日本経済の成長戦略
あけまして、おめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
年頭は、日本経済の成長について考えるのが、ふさわしい気がしました。
政府は、12月30日の臨時閣議で、「新成長戦略(基本方針)」~輝きのある日本へ~を決定しました。「新成長戦略(基本方針)」の閣議決定及びポイントはこの首相官邸のWeb Pageにあります。
日経 12月31日 「名目3%成長」目標に、成長戦略を政府決定
閣議決定の28ページには、マクロ経済運営として”2020 年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長、2020 年度における我が国の経済規模(名目GDP)650 兆円程度を目指す。”と書いてあります。
1) 過去のGDP推移
過去のGDP推移を見るのが分かりやすいと思います。
名目GDPの推移は、1990年代からは、ほとんど変化していません。2008年度の名目GDPは494.2兆円で、2007年度515.6兆円より4.2%低かったのです。1998年度は、503.3兆円であったので、10年前でも今より大きかったのです。これからは、10年で1.3倍の650兆円にする政府成長戦略です。ちなみに、1988年度GDPは503.3兆円であったので、1988年から1998年にかけては1.3倍でした。その頃の経済成長にもっていこうとする政府の戦略です。絵に描いた餅か、どうか、じっくり見ていきましょう。但し、目標としては、丁度よいのかも知れません。
2) GDP、GNI、NNI
あまりNNI(国民所得)は、使わないかも知れないのですが、次のニュースが12月25日にあったことから、上のグラフにNNIも表示しました。概略の説明も書きました。(面倒くさい方は、飛ばしてください。)
日経 12月25日 08年度の国民所得、落ち込み最大 企業振るわず7.1%減
GDP(国内総生産)とは、国内における物とサービスの付加価値合計です。GNI(国民総所得)は、GDPに対して海外で得た所得を加え、海外に支払った所得を差し引いた金額であり、日本に帰属する所得総額です。NNI(国民所得)は、GNIから固定資本減耗額を差し引き、国際収支の経常移転収支とを調整した金額です。NNIには、損金として企業が処理した税額を含んだ市場価格NNIと税額を含まないNNIがあり、日本では通常、税額を含まない国民所得(要素費用表示)を国民所得と呼ぶことが多いようです。12月25日日経ニュースにある351.5兆円も税額を含まない国民所得(要素費用表示)です。
トヨタ1社が日本として例えると、日本に存在する工場の付加価値合計がGDPで、これに海外生産の利益配当を加え、トヨタの外国人株主への支払い配当を差し引いたのがGNIです。NNIは、従業員・役員給与・賞与とトヨタの税引前利益の合計に従業員・役員の預金収入等を加えた金額です。会社が負担した健康保険料や社会保険料その他も加えます。これがNNI国民所得(要素費用表示)であり、会社が負担し費用処理した間接税や印紙税等を加えたのが、国民所得(市場価格表示)です。外国人労働者については、日本人の海外工場で働く人の給料等は、GDPには含まれず、日本に留守家族がいて送金をすると、送金額がGNIに含まれます。NNIにも送金額は含まれません。日本で働く外国人労働者についても、同じ扱いです。
2008年度のGDP、GNI、NNIを表現した図を掲げておきます。なお、経済活動別の金額は2007年の割合と各活動分野の金額割合が同一であると仮定して計算した推定です。
3) GDPのOECD諸国との比較
他の国々と比較して、どうであったか、1990年以降の一人あたりGDPの推移グラフを書きました。なお、名目GDPとし、米ドル表示にしていますが、換算は購買力平価での換算です。
グラフの右のレジェンドの順序が2008年の順位と一致するようにしました。1990年は、日本は8位で、1991年と1993年は6位でした。しかし、2003年以降は17位になっています。次の順位表はクリックすると拡大されます。
最後に、OECD各国が1990年から2008年に一人あたりGDP(PPP)が何倍に成長したかの表を掲げます。日本は、1.82倍でした。高いノルウェー、韓国、アイルランドは3.2倍でした。やはり、日本は成長が低すぎるようです。「経済規模(名目GDP)650 兆円程度を目指す。」が妥当なようです。必要なのは、看板ではなく、戦略の中身のようです。私が、最重要と思うのは、人材の育成です。日本の低成長の原因は、人材を育てるのではなく、押さえつけてきたことと思います。
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