国際会計基準(IFRS)をめぐるおもしろさ
金融庁が4月23日に「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」の公表についてを公表したので、おもしろいと思いました。次の金融庁のWebからダウンロードできます。
4月23日 金融庁 「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」の公表について
1) 何故”誤解”とまで言うか
”誤解”が蔓延しているか、蔓延しそうだから、金融庁がわざわざ、こんな刺激的な表現まで使って公表に踏み切ったのだと思います。私は、できませんが、不安を煽って、一儲けを企むコンサルタントは存在します。早く準備をしないと、大変ですと、持ちかける。
2) IFRSとは
IFRSとは、会計基準であり、外部に公表する財務諸表の会計に適用する財務会計基準です。従い、管理会計まで、IFRSを適用するかどうかは、企業のオプションであり、外部公表用の財務諸表がIFRSで作成可能であれば、良いわけです。
IFRSの財務諸表は何かと言えば、IAS1号に書いてあります。IAS1号なので、IFRSと呼ばれる前の基準ですが、常に改正はされているし、IFRSに含まれます。IAS1号では、財務諸表とは次のようになっています。
A complete set of financial statements comprises:
(a) a statement of financial position as at the end of the period;
(b) a statement of comprehensive income for the period;
(c) a statement of changes in equity for the period;
(d) a statement of cash flows for the period;
(e) notes, comprising a summary of significant accounting policies and other
explanatory information; and
(f) a statement of financial position(会計方針の変更時等に作成)
(a)は、貸借対照表のことです。(b)は、comprehensive incomeとなっており、包括利益と言われていますが、現行の日本基準と一番異なる部分と思います。当期包括利益と当期純利益の違いは、包括利益とは当期純利益に”その他包括利益”を加算(損失であれば減産)した金額です。それでは、”その他包括利益”とは何であるかですが、現在資本直入で処理しているその他有価証券評価額の差額等が、これに入り、純資産の期首と期末の変動額のうち当期純利益に含まれず、資本取引にも入らない部分です。
なお、「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」でも、個別的事項の3で、「IFRSでも、当期純利益が表示され、業績把握のために重要なものであることに変わりはない。」と言っています。
資産・負債の評価が現行と変化なければ、statement of financial position(財政状態計算書と呼ばれるようですが、貸借対照表と考えればよいと思います。)の純資産の部に包括利益が入ってくるが、変化なしとなるはずです。
(c)、(d)、(e)は、現行とほぼ同じです。
3) IFRSの適用企業
非上場企業や有価証券報告書を作成していない企業は、適用除外で、上場会社についても「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」の1番目で、「2012年を目途に上場企業の連結財務諸表への強制適用の是非を判断する」と書いてあり、決定していません。
しかし、言えることは、国際的活動をしている企業は”MUST”です。さもなければ、企業の信用が得られず、資金調達は勿論、販売にさえ影響するかも知れません。ガラパゴス諸島でのみ活動する企業には、あまり関係ないでしょう。
IFRSのおもしろさは、主体的に取り組むか、どうかです。IFRSを適用して財務諸表を作成する会社は、伸びていくと考えたら、株式投資の一つの参考情報です。
4) 国際化
ガラパゴス諸島では、国民の幸福や富の追求より、選挙の票のためのバラマキが流行しています。バラマキ政治家は、国民主権とか官僚支配脱却なんて言っています。そんな標語ではなく、正しい政策を立案し、推進することが、重要なはずです。
国家とは法を制定できるのであり、それ故に主権が国家にあるとされます。IFRSとは、財務諸表作成のための基準・規格でありますが、IASBが決定するのであり、日本の国会が決定するのでも、金融庁が決定するのでもありません。従い、解釈も金融庁が行うと変になるわけで、ある意味、大企業の会計基準の制定に関する主権を放棄します。
しかし、EUなんてある部分の主権を国家主義ではなく、EU主義にし、それを拡大し、そのことによって発展を遂げ、より大きな国民の幸福や富の追求をすることを目指しています。他の国の国民まで巻き込んだバラマキ政治は難しく、より正しい政策を立案され、推進されるのではと期待感が持てます。
グローバル化に対して、競争力とか言われるが、ガラパゴス諸島から脱却すること、世界標準を適用することが、正しい政策と思います。一国主義では、勝ち残れないのみならず、他国に貢献もできないから、取り残されガラパゴス諸島となる。20年ほど前に、ソ連崩壊がありました。ソ連がガラパゴス大陸となってしまったことが、その理由にあると思います。
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