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2010年6月29日 (火)

世界・アジア金融市場と日本金融市場

NHKのクローズアップ現代が急成長 アジアマネーを取り込めとしてアジア金融市場のことを取り上げていました。

国際取引所連合(World Federation of Exchange: WFE、本部・パリ)が統計データを公表しており、世界の52カ所の証券取引所時価総額の統計を出しています。2009年のデータを抜き出したのが、下の表です。

Wfeequity509

日本の市場については、色を付けました。日本3市場合計で、390兆円、2009年の平均為替レートで米ドルに換算すると4.2兆米ドルです。これをアジアの15市場の合計14.4超米ドルと比較すると、アジアの中での占める割合は22%です。アジアの中でも、中国株価が上昇したこともあり、上海市場の方が大きく、今や世界一です。

日本はアジアに席捲されると考える考え方もあるでしょうが、むしろ、こんな成長する魅力ある市場にいる日本と積極的に考えるべきと思います。堅苦しい日本で上場するより、アジアで上場している方が、資金調達の面でも有利となる時代が来るかも知れません。アジアに目を開いて、事業活動も財務活動も、その分野を広げることが企業発展には欠かせない時代になってきていると思います。

金融市場を携帯電話のようなガラパゴス諸島市場にしてはなりません。金に色はないからです。金融市場とは、まじめに運用した人が確実に利益を得る市場としなければならないのです。もし、それが崩れたら他のそれがあてはまる市場に資金が流れます。資金や金融の仕組みとは、資本主義経済のインフラです。インフラがしっかりしていないと、発展が望めません。ずるをして儲けるのが勝ちであれば、誰もまじめに働こうとしない。株式市場が、投資家を欺す場、利用するだけの場、あるいはバクチ投機市場であってはならないのです。

それからすると、例えば東証は、アジアの投資家が盛んに投資をし、その結果として、アジアの多くの企業が資金調達のために東証に上場する。なかなか実現しないかも知れないが、そのような市場を目指すべきと思います。そのためには、インフラが整備された魅力ある市場でなければならない。

そう思って、よく考えると、民営化路線を転換する郵政改革法案なんてありました。郵貯や簡保を市場金融競争から遠ざけ、組み入れようとしないことを目指す法案の様でした。まさに逆行で、日本は日が沈む国で世界から取り残された国とするなら、それでもよいと思います。そうなったら、優秀な人達は、日本から逃げ出して、沈没船日本丸となる恐れもあると思います。税を理由に逃げ出す人はごく一部あるかも知れませんが、自分の能力を発揮できなかったり、能力に見合う収入が得られないと、逃げ出す人は、山ほどいます。

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2010年6月28日 (月)

法人と法人税

6月13日に法人税の減税と日本の将来を書き、コメントのお礼を書く際に、近々再度また書いてみたいと私もコメントしましたが、そのままになっていました。そこで、法人税に関することを書いてみたいと思います。

1) 法人税とは

人が経済的行為(無償の行為を含め、あるゆる行為が経済的行為であると思います。)を行い、社会を作り、政府を作っている。政府の活動に必要な資金を捻出する方法として、税が存在すると考えます。選挙権は、法人にはなく、人にのみある。そこで、法人税は必ずしも必要ないと考えられるかも知れないが、法人も経済活動はするのであり、むしろ現代においては経済活動の中心は法人であり、法人に対する合理的な課税を行う必要があります。

落語的になりますが、中世以前の社会で、その国(地方)には、農民と武士(役人)しかいないとします。政府の役割は、近隣からの侵略を防ぐことで、防衛のみであったとします。政府支出は、武士に対する給料と武器の購入資金です。この政府支出をまかなうために税を徴収しますが、農地面積に比例して、農産物の現物納付を受けるのが無理のない妥当な方法と思われます。

そこで、農民を雇用して農業をしている法人があったとします。この法人にも税を課さないと不合理であり、個人と同じ税率と方法で課税するのが合理的と思います。法人を作ることによる税逃れを許すと不合理になります。勿論、逆に法人の税を高くして、合理的な経済活動を阻害することも問題です。法人税とは、そのような性格がある税金です。

