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2011年2月28日 (月)

年金被保険者3号問題 (年金番外編続き)

年金被保険者3号問題については、前回で終わりにしたかったのですが、本日の衆議院予算員会で自民党加藤勝信委員が取り上げていました。なお、加藤委員も、現在の救済策が問題含みであることを指摘しているが、同時に何らかの救済策は必要性は認めていました。2月20日に書いた年金3号被保険者切り替え漏れについて(年金番外編)の続編を書いてみます。

1) 現在の救済策(運用3号)

現時点では、救済策(運用3号による事務処理)についての留保が、2月25日の細川大臣閣議後記者会見概要の通り、続いていると了解します。救済策(運用3号)については、厚生労働省年金局事業企画課長通知(平成22年12月15日付け年管企発1215第2号)及び厚生労働省年金局事業管理課長通知(平成22年12月15日付け年管管発1215第1号)に書かれており、内容は、年金3号被保険者切り替え漏れについて(年金番外編)の下の方にあります。

2) 問題点

多くの報道は、救済策と呼んでおり、私も1)で、救済策と書きましたが、事務処理と呼ぶのが正しいと思います。あまり報道されていない問題点は、次の場合です。

社会保険庁(日本年金機構)が、年金特別便を発行しています。年金の給付にあたっては、裁定を行い、給付する年金額を決定し、支給します。これが、間違いであるとして、年金を既に受給している人に、年金の減額は勿論、返還まで求めたら、どうなるかです。返還に応じなければ、返還完了まで支給額の減額・停止があり得るかも知れません。

年金記録の間違は、そのような影響がありえます。消えた年金と全く逆のシチュエーションです。

もし、年金が政府と個人の契約であり、年金の通知が政府によるコミットメントであれば、裁定を既に終わり、現に支払がなされている年金を減額・停止するのは、一方的な行為であると言いたくなります。

そこで運用3号は、現行法の解釈方法として、既に裁定を終わり、受給している人については、そのままにし、保険料支払いの時効(2年間)が成立していない人には、2年間の保険料支払いを求めるとしました。これらの人達は、政府側の手続き不備があったのは事実ですが、一方で、自らの手続きを行っていなかったのも事実です。そこに、別の不公正が生まれるのも確かです。

3) 発生原因

総務省の年金業務監視委員会が、2月16日に第9回の会議を行っており、ここに議事要旨および資料があり、見たり、ダウンロードをすることができます。議事要旨を読むと、運用3号の問題指摘と社会保険庁のミスを覆い隠すような行為であるといったような意見が年金業務監視委員会第9回会議で多かったと思われます。監視委員会であり、年金行政を執行する機関ではなく、批判が主体となってもよいと思います。

発生原因を含めて参考となるのは、2月16日年金業務監視委員会の資料2 「運用3号」職員向け「Q&A」集(第2版改)平成23年2月16日です。発生原因に関しては、4-5ページに記載があります。例えば、次のような場合です。

基礎年金番号導入前(~H8.12)は年金制度毎に別の年金手帳番号で記録の管理を行っていたことから、配偶者(夫)の年金手帳番号が不明である場合など十分なチェックが行えていない。

平成17年3月まで職権による種別変更を行っていないので、再勧奨を受けて届出をされていなければ不整合記録になっている可能性がある。

社会保険庁の怠慢と決めつけるには、2月20日のブログにコメントを頂いた匿名希望さんのご指摘のように、そう決めつけては、問題があります。そもそも、管理が困難な制度であったのです。現状でも、次のように複雑であるのに、以前は更に複雑であったのです。

2011228

敢えて言えば、年金保険料の支払い記録を追跡することが主体で、3号被保険者の記録までは、管理に重きを置いていない制度であったのです。2000年の地方分権一括法の施行前は、1号被保険者の保険料の納付先は市町村であったのですが、このこと自身、単純化した面と複雑化した面と両方あります。年金は健康保険と表裏一体で事務をすべきと考えるが、更に複雑怪奇な状態です。即ち、1号被保険者は市町村国保、2号は協会けんぽ、健保組合、公務員共済等であり、年金と健康保険の手続きが複雑です。しかし、基礎年金については、統一的運用管理がなされるのです。

3) 年金制度の改正を望む

今回の運用3号問題は、現在の運用3号の扱い以外に、適切な案は見あたらないと思います。2005年にも、3号被保険者の保険料未納期間を納付済期間とする特例が出されたことがあります。(参考はここ

問題は、根本的な制度そのものであると思います。これまでの法改正は、制度改正ではなく、パッチワーク処理をしていただけ。政治家に任せると無茶苦茶になる例のように思います。例えば、冒頭に紹介した予算委員会でも、加藤委員は厚生労働省と総務省の早急な結論を出すようにと迫っていました。最も、24日の衆院予算委員会で自民党の鴨下一郎委員の質疑の続きをうけているので、そうなる面はあるのですが、早い対応は、むしろ与党の失敗追求の意図があると思います。議員にとっては、国民不在で構わないのだと思います。本当は、根本的な制度の見直しが重要です。

官僚は、法案を立案できるが、自ら動くには、問題が大きすぎた。3号被保険者制度は廃止すべきと考えます。不合理な制度を温存する理由は全くありません。なお、3号被保険者制度を廃止するとしても、3号被保険者としての過去の扱いによる権利は今後とも存続すべきと考えます。日本の社会と国民が豊かに安心して暮らせ、平等・公平に恩恵が受けられ、義務を自ら望んで果たすことができる社会を作るべきと考えます。そのためには、国民が声をあげるべきと考えます。

本当は、年金について、年金について考える(その1)の続きを書くつもりでいました。しかし、運用3号問題が衆議院予算委員会でも取り上げられ、マスコミは誤解だらけの報道や解説をすると思い、今回のブログを書きました。

