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2010年11月27日 (土)

司法修習生の給与制来年の10月31日まで延長成立

一時は仙谷官房長官の問責決議等の中でどうなるか心配でしたが、昨日11月26日参議院本会議の「日程第8 裁判所法の一部を改正する法律案」として投票が行われ、賛成票 224と反対票 11(投票総数 235)で可決成立しました。(投票結果はここ)衆参両院ともで修正は、行われていないので、次の法律案の通りです。

裁判所法の一部を改正する法律案
 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)の一部を次のように改正する。
 附則第四項を次のように改める。
  第六十七条の二の規定は、平成二十三年十月三十一日までの間は、適用しない。この場合において、第六十七条第二項中「最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない」とあるのは「国庫から一定額の給与を受ける。ただし、修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間を超える部分については、この限りでない」と、同条第三項中「前項に定めるもののほか、第一項」とあるのは「第一項」とする。
 附則第五項から第七項までを削る。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
2以降は省略

理 由
 平成二十三年十月三十一日までの間、暫定的に、司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金を国が貸与する制度を停止し、司法修習生に対し給与を支給する制度とする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
   本案施行に要する経費
 本案施行に要する経費としては、平成二十二年度において約二十七億円、平成二十三年度において約七十三億円(なお、経過措置により給与を支給する制度が存続する平成二十四年度において約二億円)の見込みである。

9月4日に司法修習生の給与制と貸付制を書き、一方でマスコミ各社では私が書いた9月30日の朝日新聞の記者のみならず司法修習生の給与制維持については、反対論を多く述べると共に掲載し、心配でありました。一方、国会議員の中では、給与制の維持論復活の動きが生じ、もしかしたら期待がもてるのではと気をもんだ数ヶ月でした。今後の1年間の暫定期間の間、日弁連は司法修習制度の重要性を強く訴え、その必要性につきより多くの国民から支持が得られるように動いて欲しいと思います。

司法修習制度について、私から付け加えるとすれば、社会にとって法は重要です。政府は外資を呼び込もうとしています。外資に関係して投資という単純なことではなく、様々な権利等に関してもトラブルが増加すると思います。その際、外資だからと差別をすることはできません。そんなことをしたら、不合理な北朝鮮状態になり我々自身が不幸になります。従い、合理的に活動できる法曹人を育てることは、我々の義務であり、年間73億円の投資は社会として必要なものと思います。

また、司法修習は最高裁の下で実施されますが、これも維持すべきであり、例えばトンデモ弁護士が教育係になるような危険性は排除しておいた方がよいと思います。修習(研修)として時間拘束するのであるから、その間、給与が払われるのは企業における研修と同様で当然と思います。

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2010年11月26日 (金)

国会のレベル

柳田稔前法相の「個別の事案についてはお答えを差し控えます」と「法と証拠に基づいて適切にやっております」の二つのパターンで乗り切れるとの発言が国会軽視との批判を受けて辞任したのは、11月22日でした。

11月26日の朝日新聞天声人語は、国会が「一種の低俗番組」との投書があるぐらい嘆かわしいと書いておりました。正確には、次の天声人語へのリンクを読んでください。

朝日新聞 天声人語 11月26日 国会は言論の府のはずが、・・・・

私自身もこのことは痛切に思っています。ささいなことの揚げ足取り批判で、本質の議論が余りにもない。

例えば、176国会での10月6日衆議院本会議(第2号)での稲田朋美議員の質問に対して、菅直人首相は、その冒頭で次のように語っているのです。

稲田朋美議員にお答えを申し上げます。まず冒頭、大変厳しい言葉が並んでおりましたが、まあ私も野党時代かなり厳しい言葉を使っておりました。しかし、これほど汚い言葉は使わなかったつもりであります。

この衆議院本会議の10月6日の第2号会議録が未だにWebで読めず、衆議院TVで聞くしかない。稲田と菅のやりとりのどちらをどう考えるかは、議事録を読む必要があると思いますが、(どちらの責任かは別にして)首相が汚い言葉と述べるのは、正常な国会とは思えない。国会ではなくヤクザ抗争の話し合いの場になってしまう。

やはり小選挙区制の悪影響かなと思ってしまいます。

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2010年11月25日 (木)