法人税率が低ければ、法人に利益を貯め込んでおくことになります。そう考えると、中小企業の法人税引き下げなんて主張がありますが、これもどのような場合に適用するかを限定しないとバラマキ政策になると思います。バラマキには、つくづく嫌になっています。税金ドロボウとは、議員のためにある言葉と思います。

もう一つ、法人税減税と消費税増税が言われていますが、これも税が法人から個人に負担がシフトします。何故なら、消費税とは、医療法人や銀行等の一部法人を除いて、法人負担が発生しないからです。

法人税のもう一つの特徴としては、企業が必死になって節税を計ろうとする税です。例えば、1億円税が低くできるなら、5千万円以上費用を要しても、企業は、それを実行します。そんな単純ではないのですが、例えば、米国企業の投資実態を知れば、バーミューダーやケイマン島や様々なTax Heavenに作った子会社を経由しており、驚きます。

2) 法人税率の実態

3月決算の会社の株主総会季節で、決算発表が出そろっているので、幾つかの会社をPick upして、比較表を作成しました。なお、米国企業及び欧州企業としてSimensを含めました。1年のみでは、特殊性がありうるので、3年間とし、その平均も計算しました。

Companylisttax2010_2

Exxon Mobilの数字を見ると、特に日本企業の法人税率が高いとは思えません。例えば、キャノンは3年間の平均で34.7%です。この表の税とは、日本での法人税と都道府県民税、市町村民税や事業税の所得割のみならず全世界での税負担です。トヨタの2008年3月期の税額が9110億円となっていますが、日本政府に納付した税額は不明です。一方、新日鐵やNTT Holdingsは大部分が国内での事業と思いますので、39.3%や37.3%は国内で納付の税が多いはずです。

企業の活動が、グローバル化・多国籍化しており、よく考えないで、雰囲気で、高すぎるとか、低すぎるとか判断すると危険であると考えます。例えば、欧州各国は低い法人税率で高い付加価値税(消費税)率の国がほとんどです。理由は、EUとしてビジネス上は実質的には国境を無くしてしまったから、水準をそろえないと不合理となってしまうのです。その代わりに、欧州議会のようなEUの問題として議論・調整を果たす機能を設け、解決していこうとしています。また、欧州には、東欧諸国を取り組むこととなった。東欧諸国は、ソ連型計画経済であったので、西欧の税制をそのまま簡単に取り入れられなかった。東欧に企業誘致をして、経済発展を起こすには、低い法人税とし、その代わりに税収を付加価値税に頼ったのです。確かに、付加価値税に頼ると賃金をその分高くなってしまうのですが、もともと東欧にはある程度の水準の安い労働力があったのでオフセットして余りがあります。東欧諸国にとっては、外国企業が進出してくることは、雇用の確保が図れることであり、政策として外国企業の誘致は、どうしても必要であったのです。

アジア諸国もある程度似通った部分があります。そこで、日本がどうするかは、日本の問題のはずです。日本企業が生産拠点をアジアに移すことは、悪いとは言えないと思います。アジアも発展すべきだし、アジアで生産した安い物資が日本に入ってくることは、日本でその物資を使う企業や個人に利益は生じます。日本は、日本でどうすべきか、どのような分野で競争すべきかを考えるべきです。

上の表のMicrosoftやGoogleの純利益率を見てください。同じことを、日本人や日本企業がすべきとは言いません。日本が世界を相手に、競争して勝つことができる経済活動をすべきと思います。1位でなければならないとは言いません。トップレベルでもよいと思います。そんな分野を打ち立てなければならないと思います。

3) 法人税の課税範囲

法人税の課税範囲を広げるべきとの話を耳にすることがあります。私にとっては、理解不能な言葉です。法人税の課税標準は、企業会計の利益と、非常に近いのです。利益を計上したなら、利益に応じて、利益に税率をかけ算した金額を税額としています。但し、会計的に利益を圧縮し、会計上は許容されても、税の面では公平性を保つことが必要であり、圧縮した利益を調整して課税金額を計算したりします。

