々書かれておられたのですね。JanJanニュースに増田美智子さんの署名記事がありました。彼女の記事について、もめ事があったのでしょうか?

JanJanニュース 2007/01/14 鳥越俊太郎さん、しっかりしてください

出版元インシデンツについてですが、同社の代表寺沢氏について、この人かどうか確信はありませんが、Wikiで引くとこのページのが出てきました。

私が言えることは、表現や言論・出版の自由は重要であることです。この事件については、もう少し見ていきましょう。

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光市母子殺人事件実名表記本の出版

検索ワードによると、このブログの9月26日の光市母子殺人事件少年容疑者実名表記の出版が多くの人に読まれているようで、少し事情が変わっているようなので、追記します。現状については、次の朝日の記事が、実態を報道していると思いました。

朝日 10月7日 光母子殺害実名本、弁護団「約束違う」著者「本人OK」

実名を出すことについて、弁護士は、承諾していないと述べており、著者は了解を取り付けているとしており、食い違っています。

私は、双方とも本当のことを述べていると思います。著者に対しては、当時はそう述べたのであろうし、現在は実名出版を取りやめて欲しいと思ってるのでしょう。

9月26日のブログで、私は「本人が実名で本が出版されることに同意しているなら」と前提を書いたのですが、現状では、この前提は崩れていると考えるべきと思いました。勿論、本当はどうかと争ってもよいのかしれませんが、弁護士が代理人としての行為をしていると考えるだけではなく、争っても無駄なだけであり、おそらく少年の利益にはならないだろうと思うからです。

印刷を再度行い、実名部分を「光市少年A」とでもすれば、解決すると思うのです。これで、本を購入して読む人が当初予定した以上に増え、著者の目的は達成されると思います。言論出版の自由も確保される。少年法第61条については、既に報道で光市事件の少年と言う言葉は完全に出ています。報道され多くの人が周知している情報で特定することは、少年法第61条の問題もないと考えます。

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八ッ場ダムなくても心配ありません

但し、台風18号の話です。将来の話は、データに基づく分析が必要です。次の読売の記事のように、台風18号による豪雨と洪水が心配されているので、八ッ場ダムが今回の洪水対応に必要かを考えてみました。

読売 10月6日 台風18号、非常に強い勢力保ち8日上陸の恐れ

心配がないとした根拠は、8月25日の八ッ場ダムを考えるに書いた利根川水系10ダムの現在の貯水水位と貯水量を調べ、満水までの余裕貯水量をチェックしました。その結果は、次の表の通りです。(10月7日午前0時現在)

Tonedam200910

4億3千万立方メートルの余裕があるのです。八ッ場ダムの洪水調節能力が6千5百万立方メートルですから、その6.6倍の洪水調節能力が利根川に関しては、10ダムにより存在しています。

もっとも、吾妻川には、ダムがないので、吾妻川に大雨が降ったらどうなるかですが、他の利根川本流、奈良俣川、神流川、鬼怒川等でも全く降らないわけはないのであり、吾妻川により多く降水があった時は、他の川のダムからの放水量を小さくし、吾妻川から大量の雨水が流れてきても河川水位が堤防を超えたりしないように、他の川の流量を調整することで対応が可能です。

利根川10ダムでも、この時期における貯水量が、今年は多少少なくなっていました。従い、台風の大雨に対しては、万全に近い状態にあります。データで示す以上の保証はできませんが、どうぞご安心ください。なお、今年に関して貯水量が少し小さくなっていたのは、大雨台風を予想して国交省の河川事務所がコントロールをしていたのかどうかについて、私は分かっていません。そうかも知れませんし。何とも言えません。言えることは、ダムも使い方によっては、充分役に立ちますということです。

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2009年10月 3日 (土)

谷垣自民総裁の八ッ場ダム発言と対応

10月2日に谷垣自民総裁は、八ッ場ダムの現地を訪れ、意見交換会を持たれましたが、八ッ場ダムを大規模公共工事のありかたについての具体例として、国会他で、民主党と議論をして頂きたいと思っています。上毛新聞の記事を掲げます。

上毛新聞 10月3日 八ツ場視察で自民・谷垣総裁「手続きに瑕疵」

1) ふがいない選挙(政策)

地元住民に対して「皆さんが(ダム中止を)心配している原因は、我々がふがいなく選挙で政権交代を許したから。まことに申し訳ない」と陳謝した。

と谷垣総裁は、述べられてたと報じられています。正確には、政策に問題があったから、選挙に負けたのであり、政策について見直しを図らないといけないと思うのです。もっとも、そこを、谷垣総裁は選挙と表面の結果を先ずは表現して、原因については、言及しなかっただけと思いますが。

2) データを基に議論

何十年も前の計画を前提にすることは、間違いであると確信します。必要かどうか、有効かどうか、他の代案との比較はどうか等を十分に行って、実施、中止、凍結、変更、見直し等を常に行うべきです。

谷垣総裁は意見交換後、記者団から八ツ場ダムの必要性についての認識を問われ「(自民党が進めてきた)今までの治水、利水計画の考え方に合理性、根拠があると思っている」とする一方、「治水、利水の必要性のデータを集め、議論しなければいけない」とも語った。