--------------追 記 (3月1日10:30)------------------

運用3号の扱い以外に適切な案は見あたらないと思うと書いたことに関連して、追記をします。

運用3号の扱いをしない場合でも、現行法をどう解釈運用すべきかとなる。下手をすると2年間の本来1号被保険者として支払わなかった保険料についても、支払わずともよいとなれば、更に不公平は増加する。

2月16日年金業務監視委員会の資料2「職員向けQ&A集」の5ページの下の方の6に、「第3号被保険者に関する不整合記録は大量に存在しており、昨年1月頃、社会保険オンライン上の年金記録の中を簡易な調査(夫:1号、妻:3号)で抽出したところ、約100万件の不整合記録が存在している状況」とある。

簡易な調査とあるので、約100万件の精度について評価できないが、現在のコンピューターシステムでも3号被保険者を正確に把握できていないことを物語っているように思う。そのことこそ、本当の大問題であると考える。即刻、コンピューター管理制度の手直しをすべきであるし、その原因、また現状の詳細を報告すべきである。そして、受給に至っていない運用3号の扱いとなる3号被保険者から2年分の保険料を徴収すべきである。

失敗は、そこから学び、将来に生かされねばならない。犯人追及や政権交代が目的ではない国民の幸福につなげるには、調査して、その結果を国民に公表する制度の樹立が重要と考える。

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2011年2月26日 (土)

イレッサ大阪地裁判決 (社説の比較)

大阪地裁で、AstraZeneca PLCが80%、住友化学株式会社が20%の株主であるアストラゼネカ株式会社に対する原告9人への計約6000万円の賠償と政府に対する賠償棄却の判決が2月25日にありました。

読売 2月26日 イレッサ訴訟、国への請求棄却…輸入元賠償命令

1月9日に私は、イレッサ訴訟の和解に反対するを書き、その後、アストラゼネカも政府も和解ではなく裁判を選び、その結果、原告と被告の主張とともに裁判所の判断も公開されることになり、よかったと思っています。判決文は未だWebになく、判決に対するコメントや意見を述べることは適切ではないと思っています。今回の裁判については、新聞各社も社説で取り上げており、それらを紹介すると共に、社説に対する私のコメントを付け加えます。

日経 2月26日社説 イレッサ判決が求めるもの

読売 2月26日社説 イレッサ訴訟 副作用の警告を重んじた判決

朝日 2月26日社説 イレッサ判決―情報はなぜ届かなかった

産経 2月26日主張 イレッサ判決 がん治療の将来のために

毎日は、社説ではなくクローズアップで取り上げていました。

毎日 クローズアップ2011 2月26日 イレッサ大阪訴訟 薬害責任、割れた結論

各社社説を読み比べると、私は、朝日の社説は、論理と理性に欠ける感情的な文章であると思います。他の社説には「ドラッグ・ラグ」という言葉入っているのですが、朝日と読売にはありません。「ドラッグ・ラグ」の解消については、どのように考えるかを、今回のイレッサ訴訟で抜きにしてはならないと思います。また、あらゆる薬には、副作用があり、添付文書の副作用情報の何番目の副作用が強いかは、患者により病状により異なります。

同じことについて、同時に社説が書かれており、読み比べるとおもしろいです。どの新聞社が、社説を書く有能な人材を保有しているか、評価してみて下さい。

私は、毎日のクローズアップ2011の、次の部分が、この判決を機会に書く文章としての適切さがあると思いました。医療において、薬はなくてならない物です。薬事は、薬学部出身者のみならず医師や他の分野の人材も必要です。日本では、バイオを研究しても就職口はなく、他の博士号を取得したポスドクと同様です。現内閣は、最先端技術とか口にしていますが、実は一部の特定産業のみに偏っており、本当に必要なやるべきことをしていないように思います。

・・・しかし、日本の医薬品の承認審査体制は、欧米に比べ脆弱(ぜいじゃく)なのが実情だ。

 医薬品の製造・販売承認を行う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)によると、PMDAの職員数は605人(10年4月1日現在)で、うち389人が審査部門に所属。欧米に比べ新薬承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」解消や安全対策の強化などを目的に職員を毎年増員しており、04年の発足時に比べ審査担当者は約2・5倍増えた。

 しかし、PMDAによると、米国の審査機関の食品医薬品局(FDA)の総職員数は09年度で4911人(同年度のPMDAは521人)、年間予算約1071億円(同約96億円)と約10倍もの開きがある。医薬産業政策研究所によると、新薬承認にかかる審査期間(09年)は通常審査品目で米国13カ月、欧州連合(EU)13・6カ月に対し、日本は19・6カ月かかっている。

 さらに、急激な職員の増員を巡る課題も浮上している。製薬会社などの民間企業出身者は、採用後一定期間は前職と密接な関係にある業務に就けないなどの制限があるため、PMDAは大学薬学部出身者など新人の大量採用を進めてきた。その結果、職員の約4割が30歳以下となり経験の浅い審査担当者が増えた。

 同研究所が09年に国内で新薬の承認を得た企業約40社を調査したところ、「経験が浅いため、自身の考えで的確に判断し企業側と議論できるまでに至っていない」「担当者や審査部門によって対応にばらつきがある」などの回答が目立った。中には「職員数は増えているが実質的な審査能力がアップしているか疑わしい」という厳しい意見もあった。

 同研究所は「人員を大幅に増やす過渡期なので仕方がない面はあるが、大学や民間企業との人材交流を増やし、臨床現場を知る専門医や薬剤師を積極採用するなどの方法で教育プログラムを充実させる必要がある」と指摘している。

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2011年2月24日 (木)

日本経済デフレ脱却が近いか

最近、日本経済のデフレ脱却が近いのではと思うのです。但し、脱却してインフレになってよくなるかというと、実は更に経済は悪化する可能性があると思います。私の仮説は以下を読んでみて下さい。