確かに、租税特別措置法で認めている特殊な扱いはあります。しかし、それらは個別に議論すべきことです。例えば、再開発事業で土地等を売却する場合の特例や障害者を雇用した時の割増償却などを含め個別の税優遇の内容の見直しは必要でも、廃止には問題があると思います。

今は廃止になりましたが、つい最近まで法人税法にあった業務主宰役員給与の損金不算入なんて変な税金と思っていました。これは、1)で触れた利益を法人に残すか、個人に移転するかの関連ですが、法人と個人が、合理的な税であれば、問題とならないはずなのに、バカなことを考えた人がいたのです。中小企業だからと税率を低くすることがナンセンスなのと同じです。

交際費損金不算入を考えてみます。租税特別措置法61条の4で、交際費は全額(資本金1億円以下の企業は6百万円以上)が、損金不算入となっています。国によっては、交際費も全額損金となっていますが、その場合は、企業活動としての正当な支出が前提となっています。銀座のバーやクラブでの飲み代が費用として認められること自体がおかしいはずです。販売活動とは、接待攻勢であるとしていた面もあったので、このような措置法61条の4になったと思いますが、現行でも一人5千円以下の飲食費は損金不算入とはなりません。それほど現行で問題はないし、中小企業の優遇幅も下げるべきと思います。

政権交代が教えてくれたことは、ほとんどの議員は勉強もしていないし、何も理解していないことでした。与党になって分かったという発言は、自らがバカであることを証明してる人だと思います。国民が賢くならないとダメで、国民が発言しないとダメだと思います。議員と一緒になって官僚タタキをするのではなく、官僚を国民が正しく使うことが重要と考えます。

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2010年6月22日 (火)

不足している市民の政治活動

国民が政治活動をしないから、それを良いことに議員達が、支離滅裂なことを言っていると感じます。

直前のブログで、「法人税の減税と日本の将来」を書きました。民主党のWebには、「消費税10%アップは公約ではない、議論の開始が公約 菅総理が会見で」との記事があります。6月17日に発表した民主党 政権政策  MANIFESTO(マニフェスト)なるものには、「法人税率引き下げ」があります。

これって、見事な支離滅裂と思いました。バラマキしか知らない。だから、「エコカー・エコ家電・エコ住宅などの普及支援」と言っても、政策による研究開発支援のような発想はない。お寒いし恐ろしい内容のマニフェストと思いました。

1) 政党

政党とは、議員が作るものではないはず。作ってもよいかも知れないが、本当は同じような意見を持つ市民が作り、代表を議会に送り込み、自分たちの考えを汲んだ法を制定するのが本来と考えます。マニフェストは、議員が作るものではなく、政党員である市民が作り、その実現を目指して、議員が活動する。

自民党は、政党であったのかと言えば、上の私の文章で、「意見」や「考え」を「利益」と置き換えれば、あてはまる気がするので、「政治活動=自分たちの利益確保」と考える人達の政党と考える。

民主党は、何なのだろうか?意見が異なった議員集団であり、政党助成金に群がった議員集団であるように感じる。マニフェストは、支離滅裂のバラマキであり、まじめに考えた内容とは思えない。

議員が自分自身の利益優先で作成したマニフェストと思える。市民参加がない。政治と市民との間にギャップができてしまったのではと思う。

2) 比例代表制

その原因の一つは、小選挙区制ではないかと思う。2009年8月 1日の小選挙区制の廃止を望むや2009年9月 9日の日本の政治のこれからにも書いたが、小選挙区制が日本をダメにしていると思う。細川内閣時代の1994年2月に小選挙区制にする法律改正がなされたが、あの頃から、日本の失われた時代が始まった。

政治家は、権力闘争に明け暮れ、良識ある市民が集まって政治運動をしようとしても、小選挙区制では、議員なれるのは大政党の公認を必要とするから、大政党に働きかけることとなる。大政党の公認に関与することができる人達が、大きな力を持つ。選挙では○○チルドレンや△△チルドレンが誕生する。

