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2010年12月 3日 (金)

法人税について(OECD諸国との比較)

法人税の改正について未だその決着は見えていませんが、よく考えることは必要です。

日経 12月2日 経団連会長、菅政権の方針支持 官房長官と意見交換

OECD統計データとの比較を行ってみます。

1) 日本の法人税率は最高だが税収(対GDP比)は?

次の表を見てください。OECD tax databaseから作成しました。

Oecdtax201012a単純に、法人税率を下げてしまうと、税全体はどうなるのかの疑問が出てきます。

2) 法人税率の推移

主要国について、地方税を含んだ実効法人税率の推移をグラフに書いてみました。

Oecdtax201012b_2 

日本と米国がほぼ同じで、ヨーロッパ諸国は、この10年以内の間で税率を下げています。しかし、GDPに対する税収全体の割合は、日本より大きいのであり、法人税率を下げた部分は、他の税でカバーしたのでしょうか。あるいは税率のみでは把握できない部分があるのかチェックできていません。

3) 税収の推移

次が税収の推移で、1975年以降なので、上のグラフとは年数の範囲が異なっているので注意下さい。また、税収には政府が運営している公的年金、雇用保険、医療保険等の社会保険料(個人負担及び企業負担双方とも)を含んでいます。

Oecdtax201012i
(注:米国のデータが当初抜けていたので、追加しました。)

4) 付加価値税率の推移

付加価値税率の推移は次の通りです。付加価値税として日本の消費税は含んでいますが、米国の販売税(Sales Tax)は含んでいないので、米国がグラフから外れています。

Oecdtax201012e

消費税をどう考えていくべきか、全体の構想の中で、考えるべきと思います。

5) 社会保険料を含めた税収構造

次のグラフがOECD諸国全体の社会保険料を含めた税収構造です。

Oecdtax201012f

OECD諸国の平均像と比べて参考とし、それに対して自国はどうするかを考えることは重要と思います。特に、社会保険料については、国により制度の差が大きいのです。例えば、法人税の税率は低いが社会保険料の雇用者負担が大きい国もあります。日本は基本的に会社と個人の負担割合は50/50ですが、イタリアは会社約30%で個人負担約10%と会社の負担が個人の約3倍です。OECD全体でも、上のグラフで紫部分が緑部分より大きくなっています。政府の支出の中で年金と医療が増加していることから、法人が負担する政府運営の(公的)年金と医療保険についても法人税と同時に考える必要があると思います。

6) 債務残高

日本政府の債務残高を無視するわけにいきません。政府が財政危機に陥ったなら企業活動も同時にうまくいかなくなる。従い、最後にOECD各国の債務残高(GDP比)です。

Oecdtax201012g

日本政府の債務が多いことに相当の衝撃を受けるのですが、次のグラフを見ると日本だけが方向が狂っていることになります。政府債務問題もよく考えるべきと思いました。

Oecdtax201012j

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