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2010年2月20日 (土)

医療保険3:医療、医療費、医療保険を考える(その9)

2月17日に高齢化に伴う、医療保険の収支のシミュレーションをすると予告しました。その結果です。

1) 前提

前提を長々と書くと読むのに嫌気がさしてしまうので、大枠について述べると、

A) 人口は、1月26日の医療費の将来予測-医療、医療費、医療保険を考える(その4)で紹介した国立社会保障・人口問題研究所の人口予測(出生中位(死亡中位)推計)を使う。

B) 年齢別一人当たり医療費は、現在と同額とする。(インフレ・デフレなし)

C) 現在の医療保険制度が存続するとして、保険料の値上がり等を見る。

2) 人口

75歳以上を後期高齢者、65歳から74歳を前期高齢者として、人口分布を書くと次のようになりました。既に、日本は人口減少のフェーズに入っています。

20102medinsurances1

後期高齢者が増加し、65歳未満の若い層が減少します。結果、働く人が、老人を支える負担が大きくなります。老人も働いて、自らを支える社会に転換していく必要性を感じますが、一方で、老人に働く場を提供する必要があります。しかし、若者が、フリーターや派遣、低い就職内定率なんて暗い世の中を見ると、考えていることと現実のギャップがありすぎるようです。

3) 後期高齢者の医療費

後期高齢者は、2)のグラフのように、急激に増加していきますが、後期高齢者の医療費総額と、負担割合を、現在と同様の、患者自己(高額医療費を除き)負担10%、医療保険負担90%としました。そして、この医療保険を、後期高齢者医療保険料10%、国庫40%、県と市が各5%、他の医療保険が40%支援とした場合のグラフが次です。

20102medinsurances2

急激な増加中であり、しかも巨額です。2月16日の医療保険1に書いたように、後期高齢者の保険給付が一人当たり年間717,544円であり、医療費では800,000円ほどになるからです。

4) 医療保険の給付費予想

医療保険の給付費予想を描いたのが、次のグラフです。2025年頃になると、後期高齢者が保険給付の半分以上を使います。

20102medinsurances3

5) 保険料と国庫負担・県市町村負担

現在の負担している割合を変えないとして、それぞれの負担額を描いたのが次のグラフです。

20102medinsurances4

上のグラフの保険料負担を一人当たりの保険料として描いたのが次のグラフです。

20102medinsurances5

保険料の値上がりで嫌になりそうです。

6) 国庫負担の増額案

保険料を今以上に上げられないとすれば、国庫負担の増額しかないはずです。増税になるわけで、幾ら増税が必要かを算出しました。

20102medinsurances6

保険料を据え置いても、人口の減少があるので、保険料収入が減少し、それをカバーするための国庫補助金も増加します。2025年で、今より5兆円の税金追加投入が必要です。現在の消費税率4%で、10兆円の税収なので、消費税率で2%です。

基礎年金対策もあるので、消費税率が15%や20%となる世の中が近いように思います。こんなことを言うと嫌がられるのでしょうね。しかし、検討をしないと、制度崩壊が起こり、もっと悲惨なことになると思います。高所得者の所得税率もあげないと、保険料では限界があると思います。

7) 小さな政府案

危険とは思いますが、国庫負担・自治体負担を現在の水準に据え置いて、保険給付の増額を全て保険料でまかなうとした場合の計算をしました。

20102medinsurances7

破線は、5)のグラフと同じで、現在の負担割合を継続した場合です。小さな政府案でも、現在の国庫負担は据え置いたのであり、保険の種類による差は継続しています。何が、公平であるかは、様々な意見があると思います。

重要なことは、「負担する人間が馬鹿を見る。」とか「不公平に感じ、払いたくないと思う。」と言ったような状態を作らないことと思います。その意味で、増税を行って、国民が安心して、楽しく暮らしていける国を作るべきと私は思います。

次回は、色々なことを述べてみたいと思います。

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