酷い国だと思います。それでも、比例代表制に戻すのは、難しいですね。何故なら、自分たちの利権の塊である小選挙区制を自民と民主は死守しようとしますから。しかし、あきらめてはならないでしょうね。展望は持てないが、いつかは小選挙区制がつぶれて、多くの人が自分たちの意見を反映することができる比例代表制が実現する日がくることを期待する。

3) 政党の税問題意識

菅直人代表が消費税について言及したことについては、国民に問題を提起したこととして評価したい。しかし、言うなら、他の所得税、相続税の見直しも含めてであり、当然法人税も検討対象とすべきであるところを、法人税減税と支離滅裂なことを言う。バカかと思う。

あるいは、自民党がマニフェストで「消費税率等については、・・・等を考慮し、当面10%とすることとし、政権復帰時点で国民の理解を得ながら決定するものとします。その際、食料品の複数税率等、低所得者への配慮も併せて検討します。」と述べていることから、それを誤魔化すために、民主党はマニフェストにはありませんとしているのだろうか?

なお、自民党のマニフェストもやたらと長く、271項目もあり、38項目目の「安心社会実現に向けた税制抜本改革」です。こんなに長い選挙用のマニフェストを作るより、政治への市民参加実現のための政策を考えればよいと思うのですが。

1984年までは所得税と住民税を合計した累進で課税される最高税率は93%でした。1988年に76%となり、1999年以前は65%でしたから、現在の最高税率50%を据え置いて、消費税のみの税率を上げるというのは、合理性を欠いた税制になると思います。消費税で広く・薄くもよいかも知れませんが、高額所得者の応分の税負担は考慮すべきと思います。

なお、食料品の消費税軽減税率にも気をつけるべきです。例えば、食料品の範囲が何であるかが問題となります。飼料は、どちらでしょうか?飼料が普通税率で、食肉が軽減税率であった場合、畜産農家は税負担にあえぎます。同じように、食料の輸送に関しては、普通税率のはずで、その分の税コスト負担が増加します。これを、輸出免税のように、申告により、負担を無くす方法がありますが、免税売上と一般売上の区分も問題になります。むしろ、現状通り、全てを同一税率とし、低所得者に対する支援充実の方が、よいような気もします。

参議院選が近づいているが、政党や議員が、自分たちのみで、市民参加を得ずに、言いたい放題していると感じています。せめて、市民の参加を得た討論集会をして、討論集会の結果によりマニフェストを作成するという手法を少しは取り入れればと思うのですが、現在の小選挙区制では、望み薄なのだと思いました。

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2010年6月13日 (日)

法人税の減税と日本の将来

世の中が、消費税増税と法人税減税に、進んでおり、しかも、この動きが定着する懸念を感じ、この話題について書き進めます。

これを強く感じるのが、次の民主党の動きであり、自民党は既にその方向であることから、参議院選が民主党敗退で終わったとしても、消費税増税と法人税減税が確定するように思えます。

日経 6月11日 民主参院選公約、法人税下げ明記

1) 消費税増税

民主党は、消費税を含む税制の見直しを行い、強い経済、強い財政、強い社会保障の実現を目指すと言っているのであり、消費税増税とは言っていません。しかし、後段の部分の実現のために税収増を計るとの宣言とイコールです。ところで、現在の税収を平成22年度予算案から見ると次の通りです。

H22budget_2

法人税は、現在30%(実効税率とは、地方税を含んだ税率なので、地方税を除くと30%です。)なので、10%税率を下げると2兆円の減税になります。一方、この現在財源を消費税でカバーすると、1%税率の引き上げで2.4兆円の税収増となり、ほぼこれで見合うこととなります。(消費税の税率5%は、地方消費税率1%を含んだ場合であり、また、消費税率を上げると歳出も増加するので、全額が政府財政の収支改善となるのではありません。)

