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2010年8月21日 (土)

所在不明高齢者問題

不思議な事件と言うべきか、当然起こるべきして起こっており、何故今になってとも思える。ニュースショーにとっては、絶好の事件と思える。何故なら、「消えた老人」、「家族の絆の希薄化」、「地域共同体の崩壊」、「制度の盲点」、「役人の怠慢」、「税金の無駄遣い」、「縦割り行政」等々様々な言葉を駆使して、論評が可能であるから。

そんなニュースショーの中で、気になることを述べていた役人(厚生労働省と思うが、正確には覚えていない。)がいた。

所在確認を行おうとしても、「家族に、病気で他人に会えない。あるいは施設に入っている。」との回答で追い払われ、老人ホームに確認を求めると、個人情報保護を理由に回答が得られない。

このような人を公務員としておいてよいのだろうかと思った。問題は2つある。

1) 法の強化には問題あり

一つ目は、政府や地方自治体には、法に基づいた公権力の行使が可能であることである。その人は、そんなことを十分承知して、発言したのだと思うが、権力欲が出た発言と思うと恐ろしい。例えば、個人情報保護法でも、国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合の、本人の同意を得ずしての個人情報取扱事業者の情報開示を認めている。上の老人ホームの例は、個人情報保護法の対象外と考えるが、「○○さんは、入居しているか」と、その目的を明示して、地方自治体が老人ホームに問い合わせを行って、回答を拒否されるとは、私にはとても考えられない。

むしろ、政府や地方自治体が国民や住民を監視するようなシステムを作ることになってはならないと考える。戦前の日本においては、徴兵検査があり、全員を、その思想まで調査し、克明に監視をし、戦争へ駆り立てる制度をつくっていた。天皇=政府であり、国民=臣民であり、政府の命令に従わせるシステムであった。単純に、戦前にもどる訳ではないが、権力者が意のままに操れるような制度にしてはならず、人々が自由に、他人に干渉されず、個人の生活を謳歌できる制度をつくらねばならない。

政府とはお上ではない。お下でもなく、対等であるが、国民が定めた法に基づく公権力を有している。従い、公権力を拡大するについては、慎重であるべきで、政府の怠慢で実施できていないことを、公権力の不足であると誤解して、公権力を拡大してはならない。

所在不明高齢者問題については、時間を掛けて、慎重に対処すべきと考える。

2) 政府・地方自治体の怠慢

嫌な言葉に、役人が言い逃れをする時に、発言する「縦割り行政」という言葉がある。国民から見れば、政府は一つである。政府内部で、役割分担のために、縦割りの省庁を設置して何ら問題はない。同時に、横断的な情報交換や協力・共同のための組織等を設置し、最高の機能を最高の効率で発揮するようにすればよい。こんなの経営のイロハである。冒頭に書いた出演役人は、縦割りだからと述べていました。

住基ネットなんて税金を使って、何をしたのでしょうか?この所在不明高齢者問題のとりあえず思いつく問題点は、年金不正受領です。でも、驚くのは、年金不正受領が、これほど簡単であったのかと思うことです。

例えば、後期高齢者医療制度で75歳以上の老人は、その医療情報を含め全て把握可能であり、介護保険制度も同様です。保険事業者が、利用していない人を、調べることはないでしょうが、地方自治体が福祉の一環として、1年間に一回も受診していない人を調査するなんてこともなかったのだろうと思います。低福祉社会とも思いますが、調査をしないことの恐ろしさを感じます。幾ら予算がなくても、実態調査だけは、絶対にすべきです。そうしないと正しい政策が立てられません。まさに税金の無駄使いです。(意図的に特定の目的に支出させたいから、実態調査をしないなんてないでしょうが)

例えば、読売 8月21日 「104歳」の長男、年金は生活費に充てたのようなニュースですが、約3年間、計約120万円の年金を受領するために、死亡届を出していなかったのであれば、不正受給の問題より、生活保護の傘をさしのべる福祉制度(単に存在するのみならず、その適切・円滑な需給の支援を含め)の貧困が問題である気がします。

本問題は、国民が主役であり、国民が、どうすべきかを考える問題と思います。

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