朝鮮学校の無償化停止では日本が北朝鮮化する

次のニュースがありました。

読売 11月25日 朝鮮学校の無償化手続き停止…急転換に戸惑いも

北朝鮮による砲撃事件を受けてのことである。しかし、朝鮮学校は、そもそも北朝鮮政府の出先機関ではなく、日本の法律により設立されている日本の各種学校である。また、朝鮮学校の多くの生徒の国籍は日本でなく北朝鮮かも知れないが、多くの人達は実質的に難民に近い家族の人達と思う。そうなると、差別ではなく保護すべき対象と考えるのが正しいと思う。

1) 朝鮮学校の無償化

文部科学省の高等学校等就学支援金の支給に関する検討会議が「高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準等について」という報告書を、8月30日に出した。(ここにあります。リンク元はここです。)

文部科学省の専門家会議が朝鮮学校の無償化を決定したかのような報道もありましたが、報告書にあるように基準を示したのです。基準によって朝鮮学校が無償化の対象となるか、ならないかを判断し、あるいは、この基準が正しいかどうかを議論すべきです。砲撃をしたから、北朝鮮だからとの理由で無償化をしないとなれば、日本は法治国家と言えなくなると思います。さもなくば、北朝鮮並みの、政権与党によるご都合判断による独裁国家になってしまいます。

ちなみに、8月30日の報告書において、どのようなことを述べているか、その幾つかを抜き出します。正しいことが書かれてあり、賛成します。なお、基準は、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」の解釈指針としての基準であり、その他学校教育法等も含め解釈する必要があります。

・ 「高等学校の課程に類する課程」としての位置付けが、制度的に担保されていること

・ 教育活動全体として高等学校に類する教育水準が確保されていること

・ 教員が、教員としての職務を実施するに必要な専門的教育を受けていること

・ 就学支援金の管理を含めその他の法令に基づく学校の運営が適正に行われること

・ 学校教育法や同法施行規則に基づく学校の自己評価及び結果の公表や積極的な情報提供、私立学校法に基づく学校法人に関する財産目録等の備付け及び閲覧が確保されていること

・ 現行法令上求められている説明責任がしっかり果たされていること

無償化の適用を認める対象とする学校としての審査についても書類審査のみならず対象となる学校を訪問し状況を確認することが適切であるとしており、財務諸表は毎年、その他は3年ごとに適宜報告を受け、要件を満たさしていないと判断されれば、取消措置を述べている。

これらに従い朝鮮学校も審査すればよいのであり、朝鮮学校の生徒が日本シンパになってくれればよいではないかと思う。

2) 北朝鮮リスク

上記は、日本の学校法人である朝鮮学校についてです。北朝鮮が何故砲撃をしたのか理解に苦しむところです。報道で言われているような瀬戸際外交で米国と交渉を開始するための手段であれば、結果的に改善し、安定化することもあり得るわけで、南の民間人に犠牲者が出たのは悲しいことですが、その賠償と今後の防止策の構築に進める可能性があることを期待します。

悪い場合は、北朝鮮政府首脳が軍を末端まで押さえることができなくなり、末端が勝手に暴走していた場合です。そうなると誰も止められず、半島での戦争になり、多くの死者が出てしまうことです。現在、一番影響力を持てる外国は中国であり、中国ですら手出しができなくなった場合、どのような結果になるか恐ろしいと思います。その様な事態になった時、米国は手を出すかどうか、不明と私は思います。中国が半島全てを掌握することを米国は望まないでしょう。しかし、全面的に出て行くには、犠牲のみで得る所はないかも知れません。勿論、そんな事態を望んでいるのではなく、平和が続くことを望みます。その平和は、やはり日中韓米露北が一致協力しないと望めないと思うのです。

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2010年11月21日 (日)

スーパー・コンピューター競争

スーパー・コンピューターは昨年の事業仕分けで有名になりましたが、やはり現時点での世界最速は中国でしたとのニュースがありました。

日経 11月15日 スパコン、中国製が1、3位 米国に次ぐ日本勢の競合に

Top 500というチームが、最速スーパー・コンピューターのリストを作成して発表しており、Top 500 Supercomputerのホームページは、このhttp://www.top500.org/です。Top 500のWebから、スーパー・コンピューター競争の現状を眺めてみます。

1) 世界最速スパコン10台

世界最速スパコン10台のリストを作成しました。(クリックすると別窓で開きます。)

Supercomputer201011top10 

2) 最速スパコン500台の2005年以降の国別内訳

台数で比べてもよいのですが、最大演算速度(テラ・フロップ/秒)の国別合計でグラフを書き、2010年11月リストの最大10国を個別でそれ以外はその他として示したのが次のグラフです。

