OECD諸国との比較 : 医療、医療費、医療保険を考える(その5)
今回は、医療費をOECD諸国と比較します。
1) 順位
先ずは、最もポピュラーな表から始めます。医療費の対GDP比の順位です。
日本は、医療費の負担が低い国です。なお、医療、医療費、医療保険を考える(その2)で掲げたグラフから読み取ると、2007年の日本の医療費は、GDP比7%に達していません。一方、上のグラフを書いたOECDの源データは、8.1%であり、OECDの数字が大きいのです。この差は、5兆円強であり、理由はOECDのSHA(System of Health Accounts)は、介護の分野、人間ドックや予防接種のような予防医療、政府の行政費用も含んでおり、範囲が広いためです。日本の厚生労働省の数字は、医療保険行政のための基礎資料であり、他国との比較を目的としていません。
国により制度が違い、統計の取り方も異なるので、国際比較は容易ではないのですが、OECDの統計であり、あまり細かい数字を取りだしても意味はないと思いますが、信頼しうる結果と考えます。(なお、2007年についてOECD数字がない国があり、日本、ルクセンブルグ、ポルトガルは2006年、トルコは2005年の数字を使用しました。)
一人当たり医療費の順位も掲げます。購買力平価による米ドル換算です。
2) 費用と効果
比較をするなら費用だけではなく、その効果も併せて評価する必要があります。次のグラフは、横軸に各国の一人当たりの医療費(米ドル購買力平価PPP)、そして縦軸にその国の平均寿命(ゼロ歳の平均余命)を散布図として作成しました。
この散布図では、上に行くほど、平均寿命が長く、医療の成績がよいことを示し、右に行くほど、医療費が多いことを示しています。低い費用で、最も効果がよいのが日本。逆に、費用は多額にも拘わらず、成績はもう一つというのが米国です。中央で楕円で囲んだ国々が、最も集中している、部分です。
なお、上の散布図は、購買力平価PPPを使用したので、為替レートで直接換算した米ドルによる医療費を使用した散布図も以下に掲げておきます。
物価の高いノルウェーは、一人当たり医療費が米国を追い抜きましたが、GDP比では8.9%であり、米国の16.0%より相当に低い割合です。全体の傾向としては、ほとんど変わりはないと言ってよいと思います。
とりあえず、今回はここまでとします。次回は、何故米国の医療費は高いのかについて少し考えてみます。
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