荒瀬ダム撤去は安易すぎないか
荒瀬ダム撤去のニュースがありました。昨年8月25日に大蘇ダムの漏水問題、8月25日に八ッ場ダムを考える、9月3日に川辺川ダムを書いたこともあり、荒瀬ダムについて今回書いてみます。先ずは、朝日の報道です。
朝日 2月3日 熊本県知事、荒瀬ダム撤去を発表 12年度から工事
熊本県知事の発言は次の所にあります。
荒瀬ダムの今後の対応について(H22.2.3:熊本県知事発言)
荒瀬ダムは、効果が期待できない八ッ場ダムとは異なり、発電という役割を果たしているダムであると言うこともできます。安易な撤去決定と思える点があることから、書いてみます。
1) 荒瀬ダムの場所
Yahoo地図を掲げます。
地図の下側に荒瀬ダムがあり、川の流れは下(南)から上(北)です。丁度、荒瀬ダムの下流で川が蛇行しており、鉄道(JR肥薩線)の藤本トンネルがありますが、このトンネルの右にある青い点線が荒瀬ダムの水を熊本県営藤本発電所に水を流す導水トンネルです。地図で藤本と書いた場所に藤本発電所があります。ダムから藤本発電所に水をショートカットして流している形ですが、本当は、ショートカットできる位置に建設すると建設費も安く、メンテナンスも容易なので、そのような地点をダムと発電所の建設地点として選んだ結果です。
八ッ場ダムや同じ球磨川の上流に位置する川辺川ダムとの比較を掲げておきます。
| 荒瀬ダム | 八ッ場ダム | 川辺川ダム | |
| 堤高 | 25.0m | 116.0m | 107.5m |
| 堤頂長 | 210.8m | 190.8m | 283m |
| 流域面積 | 1,721.1km2 | 707.9km2 | 470km2 |
| 湛水面積 | 120ha | 304ha | 391ha |
| 総貯水容量 | 10,137千m3 | 107,500千m3 | 133,000千m3 |
| 有効貯水容量 | 2,400千m3 | 90,000千m3 | 106,000千m3 |
| 水没戸数 | なし | 340戸 | 403戸 |
| 水没農地面積 | なし | 48ha | 66ha |
| 事業費 | 29億円 |
4,600億円 | 2,650億円 |
ダムは、川幅一杯に建設するので、荒瀬ダムも堤頂長は210.8mあるが、高さは25mの小さなダムです。この熊本県企業局のWebにある写真のようなダムであり、大型の堰といった感じです。
2) 荒瀬ダムの役割
荒瀬ダムは、藤本発電所の為に、昭和29年(1954年)に作られました。年間発電量として水量により変化しますが、期待量は74,667,000kWhです。CO2を発生しない、環境に優しい、クリーンエネルギーです。もし、一般家庭設置の太陽光と同じ46円/kWhで電力販売ができれば、年間34億円の収入が得られます。九州電力のCO2排出係数はクレジット適用前が374g/kWh、クレジット適用後で348g/kWhです。従い、クレジット適用前を使用すると28,000トンのCO2削減となります。
但し、74,667,000kWhを石炭火力でまかなったとすると、61,000トンのCO2に相当します。九州電力は、2008年度のCO2排出量を3,210万トンと発表しており、藤本発電所がなくなれば、CO2発生量が増加します。
もし、一般家庭設置の太陽光発電設備を設置する場合は、74,667,000kWh発電するためには、3.5kWの設備を20,000戸分設置することになり、設備投資金額としては360億円という巨額投資になります。しかも、製造、建設、運転のいずれにおいても、水力の方が、CO2発生量は小さく環境に有利で、コストも低い。風力の場合は、高さ100mの2,000kW風力を設置するとして、15-20基設置する必要があります。場所だけでも、大変です。環境や電力系統の周波数への影響もあり得ます。
3) 荒瀬ダムの撤去理由
冒頭に知事の発言をあげましたが、「深刻な財政危機にある本県の現状においては、荒瀬ダムを存続させることが最適の選択であると判断いたしました。」とあり、74,667,000kWhの発電は、重油を燃料として発電した場合には、約15,000klを要するのであり、7億円程度でになるでしょうか、莫大な金額で、その通りです。しかし、続いて「長年にわたり、荒瀬ダムの影響で苦しんでこられた地元坂本町の方々のことです。ダム存廃について再考したこの期間に、荒瀬ダムの電気事業は、地元の方々の痛みの上に成り立っていたことを、私も、また多くの県民も知るところとなりました。」が具体性に欠けています。