と、谷垣総裁は、意見交換後の記者会見で発言したとあります。是非合理性とその根拠を国民に示し、どうどうと議論をお願いしたいと思います。谷垣さん!頑張ってください。

以前、長野県で田中康夫氏は、知事として「脱ダム宣言」をし、長野県が実施主体であるダムについては、一時的にストップしました。田中康夫氏の主張する森林の保全・緑のダムは正しいと思います。しかし、緑のダムも万能ではなく、ダムと組み合わせることにより、効果が大きくなると考えます。ダムは、理念によって、建設したり、しなかったりでは、おかしいのです。合理性かあるかどうかという正しい議論をすべきです。

民主党は、多くの必要なデータを開示し、正しい議論を、これからしてくれると期待します。もし、そうではなく、民主党が議論もせずに中止であれば、自民党が頑張らねばならないし、データを開示し、議論をするように動かすのも野党としての重要な役割です。

どうか、谷垣さん頑張ってください。

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2009年10月 2日 (金)

鞆の浦埋め立て架橋差し止め判決

鞆の浦における広島県による埋め立てと架橋について裁判で争われているのを知らなかったのですが、考えさせられる出来事と思いました。読売の記事を掲げます。

読売 10月1日 ポニョの「鞆の浦」工事差し止め…景観保護優先

1) 鞆の浦埋め立て架橋工事

Yahoo地図を掲げます。

地図の中央が鞆の浦の湾で、左に県道47号が湾で切れており、一方湾の右では県道22号が切れているのが見えます。この47号と22号を橋を架けて結び、47号の湾側は埋め立ても行おうという計画です。

橋を架けない場合は、湾を迂回することになるが、多くの人家があり、困難であり、遠くを迂回するにはトンネル工事が必要となる。だから、都市計画としては、埋め立てと架橋がごく自然に出てくるアイデアであり、地元の人でも、道路が完成して便利になることを願っている人も多いと思います。

2) 文化遺産・自然遺産

文化遺産・自然遺産とは、ユネスコの世界遺産に関する条約である「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」からの言葉です。

条約は、1972年の第17回ユネスコ総会で採択され、1975年に発効し、日本は1992年に批准をしています。世界遺産条約は、ここ(英語) ここ(日本語訳)にありますが、その第1条が、文化遺産(cultural heritage)の定義であり、第2条が自然遺産(natural heritage)の定義です。第3条に、何が文化遺産であり、何が自然遺産であるかを認定し及びその区域を定めること(identify and delineate)は、締約国の役割であるとしています。

実は、日本にユネスコの世界遺産は、そんなに多くないのです。世界では、現在890あるのですが、そのうち日本は14です。一番多いのはイタリアで44です。ちなみに、アジアで多いのは、中国の38とインドの27です。

鞆の浦は、ユネスコ世界遺産にはなっていません。しかし、同等の価値があれば、あるいは、次世代に受け継いでいくべき遺産であるなら、守っていくべきです。それは、条約があるなしではなく、人間社会の価値観であり、人としての義務だと思います。

3) 遺産の価値判断

鞆の浦は、誰の物なのでしょう?冒頭の読売の記事には、「原告159人のうち、地元の鞆地区から転居するなどした19人については訴えを却下した。」とあるのですが、地元に住んでいないと権利がないのでしょうか?価値ある遺産は、人類共通の遺産であっては、ならないのでしょうか?

そんな観点での決議が、ICOMOS( International Council on Monuments and Sites )の2008年10月の16回総会決議で、鞆の浦に関しては4ページ目に「埋め立てと架橋の中止の要請」が書かれています。(Resolutionは、続きを読むに入れておきます。)世界遺産条約第8条では、世界遺産委員会の会議にはICOMOSからも一人出席することが書かれています。ICOMOSが、鞆の浦に関して、どのような評価をしたか等の詳細は、日本イコモス第6小委員会のこのWebからダウンロードできます。

やはりトンネル案が書かれています。安易な文化遺産・自然遺産の破壊は慎むべきでしょうね。価値は、決して地元の人達だけに属するのではなく、多くの人に帰属する。従い、文化遺産・自然遺産の保存により地元の人達が不利益を受けるのであれば、それは社会が補償すべきと考えます。

4) 黒部ダムはどうするか

9月23日に高熱隧道(黒部第三発電所)を書きましたが、その上流にある黒部ダムは、黒部川の下廊下約7kmが失われ、自然が破壊されました。ダム屋から見れば、ダムの理想の地点とは、自然保護の観点からは、大規模破壊でしかなかった。

勿論、当時の価値観からすれば、自然保護は現在より価値がなかったのであり、それを現在の価値観で議論することは誤りです。但し、現在であれば、実現不可能なプロジェクトであったと私は思います。現在なら、黒部第三発電所の仙人ダムようにもっと小さいダムを建設したりし、黒部第四発電所がもっているピーク発電やアンシラリー・サービス機能は別途揚水発電所を作り、自然保護に努めたと思います。

黒部の太陽という映画は、黒部ダムの工事用機械を運搬するためのトンネル掘りの話を話題にしました。実は、難工事ではなかったも言えます。即ち、黒部ダムを、現在の場所に建設したのは、大町からたやすくトンネルを掘れるからでした。破砕帯にぶつかったが、グラウト(薬液)注入で対処可能なことでしたから、高熱隧道とはレベルが違うと私は思います。それが証拠に、ほぼ工期通りに完成したと理解します。

たまたま黒部ダムを言いましたが、時としてダムは大きな自然破壊であり、黒部ダムの場合は、国立公園の中で、しかもトラックが通れる道路がない箇所に無理矢理建設したダムだから自然破壊の度合いでは、極めて大きいと思うので例にあげました。

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