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2010年12月22日 (水)

JR西日本尼崎事故裁判

裁判に関する2つのニュースがありました。

時事ドットコム 12月21日 「ATS整備怠る」検察指摘=前提誤りと弁護側反論-JR西前社長初公判・福知山線

時事ドットコム 12月22日 ATS設置義務、民事は認めず=福知山線事故で-車掌の復職請求は却下・大阪地裁
日経 12月22日 JR事故で乗務、原告の車掌復職認めず 大阪地裁

車掌の民事裁判については、時事ドットコムと日経でニュアンスの違いを感じたので、2つ記事リンクを載せました。

1) 山崎元社長の刑事裁判

2009年7月9日のJR福知山線脱線事故で山崎正夫社長起訴で書きましたが、刑事裁判の意義に疑問を持ちます。不起訴にすべきであったと。即ち、刑事罰に問われる以上、被告に真実を語るように強制することはできません。例えば、刑事訴訟法311条第1項には「被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。」とあります。自信がなければ、「覚えていません。」で正しいのであり、刑事裁判とは真実を証明する場ではありません。刑事裁判は、検察が起訴した容疑者が刑事罰を受けるべきか、受けるとすればその刑の重さについて判断する場です。

容疑者は、刑を受けたくありませんし、今回の事件のような場合であれば、改善すべき点の問題点の追求に協力するより、自分自身が無罪になることを優先します。当然のことです。

尼崎事故は、酷い事件と思いますし、許せないと思います。JR西日本は被害者に最大限の償いをすべきと考えます。そして、事故の再発に向けて、他の鉄道会社の参考にもなるような事故に関する報告書を出すべきと考えますし、山崎元社長は率先してそのような活動をすべきと考えます。

しかし、刑事罰はと言うと、起訴をすることにより、山崎元社長をそのような活動から遠ざけ、ひいてはJR西日本にも山崎元社長のトカゲのしっぽ切りにする口実を与えかねないと思います。それからすると、検察は起訴すべきではなかった。村木厚子氏の起訴のようになりましたが、一方で、偽の障害者団体証明書である凛の会に郵便料金を安くするために証明書が不正に発行されたのは事実のはずです。その犯人は誰でしょうか?Webを探すとこのJanJanNewsのようなのも出てきます。まさかと思う次第で、真偽の程は全く解りませんが、検察批判にもやはり色々な種類があるようです。

2) 車掌の民事裁判

このニュースに接するまで車掌の復帰について民事裁判で争われていることを知りませんでした。時事ドットコムと日経を見てもニュアンスが異なるし、判決文も読んでおらず、的確なことは言えません。しかし、この様な予期しない事故に遭遇したら、動転してしまったとしても、それを責めるのは行き過ぎだと思います。事故報告書を読むと、次のような記述があり、そのような状態になるのだろうと思いました。(事故報告書154ページ)

2.17.1.1 本件車掌の対応
本事故発生直後の対応について、本件車掌は、次のように口述している。
それまでの経験では事故か何かあれば運転士から連絡があったのだが、本事故のときは本件運転士から何も言ってこなかった。このため、無線で輸送指令員に報告しようと思ったが、列車無線機は「ツン」とも「スン」とも言わなかったので、9時19又は20分ごろ業務用携帯電話で輸送指令員に報告していたところ、乗客から脱線している旨伝えられたので、7両目運転室右側の窓から顔を出して見ると、下り線上に車両があったため、脱線している旨輸送指令員に報告した。なお、列車の左側は見なかった。
輸送指令員から運転士を見てきて欲しいと言われたので、運転士のところに行くための準備をし、降車する前に防護無線のカバーを破りボタンを押したが、発報する際の「ピピピ」という音が出ず、反応がなかった。運転室右側の乗降口から線路に降りて前方に行き、途中で線路右側のフェンスから道路に出て、下り線上の車両の前方に行ったところ、本件列車から多数の乗客が降りてきていた。
大変なことになっているので警察、消防に連絡するよう、通話状態のままで持っていた業務用携帯電話で輸送指令員に言った。しかし、うまく説明できなかったので、「何を言っているのか判らない」と輸送指令員が言っていた。車両の数を数えたが、6両しかなく、あせってパニックになった。どれが1両目か分からなかった。
輸送指令員から「運転士と替わって」と繰り返し言われたので、そばにいた別の列車の運転士に業務用携帯電話を渡した。そのときは、この運転士が対向運転士と思っていたが、後で聞いたところでは、後続運転士であった。
その後、負傷者に声をかけたが、乗客に頭を下げるので精一杯で、ほかのことはできなかった。その後、警察官が来ていろいろ聞かれた。そして、大阪支社の輸送課員が来たので、二人で警察署に行った。
自分は、運転席の椅子で左の脇腹を強く打ったが、病院には行っていない。強く打ったと言っても、運転士の椅子がクッションとなり、それほど酷くはなかったと思う。

事故の発生時間は9時19分00秒後頃と推定され、救出のために乗客や一般の人が車両の屋根にのぼったりしていたのですが、1500ボルトの架線(き電線)には10時3分51秒まで電気が流れ続け、触れたら感電死する可能性がある危険な状態であったのです。(報告書158ページの表36)45分間も裸線に高電圧が流れたのですが、予期せぬ事故が発生した時に、的確な情報を入手し、全体像を把握して、適切な措置を下すことの難しさがあります。45分は長すぎると思うし、検証をし、今後の対策に役立てるべきと思います。

3) 事故原因

事故原因はJR西日本(果たしてJR西日本のみの止まるのかどうかよく判りませんが)の例えば日勤教育に代表されるような形骸的な組織運営の体質がその原因として存在すると思います。そして、それはATS設置より本質的な問題であると思います。

実は、私たちも本質に迫るのではなく、ともすれば形式的に言い訳的に反応して、何かをする。形骸化していないか、時には振り返ってみる必要もあることを、この事故は物語ってはいないでしょうか?

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