問題多すぎのNHKクローズアップ現代
12月8日のNHKクローズアップ現代は「ある少女の選択~“延命”生と死のはざまで~」というタイトルで放映を行っていました。どのようなことをするか(どのような変なことを伝えるか)と思って見てみましたが、やはり、これでは誤解を生むだけと思いました。
1) 延命治療
延命治療という言葉を番組では多用していました。しかし、その意味は何でしょうか?私は、回復がほとんど見込めない治療または多大の苦痛を伴い生活レベル(QOL: Quality of Life)が著しく損なわれることが予想される治療と考えます。例えば、末期癌で、その治療方法を選択しても副作用が大きく、多いと予想されるのみならず実際に治療をしていて副作用による苦痛が大きすぎ一方で短期間の延命効果しか得られないと見込まれる治療と考えます。但し、延命治療であるかどうかには主観がはいるのであり、その患者にしか判断できないと考えます。
人は自分の病を治療するに、その方法について選択権を有します。副作用や苦痛の大きい治療より、回復の可能性は少し低いかも知れないが、QOLの高い生活を選択することがありえます。そこに緩和医療が、存在するのであり、また緩和医療とは治療を放棄することとは全く異なります。緩和医療でも、治療を継続します。但し、QOLを極端に下げてまでの治療方法は選択せず、人間としての尊厳を持ちながら治療を行います。
私が考えるようなメッセージは全くありませんでした。放映された番組では、人口呼吸器を使用している少女が人工透析を拒否して、死んでいったとの内容に受け取りました。私の感想は、何故人工透析をしなかったのだろうか、人工透析を継続して普通に近い生活をしている人が大勢いるのに。まして、若いから、治療を継続していれば、新しい治療方法により、完全でなくとも、現状より改善する可能性があるかも知れないのにと思いました。
2) 緩和医療
多くの方が緩和医療を選択しています。例えば、緩和ケア医の日々所感のようにブログを書いておられる医師もいます。在宅医療も、高いQOLを保ちつつ治療をする方法と思います。但し、訪問診療・往診、訪問看護、訪問介護が一体となった連携がとれ、入院等のために病院と提携がとれているようなシステムが構築されている必要があります。在宅医療をシステムとして構築し、実施している医師や医療機関も多くなっています。例えば、ナカノ会は鹿児島市で在宅医療をしておられます。
3) 本質を理解できないNHKクローズアップ現代
私は、12月8日のある少女については、人工透析という問題ではなく、別の問題があったのだろうと思います。また、その少女や家族が同意しているからと言って、ここまで映像をハイビジョンで放映してよいのだろうかと思いました。何と言って説得したのか知りませんが、生存している時から、死亡後の親に対するインタビューまで放映するのです。10年、20年と経過した時に、ご両親は今と同じ気持ちでいることができるのか。もしかしたら、心の中で苦しみ続けるのです。マスコミ関係者は、自分の作成した番組の視聴率しか興味がないのかも知れませんが。
クローズアップ現代は、12月6日に「ワクチンが打てない」、12月7日に「解消できるか“デバイスラグ”」というのを放映していました。ワクチンが打てないのは、マスコミがワクチンの副作用のみを訴え、効用についてはほとんど取り上げなかったからという一面があります。現実に結核予防のためのツベルクリン反応やBCG接種によるB型肝炎訴訟について原告の言い分のみを伝えているように思えます。原告の主張を伝えることも必要ですが、結核撲滅という日本の過去の戦いは無視してよいのかと思います。また、B型肝炎は予防接種のみならず、他に感染原因が多いことも伝えるべきです。デバイスラグについては、日本の人員不足があることを述べるべきです。医師不足で、新薬、新デバイス、新治療法に関する許可について日本は徹底的に人員不足であり、遅れています。同時に開発の方も、例えば米国と比べれば、余りにも金も人も少ないのが実状です。その上、事業仕分けとやらで、瀕死状態です。民主党の中に、最先端医療が日本の成長の原動力なんて言っている人がいますが、嘘つきの塊のように思えます。もし、本当にそう思うなら、税金をもっと投入すべきです。大学院を出ても、博士になっても、就職先がない。高学歴者を使いこなせる産業がないというのは、将来のお先真っ暗の国と思います。
クローズアップ現代のみではないでしょうが、表面を上滑りしたり、間違った指摘をしていることが多いと思います。今回のことは、もしかして懸命に治療をしている人の勇気をそぐことになるのでは、延命治療について誤解をする人がでてくるのではと思い、書かざるを得ないと思い書きました。
1年前に川崎協同病院事件医師有罪確定を書きましたが、家族の依頼で気管内チューブを抜いたら殺人罪となった川崎病院事件があります。延命治療という言葉をよく考えないで使うと恐ろしいのであり、人それぞれ、その意味も異なると思います。
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