1) 原油価格の上昇

北アフリカ・中東の政情不安により、原油価格の上昇が報道されています。

日経 2月24日 広がる「中東ドミノ」 原油高騰、サウジ焦点に 世界経済、揺れる楽観論

この記事は、北海ブレンド114ドル超を伝えていますが、当然、北海原油のみならず、全ての原油です。次のチャートは、OPECのMonthly Oil Market Report (February 2011)からです。

Opeccrude20112 なお、更に長期的な価格動向をチャートにすると次のようになります。

Opeccrude200520112

約2年前から価格上昇期に入っています。従い、北アフリカ・中東政情不安がなくても、100ドルは驚くべき価格ではありません。政情不安になったことにより、2008年の最高値より高い価格になっても不思議ではないと思います。200ドルもありうると思います。

2) 食料価格の上昇

特に農産物(穀物)ですが、食料価格が上昇しています。

Foodwb20112

世銀のFood Price Watch (February 2011)のチャートで、ここにあります。原油より少し後の2010年6月頃より価格が上昇傾向になりました。

市場価格が構成されるのは、様々な要素があり、中国の需要増といった単独の理由で考えるのではなく、昨年の暑い夏。例えば、ロシアの異常気象により穀物不作という要素もあります。中国のみならず、世界的(特にアジア新興国)に食糧需要が増加しているのは事実です。需要は更に増加する。世界的に農地は、それほど増加しない。水供給も、余り伸ばせない。温室効果ガスの排出増加により、異常気象が増えている。このようなことが言えると考えます。そうなると、現在の食料価格上昇に短期的部分があるとしても、長期的には価格上昇傾向であると考えてよいと思います。

3) 価格上昇が日本経済にもたらすこと

貿易統計によれば、2010年の日本の原油輸入量は214,617,761KLでCIF9兆4千億円であった。即ち平均価格は43,800円/KL(約82米ドル/バレル:1米ドル85円として)であった。これが、もし150米ドル/バレルとなったなら7兆8千億円輸入額が増加する。その結果、物価を全平均では、1.5%程度は上昇させることになるのではと思う。

穀物の2010年の輸入量は26,628千トンで7,200億円であった。こちらは、家計への負担が特に大きい。

燃料の総支出額が7.8兆円増加するとして、そして仮に全ての事業者が販売価格に転嫁できたとしても、流通在庫、消費前のストック在庫あるいは仕掛品のエネルギー相当分等の増加により運転資金が従来より増える。これらが3月分であるとして、2兆円になる。企業にとっては、価格転嫁ができず、業績悪化が伴えば、更に資金需要は増加する。預金をして余裕がある企業は、それを取り崩す、もし金融商品に投資をしていれば、売却処分を行う。あるいは、借入金を増やす。

これらの結果は、銀行から見れば、預金の減少と貸付金の増加である。最近は、貸付先が無くて国債で運用していた部分があるので、国債の売却に向かうと思う。それと、物価上昇に向かえば、今までデフレにより実質金利がデフレ分押し上げられていた。それが、インフレ傾向になったとたん、預金や債券運用の魅力がなくなってしまう。

その結果、債券価格は下落し、金利上昇に向かわざるを得ない。実は、恐ろしいのは、銀行の国債保有残高が多くなっていることである。国債価格が下落すれば、銀行は評価損を出さざるを得ず、評価損を小さくするためには、できる限り早期に保有残高を減らすことであり、下手をすると多くの銀行による国債売却合戦となる。ゆうちょ銀行も大赤字を計上する。

ムーディーズも日本国債の格付けを下げで、見越したように、政府は対策が打てない。原油価格や食料価格の上昇は、世界共通であり、各国の金融政策は政策金利上昇になると思う。日本でもそうせざるを得ない。長短金利の乖離を不自然に大きくすると、ますます経済は悪化する。

一方、日本政府は、国債が発行できない。発行額を下げざるを得ない。発行しても、売れ残りが出て、国債金利が鰻登りとなる恐れがある。

4) デフレを脱却したが未曾有の大不況

そんな可能性があると思います。このインフレは給料の上がらないインフレですから。給料を上げるためには、経済活動による付加価値も上げなくてはならない。1990年前のバブル以前のインフレ時代は、日本経済は生産規模の拡大や機械化・自動化により付加価値を高めていたのです。処が、今はその傾向が全くなく、あるのは大型小売店による流通の合理化のみと思いますが、一方で、シャッター通りにもつながっており、付加価値の観点で考えた場合、1990年代以前の状態より相当低い成長と思います。

生活は苦しくなる。企業も、賃金上昇をできる状態にならない。一方で物価は上がる。そして、政府の経済政策は、限定されたものとなる。その中で、大幅増税に向かう。大幅増税をしないと、政府は破綻するからである。多分、消費税率20%なんてのも、あり得ることではないでしょうか?健全な時に、再建を計画すれば、何とかなったものを、先送りした結果、国債発行を押さえざるを得ず、大幅増税以外に方法はなくなり、その上、増税した財源の多くは、過去の国債の利払いと償還に支出せざるを得ない。もし、それもせずに放漫な状態を続ければ、IMF融資のような外から強制されての更に厳しい条件で再建をせざるを得なくなるから。

5) 救済策

こんなことを書いていて、我ながら嫌ですね。しかし、そんな可能性がないかというと、今の政府のやっていることを見ると、バカとしか思えない。国債特例法案は、ねじれ国会で成立しないのかも知らないが、赤字国債を出すなら、それなりの意味のある歳出案を作らねばならない。S&PもMoody'sも政府がバカだと見ているなと思う。その前に、そんな政府を選んだ国民がバカなのかも知れないのですが。

国民番号制度については、改めて別の機会に書きますが、せめて番号制度を実現して欲しい。唯一、番号制度のみが、確実に日本経済を救う道であると思います。少しでも、公平な社会になると期待ができるようにすること。明日が、少しでもよい社会と思えること。そんな希望があれば、日本経済の発展・成長も考えられると思います。番号制度により即座には無理であるが、やがて助けが必要な人には、助けが届くようにできる制度を作れるはず。そんなインフラを作り上げないと、今の状態を抜け出すことができないと思います。

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マスゴミ報道

日本のマスゴミがニュージーランド地震で逮捕されているのですね。

TVNZ Live updates: Christchurch quake - day threeの9.51amに次の記事があります。

9.51am The Canterbury District Health Board says several members of the media were arrested last night for trying to break in and interview patients. A large number of those trying to get in were Japanese media.

