尖閣諸島問題
解決の見えてこないのが、尖閣諸島問題です。
9月7日に尖閣諸島久場島の北西約15キロの海上で、海上保安庁の巡視船に、中国漁船が9月7日立ち入り検査を妨害するために衝突したことで海上保安庁が船長を逮捕し、それに対して温家宝首相が釈放を要求したとの報道です。
日本の前原外務大臣は、次のように述べたと報道されています。
平行線ではなく、正反対の向きを向いていると思います。これで、解決になるのだろうか?と言うことで、私なりに調べてみました。
1) 現状
次の読売の記事は、中国漁船の数だけで、日本漁船が何隻操業していたかは書いていませんが、多くの中国漁船が従来から尖閣諸島海域で操業していたのは、確かだと思います。
「8月中旬以降、尖閣諸島の周辺海域で操業する中国漁船が増えており、多い日では約270隻を確認。1日に70隻程度が領海内に侵入していた日もあるという。・・事件が起きた7日も周辺で約160隻の中国船による操業を確認、うち約30隻は領海侵犯していたという。いつトラブルが発生してもおかしくない状況に地元漁民も不安を募らせている。」
という背景があり、今回の事件になっていると考えます。
2) 尖閣諸島の領有権についての日本政府見解
この外務省の見解が、日本政府見解です。
「尖閣諸島は、1885年以降政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行ない、単にこれが無人島であるのみならず、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重確認の上、1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行なって正式にわが国の領土に編入することとしたものです。・・・・」とあります。
ところで、1885年とか1895年とかは、中国に力がなかった時代です。1894年・1895年が日清戦争の年です。それ以前に既に、欧米諸国に大幅な譲歩をした天津条約が1858年、北京条約が1860年であり、国内的には太平天国の乱(1851年-1864年)もありました。
「慎重確認の上」であるものの、中国が、それに同意するかは、大いに疑問があります。
3) 中国の領土法
国連のこのWeb Law on the Territorial Sea and the Contiguous Zone of 25 February 1992に英訳があり、第2条の主要部分は、次の通りです。
The PRC's territorial land includes the mainland and its offshore islands, Taiwan and the various affiliated islands including Diaoyu Island, Penghu Islands, Dongsha Islands, Xisha Islands, Nansha (Spratly) Islands and other islands that belong to the People's Republic of China.
台湾を含むのは、中国側からすれば当然のことですが、Diaoyu Island(尖閣諸島)、Penghu Islands(澎湖諸島)、Dongsha Islands(東沙群島)、Xisha Islands(東沙群島)、Nansha (Spratly) Islands(南沙群島)も入っています。フィリピンやベトナムも領有を主張している島々が入っているのであり、尖閣諸島のみで、とやかく言うことはないのかも知れないが、とりあえず、この法については、認識しておく必要があると思いました。
4) 条約等における扱い
日清戦争の結果の条約が下関条約であり、このWebの第2条には、(a)遼東半島、(b)台湾、(c)Pescadores Groupを中国は日本に割与すると書いてあります。Pescadores Groupとは、文字からすると尖閣諸島(中国名:釣魚台)とも思えてしまうが、緯度・経度からすると澎湖諸島で正しく、当時の認識としては、尖閣諸島は日本ということで、日中双方にとって、条約に書くほどのこともなかったのだと思います。
日本の現在の領土は、ポツダム宣言の第8項の次の文章が関係します。
The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu, Hokkaido, Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.
第8項冒頭のCairo Declaration(この国会図書館Web参照)には、次のようにあります。
It is their purpose that Japan shall be stripped of all the islands in the Pacific which she has seized or occupied since the beginning of the first World War in 1914, and that all the territories Japan has stolen from the Chinese, such as Manchuria, Formosa, and The Pescadores, shall be restored to the Republic of China. Japan will also be expelled from all other territories which she has taken by violence and greed.
再び、Pescadoresが出てきますが、澎湖諸島との解釈は可能と思います。
いずれにせよ、沖縄は戦後米国統治下に入るわけで、1971年に沖縄返還協定が結ばれます。次がその第1条で、平和条約第3条の規定に基づいてアメリカ合衆国に与えられたすべての領土及び領水を日本国のために放棄するとなっています。これについて、日本外務省は、米国統治時代に中国が尖閣諸島について何等異議を唱えなえなかっと言っています。
1.アメリカ合衆国は、2に定義する琉球諸島及び大東諸島に関し、1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第3条の規定に基づくすべての権利及び利益を、この協定の効力発生の日から日本国のために放棄する。日本国は、同日に、これらの諸島の領域及び住民に対する行政、立法及び司法上のすべての権利を行使するための完全な権能及び責任を引き受ける。
2.この協定の適用上、「琉球諸島及び大東諸島」とは、行政、立法及び司法上のすべての権力を行使する権利が日本国との平和条約第3条の規定に基づいてアメリカ合衆国に与えられたすべての領土及び領水のうち、そのような権利が1953年12月24日及び1968年4月5日に日本国とアメリカ合衆国との間に署名された奄美群島に関する協定並びに南方諸島及びその他の諸島に関する協定に従つてすでに日本国に返還された部分を除いた部分をいう。
5) 解決策
領土問題なんて、世界中の多くであることです。ハーグの国際司法裁判所で解決するのが一案かも知れません。しかし、そのようにできるか、疑問はあると思います。中国と話をしなければいけないのは事実と思います。漁船の船長の個人犯罪の問題ではないと思います。
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