上場会社の役員報酬開示
一人1億円以上の役員報酬を支払う上場会社は、有価証券報告書において、報酬が1億円以上となる役員の報酬額の開示を義務づける内閣府令第12号が3月31日に公布されました。
この金融庁のページから、内閣府令やその概要等がDownloadできます。なお、一人1億円以上の役員報酬に関する部分は、第二号様式記載上の注意(57)コーポレート・ガバナンスの状況a(d)ですが、続きを読むに入れておきます。
1) 1億円以上役員報酬開示の妥当性
反対論としては、この3月8日経団連御手洗会長発言のように、「役員報酬が個別に開示されれば、プライバシーやセキュリティの問題が生じることが懸念される。」しかなかったように思う。
開示の妥当性については、上場会社の社会的義務と考える。上場会社とは、このWikiにあるように英語ではPublic Company(英国では、Publci Liability Company:PLC)であり、非上場会社(Private Company)とは、根本的に異なる。会社の持ち分を、市場により、誰に対しても売ることができる会社であり、持ち分を流通させる場合の、その会社の社会的責任は大きい。
投資家を欺す上場会社は、極端な例であるが、適切な情報開示は、証券市場の発展のために不可欠であり、株式は賭博ではなく、投資でなくてはならない。上場会社が自社の株式の流通性を高める社会的責任とプライバシーやセキュリティの問題とどちらが大事かとなるが、高額役員報酬に関するプライバシーについては、保護の対象ではないと考えます。セキュリティ問題も、日本において報酬開示の結果により高まるとは思えず、まして、社会的責任を考えれば、説得性があるとは思わない。
2) 対象者と1億円の計算方法
必ずしも、取締役に限定されず、監査役及び委員会設置会社の執行役を含みます。報酬には、金銭での支払やフリンジ・ベネフィットのみならず、ストックオプション、賞与、退職慰労金も含むとあるので、現金による支払い時ではなく、時価ベースで発生時認識をすると私は解釈します。
役員と監査法人で1億円を超える、超えないで意見の相違が出てきたりするのでしょうか?適用は、3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書について適用されるので、この3月期の有価証券報告書からです。6月末頃には、どのような報道がされるのかなと思います。
役員報酬の開示は、上場会社のみならず、独立行政法人、政府出資企業等にも、1億円とすべきかどうかの議論はあると思いますが、適用すべきと考えます。その点、3月1日の独立行政法人の国債保有で書いた住宅金融支援機構は理事・監事の報酬額について個人毎に金額を情報開示していましたから、気持ちがよかったですね。
1億円以上役員報酬の個別開示
提出会社の役員(取締役、監査役及び執行役をいい、最近事業年度の末日までに退任した者を含む。以下この(d)において同じ。)の報酬等(報酬、賞与その他その職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったもの(最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載したものを除く。)をいう。以下この(d)において同じ。)について、取締役(社外取締役を除く。)、監査役(社外監査役を除く。)、執行役及び社外役員の区分(以下この(d)において「役員区分」という。)ごとに、報酬等の総額、報酬等の種類別(基本報酬、ストックオプション、賞与及び退職慰労金等の区分をいう。以下この(d)において同じ。)の総額及び対象となる役員の員数を記載すること。
提出会社の役員ごとに、氏名、役員区分、提出会社の役員としての報酬等(主要な連結子会社の役員としての報酬等がある場合には、当該報酬等を含む。以下この(d)において「連結報酬等」という。)の総額及び連結報酬等の種類別の額について、提出会社と各主要な連結子会社に区分して記載すること(ただし、連結報酬等の総額が1億円以上である者に限ることができる。)。
使用人兼務役員の使用人給与のうち重要なものがある場合には、その総額、対象となる役員の員数及びその内容を記載すること。
提出日現在において、提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針を定めている場合には、当該方針の内容及び決定方法を記載すること。また、当該方針を定めていない場合には、その旨を記載すること。
| 固定リンク
コメント