あるいはNZherald Feb 24, 2011 Christchurch earthquake: Latest updatesの10.35amです。

10.35am
There are reports a Japanese media contingent were arrested last night after attempting to gain access to a hospital ward to interview patients.

どうしますかね。行き過ぎた取材行動であるとして、懲戒免職が適当でしょうか?そうすれば、新卒あるいは現在失業中の人を雇用することができます。当然、その上司も、そのような行き過ぎた取材活動をしないように管理をしていたかも問われなくてはなりません。

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こんな上司や部下がいたのなら(ダメの見本?)

これは、酷いと思いました。

朝日 2月24日 政府専用機に被災者家族乗れず「希望募っておきながら」

前原大臣が、ニュージーランドのクライストチャーチ地震に派遣する政府専用機に被災者の家族も同乗してもらおうと、富山市立富山外国語専門学校に働きかけたというニュースです。

1) ニュージーランド政府の要請に誠意をもって対応することが

外交がダメな人でありますが、酷すぎると思いました。ここに、「日ニュージーランド電話首脳会談の開催について(ニュージーランド地震) 」という首相の電話会談についての外務省発表があります。そこには、次のように述べられている部分があります。今回の政府専用機による国際緊急援助隊の派遣は、ニュージーランド政府からの正式な要請に対して日本政府が実施するのです。

今回の地震に心からお見舞い申し上げる。貴国からの要請に応じ,国際緊急援助隊を派遣した。日本人を含め,被災者の救助に全力を挙げておられることに心から敬意を表する。我が国の緊急援助隊も全力を挙げて救助に当たっているとの報告を受けている。

大地震の緊急援助隊の派遣は、できる限り早く、必要な人材を、必要な人数、必要な機材と共に、現地に到着するようにすべきです。残念ながら、被災者家族の同乗の余地は、まず無いであろうと考えられます。

しかし、それよりも彼は、外務大臣です。外相であれば、一刻も早く、ニュージーランド政府の要請に応じ、被災者を救援することを考えるべきと思います。政府専用機を、どのようないきさつで、何故派遣するかを知っている人間です。

2) ガバナンス問題

外務省職員も「(搭乗希望の)リストを作ってほしい」と要請したとの報道です。政府専用機を運航するのは防衛省ですが、国際緊急援助隊を組織しているのは、外務省と理解します。例えば、国際緊急援助隊に対する外務大臣感謝状授与式をこの2月23日にしています。(この外務省プレスリリース

国際緊急援助隊に関わっているのは、国際協力局でしょうが、同じ省内であれば、ある程度は知識があるはず。しかし、大臣が述べたからと、国際協力局以外の職員でしょうが、混乱を招く要請を、富山外国語専門学校に対してと思いますが、電話で行った。

このあたり、企業であれば、どうでしょうか?そんなガバナンスであったなら、社外からの信用を失う以前に、自ら崩壊すると思います。それぞれ、言い分はあるでしょうが、ガバナンスができていないと判断可能です。

そもそもは、政治主導と言って、公務員の働きを無視しようとしたのが、ガバナンスなしの出発点と思いますが、未だ続いているように思えます。それとも、彼だけの話なのでしょうか?いずれにせよ、ガバナンスを確立する最大の任務を負っており、その責任者たる者は、その組織の長です。

もし、私が経営者で、そのような幹部社員がいたとしたら、降格すると思います。

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北アフリカ・中東の今後

チュニジアに始まった政変は、エジプトに広がり、リビアのカダフィ政権の崩壊も間近いと思われます。そして、更には他の北アフリカ・中東諸国に広がる可能性も残っています。もしかしたら、歴史上の一大出来事が起ころうとしているのかも知れないし、よく判りませんが、ともすれば我々が遠くに感じる北アフリカ・中東諸国を見てみます。

一体どれくらいの人が住んでいるかと言うことで、人口を調べて表にしてみました。なお、北アフリカ・中東諸国の全ての国を抜き出したわけではなく、また表のこれら諸国が政変が起こる可能性が高いという訳でもありません。但し、可能性はあると思います。また、政治的には、アラブとイスラエルの間の緊張感は高まる方向になることは間違いなく、イスラエルも比較対象にしました。

Nafricameastpop20102

エジプトの人口が一番多くて、その次がイランです。一方、イスラエルの人口は多くないのです。だから、イスラエルとは常に緊張を強いられた国であるにも拘わらず、その緊張がより厳しくなるのだろうと思います。イスラエルは核兵器を持っているかも知れないが、使ったら国自身が破滅してしまうのだろうと思います。

国の経済力を見るには、GDPという指標が一番物語ってくるのであり、米ドル換算した名目GDPは次の通りです。

Nafricameastgdp20102

人口とGDPは、比例していないのが、北アフリカ・中東諸国です。産油国で莫大な収益を得ている。将来のための、貯蓄や投資に回って当然ですが、実は何にどのように貯蓄され、投資され、誰が管理しているか見えていないことが多い。一方で、貧困層が物価上昇と失業で生活が苦しくなってくると、その不満は爆発するという構造になります。