地元への配慮をしてこなかった。その結果、対立を生んだと思えます。1)の表に書きましたが、総貯水量10,137千m3に対して有効貯水量2,400千m3で設計されたダムであり、ほとんどが土砂で堆積する予定で建設されたのです。建設した1954年頃は、それでよかったのでしょうが、時がたつにつれて、適切な配慮が必要だったはずです。
環境に優しい設備も、メンテナンスをおろそかにすれば、悪影響も生まれます。但し、ダムを撤去しても元には戻りません。悪くなる可能性もあります。
川がそのままダム湖になっている構造なので、その面でも、よいダムです。発電に貢献しており、役に立たない八ッ場ダムとは全く違います。でも、やはり八ッ場ダムと同じでしょうか?地元は、札束と土建工事が欲しいだけ。八ッ場ダムのTVニュースは、そればかりです。下流の都県知事も札束目指して圧力を掛けているようです。荒瀬ダムも、朝日のニュースには、撤去費用総額92億円と書いてあり、これを目指して土建屋さんが指をくわえているのが、浮かんできます。もしかしたら、それ以上の金額になる金山でしょうか?
そう言えば、荒瀬ダムの撤去が出たのは、川辺川ダムの反対運動を押さえるために、荒瀬ダムを撤去することで黙らせようと画策したと聞いたことがあります。
土建業者の利権で、無駄なダムを造り、有効なダムを撤去し、人々は不幸になる。そんな構造から、抜け出すためには、数字を使った正確な議論をすべきです。感情論で議論をして、人々を不幸にし、貧しくすることは避けるべきと考えます。
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コメント
仰る、とおりです
ダム湖の浚渫を、遣り、水力発電を、生かすべきです。
また、地球温暖化は、火力・原子力発電で、四六時中、生産・排出される、タービン効率を上げるための、タービン下側の水蒸気を冷却する水が、瞬時に温められて、大量に出来る温排水です;湖海が、温泉化しているためです;タービン部分での最高の蒸気流れを、作るための温度差を作るために、大量の冷却水は、必要なのです。
温度差を、造らないと、水蒸気は、熱的平衡に入り、流れず、タービンは回転せず、結果発電不能と為る。
家庭での、暑さ・寒さ対策も、同様です。私は、エアコン使わずに、南・北側、雨戸閉め、窓閉ざし、北・南側を、開け、空気の対流で、涼・暖かく、凌いでいます。
馬鹿・幼稚な、政治家には、困ったものです。
2010.08.10 夢ある地球人 河地 一成(1945.6.6生;〒563-0103東ときわ台9-7-2 ;kkio09@live.jp;年金生活・博学・元土木工学者・安倍政権から、日本国主要機関へ同内容で投稿開始現在至)
投稿: 河地 一成 | 2010年8月10日 (火) 10時39分
今年は、熱中症対策で、エアコン使えと広報が出たのですが。 矛盾している。
救急は熱中症患者で、輸液がフル創業になりました。 さてどうしましょう。
ダムは、裏に農水がいますからね。土建屋さんの問題だけでもないのですが。農業用水の販売権も認めなくては、ダムはつかられるでしょうね。
投稿: omizo | 2010年9月22日 (水) 21時33分
私は、荒瀬ダム上流8キロメートル、ダム湖の傍で生まれ育ち、高校まで父と母の傍で暮らしました。
父と母はこのダムが出来たばかりに、増水時の浸水被害に翻弄された50年でした。
ダム建設時熊本県は、ダムを建設しても満水位プラス1メートルしか水位は上昇しないと説明し建設していす。
我が家は、満水位から4メートル高い所に明治時代より居住していました、過去に2度床上浸水の実績がありますので、ダムの無い自然河川状態の時の洪水がどの様なものか父達は熟知しておりました。
なのに上記しました様な説明で、なんらの対策を採らずに建設しました。