Supercomputer20052010

米国が圧倒的に多いのですが、それにしてもこの右肩上がりのカーブはすごいです。2005年6月には最速スパコン500台の性能合計は1,695テラ・フロップ/秒であったのが、5年半後には25倍以上の43,673テラ・フロップ/秒になっている。

3) 激しい競争

必ずしも競争をしているわけではないでしょうが、結果は競争です。米国の首位は過去ずっと揺るぎないのですが、2位以下の国の性能合計を2005年以降についてグラフを書きました。

Supercomputer20052010othersthanus

少し古くなったらTop500からはずれるスパコンがあらわれ、結果合計性能10位以内からも脱落します。日本はかろうじて10位以内をKeepしています。一方、中国は2010年6月にはTop500にはたったの5台で82TFであったのが、11月には41台で5,689TFです。国別シェアのグラフが次ですが、色の変化の激しさが分かります。

Supercomputer20052010share

このTop500のページに同様の1993年からのグラフがありますが、日本は2003年頃までは米国に次ぐ有力な所にいました。

4) スパコン競争の意味する所

スパコンは持っているだけでは意味がありません。しかし、高速演算機能を利用すれば、従来考えられなかったシミュレーションが可能になります。最先端技術開発や研究と切っても切り離せないと考えます。昔は、式を作って、それがよくあてはまると主張すればよかったのが、今はコンピューター・モデルを作って、よくあてはまるとしなければならないと同時に、その結果の応用分野が果てしなく広まることとなった。スパコンなしには、勝てない世の中になってしまった。

一方で、米国はさすがと思います。軍用のスパコンもあるが、これだけ多くのスパコンが存在するということは、それだけ多くの利用者が存在し、また世界中から研究者を集める力を持っていることを意味する。中国は、恐るべしと言うか、既に世界第2位の地位を確保したような気もします。

5) 事業仕分け人は、どう思っているかな?

昨年の事業仕分けのスパコンについてのワーキング・グループ評価コメントというのがここにあります。普通の感覚の人だったら、恥ずかしくて穴に入りたくなるかなとも思ってしまいます。

「現状はスパコンの巨艦巨砲主義に陥っていないか。」なんてありますが、「10ぺタスパコンを開発することが自己目的化している。」というのを「事業仕分けとは批判することが自己目的化している。」と簡単に言いかえることができます。

一方からのみ物事を見てはダメです。正当に評価するには、多方面から正しく見ることが必要です。私は、スパコン派です。そうしないと、本当にお先真っ暗に思えるからです。

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裁判員裁判での重大事件

裁判員裁判で、11月16日に死刑判決がありました。

神奈川新聞 11月17日 横浜沖バラバラ強殺:裁判員裁判で初の死刑判決、「執拗で残虐」/横浜地裁

1) 死刑判決

私は、死刑は好きではありません。もっとも、好き嫌いで言えば、ほとんどの人は嫌いであり、死刑を課すような犯罪がなくなることを望んでいるはずです。11月16日の横浜地裁の判決のニュースで、「控訴することを勧めたい」と裁判官が述べたことには驚きました。即ち、そんな軽々しい判断で死刑を評決したのかとの点です。しかも、判断基準として永山基準をよりどころにしたとあります。

一人の命を奪うのに、そんなことでよいのだろうかと思います。職業裁判官でないことから、永山基準にとらわれる必要はなかったはずです。そして、永山基準を述べた最高裁判決の1990年から死刑執行の1997年に至るまでの永山死刑囚の獄中のことも裁判員は知ることができた。刑事罰とは、被害者に代わって復讐を遂げるものではないと私は考える。例え、被害者が死刑を望んでも、宗教的すぎるかも知れないが「あなたには天国に行って欲しいから、私は無期懲役を主張しました。」という選択もあると思う。勿論、評議の秘密により、心の中でしか、述べることはできないが、心の中で述べても伝わる可能性はあると思う。死刑執行を命じる法務大臣や死刑執行官は三権分立の執行機関の人であり、裁判員は死刑の決定に関与をしていることを忘れてはならないと思う。日本国憲法第11条の基本的人権は、重いと思う。