経済成長率と消費者物価インフレ率、そして一人当たり名目GDP(米ドル換算)の表です。

Nafricameastgrate20102

Nafricameastinfr20102

Nafricameastgdpcap20102

イスラエルを除いて、一人当たりGDPが高いのは、全て産油国です。但し、数字が高いことと、富が国民に公平に分配されているか、国民が公平感を持っているかは、別途考える必要があります。天然資源からの収益は、必ずしも汗水流して、労働して得るのではなく、Production Share Agreementで外国企業による採掘を認め、外国企業が採掘した石油ガスを得て、それを売って収益を得る構造が最近のビジネスですから。ところで、次のようなニュースも出てくるようになりました。

日経 2月24日 広がる「中東ドミノ」 原油高騰、サウジ焦点に 世界経済、揺れる楽観論

最後に、2009年の数字に各国の原油生産量を付け加えた表を掲げます。なお、原油生産量はBP Statistical Review of World Energy June 2010からの数字です。(一部、別の資料からの数字もあります。また、それ以外は、全てIMF World Economic Outlook 2010からですが、2009年と2010年の数字には、推定や予想が含まれています。)

Nafricameast200920102

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2011年2月21日 (月)

会計報告(かんぽの宿層雲峡の補足)

すぐ前に書いたかんぽの宿層雲峡については、誤解をまねく表現もあったかも知れないと、補足を書きます。

即ち、郵政公社や日本郵政の財務諸表・会計報告は信頼できないとの書き方をしました。実は、そもそも自己矛盾を含んだ表現なのです。即ち、では何が信頼できるかという問いをぶつけると、どう答えるかという禅問答が始まってしまうのです。また、100%正しいとか、あるいは60%だとかも簡単には言えなくなります。会計とは、Toolです。時価会計に対する批判があったりしますが、時価会計も取得原価主義も、どちらが絶対とは言えないし、注記があれば、読む人が組み替えられるのであり、同じはずです。似たようなことが、包括利益についても言えると私は考えます。一方、会計報告がされない状態は、最悪です。そして監査も重要です。ねむの木学園で預金が不正に引き出されていたとのニュースがありますが、監査を受けていなかったのかなと思ってしまします。監査人が預金残高を調査するのは、余りにも当然のことなので。

かんぽの宿層雲峡の場合、もともと存在していた施設を建て替えた施設と了解しますが、かんぽの宿層雲峡が完成しRenewable Openしたのが2002年です。これが2006年3月に営業を取りやめ2006年11月に売却しているのです。簿価は、取得時が37億1000万円であったが、売却時は1億3800万円です。簿価が下がっている原因は、固定資産の減損です。即ち、将来の収益を考えれば、1億3800万円に対応する価値しか施設の値打ちがないとしたのです。会計的には、それが本当であれば、それで正しいのです。

しかし、企業活動として正しいのかは、別です。4年でその価値が30分の1になるような投資判断をしたことの責任は問われなくてはいけません。株式会社であれば、そのような投資をした取締役が株主総会で選任されるかの問題と共に、その提案をした取締役にミスがあれば損害賠償を要求せねばならないし(会社法423条)、会社がしないのであれば会社がするように又は取締役会で決定していてもその判断の正当性が問題になり会社に損害賠償を行うように求める代表訴訟(会社法847条)により株主が訴えることが可能です。総会において株主からの質問に対する説明義務(会社法314条)があり、株主提案権(会社法303条)があります。ところが、公社であれば、会社法は適用されず、株式会社であっても株主が政府のみであれば、株主権を行使する人が存在しないことになります。

本来、会計報告とガバナンスは一体のものです。ガバナンスが働いていない状態の財務諸表・会計報告をどう考えるべきか、正しいとしても、本当の意味を果たしていない部分があると考えます。特に、固定資産の減損のような評価に基づく損益を計上する時は、問題がより大きくなります。監査についても、会計基準とは別に監査基準が存在するのであり、監査基準もそれなりに厳しいのです。公社や独立行政法人が民間並の財務諸表と称しても、実はその内容を上場企業(なかにはずさんな企業もありますが)と同一レベルかというと、法、制度、基準、罰則、市場における監視と言った点で、弱い点はあると考えますし、無理な部分もあり、ヤムを得ないと考える部分も多いと思いますが。

やはり結論としては、政府が49%株式保有でよいから、早く上場企業とすべきと考えます。

直前のブログで会計検査院報告書の日付を2000年3月としていましたが、2010年3月の間違いです。訂正しました。

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かんぽの宿層雲峡から、暗黒の世界をのぞき見た?

調べれば調べるほど、恐ろしくなってくることがあります。

かんぽの宿層雲峡とかんぽの宿米沢そして年金・健康保険福祉施設整理機構の宿泊施設ホールサムインせとうちの3不動産の時価を偽装して増資をした疑いで、大阪府警が、金融商品取引法違反容疑で、ゲームソフト販売会社「ネステージ」などを16日に家宅捜索をしたとのニュースがありました。

MSN産経ニュース 2月16日 かんぽの宿で水増し増資、ゲーム会社を家宅捜索 大阪府警

全ては、このニュースから恐ろしい世界に入って行くことになりました

1) 宿泊施設に大穴あける

ところで、このニュースで驚くのが次のニュースです。

MSN産経ニュース 2月16日 重機で穴…廃虚同然かんぽの宿 マネーゲームの道具、地元「あまりに無責任」

どのような状態かというと、かんぽの宿層雲峡がある場所は、層雲峡キャンプ場で、ブログに廃墟になっていると書いておられる方がいました。ブログの写真を見ると恐ろしいです。