建設以後、何度と無く床下浸水を経験しましたので父達熊本県に地元住民は、この地の浸水はダム建設が原因ではと交渉していましたその最中に、国が川辺川ダム建設計画した昭和40年7月の洪水がきてしまいました。熊本県の説明は、ダム湖内に土砂が溜まりその分だけ水位が上昇したと浸水原因を説明し、小額のお金を支払いました。
父達は、原因がダムに無いのならと自費で先祖がが残した家を高台へ移築しました。
我が家より少し高いところの残された他の家も、その後も増水時に浸水するようになり、数年後に熊本県と交渉し移転移築費用をほぼ満額支払っている。
同一原因での浸水でも有るにも拘らず、支払い金額に差が有りすぎる事で集落は二分されてしまい、村社会が壊れた。
建設時に熊本県は、住民に虚偽の説明をしていた事が現在判明しています。
満水位プラス1メートルの洪水位は真っ赤な嘘であった。
計画ダム設計洪水位はプラス1メートルでは無く、4メートルも高く設計されていた、また土砂の堆積は計画堆砂量の50パーセントで推移していたのに、土砂の堆積を理由にして小額であった。
当初ダム設計洪水位までを手当てをしていない事をかくしたいから、ダム湖内の土砂をこれみよがしに運び出して見せている。
計画堆積量の200パーセント堆積しているのなら半分量を撤去するのなら妥当である。
100セントの堆積でもこのダムは発電できるダムである。
50年間に50パーセントの堆積であったのでこれからもこれ以上の土砂は堆積しない、堆積土砂は常に洪水時に下流へ流れる土砂であるから自然保護団体か言っている土砂が荒瀬で留まっているから八代海が疲弊しているとの発言はおかしい。
現在元の屋敷には洪水が運んだ土砂か゛1.5メートル位堆積したままである、この土砂も熊本県は撤去しないと言っている
当初虚偽の説明をしているので、熊本県は50年騙した事をひた隠しにしていた、その事を知事は解っているので説明会で「地元のかたがたの痛みの上ーーーー」の話をしている。
知事は県民の生活環境より、川の中の生物の環境を優先している、また熊本県企業局の面子を保つ為にこち地域の生活環境をつぶした。
私は、昨年の震災の3日前に、企業局の担当者に原子力で事故が起きたら数万年半減期である事など話し、原子力発電の電気より荒瀬ダムでできた電気を使いたいと話したばかりであった。
父達は公平な補償を望んでいたが、一部の住民やこの地に居住していない自然保護団体などの撤去要望の声が大きくなり撤去に進んでしまった。
荒瀬ダム撤去は電力が足りないのにもったいない。
原子力事故の自然破壊よりダム建設での自然破壊は問題にならい位少ない。
投稿: 早野 博之 | 2012年5月26日 (土) 20時51分
早野 博之 様
コメントありがとうございます。
早野様のご自宅は、鎌瀬駅に比較的近い所あたりかと、勝手に想像しました。鎌瀬駅あたりで国道219号が標高35m程度なので、荒瀬ダム付近と標高は、ほとんど変わらない。従い、ダムが建設された結果、増水時の浸水被害が大きくなることは、あり得ると思います。球磨川の増水時に、荒瀬ダムは発電を中止しても、ゲートを全開にして、洪水対応をしたとは思うのですが。
一方、荒瀬ダムについて思うのが、瀬戸石ダムについてです。鎌瀬駅付近から5km上流で荒瀬ダムとほとんど同じ構造である。ダムと発電所の位置関係は、荒瀬ダムと瀬戸石ダムで異なるが、ダムの運用という面では、同じ川で、ほとんど条件は同じ。本当は、あってはならないことであるが、荒瀬ダムを運用している熊本県と瀬戸石ダムを運用している電源開発の差であるなら、悲しいことである。
太陽光発電がkWh40円での買い取りが始まろうとしていますが、もし荒瀬ダムの年間発電量74,667,000kWhに40円をかけると約30億円になります。太陽光よりCO2削減では効果が大きく、しかも時間帯、気候、天候にあまり左右されず、社会的に貢献も大きい発電設備です。30億円のせめて半額くらいを球磨川流域の自然を守り、住民の幸福のために支出すべきと思うのですが。
投稿: ある経営コンサルタント | 2012年5月27日 (日) 01時30分
コメントありがとうございます。
瀬戸石ダムと荒瀬ダムの位置様に荒瀬のダム湖が瀬戸石下まで伸びていて、うなぎの寝床のように長いダム湖では下流のダムの水門操作で出来た上流への段波の到達に相当な時間が掛かります、水位が下がってから上流のダムがその分だけ流すなら水の上昇は起きませんが、その操作をやった形跡はありません。