2) 法人税

そもそも税とは、どのような方法で課税しようとも、公平であり、社会の発展を阻害しないのであれば、税種目にこだわる必要はないのかも知れません。例えば、江戸時代には法人税は存在せず、年貢という物納が税のほとんどであったと理解します。現代でも、法人税を無税とし、すべてを所得税で課税する方法もあり得ます。この場合は、法人の持ち主は最終的には個人であり、何時の日か個人に所得が移転するので、個人段階で課税すればよい。あるいは、法人の純資産の増減が個人に帰属するとして、個人段階で課税を完結する方法もあります。

ソ連型社会主義において、私の理解の範囲になりますが、基本的にほぼ全てが法人税非課税の国有企業でした。個人所得税もなく、一見すると、理想の夢の国に思えます。しかし、政府は役人に給料を支払わねばならず、公共投資を行い社会福祉も実現せねばなりません。その財源は、どうしたかというと、国有企業からの上納金(利益配当)です。本当に儲かっていたのかって言ってもIFRSも適用されておらず、きわめて不明瞭会計でした。国有企業であったので、法人税も利益配当も、その区分さえ不明瞭でした。しかも、設備資金が政府予算から捻出されたりで、いよいよ不明瞭会計の極みです。そもそも、市場経済ではないので、価格の前提があやふやで、会計の貨幣価値の公準なんて言っても、この前提すら、あてはめることに疑問があります。

私は、ソ連型社会主義とは、法人税が、全ての税収であった制度と言えるのではないかと思っています。個人は、小規模の農林水産業といった産業しかなく、大部分は公務員または国営企業に勤務していたので、高額所得者は存在しなかったから、それで良かったと思います。しかし、市場主義経済と言うべきか、自由主義経済と言うべきか、そのような場合には、企業・法人課税と個人課税が合理的に整合した制度とすべきであり、感覚的な法人税減税を言うのは、不適切と考えます。

3) 法人税減税論への疑問

法人税減税論者の理論では、日本の法人税率は高く、その結果日本企業は競争力を失っており、それが企業による雇用減少や日本経済の停滞につながっており、日本経済活性化のためには、法人税引き下げが必死であるとの主張です。

法人税引き下げが企業競争力の強化になるのでしょうか?少しは、なるかも知れないが、本質論は、異なると思います。製造業を考えた場合、用地が安く、原材料が安く手に入り、必要とするレベルの労働力が安く存在する国です。全てを満足しなくても、補完は可能であり、相対論の世界です。一般的には、そのような国は中国であったし、それがASEAN諸国に移行しているのが現状ではないでしょうか?ASEAN諸国と法人税の引き下げ競争をして日本が勝てるとは思いません。むしろ、日本に存在する労働力を、最も有効に生かせる産業で世界の需要に応えることが、日本経済の競争力強化になるはずです。

そもそも、赤字企業が半数以上の状態で、法人税減税をしても、その恩恵は、黒字企業にしか及びません。日本経済の失われた10年や20年は、何故発生したかと言えば、日本経済や日本企業が体質改善による競争力強化に失敗しているからです。勿論、一部の大企業では、体質改善が進み、競争力を拡大しているケースは存在します。それらの企業は、不採算部門を縮小・撤退し、多額の研究開発費を投入して、勝ち組として生き残りを図っておられます。

例えば、租税特別措置法42条の4に「試験研究を行つた場合の法人税額の特別控除」がありますが、このような減税措置の充実の方が、効果があるようにも思えます。事業仕分けで、有名になったスーパーコンピューターのような研究開発部門に関する政府の役割の充実も効果があるように思います。負け組にならないように、企業が研究開発投資を行い、勝ち組になることを政府が支援するのです。それには財源も必要であり、法人税減税をすることは、これに完全に反することとなります。また、法人税を減税して、消費税を増税した場合、給与水準を上昇させなくてはならない。給与を上げることが可能な企業は、利益を計上し、税金を払っている優良企業である。法人税減税と消費税増税は、格差拡大につながる懸念がある。

