日米比較:医療、医療費、医療保険を考える(その6)
医療は、国により制度が異なり、その背景には社会的な考え方、過去の歴史により決まってくることが多く、また医療インフラが現実に提供可能な医療を決定するのであり、比較は容易ではありません。また、他国の医療に関して、それほど多くの知識を私も持っているわけではありません。しかし、比較自身が無意味とは言えず、私なりに比較を試み、その上で、多くの方々からご意見やご批判をいただければと思います。
1) 米国と日本の2007年一人当たり医療費
日本については、厚生労働省の資料です。米国は、Department of Health & Human Servicesが連邦政府の医療関係の行政部門であり、Centers for Medicare & Medicaid ServicesのNational Health Expediture DataからDownloadしました。
次の表が、日本と米国の2007年の一人当たり医療費の比較です。
統計項目の取り方に差があるため、米国の医療費についても、そのままの言葉で記載してあります。米国の統計項目の概要解説は、ここにあります。参考として、色分けして、且つ1ドル=100円で換算して、比較グラフとしたのが次です。
日米の差は、感覚からすれば倍半分という感じに思えます。
2) 過去からの推移
同じ内訳での1980年からの日米両国の一人当たり医療費の推移は次でした。
日本は、1980年に対して2007年が2.5倍強であるのに対して、米国は7倍以上ですから増加割合がまるで違います。但し、為替レートは1980年頃には220円/US$程度であったので、為替換算をすると米国は半分になります。それでも、日本の方が医療費の増加を抑えていると言えます。勿論、妥当な金額の水準は幾らかは、別途検討すべきです。
3) 医療保険
医療費は医療保険(日本では健康保険と呼んでいます。)と自己負担、そして生活保護の場合の公費負担や例えば公害認定病の公費負担があります。日米の制度を比べるにも、困難があり、米国で65歳以上はMedicareによる医療保険でカバーされていると了解しますが、相当複雑に思えます。(Wikiはここにあります。)2007年の医療費がどの保険から支出されたかのグラフを作成しました。なお、日本の場合、それぞれの保険に対して政府や地方自治体の負担金や補助金が支出され、更に保険制度の間で、拠出金として負担している金額が存在したり、相当複雑です。
日本の場合も、後期高齢者医療制度による支払金額が大きいのが分かります。後期高齢者医療制度の患者負担(の保険料も自己負担も)は、小さいのであり、制度維持が困難と予想される悪い制度と思います。日本の健康保険について次回に考えてみたいと思います。
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コメント
アメリカの医療事情が知りたくて検索しているときにこちらのページを見つけました。分かりやすく比較してあって参考になりました。
アメリカのprimary health physicianなど、受診の様式を調べています。自分は医師です。42歳、男性です。
いくつか教えてください。
1)の表ですが、これは保険でまかなわれる部分も含めての数字でしょうか。
日本は国民皆保険ですが、アメリカの保険は様々ですよね。
2)原典の表を参照したのですが、たどり着けませんでした。NHE Web tables (PDF, 375 KB)の表のどれかだと思うのですが、どの表からの抜粋でしょうか。
投稿: 飯室 聡 | 2010年12月 7日 (火) 17時06分
飯室 聡 さん
1)の表は、保険(米国はMedicare、Medicadeや民間、連邦、州政府)と自己負担を含めての金額です。ただ、細かい部分(例えば、予防接種や人間ドックのような検診)が、どうであったかは、少し時間がたってしまったので、Originalの資料に戻ってCheckが必要です。
2)NHE Web tables (PDF, 375 KB)の表であれば、Table 4が該当します。但し、Table 4が総額の表であるので、一人当たりの金額とするために人口で割り算をしました。
投稿: ある経営コンサルタント | 2010年12月 7日 (火) 18時32分