第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

2) 少年犯罪

少年犯罪は、裁判員裁判が適切なのだろうかと疑問を持ちます。

河北新報 11月20日 少年「厳しい処罰を」 断罪の瞬間、動揺も 石巻3人殺傷

少年の被告に対する死刑求刑です。もう一つ、少年事件の裁判を掲げます。

共同47 11月19日 同級生刺殺で不定期刑求刑 奈良地裁、裁判員裁判

少年(20歳に満たない者が該当し、女も少年です。)の刑事事件については少年法が適用され、少年法20条に次の定めがあります。この20条により検察送致となった場合は、原則起訴となり、重大事件の場合は裁判員制度による裁判となります。

第20条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。

少年法は、少年の裁判に当たり、第50条で第9条の趣旨に従うことを求めています。

第50条 少年に対する刑事事件の審理は、第九条の趣旨に従つて、これを行わなければならない。

第9条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければならない。

また、少年法は、第55条で裁判所が保護処分に付するための家庭裁判所への移送決定もあり得ることを定めています。

第55条 裁判所は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、決定をもつて、事件を家庭裁判所に移送しなければならない。

奈良地裁の裁判で弁護側は「心神耗弱だったのは明らか。家裁に移送後、医療少年院への収容を望む」と述べています。少年事件は、複雑な背景を持っていることが多い。少年法第9条の趣旨に従い時間をかけて審理をするのがよく、裁判員裁判には不向きだと思います。永山事件の永山則夫も少年で殺人を犯し、逮捕時19歳10月でした。一審だからとデタラメでもよいとはなりません。

3) 被告否認

裁判員裁判でも被告否認事件はあります。

南日本新聞 11月2日 鹿児島市・老夫婦強殺初公判 「全く知らない」と被告

裁判員にとって大変ではありますが、自分の良識に従って、どうどうと判断を下せばよいと思います。疑わしきは被告人の有利とする原則を守ることだと思います。もし、被告人が嘘をついていると判断できれば、有罪とし量刑を判断する。

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2010年11月18日 (木)

GDPの分析から見る日本経済

11月15日に2010年7~9月期の四半期GDPの発表がありました。

日経 11月15日 7~9月期実質GDP、年率3.9%増 耐久財が11.1%増

内閣府の発表はここ(pdf)にあります。

1) 四半期GDPのグラフ

2000年以降の四半期GDPの推移のチャートを書きました。

Jgdp201011a

ほとんど変化がありません。常に10-12月が名目では増加するので、デフレ影響を取り除いた実質の季節調整を行ったチャートを見てみます。

Jgdp201011b

2009年1-3月をボトムとして輸出拡大により回復していることが覗えます。それでも、この10年間の増加は、たったの9%です。

2) 1980年移行のGDPの推移

1980年から30年間のGDPの推移を見てみました。なお、支出サイドからではなく、産業分野別の付加価値をベースとしたチャートにしました。産業分野別のGDPデータは国民経済計算確報に記載されており、2008年が最新データとなります。

Jgdp201011c

1997年までは、マイナスになることはなかったことが分かります。1998年からは、ほぼ水平になりました。解りつらいので、1990年を1.0としてチャートを書きました。すると、産業部門により相当の差があることが分かります。

Jgdp201011d

繊維と鉱業は、1990年から始まり、今や1990年の40%以下です。

3) 2004年からの5年間分析

2004年から2008年について同じチャートを作りました。

Jgdp201011e

日本経済は閉塞状況と言われますが、産業によっては、決してそんなことはありません。このチャートでは、金額は掴めないので、2004年から2008年への各産業の付加価値増加額でチャートを作りました。(減少の場合は、マイナスにしています、)

Jgdp201011f

産業分類は日本のSNAにおける経済活動別分類ですが、GDP(付加価値)とは、その産業の販売額と仕入額の差であり、利益、人件費、固定資産の減価償却費の合計額と思って、ほぼ大丈夫です。従い、大きければ、雇用の力も大きいと言えます。ところで、上のチャートは名目GDPの増加額なので、過去5年において雇用増加が可能であった産業が上にあります。一方、下の方は雇用を縮小せざるを得なかった産業です。

成長産業とは何かをよく考え、成長産業を伸ばしていくことが重要と思います。

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2010年11月15日 (月)

尖閣映像U-Tube流出関連

言いたいことが多い事件でありますが、そのうちの幾つかについて。

1) 本来なら新聞やテレビなどがスクープすべきもの

この意見は、その通りと思う。しかし、一方で、そのようにマスコミを初めメディアが日本では育っていないのが実状と考える。尖閣映像U-Tube流出事件に関して、西山事件が引き合いに出されることがあるが、西山事件こそ、日本のマスコミをダメにした事件でもあったと思う。