木村静のブログ 2009年8月20日 かんぽの宿・層雲峡が廃墟になっている

大穴を開けた理由は、固定資産の価値を毀損し、固定資産税を節約したかったからのようです。その結果、固定資産税が安くなったかどうか知りませんが、壊す費用と復旧費が余分に必要であり、建物の寿命も短くなったかも知れない。市町村と交渉することが、第一のはずで、固定資産税を滞納する方が、まだ正しいことです。自分のみの利益しか考えない悪魔がいるのですね。

かんぽの宿層雲峡の正式名称は、「層雲峡簡易保険保養センター」と言い、完成当時のパンフレットと思われるのがここにあります。「温泉(浴場)まわりの、出入り口、脱衣室及び浴室間の段差を設けず、浴槽に手摺を取り設けて車椅子利用者にも配慮し、身体の不自由な方も利用出来る客室を設けるなど・・」と書いてあり、身障者にも配慮しており、うまく使えば社会のためにもよい施設であったと思いますが、持ち主がこれに大穴を明けたのです。暗黒の世界です。

大穴を開けた犯人については、後述の3)で推理します。

2) ネステージのマネー・ゲーム

ネステージは、2000年2月16日にクロスビズ株式会社に37,500,000株を1株2円で、A種優先株式1,200株を1,200,000,000円を発行価額とし支払はかんぽの宿層雲峡を含む3不動産の現物出資で発行しました。

その際の不動産鑑定価格が13億円であったのです。この鑑定価格が、日本郵政と年金・健康保険福祉施設整理機構が売却した価格(産経は合計340,0000千円としていますが)より、余りにも高いと冒頭に掲げた大阪府警の家宅捜索となっているのです。なお、層雲峡かんぽの宿と米沢かんぽの宿の売却額は166,765千円と56,000千円であり、合計222,765千円でした。

日本郵政の売却額が正確に判明するのは、会計検査院が2010年3月に「簡易生命保険の加入者福祉施設等の譲渡等に関する会計検査の結果について」という報告書を出しているからで、その中で書いてあります。(以後「会計検査院報告書」と呼びます。ここにあります。)

不動産鑑定とは、暗闇の世界と思えます。なお、この合計13億円の不動産鑑定書が読めます。ネステージがプレスリリースで全て公開しており、ここにあります。鑑定書は全部で7分冊となっており、です。株式発行の3日後であり、ある意味ネステージは、不正はしていないとどうどうと情報公開をしたのです。

不動産鑑定を実施した時には、既に大穴はあったのです。3の一番最後に現況写真がありますが、大穴が写っています。もし、13億円の鑑定が正しいのなら、大穴があってこの金額ですから、日本郵政が売却した層雲峡と米沢の合計額2億円は何であったのでしょう。暗黒の世界です。

ネステージがこのようなことをした理由は、ネステージが当時債務超過(直前の2009年11月第3四半期末で9億7千万円の債務超過)であり、この現物出資により純資産の部と固定資産が12億円増加するので、債務超過が解消になったのです。即ち、ジャスダックでの上場維持が目的です。クロスビズは、A種優先株式を普通株に転換し、それを市場売却して儲けるのが狙いであったはずです。株価は、2009年9月の月間高値21円、安値7円が2010年2月では高値4円、安値1円になっていました。クロスビズへの発行単価は2円です。しかも、12億円は現物出資です。だから、3円でもよかったのかも知れません。3円で、手数料を考えるとどうであったか分析していませんが、現実の株価は、以後最高値3円で、安値は1円でした。その意味で、このマネーゲームは、NESTAGEとクロスビズは、勝者にはなれなかったのかも知れません。しかし、もしかしたら(例えば、株価が5円にでもなっていれば)濡れ手に粟を掴めたかもしれないと思います。クロスビズがこれらの物件を、幾らで手に入れたのか掴んでいませんが、マネーゲームの対象となったかんぽの宿です。実際、NESTAGEは現物出資を受けたが、果たして宿泊施設をどのようにしようとしたのでしょうか?旅館業をもくろんだ訳ではないと思います。転売によるマネーゲームだったのかも知れません。身障者にも配慮した施設とは、耳には聞こえよいが、実はマネーゲームの道具でしかなかった。これも、暗黒の世界の一部なのかと思います。

3) かんぽの宿層雲峡の穴空け犯人

犯人は、分かりませんでした。しかし、簡保の宿層雲峡を買い取ったのは、大江戸温泉物語と思われます。何故なら、2009年3月16日の参議院予算委員会で共産党の大門実紀史議員が、取り上げていたのです。大門委員の、この委員会での質疑応答が、どのような内容であったか、「続きを読む」に入れておきます。

実は、キョウデンや大江戸温泉物語のWebを幾ら探しても、関係が見えてこないのです。しかし、大江戸温泉物語に、福田組が温泉施設をキョウデンエリアネットに売却した発表がありました。(ここ)キョウデンは、大門委員の指摘通りであり、大江戸温泉物語の実質親会社であり、娯楽施設・宿泊施設を営んでいると同時に、不動産の売買を行っていると考えて間違いないと思いました。

簡保の宿層雲峡が売却されたのは、2007年1月です。クロスビズによる現物出資が2010年2月です。おそらく、大江戸温泉物語が当初の2007年1月に購入したと見てよいのだろう。大江戸温泉物語からクロスビズに売却された時期は、日経ビジネスオンライン 2010年2月25日 不振企業の不動産現物出資は“謎の錬金術”には、「大江戸温泉物語は付加価値アップを目指して購入したが、計画を断念。今年1月27日に3物件をまとめてクロスビズに転売した。」とあるので、2010年1月27日である。そうなると、クロスビズには大穴を空けるチャンスはほとんど無く、大江戸温泉物語が購入して、比較的早い時期に空けたのではないかと推理をしました。

