ニアミス管制官の最高裁有罪確定
最高裁の10月26日の上告棄却決定により東京高裁の有罪判決が確定しました。執行猶予はありますが、このような出来事が刑事罰となることについて、スッキリしない面はあります。最高裁の棄却決定文書のリンクを掲げます。
でも、私が一番言いたいことは、櫻井龍子裁判官の反対意見の中にあります。
(航空機の運航のように複雑な機械とそれを操作する人間の共同作業が不可欠な現代の高度システムにおいては,誰でも起こしがちな小さなミスが重大な事故につながる可能性は常にある。それだからこそ,二重,三重の安全装置を備えることが肝要であり,その安全装置が十全の機能を果たせるよう日々の努力が求められるというべきである。また,所論は,本件のようなミスについて刑事責任を問うことになると,将来の刑事責任の追及をおそれてミスやその原因を隠ぺいするという萎縮効果が生じ,システム全体の安全性の向上に支障を来す旨主張するが,これは今後検討すべき重要な問題提起であると考える。 |
なお、この事件については、航空事故調査報告書が作成されており、ここにあります。事故調査報告書を読んでも、単純ではないことがわかります。例えば、管制官が西に向かって上昇中の747機に下降指示をしてしまったのが3時54分15秒で、それは管制室のモニターにCNF(Conflict Alert)が出たからです。この747機ともう一つの東に水平に飛んでいたDC10機にTA(Traffic Advisory)が出たのが3秒後の54分18秒で、747機にその1秒後の54分19秒に出たのです。アラームのガッチャンコであり、よくある現象です。747機とDC10機が接近してすれ違うのがアラームが出てから1分も経過しない55分11秒です。この事態を人間が合理的に判断して、どうのこうのと言うには、無理があると思います。もちろん回避すべく、訓練すべきですが、人間である以上は、ミスは犯す。それを、刑事罰として問えるのか?むしろ、システムや制度でカバーすべきと考えます。
なお、TAですが、報道されているように、TAと管制官指示を含むその他の判断でTAが優先すると必ずしもなっていませんでした。しかし、空の上では、他の会社の飛行機ともすれ違うし、他の国の飛行機ともすれ違うし、当時は未だ全機がACAS(Airborne Collision Avoidance System)を装備していたとは限らなかったと思います。ACASを優先するとの規則を作るなら、それは全世界共通のルールでないとかえって危険であった可能性もあります。人間が作るシステムは、事故や失敗を繰り返して、発展していくものです。そのことを忘れてはならないと思います。
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