公務員法100条の守秘義務違反となった蓮見喜久子氏は、当時毎日新聞記者であった西山太吉氏に情報を提供した。本来であれば、西山太吉氏も毎日新聞社も、情報源を守り通さねばならなかった。しかし、その信頼を裏切った。情報を新聞記事のネタにしたかもしれないが、当時社会党・現在民主党の横路孝弘氏に現物(もしかしたら、細工も何もしていないコピーだったかも知れないが)を渡した。その結果、国会でその紙は使われることになり、情報提供者の意図とは完全に異なってしまった。

そんな状態であり、日本のマスコミを信じることができなくても、当然と思える。社会正義を感じて行動する場合は、どうするか。人によって方法は様々だと思うが、マスコミは人々から信頼を受けることができるように活動すべきである。

2) 刑事訴訟法47条

中国漁船船長を逮捕した直後に、訴訟に関する書類の公開を禁じている刑事訴訟法47条によりビデオは公開困難との説明を政府はしていた。法の解釈は、誰がするのかは、三権分立であれば、明白である。裁判所であり、政府でも国会でもない。今回の場合は、刑事訴訟法47条の但し書きである公益上の必要その他の事由を適用せずとも、逮捕直後に「このビデオのような事実があり逮捕した。」と発表することも、私は可能であったと思う。

2001年12月22日に九州南西海域不審船事案と呼ばれている北朝鮮工作船事件(参考ここ)があった。この事件では、工作船は自爆し、乗船していた10名全員が死亡しているが、事件直後に海上保安庁は撮影したビデオを公開した。

今回も、事件直後に海上保安庁は公開について政府首脳と相談した可能性は充分あると思う。この点についてのマスコミによる調査能力は、ほぼ期待できないように思う。

法の解釈について裁判所が行っていない場合、それは国民であると言いたい。

3) 外交

今回の事件で政府関係者は、外交が絡むので公開については政府判断が伴うと言っているように感じる。これほど、奇妙な説明はないように思う。民主党は政権についた時は、あらゆる外交密約を洗い出し、公表すると言っていた。それは、国民の前に重要な情報を開示し、国民のための外交を行うことであったはず。しかし、その路線は転換され、国民に開示する情報を選択し、国民をコントロールする方向になったと危惧される。

国民の目線に立って政治を行うことは極めて重要である。4億円については、容疑になっていないと逃れることが許されるのだろうか。法令違反はないとして胸をはっても、多くの人が社会的に受け入れないこともある。

4) 映像流出公務員

上記は映像流出公務員の罪に関して述べた文章ではありません。起訴されれば、裁判があるのであり、裁判を待った方がよいと思いますから。現在報道されていることからすれば、当該公務員は無罪を主張すると思われ、公務員法100条について裁判所がどう判断するか興味を持ちます。

なお、この100条は重要であり、機密保持がなければ入札を初め不正横行が考えられるし、100条があるから民間に委ねることができないことも政府に委ねることが可能になる。しかし、全ての情報が機密となると、国民に適正な情報開示が実施されなくなる。法を作らないと何も開示されないのも変だと思います。

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2010年11月 9日 (火)

経団連も出しましたね

11月8日に書いた「法人税は、どうするか?」の中で、経団連米倉会長の講演での発言に関連して書きましたが、その中で触れた「社会保障・税共通の番号制度の早期導入」について、経団連も11月8日に次の政策提言を出しています。

豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める

番号制度は、重要なインフラです。公正で公平な制度運用を低コストで実現するため、国民(在日・滞在外国人も含めてです)全員をカバーする共通番号制は、必要であると考えます。例えば、子ども手当にしても、番号制がないことにより支給のために、どれだけのコストを掛けているのだろうと思います。番号制があれば、税額控除や税金還付といった形で、最小限のコストで終わらせることができる。

年金や健康保険の合理的な統合・改革も、番号制がなければ、実現には困難が伴うと思います。基礎インフラが構築されていないと、社会の発展は難しく、結局は富裕層のみが利益を享受し貧困層には陽があたらない状態になる。しかも、その改善はインフラなしではいよいよ進まないという悪循環になると思います。