大門委員の発言通りになります。「大江戸温泉物語というのは、名前はほのぼのとしておりますけれども、なかなかやり手の企業でございまして、・・・・・」企業というのは、名前に誤魔化されてはならないとなります。身障者に優しい施設は、大穴を開けて、価値を下げよう。倫理観はゼロです。やはり暗黒の世界があります。

4) 日本郵政の資産売却

暗黒の世界は、かんぽの宿に関連しては、ここが頂点です。2008年12月に日本郵政が発表したオリックスへのかんぽの宿一括売却が鳩山総務大臣の発言により撤回されたのが2009年2月16日です。オリックスへの資産売却についても、うさん臭いのですが、オリックスへの売却前にも、郵政公社時代に多くの資産が民間売却されていたのです。そのような売却資産に層雲峡や米沢のかんぽの宿が含まれていたのです。日本郵政になる前の郵政公社時代に売却された不動産は628物件あるのです。

日本郵政の資産売却に関しての問題の指摘をしているのが、会計検査院報告書です。読むと、日本郵政資産売却のデタラメさがよくわかります。なんでもかんでも不要決定をし、次々と売却にかける。売れそうにないとバルク売却と称して一括売却をする。そのなかには、122億円の土地が含まれているのです。鳥取岩井簡易保険保養センターは、バルク売却で個別の金額は適切ではないのですが、1万円で売れました。その結果は、どこかが社会福祉法人に6000万円で売却したようです。売却努力なんて言葉は、日本郵政には存在しないみたいです。

そんなに安値で、どんどん売却して売却損が出ないのは、その前に固定資産の減損会計を適用しているのです。減損で損を出して簿価を下げていれば、悪いのは売却ではなく、宿泊業の市場だとなりますから。保有していた未利用の土地は、取得価格642億円でしたが、110億円で売却できました。土地については、目的取得で自治体と協定を結んでいるのもあり、違約金も払っています。現状は、ほとんどが住宅用地になっているようです。それなら、用地のある地方自治体と開発計画を相談し、最良の開発をすべきはずです。せっかくの政府保有土地ですから、単純民間売却がよいのか、その場所にあった都市計画や開発計画にあわせて最良の開発が可能であったはずです。ちなみに628物件のうち510物件が転売されているのです。

総合検診センターも含まれていますが、売却されたかんぽの宿等は全部で34カ所で、取得価額合計786億円が減損処理で49億円の簿価でしかなく、これが62億円で評価され、最終的には78億円で売却されているのです。1カ所平均2億円強です。ところで、郵政公社の減損処理や財務諸表なんて、信頼できないと考えるべきと思います。固定資産の減損には将来キャッシュフローの見積もりが必要ですが、誰がしたのでしょうか?上場会社でない公社の監査は、信頼性があるのでしょうか?仮に大手監査法人がしたとしてもキャッシュフローの妥当性をどう評価できたでしょうか?売却が目的化し、本末転倒状態です。本当は、国民の財産であるにも拘わらず、自分たちの使命は国民の幸福にあらずして、資産が売れれば目的達成という奴隷の世界に思えます。

次にオリックス一括売却ですが、これも会計検査院報告書を読むと無茶苦茶です。一括売却しなければならない理由が全くないのです。一括売却の理由の一つが従業員込みでの売却と理解していますが、これもモラルハザードになりました。従業員にとっては、安く売れた方が、新規事業で成績がよくなるし、原価が低くなる分の給料が高くなることが期待できる。一括売却の理由として、赤字の垂れ流しを少しでも早く解消したいと言うのがあったと思います。しかし、実はキャッシュフローは少しのマイナスだけだったのです。

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売却入札に関連して入札参加者に日本郵政が示した損益予想は次です。

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これらの宿泊施設以外に首都圏の9社宅(評価額46億円)が含まれていたのです。かんぽの宿は、様々な地点に分かれており一括売却する必然性は全くなかったと思います。敢えて言えば、郵政公社の手間暇が省けた。本当は、地元自治体とも相談をし、どのような施設にしていくのが望ましいのか、個々の施設毎に計画を作っていくべきであった。コンサルタントに依頼する方法もあります。マネーゲームの手伝いをするコンサルタントともありますが、私のように事業を手助けするコンサルタントもいます。メリルリンチを雇ったのは、一括売却をスムースに進めるためが目的のような気がします。

最後のそして最大の暗黒の世界は日本郵政のようです。かんぽの宿の民営化にしてもいくつもの方法が考えられます。JRの様に、株式を上場してIPOによる民営化を図るのです。私は、この方法が一番好きです。あるいは、米国の会社運営のようにCEOを外部から高い金で雇ってきて経営の合理化をするのです。高い金と言っても、業績連動(単純に利益ではなく、様々なIndexを導入します。)給与を高くすればよいのです。西川では所詮無理です。何故老人が就任したのか、理解不可能です。オリックスに売却しても何の解決にもならない。日本郵政とは、全てに関して利権のみが絡んでいるような気がします。利権を解消する民営化にさせ、利権がつきまとう。

例えば、かんぽの宿の多くは、食事提供を外部委託で実施している施設が多いのです。だから上の表の損益実績では、委託業務収入や業務委託費が大きいのです。自社で食事を提供するか外部委託か、どちらが合理的か、個々の施設によっても異なるはずですが、そんな部分も改善の余地があるのです。日本郵政の民営化を停止する法律により、それまでの売却が目的であるような活動は無くなりました。しかし、民営化を中止してしまっては、更に大きな暗黒に突入します。郵便事業は、政府事業でもよい。しかし、金融事業と保険事業は、IPOによる民営化を推進すべきです。日本郵政は未だに民営化されていません。単に株式会社となったのみで政府が全株式を保有している限り民間企業ではありません。政府株式保有50%未満になった時に、民間企業となります。

本末転倒の日本郵政の暗黒の世界は、やはりかんぽの宿層雲峡にあいた穴よりはるかに大きいと思います。

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2011年2月20日 (日)

