所得格差の拡大
次の報道からです。
読売 10月20日 日本の「貧困率」15・7%、OECD中4位
1) 貧困者は増加している
上の読売の記事よりは、この厚生労働省のグラフがよく判るのですが、1998年の貧困率は14.6%であったのが、2001年に15.3%となり、2004年は14.9%に下がったものの、2007年は15.7%と右肩上がりです。貧困者とは、所得を低い者から並べて真ん中の者の50%の所得以下である者としています。所得とは、税引後、社会保険負担差し引き後であり、年金を受給している場合は、年金も所得に加え、生活保護費も所得としています。これらを世帯単位でカウントして、その上で世帯の人数の平方根で割り算をした金額です。4人家族で100の所得は、一人あたり50とし、5人家族であれば44.7であり、3年家族であれば57.7です。
2) 各国比較
OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics - ISBN 92-64-05604-1 がここからDownloadできます。このOECD Factbook 2009による各国比較です。なお、OECD Factbook 2009では、日本の貧困率は14.93%としています。(2004年の数字かも知れません。)各国比較をグラフに書きました。
デンマークやスウェーデンの3倍以上ですから、日本は、貧困者が多いのです。もう少し、観点を変えて、日本の14.93%が貧困層ですが、この貧困層の平均所得が真ん中の所得の人と差が幾らあるかを貧困層所得差(Povery Gap)とOECDは呼んでいます。日本の貧困層所得差は、34.7%であり、これも次のグラフのように、差が大きい方から7番目で、トップクラスです。
OECD Fact Book 2009にジニ係数もあることから、同じようにジニ係数のグラフを作成しました。
ジニ係数は、中間所得者を含めた全体の姿における所得格差であり、別の指数として、高所得上位10%に入るための所得金額が、低所得下位10%になってしまう人の所得金額の何倍になっているか(P90/P10)と、真ん中の所得の人の所得金額が低所得下位10%になってしまう人の所得金額の何倍になっているか(P50/P10)を表したのが次のグラフです。
比較の対象となっている国の中で、日本より所得格差が大きいのはメキシコ、トルコ、ポルトガル、米国、ポーランドの5国のみです。
3) 税制改革
所得格差を縮める一番優れた方法は税であります。高所得者から、税を徴収して、低所得者を優遇する。上の比較グラフを見ると、日本の所得税がいびつであると感じます。高所得者が優遇されていすぎるのです。1億円以上の高額所得者(収入ではなく所得です。)には、現行の最高税率を引き上げて例えば50%の税率を1億円を超える金額については適用する。
民主党政権は、子供手当支給で来年度予算が膨らんでいますが、もし半額支給するなら所得税の扶養家族控除を半額に減額して、増税を図るべきと思います。全額支給の際は、扶養家族手当を廃止すべきで、所得再配分を図っていくべき。そうしないと格差が拡大する一方と思います。租税特別措置法にも手を付けると民主党政権は言っていますが、是非証券税制を一般の所得と合算するように、証券に関する租税特別措置を廃止して欲しいと思います。そうすれば、株が値下がりして売却した場合には、所得から差し引けるので、税が安くなるし、預金の利息も租税特別措置を廃止すれば低所得者は預金で差し引かれている税が戻ってきます。それと、高額相続財産がある人の相続税の増税をすべきです。一定以上の財産を相続することに対して、現状のような低い相続税率で妥当かです。(税率を上げても税収全体に対するインパクトは小さいが、全くの不労所得ですから、一定の住居、農業を含め事業を継続する為の資産を超える相続には、相続税を課さないと不合理性が拡大すると思います。)
上の所得倍率のグラフを見て、P50/P10は一番低いのがチェコで1.74で高いのメキシコの2.86です。一方、P90/P10は、低いデンマークの2.72と高いメキシコは8.53で差が大きく、日本もP90/P10は4.77で高所得者の所得金額が非常に高いのです。貧困層の増加がある一方で、高所得者は高額の所得を楽しんでいる日本。正しい対処をしないと、1000円高速みたいに、変な結果を生み出す政策ばかりしている日本になりかねないと思いました。
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