同じ11月18日に、経団連会長コメントとして次のコメントがありました。

記者会見における米倉会長発言要旨

日経記事の内容は記載されていませんが、【インフラ輸出について】ついてとの短い文章があります。このインフラ輸出とは電力・水・通信・鉄道・道路といったインフラに関連するプラントや機器の輸出が主体と理解します。私としては、プラントや機器も重要ですが、プラントや機器の内容を決定する計画の立案・推進というソフトの輸出も極めて重要と思います。ハコモノが悪いのではなく、役に立たないハコモノが悪いのです。役に立つかどうかは、計画の立案・推進が正しいかどうかに大きく依存します。日本での失敗例も、反面教師として貴重な輸出資源であり、且つ相手国に大きな貢献をします。計画の立案・推進のみならず、運営のノウハウや破棄物等の処理や設備の維持・改修・改造・資産除去等様々なソフト関係があります。

日本で、そんなことができているのかとの疑問はありますが、逆に輸出することにより学んで日本のインフラに関するソフトが良くなることも期待できると思います。

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2010年11月 8日 (月)

法人税は、どうするのか?

11月5日の日経記事です。

日経 11月5日 経団連会長「負担同じなら口先だけの活性化」 課税ベース巡り

「実際の負担が同じなら口先だけの産業活性化。効果は出ない」や「欠損金を翌期以降に繰り越して所得と相殺できる制度の見直しについては、「赤字企業をさらに追い詰める。体を張ってでも阻止したい」と語った。」とあります。

ほとんどの企業経営者・企業関係者は、同じ意見だと思います。そうなると、何のために法人税改正をするのか、訳が分からなくなります。拙速な改正をしないで、多くの人の意見を素直に聞いて、また法人税のみを取り上げるのではなく税全体あるいは政府が税で何をすべきかや、今後の国債・政府債務問題も含めて検討し、信頼できる幾つかのシンクタンクの検討も聴取し、正しい議論を重ねて、長期的視野のもとで改正すべきと考えます。

でも、思いつくことを少し書いてみます。

1) 法人税率を5%引き下げる財源

11月4日の第7回税制調査会に提出された資料に「法人税率引き下げの財源措置の例」と言う表があり、ここで見ることができます。 法人税率を5%引き下げた場合は、1.4兆円~2.1兆円の税収減が予想され、それをカバーするための税改正の対象が10項目書かれており、各項目毎に実施した場合の税収増の予想が右端の欄に書いてあります。一番大きな税収増となるのが、地球温暖化対策税の約1兆7千億円。しかし、地球温暖化対策税は実施する場合は、目的が限定され、法人税の穴埋めにならない気がします。それ以外では、欠損金の繰越控除50%廃止で5000億円や減価償却を定額法のみとする8000億円があります。

法人税率引き下げをするなら、この表の項目から選ばれるはずであり、5%引き下げて、この中の項目を実施するなら、現行の税制の方が、よっぽど合理的です。事業仕分けで、税制調査会廃止を答申するのが良いのではと思ってしまいます。

2) 米倉会長の講演

11月5日経団連米倉会長の講演は、ここにあるのですが、冒頭に書いた発言は見あたりません。講演の後の質疑応答の部分ではと思います。講演の中で、「税財政・社会保障の一体改革」と述べておられます。民主党が主張していたのは、そのような改革であったはず。ところが政権を取ると、改革には見向きもせずに、小沢隠しや変なことばかりしているように思えます。

経団連の2010年9月14日の「平成23年度税制改正に関する提言」というのがここにあり、「II.税制抜本改革のあり方」に「(4) 社会保障・税共通の番号制度の早期導入」が書かれています。社会保障・税共通の番号制度の早期導入は、推進すべきであるが、政府はさぼっているとしか思えない。

米倉会長の講演にも、TPP交渉への早期交渉参加があります。TPPに関しては、日経 11月6日 TPP、協議開始を明記 閣僚委決定 農業改革方針、11年6月めど と報道されているように、日本の農業をどのように構造改革をしていくかが、今後の焦点のはずです。魅力あり競争力ある農業を育てていくことに、ほとんどの人は異論がないと思います。高齢化と耕作放棄地の拡大が進み、そうでなくとも構造改革が必要であることは事実です。農業の構造改革を税金を投入せずにすることは無理と考えます。法人税を財源として、農業の構造改革を推進して良いのではと思います。農業も企業も両者とも成り立っていくことが重要です。

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2010年11月 6日 (土)