瀬戸石ダムダム湖でも上流部では水位上昇で水害が起きていましたので初期の被害者は自費での移転ではなかったかと思います、その後この集落には宅地等水防災事業で国道と共に嵩上げか実現しています。
そもそも我が家は計画段階から浸水すると計画されていた事が原因で、それが生かされなかったばかりに財産を失う事になったのは明らかです。最初の補償交渉時に虚偽の説明をして言い逃れし、後の被害者は川辺川ダム建設後のHWLの位置を参考に補償した事で差別のある補償としてしまったので村社会に対立をうんだ。熊本県は最後まで川辺川ダム建設後のHWLを認めずあくまでもダム湖内の土砂堆積を理由に補償金を出しています。なんともお粗末な公営企業です。
私の実家は国道が左岸から右岸へ渡った所の集落です、国道の海抜は43Mと国は言っています。この位置のHWLは40.3mです。
別なページとダブった記述になってしまいました事お許しください。
投稿: 早野博之 | 2012年11月 3日 (土) 20時20分
早野博之様 コメントありがとうございます。
地図で見ても、うなぎの寝床のように長いダム湖ですね。早野さんの実家は、鎌瀬橋を上流側に渡った地点の付近と推察します。藤本発電所が発電を停止し、なおかつ荒瀬ダムがゲートを開けなかったら、ダム湖水位は段波とともに上流に向けて上昇するのでしょうね。そして、もし上流の瀬戸石ダムで発電を開始して放流が始まれば、丁度ご実家のあたりは水位の急上昇がありうるのだと思いました。
ダムを造れば、ダムの地点から上流で河川水位はHWLになるし、水流があるから、傾きにより上流はダム地点のHWLより高くなる。
公共事業の公共性を認め、補償金で解決するのは、有意義な公共事業であれば、それが合理的な方法だと思います。しかし、ともすれば、日本では公平性が一人歩きをして、焼け太り防止とかエゴとか言って非難をする。個人の財産の額は、その個人が納得することが、一番の前提だと思うのです。それと、補償金はそれで最終ではなく、その当時は予想できず、後に発生して判明することもあり、売買契約とは少し異なると思います。
話は飛びますが、一方で、市町村自治体が取り組むべき問題として、山林があると思います。山林が相続されても、ほとんど名義書換登記されず、所有者不明、連絡できず。山林の境界もほとんど不明。荒れる山林は、財産ではなく、負債に近くあまり誰も近寄り難い。そんな状態になりつつあることを懸念しますが、早野さんいかがでしょうか?自然保護はおろか、災害発生の元凶になってしまう懸念とか。
投稿: ある経営コンサルタント | 2012年11月 4日 (日) 22時50分
ヤフーニュースからどんな会社が事故を起こしたかググって色々調べる中でこちらにたどり着きました。
3日、坂本-葉木間の佐世野(させの)第1踏切でトラックが乗せた重機の先が引っかかり踏切で立ち往生してJR九州の観光列車が衝突し、怪我人が出た事故。
削除されたニュースによると衝突したトラックが乗せていた建設機械は荒瀬ダムの撤去に伴う工事に使うため運ばれていましたそうです。
損害請求すごそうだけど施工者の建設工事共同企業と発注者の熊本県へ行くのでしょうかね
投稿: kyoumihoni | 2017年11月 8日 (水) 21時28分
kyoumihoniさん 書込をありがとうございます。
坂本-葉木間の佐世野第1踏切でのトラック事故で積載していた重機が荒瀬ダムの撤去工事用とは知りませんでした。
JR九州が損害賠償を求める先はトラックを運行してた輸送会社とその運転手になると思います。そして、自動車保険で払われる可能性も、酷い不注意がなければ、あると思います。
従い熊本県が佐世野第1踏切事故に関与する事はないと私は思います。
このブログを書いたのが7年以上前です。まだ撤去工事は続いているのですね。ダムを撤去すると言葉で言うのは簡単ですが、当時の報道で総額92億円の撤去費用ですから、相当な金額ですよね。29億円の費用で建設して90億円かけて撤去する。無駄な公共事業なんてのを通り越していると思います。90億円は全て税金ですから。
投稿: ある経営コンサルタント | 2017年11月 8日 (水) 22時26分