大淀病院民事訴訟判決
2006年8月に妊婦が奈良県大淀町立大淀病院でのお産に際し、意識不明となり、19病院で受け入れができず、大阪府の国立循環器病センターに転送となり、死亡したことで、遺族が大淀町と産科医に約8800万円の賠償を求めた訴訟の判決が3月1日に大阪地裁であり、遺族の請求は棄却されました。日経と日テレを掲げておきます。
Nikkei Net Kansai 3月2日 奈良妊婦死亡、地裁「救急医療の再生を」──判決で異例の付言、損賠請求は棄却
判決文は、入手できていませんが、裁判を傍聴された方が、書いておられるブログがあり、内容的に正しいと思いますので、紹介します。
たまり(ょ)さんのブログ 大淀町裁判に行ってきました(その2)(大淀事件35-2)
医療問題についての正しい認識が広まってきたようにありますが、問題の深さは依然として相当あり、少し書いてみます。
1) 高崎実香さんのCT検査は正しい選択か
遺族は、病院がCT検査をしなかったことで、助けられなかったと主張しました。裁判所は、CT検査を実施すれば、検査中に搬送先が決まる可能性もあり、検査が搬送の妨げになるとも考えられ、医師の判断は充分な合理性を有しているとしました。
CT検査は、万能でしょうか?CTの検査のために、移動させる必要がある。高崎実香さんについては、搬送の決定が正しかった。何が正しいかは、患者の容体や病院の状態により、異なってくるはずです。医療とは、PCに質問が出てきて、それに答えていけば、正しい治療方法が分かるといった単純なものではないはずです。個別の対応が必要だから、医師を必要とすると考えます。
「先生を信頼します。先生のベストと思う治療をお願いします。」と患者が述べることは、間違いでしょうか?
2) 救急医療体制
大淀病院事件もあり、救急医療体制と周産期医療体制の充実が喫緊の課題として叫ばれています。しかし、どれほど進んだのか、大いに疑問を持っています。何故なら、一朝一夕に充実することができない問題であるからです。
判決の付言で「救急医療の整備や確保は、国や地方自治体の最も基本的な責務である。重症患者をいつまでも受け入れ病院が決まらず放置するのではなく、とりあえずどこかの医療機関が引き受けるような体制作りが必要である。」とあったようですが、正論です。しかし、良識ある人は全員が理解・認識していることと思います。医師は工場で生産できる製品ではありません。金を出せば、製造できるのではなく、社会が長期間を掛けて、育成していく必要があります。途上国から、連れてこいと言うなら、その途上国で医師不足が生じても良いのですねとなります。それと、医師にも人権が存在します。強制労働をすることはできず、職業選択の自由を含め、基本的人権が確保されねばなりません。ハコモノのように、対応は簡単ではありません。
ちなみに、大淀病院は、この事件の後、産婦人科を閉鎖しました。今は、婦人科のみです。2006年当時、奈良県南部でお産が可能であったのは、大淀病院のみであったのです。本当は、医療体制を皆が支えていかなければならない。しかし、現実には、マスコミを始め、社会は崩壊させようとしている結果になっている部分があります。
お産は、100%安全ではありません。急変することは、あり得るのであり、理性を持って冷静に考えることは必要と思います。高崎実香さんも、転送先の国立循環器病センターで、帝王切開ですが、無事に赤ちゃんを出産できています。
3) 毎日新聞
私の昔の名前のブログですが。
で、毎日新聞が、この事件のスクープについて、支局長がほめていることを書いています。ちなみに、今回の毎日の報道は、これです。
マスコミの恐ろしさです。ゾウの一部に触れて、全体と思って、報道してしまう。しかも、そのことに全く気づかない。社内に、リスクコントロールをする部署もない。私のブログを検索ワード「蓮見喜久子」で訪問いただいていることがあります。毎日新聞西山記者は、蓮見喜久子さんから入手した書類のコピーを横路孝弘議員に渡してしまったのです。絶対に秘密を守るべき取材源の秘密を漏らした。取材源が公務員法違反に問われることが頭になかったのかも知れません。
2.26事件もそうかも知れない。クーデターを起こそうとした将校や兵は、政治腐敗や農村の困窮を憂いで行動した。しかし、その結果は、利用され、戦争へと向かっていった。医療問題も複雑で、マスコミが伝えているのは、一部分であり、全体の姿を数字により正確に把握、分析する必要性を強く感じます。
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