無能経営者の安易な欲望に応えることには、危険が存在することを認識すべきです。

4) 国際比較

財務省の法人所得課税の比較がここにあります。確かに、日本と米国は40%を超えており、高いのですが、消費税(付加価値税)を比較するとこの財務省の比較資料のようにヨーロッパでは、最低でも英国のように15%であり、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーのように25%という税率の国もあります。

日本は、どうしたいのでしょうか?法人税が低くても、個人には関係ありません。給料や年金が今より10%高くなれば、10%消費税が高くなれば、この際関係ありません。法人税を減税する代わりに、給料や年金を確実に上昇させ、それを担保・保証するものが得られれば、民主党の公約にも賛成したくなります。しかし、そんな担保や保証が得られる訳はありません。失政は、国民全ての負担として返ってきます。

安心できる豊かな社会を作るには、税は欠かせません。無責任な政治家に任せては、無茶苦茶になる。日本の年金や医療保険の維持に多額の税投入が避けられない時期に、安易に法人税減税を、考える馬鹿政治家に腹が立ちます。

5) 国際企業活動

一部の意見として、韓国企業に日本が負けているのは、韓国の法人税率が低いことから、ある事業で税引き前利益が同じでも、税引き後利益では韓国企業の方が多くなり、結果として、新規投資に韓国企業の方が大きな資金を投入できる。この正循環と日本の悪循環の結果が日本と韓国の差であるとの意見です。

一見すると、うなずいてしまう面があるのですが、3)で述べたように、企業活動とは、あらゆる環境の総合であり、税のみで論じることはきわめて危険です。そして、日本にも、租税特別措置による特別控除や税額控除があり、政策による減税もあり、政策減税も含めて議論すべきです。

それと、法人税法23条の2「外国子会社から受ける配当等の益金不算入」が昨年4月1日から施行され、25%以上を保有する外国子会社からの配当金には法人が課せられません。例えば、日本企業がベトナムに投資として事業をした場合と韓国企業が同じことをした場合とでは、税の面で差はありません。

法人税法23条の2により日本の国際課税はタックスヘブンを除けば、投資先国の税適用となっています。制度に関するQandAもここにあります。

バラを見せられて美しいと感じても、そのバラには大きなトゲがあることがあります。トゲを抜くべきか、抜けるのか、あるいは、レンゲがよいのか、よく考えてみたいと思います。

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2010年6月 5日 (土)

救急医療の責任に転嫁してはならない

救急医療が問題であると叫べば、正しいとは限りません。次のニュースは、責任転嫁と思いました。

MSN産経 6月1日 北海道夕張市立診療所、救急搬送断る 夕張市長「誠に遺憾」

1) 医療or死亡確認

上のMSN産経の記事には、「50代の男性が自殺を図り、心肺停止となったと119番通報があった」とあり、この北海道新聞の記事には「首つり自殺で心肺停止となった患者がいると通報があり、救急隊は・・・」とあります。50代の男性が首つり自殺をし、その結果既に心臓は止まり、呼吸もしていなかったのです。それ以上の詳しいことはわかりませんが、通常なら誰も気づかないうちに首つりをするのであり、既に脳も死んでおり、死に至った状態と思います。医師が死亡診断書を書いて、死亡と言えるとして、記事では患者と述べています。

これが救急搬送の問題だと言えるのでしょうか?

2) 救急医療

救急医療とは、都道府県知事が指定する救急病院等が提供する医療です。当然、その受け入れのために、医師が常時診療に従事していたり、救急に優先的に使用される病床があったり等の条件が満たされておられねばならず、記事で問題となっている夕張市立診療所は救急病院ではありません。

仮に、この自殺者が自殺をした直後で再生の可能性があるとしても、そのような心肺停止となった人の医療を実施する設備や陣容は夕張市立診療所にはないと思います。

そもそも、夕張市内には市立病院閉鎖により救急病院が消滅しています。もし、救急医療の充実を言うなら、市税を投入して、市立病院を復活すべきと考えます。市立診療所が救急搬送を断ったと非難することは、地域医療の火を消してはならないと懸命に取り組んでおられる村上医師他の市立診療所を運営する夕張希望の杜の方々の善意を逆なでするのみならず、これこそ医療崩壊を生じさせている原因の一つと思います。

