帝京大学病院診療制限
帝京大学附属病院のトップページを見てみると、「お詫び」と題した文書に次のことが、書かれていました。(帝京大学附属病院のトップページ)
また、このたびの事態で、当院の責務である診療を部分的に制限せざるを得ない状況となり、・・・・ |
文書の中での、お詫びの対象としては、この文章の前に院内感染で迷惑をかけたことと、遺族に対するお詫びが書かれています。でも、本出来事についいては、余りにも誤解が多すぎると思います。
1) 昨日の日経メディカルの記事「不毛なアシネトバクター騒動とその背景にある誤解」
日経メディカルの記事は、ここにあります。全文を読むには、登録が必要ですが、無料で登録可能と理解します。記事は、医師で感染症コンサルタントの青木眞氏の話を日経メディカルの記者が書いていますが、非常に正しいことを述べておられと思います。即ち、報道から受けるイメージとは異なり、例えば、次のような、話が書かれています。
今回、騒動になっているアシネトバクターという菌は、濃厚に抗菌薬を使わざるを得ない高度医療の場では、多かれ少なかれ見つかる可能性の高い菌です。・・・・・生まれつき抗菌薬が効きにくい菌を「耐性だ」と大騒ぎし、不必要に恐れるのはどうなのでしょうか。 |
周囲にいるほとんどの人にとってはさしたる危険性はありません。アシネトバクターはもともと、人に危害を与える能力の低い菌なのです。 |
抗菌薬が効く効かないだけではなく、それが患者さんの生命や健康にどのような影響を与えるかを考えていかなければいけません。 |
この程度の引用で止めますが、私は、騒ぎすぎ(特にマスコミ)であると思います。
2) 多剤耐性アシネトバクター(MRAB)とは?
1)の説明で十分と思いましたが、念のため、Webを探すと、オーストラリアNew South Wales州のHealth Fact Sheet(ここ)に、説明があり、当然のことですが、青木眞氏の話と同じです。健康体の人が、MRABに感染しても、発症する危険性はなく、病人の場合には、特別な治療が必要であると書かれています。
3) 帝京大学病院の場合
ここに、帝京大学附属病院は「平成22年7月30日(金)に開催された調査委員会の外部委員報告書」を公表しています。MRABが検出された39例のうち、25例が死亡したのですが、そのうち「関連が否定できない」が7例、「因果関係不明」が6例、「因果関係なし」が12例との判定になっています。
しかし、「関連が否定できない」とされた場合でも、「他に方法があった」に必ずしもつながらず、然るべき調査・検討の必要があると思います。
4) 対策
青木眞氏の話を日経メディカルの記事から引用するのは、これで止めますと書いたのですが、最後にこれだけは、引用させてください。
新たな調査研究を始める予算があるならば、それを感染管理の看護師を増やすことに使った方が余程効果的でしょう。 |
下手に抗菌薬を使うというのは、対策ではなく、逆に多剤耐性アシネトバクターを増やすだけになると思います。多くの病院・医療機関でも多剤耐性アシネトバクターの感染があったことが報道されていますが、何を非難すべきか、そのターゲットを誤ると大変なことになると思います。
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コメント
アシネトバクターもともとも、多剤耐性ですが実はこれに感染して発症までなるにはよほどの状況です。 多剤耐性アシネトバクターも抗菌剤はあります。ただし厚生省は認可してませんが。
多剤耐性菌の問題は、たとえばカルバペネムは他国では最後の一手が日本では、最初の一手として使われます。別に悪くはないのですが。ただし使い方が、処方された期間をきっちり飲まないと、耐性を生むことになります。
現在の日本では、カルバペネム耐性は大して問題ではないです、普通にありすぎて。
https://aspara.asahi.com/blog/border/
投稿: omizo | 2010年9月22日 (水) 21時17分
omizoさん
朝日アスパラに高山義浩氏が書いておられる記事を紹介いただきありがとうございます。
高山義浩氏の説明と全く正反対であるのが、9月7日の産経の社説(主張)だと思います。
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100907/bdy1009070244001-n1.htm
「警視庁が、業務上過失致死の疑いもあるとみて医師ら病院関係者から感染が起きた経緯について事情を聴いたのは当然だ」なんてのは、医療を崩壊させることだと思います。正しい主張に耳を傾ける重要性を感じます。
投稿: ある経営コンサルタント | 2010年9月22日 (水) 22時43分