小沢幹事長問題の本質
報道は、民主党小沢幹事長問題で、にぎわっていますが、政治資金収支報告書の記載や会計処理ではなく、法人や組合等(解散した政党も含め)からの政治資金問題であり、それとともに政党助成金の問題であると思います。
1) 米国1月21日最高裁判決
米国を賑わせている最高裁判決が1月21日にありました。
判決文は、ここにあり、183ページもあり、相当長い文章です。事件は、Citizens UnitedというNPOが現国務長官ヒラリー・クリントン氏の民主党予備選に関する反対キャンペーンのドキュメンタリー・ビデオを作成し2008年1月に公開しようとしました。そこで、2007年12月に連邦選挙委員会(Federal Election Commission)に申請し、法廷(District Court)でも争われたが、公開は、「政治資金規正に関する連邦法が、企業および団体が一般会計からの選挙広告への資金支出を禁じている」ことに抵触するとして、認められませんでした。
このことが最高裁まで争われていたのですが、最高裁は5対4で意見が分かれたが、企業および団体が一般会計からの選挙広告への資金支出禁止が憲法違反としました。判決文は長く、しかも米国の政治資金規正に関連する法も知らないと理解に苦労するのですが、こんな感じの判決と思います。
2) NY Timesの社説
ここにNew York Timesの1月21日の社説The Court’s Blow to Democracyがありますが、この最高裁判決に対しては、厳しく非難をしています。例えば、次のような文章があります。
The founders of this nation warned about the dangers of corporate influence. The Constitution they wrote mentions many things and assigns them rights and protections — the people, militias, the press, religions. But it does not mention corporations. <参考訳>合衆国の創設者達は企業による影響の危険性を知っていた。彼らが書いた憲法は、国民、民兵、出版、宗教等についての権利や保護に関して多くのことを定めた。しかし、企業に関しては何も定めなかった。 |
The majority also makes the nonsensical claim that, unlike campaign contributions, which are still prohibited, independent expenditures by corporations “do not give rise to corruption or the appearance of corruption.” If Wall Street bankers told members of Congress that they would spend millions of dollars to defeat anyone who opposed their bailout, and then did so, it would certainly look corrupt. <参考訳>最高裁の多数意見は、大きな間違いを犯している。企業による選挙資金協力(現状では禁止されているが)は、汚職・贈収賄に繋がるわけではないと言っている。しかし、ウォールストリートのバンカーが銀行救済法案に反対する議員を排除すべく巨額の政治資金を拠出するとすれば、それは汚職・贈収賄以外に何ものでもないはずである。 |
NY Timesの社説は、正しいことを述べていると思います。なお、米国の政治資金規正では、企業・団体であっても、一般会計とは別に選挙会計を設けて、定められた条件で運用されている選挙会計からの政治資金拠出は認められていると理解します。
3) 日本の政治資金規正
小沢幹事長問題は、政治資金問題であり、企業および団体からの政治資金を禁止しないと解決にならないと思います。民主党は、直ちに企業・団体の政治資金禁止法案を作成すべきです。それができるかどうかが、民主党が価値あるかどうかの分かれ目と思います。労働組合からの資金協力が欲しければ、組合費からの資金協力ではなく、組合が別途とりまとめた個人の献金を受領すればよいのです。
ついでに言えば、政党助成金は廃止し、議員個人に対する支援にすべきです。政党助成金と小選挙区により政党のボスの権力は大きくなり、独裁政治がはびこる気がします。民主党が言うような比例定数削減には大反対をします。
報道は、民主党小沢幹事長問題で、にぎわっていますが、政治資金収支報告書の記載や会計処理ではなく、法人や組合等(解散した政党も含め)からの政治資金問題であり、それとともに政党助成金の問題であると思います。
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