外国為替レートと日本経済
27日の米ドルは一時的に84円82銭までの円高になりました。
外国為替と日本経済について考えてみます。
1) 本当に円高?
米ドル安の可能性があるわけで、それをチェックするには、他の通貨と併せて見る必要があり、2008年12月1日からの主要通貨の為替レートをグラフにしました。
2009年1月頃は、ユーロや英ポンドも安くなったが、2009年5月以降は米ドルのみが安くなった感があります。今度は、新興国通貨も加えて、10通貨を対象に為替レートの推移を見ることとしますが、2008年12月1日を1.0としてグラフを書きました。円との為替レートで現しており、1.0より大きい場合は、その通貨高(円安)としています。
10通貨を比較すると、例外的動きがロシア・ルーブルです。一方、最も強い通貨と言えるのが、ブラジル・リアルです。上の2つのグラフからは、円高と言うより、やはり米ドル安と思います。11月になってからは、10通貨比較グラフでも、ほぼ全ての通貨で右下下がりになっているので、円高傾向にはなっています。
10通貨比較グラフでのもう一つの重要なポイントは、米ドルと人民元が重なっていることです。中国当局が、完全に外国為替を米ドルで固定していると考えます。米ドルと人民元のみをグラフにすると次のようになりました。
2) 日本経済への影響
今の日本の最大の輸入品原産国は中国であり、中国と米国を合算すると2008年で輸入のうち29%、輸出のうち33%を占めます。次のグラフを見てください。
米国向けの輸出は、自動車が一番多く、落ち込むでしょうね。中国向け輸出は、人民元が米ドルに固定となっているため、中国からの輸出はあまり変化が起こらないように思います。そうなると、日本から中国向けもそう大きな変化はなく、金額的には増加する可能性さえあると思います。日本の輸出先の2位から7位まで今やアジアですから。成長・発展するアジアに対する輸出は、そう大きく落ち込まないと思います。それだけの活力あるマーケットと思います。
日本経済への影響はむしろ輸入であるように思います。中国品が更に安く入ってきます。消費者は、喜ぶかも知れない。しかし、結果的には、農産物、食料、衣料等が更に安くなる。結果として、農家や地方の産業にボディーブロー的ダメージが行くことを懸念します。今だって、高齢の年金受給者が従事している、あるいは、規模拡大して何とかギリギリで維持している農業が本当に立ちゆかなくなる懸念を持ちます。それが、これから工業製品にも少しずつ広がる可能性もあります。日本製電化製品は、ほとんどなくなったりして。日本は、心臓部品の製造と、新規製品の開発だけになるような気がします。
恐ろしい時代がやってこようとしているのでしょうか?少し前の「上げ潮派」の発想からすれば、中国躍進まっしぐらみたいであり、民主党の農業戸別保証金制度では、財源があっという間になくなるだけで、構造改革は何も進まない可能性もありますから。
そんな日本をどうするのか悩みます。観点を変えて、中国の対米輸出は、金額で日本の対米輸出の2倍以上です。米中の結びつきは、無視できない大きさになっています。日本の、対米オンリーで考えてきたやり方を、アジア・太平洋という大きな地域の中で、日本の役割は何であり、日本はどのような産業を伸ばして行くべきかを考える必要があると思います。
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