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2010年12月 3日 (金)

地方自治体はデリバティブに手を出すべきではない

ひどいニュースと思いました。

日経 12月3日 自治体、円高で損失拡大 仕組み債の利払い膨らむ

名前は、「仕組債」ですが、中身は「デリバティブ」です。1ドル=120円の時に債券を発行し、1ドル=100円を突破するような円高になると支払い金利が跳ね上がる条件がついていたとすれば、その債券の引き受け者(証券会社や銀行、投資銀行等)は、引き受けと同時に1ドル=100円のドル・プット・オプション(即ち、デリバティブの一種であるオプション取引)を売るのです。デリバティブを販売した代金が債券引き受け者には入るわけで、この代金を原資として債券の表面利子率を下げることができます。

1ドル=100円のドル・プット・オプションとは、プットとは売る権利です。即ち、1ドルを100円で売る権利であり、この権利を購入した保有者は相場が100円より高ければ、権利を実行しないし、低ければ頃合いを見計らって実行します。市場で1ドル=80円で買える場合は、1ドルにつき20円の利益が得られます。オプションが実行されれば、オプションを売った者は、1ドルにつき20円の損失が発生します。

そこで、この20円は、やはり債券に連動します。即ち、債券の利息で受け取ることとなり、債券の金利が上昇する特約を当初から付けてあります。仕組債とは、債券とデリバティブ取引の合体した取引であり、デリバティブと言うとリスクがある金融商品とのイメージがあるので、仕組債と名前をカモフラージュしています。実は、それのみならず、結果としてデリバティブの取引そのものも表面には出にくくなっているので単純に評価すらすることが難しくなります。結果、いいカモを見つけて、金儲けをする材料になっている面があると思います。

日経記事には、「08年末で17の自治体が総額4200億円の仕組み債を発行している」とあり、仮に4200億円が、同様な仕組債であれば、満期までの残余期間が6年で、年率5%金利が上昇しているとすると、1,260億円という数字になります。発行している地方自治体の住民は地方行政サービスが悪くなり大変だと思います。何故なら、地方自治体の独自の判断で実施したことなので、政府が国税を使って援助するのは筋が通らないだろうと思うからです。あるいは、別の表現で言えば、他のまじめな地方自治体に住んでいる人達が犠牲になることが正しいかという点です。

デリバティブの取引に何故地方自治体が手を出したのかは、知識や能力がないからです。更には、ガバナンスがないからです。これだけ揃えば無茶苦茶ですが、実は「地方主権」なんてバカなことを言っている人たちは、更に無茶苦茶と言うべきか、無謀と言うべきか、ポピュラリズムに乗っかっているだけの人達なのだと思います。

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