You Tube尖閣ビデオ

最初に投稿されたビデオは、既にないようですが、CopyされたバージョンがYou Tubeに現時点では存在し、見ることができました。リンクは、掲げませんが、撮影している海上保安庁の人が伝える時間や位置そして中国漁船の行動状況についての音声が残っており、状況がよく分かります。

9月28日に尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件ビデオ公開で、ビデオを公開すべきと書きました。政府は、11月1日に国会内で衆参両院の予算委員会理事ら30人にのみ公開した。私が、書いたのが9月28日ですから、1月以上経過した後でした。

You Tubeに政府の意図に反して投稿したのは、現状の政府の対応に不満を持った誰かであろうと思います。You Tubeを告発手段として利用したのです。Net社会の現在、そのようなこともあり得るとして対処する必要があるが、現在の政権・内閣はビデオ公開はおろか、中国とのお話もできない情けない政権・内閣であると評価する人が多くなったのだろうと思います。

それは、そうだな。小沢4億円の資金源について聞きたいと多くの人が思っているのに、実現する見込みがない。菅首相が、そのように動いたら、小沢氏は党を出て行き、民主党はつぶれると予想されるから、何もできない。出て行った小沢一派は、内閣不信任案を提出し、成立、衆議院解散になる可能性が高い。変な状態だと思います。そもそも、民主党とは特定の政治理念があるわけではなく、2大政党と称して、自民党では権力にありつけない人達が集まったような部分もある。2大政党制とは、良いものではないですね。

そんなことを言っても、簡単に変わらないでしょうから、とりあえずは見守りますが、どうなるのでしょう。犯人逮捕で解決する問題ではありません。もしかしたら、今回の犯人とは政権の幹部の人達であり、外交を初め多くのことで支持を受けることをしていないことである気がします。

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2010年11月 1日 (月)

ニアミス管制官の最高裁有罪確定

最高裁の10月26日の上告棄却決定により東京高裁の有罪判決が確定しました。執行猶予はありますが、このような出来事が刑事罰となることについて、スッキリしない面はあります。最高裁の棄却決定文書のリンクを掲げます。

最高裁判所第一小法廷 決定文書(検索結果画面全文

でも、私が一番言いたいことは、櫻井龍子裁判官の反対意見の中にあります。

(航空機の運航のように複雑な機械とそれを操作する人間の共同作業が不可欠な現代の高度システムにおいては,誰でも起こしがちな小さなミスが重大な事故につながる可能性は常にある。それだからこそ,二重,三重の安全装置を備えることが肝要であり,その安全装置が十全の機能を果たせるよう日々の努力が求められるというべきである。また,所論は,本件のようなミスについて刑事責任を問うことになると,将来の刑事責任の追及をおそれてミスやその原因を隠ぺいするという萎縮効果が生じ,システム全体の安全性の向上に支障を来す旨主張するが,これは今後検討すべき重要な問題提起であると考える。

なお、この事件については、航空事故調査報告書が作成されており、ここにあります。事故調査報告書を読んでも、単純ではないことがわかります。例えば、管制官が西に向かって上昇中の747機に下降指示をしてしまったのが3時54分15秒で、それは管制室のモニターにCNF(Conflict Alert)が出たからです。この747機ともう一つの東に水平に飛んでいたDC10機にTA(Traffic Advisory)が出たのが3秒後の54分18秒で、747機にその1秒後の54分19秒に出たのです。アラームのガッチャンコであり、よくある現象です。747機とDC10機が接近してすれ違うのがアラームが出てから1分も経過しない55分11秒です。この事態を人間が合理的に判断して、どうのこうのと言うには、無理があると思います。もちろん回避すべく、訓練すべきですが、人間である以上は、ミスは犯す。それを、刑事罰として問えるのか?むしろ、システムや制度でカバーすべきと考えます。

なお、TAですが、報道されているように、TAと管制官指示を含むその他の判断でTAが優先すると必ずしもなっていませんでした。しかし、空の上では、他の会社の飛行機ともすれ違うし、他の国の飛行機ともすれ違うし、当時は未だ全機がACAS(Airborne Collision Avoidance System)を装備していたとは限らなかったと思います。ACASを優先するとの規則を作るなら、それは全世界共通のルールでないとかえって危険であった可能性もあります。人間が作るシステムは、事故や失敗を繰り返して、発展していくものです。そのことを忘れてはならないと思います。

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