医師の行為を正当に評価することです。患者=お客=神様ではありません。

3) 狂った人

マスコミは変だと言えるのですが、市長の記者会見を、写真を載せて、単に伝えているのみと解釈します。別記事で良いから、夕張希望の杜にも取材をしてほしいと感じますが。

本件でなされなければいけないのは、救急医療の整備より、自殺対策です。ここに警察庁の平成2 1年中における自殺の概要資料がありますが、2009年中の自殺者総数は32,845人で前年比1.8%増。年代別では50歳代が一番多く19.8%とあります。

市長が取り組まねばならないのは、市立診療所・夕張希望の杜を非難することではなく、自殺防止への取り組みのはずです。市民が人間らしく希望を持って生きていけるような社会をつくること。それが、市長の仕事のはず。

マスコミも、この人が自殺した背景を取材し、報道し、自殺を考える必要がない社会作りを目指すべき。報道が、真実を追求せず、大本営発表のみを伝えることの恐ろしさについて、十分考えなければならない。

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2010年6月 3日 (木)

民主政権・鳩山政権

鳩山氏自身は精一杯の努力をしたと思っているかも知れないが、国民の多くに失望を与えたと私は感じる。現実にそぐわない点が多かったマニフェストは、素直に多くの意見を取り入れて必要な修正はすべきであったと思うし、腹案ありと言って、期待を抱かせ、実はないと言ったことは、問題がありすぎる。

一方、この問題で最も反省すべきは民主党の議員であると思う。鳩山氏を選び、最近では強行採決で、醜い姿を見せる。今からでも遅くはない。国民の信頼を得るべく、議員活動をすべきである。議員活動とは、選挙活動ではなく、社会の様々な事項やその問題を的確に把握し、必要な立法を行うことである。そのための活動に自らの秘書と官僚を最大限に活用すればよい。その結果が、選挙の票である。民主党議員のしていることは、先に選挙の票があり、そのため議員活動は二の次になっていると思える。

鳩山・民主政権の最大の罪は、政治不信を国民に持たせたことと思う。政権交代しても、良くはならない。むしろ、国民の多くに失望を与えた面があると思う。「民主なんか支持したくない。しかし、自民に戻りたくない。」との思いを持っておられる人も多くおられようである。

鳩山・民主政権の最大の問題点は、密室政治を貫いたことである。普天間も、当初は「普天間に決定した経緯を検証し・・・」と言っていた。検証したのであろうが、その結果は国民に知らせなかった。米国海兵隊(US Marine)は、沖縄に駐留することが必要であることを、認識するに至ったと鳩山氏は述べていたが、海兵隊とは何であり、何故沖縄駐留が必要か、グアムに主力移動した後の沖縄駐留部隊とは何か、何故1800mの長さの滑走路が必要なのか、テニアンを訓練地とするにも拘わらず何故日本にも訓練地が必要であるか等を含め全く説明がなされていない。透明性ある議論がなされていない。そのことは、他の多くの問題にも共通する。八ッ場ダム問題も、透明性ある情報を公開せず、議論もしていない。数を頼りの強行採決をしても全く意味のないはずが。

そもそも昨年8月の衆議院選の結果、308議席を民主党は得たが、実は有効総投票数の割合では、小選挙区で47.4%、比例で42.4%と、共に50%の投票を得ていない。それにも拘わらず3分の2近くを占めたら、我が天下のように振る舞い、謙虚さを失った。小選挙区制の恐ろしさであり、国を滅ぼす小選挙区制の廃止を一刻も早く望みたい。権力者は、自らの権力拡大にきわめて熱心になり、権力縮小になることは避けようとする。

次のニュースも、やはりそうかと思わせるニュースでした。

読売 6月2日 首相、退陣記者会見開かず…オープン化は?

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