年金3号被保険者切り替え漏れについて(年金番外編)

2月2日にバラマキに反対論を述べた朝日新聞を書いて、私も、その後、事情が少しつかめてきたので、補足をしておきます。最近の報道としては、毎日新聞を掲げておきます。本日NHKも19日に「ニュース深読み」という番組で取り上げていましたが、明後日の方向を述べていたと思います。

毎日 2月17日 国民年金:3号被保険者切り替え漏れ 救済策は「不公平」 見直し意見続出

1) 内容

厚生労働省年金局事業企画課長通知(平成22年12月15日付け年管企発1215第2号)及び厚生労働省年金局事業管理課長通知(平成22年12月15日付け年管管発1215第1号)により日本年金機構あてに出された通知に記載された内容です。概要は、「続きを読む」に記載しました。

単純に手続き漏れを回復しようとするのではなく、日本年金機構(以下年金機構とします。)が3号被保険者として管理していた者について、それが間違いであり、本当は1号であるべき期間が含まれていた場合の取り扱いについてです。

もう少し、詳しく言うと、会社を退職すると事業主は、被保険者資格喪失届(Formatはここにあります。)を年金機構(少し前までは、社会保険庁)に提出します。喪失届けの中に、被扶養者の有無を記載する箇所があります。退職であり、被扶養者の中に、生計を維持されている配偶者(生計維持の判断基準が130万円です。)がいれば、年金機構はその配偶者を3号被保険者のリストから除外します。ところが、除外されていない、すなわち当時の社会保険庁の手続きミスがあったのです。それが、記録照合や年金の支払いを開始する裁定時に発見されるのです。

そのまま発見されずに行けば、年金が支払われるのです。しかし、ミスが発見して、それを放置することもできないので、国民年金の被保険者である1号被保険者とし、現行制度で最大限遡及して支払うことが可能である2年間については保険料の納付を求めるが、2年を超える期間については3号被保険者の扱いとし保険料納付は求めないとしたのです。

一方、既にミスがあっても記録が3号となっているので、年金の支払いがなされている人がいます。このような人達に関しては、現状を認めることとしました。2年以上遡及して保険料を支払えないし、現状を認めるしか方法がない状態です。

2) 経緯

2010年3月29日の年金記録委員会で取り上げられたのです。

年金記録回復委員会の資料で、「職員アンケートからの記録問題への対応策」というのがあり、ここにあります。、資料3ページの(3)が、この問題です。また、2010年3月29日の委員会の議事要旨はここにあります。ちなみに、次のような発言があったようです。

  • 3号の問題は、今からさかのぼって未納という取扱いにするのは影響が大きい面があり、やむを得ない。ただ、行政の不作為があると感じる。
  • 理解はできたが、納得はできない。不公平感がある。
  • 普通であれば、誤りが見つかったが過去は問いませんというのが納得いただけると思うが、そういう論法は通らないか。
  • ここで示しているのはアンケート結果に対する処理方法だが、現時点では妥協の産物と言わざるを得ず、すべてが納得される話ではないという前提になっている。
  • どちらかたてると一方が倒れる。理屈は通らないが平穏を通すということであり、混乱を避けたいという思いが強い。夫が健保のサラリーマンでなくなると、3号であった妻は1号になるための届出が必要なことを誰も教えてくれないといった不備が一部残っている。そこで実務家の段階では、行政の不備が重なったことによる問題への対応としては、混乱を避けることしかないかなと不承不承提案したもの。
  • 働く女性としては働かない人が受給することに不公平感があり納得はしていないが、大局的に決めるために納得して下さい、となれば仕方ない。
  • マスコミの報道の仕方次第では103万円の扶養範囲の問題を助長させることになるのではないか。

社会保険庁の不作為が問題を起こした主因と考えます。そうなると、報道とは、異なってきます。TV、新聞のマスコミは、アホばっかりではないかとの思いを深めてしまいます。それからすると、この毎日の報道にはマスゴミ情報に乗っけられた人々の固有名詞が書いてあります。何が、真実か、この国には、調査能力や真実を見る目がない人々が多いとすれば、嫌になります。

3) 根本問題

会社で年金と健康保険の実務をされている方は、何故こんな馬鹿馬鹿しいことをするのだろうと常に思っておられるはずです。年金・健康保険に加え、所得税の源泉徴収や住民税の特別徴収もされている方にとっては、日本はキチガイ国のように思えます。手続きが二重・三重になっているのです。

複雑な例をあげると、厚生年金の保険料は会社と個人をあわせて3月分から16.058%ですが、単純に給料に%をかけ算できないのです。刻みがあって、金額により4千円の場合もあれば、3万円の場合もあります。自分の会社が支払った金額を掴んでいるから年末調整ができるのですが、社会保険は年末調整にリンクしておらず、7月に4月から6月の平均給与額を全員について提出するのです。多くの人については、年金・健康保険が一番金額が大きく、次いで住民税で、一番金額が少ないのが所得税だったりします。所得を一番、正確に把握できるのは、所得税なのです。

歳入庁をつくって、一本化しないと、同じような問題は今後も発生すると思います。制度が徹底的に不合理なのです。

それと、統一番号制です。番号制を導入していない世界の後進国であるから、事務に膨大な非効率が生まれています。番号制を導入しないと、日本は破滅するような気がします。

-----追 記------

2月2日にこの問題を書いた時は、1号被保険者としての国民年金保険料を支払っていない人を救済する案が出ていると思い、それであれば政府案をつくり、法改正で対処するのであろうと考えました。そして、そのような救済は不公平を生み、厚生年金・国民年金・共済年金を含む公的年金全体の信頼性をそこなう恐れがあるとしました。

その後、2011年1月1日から、既に取り扱いが開始されていると知り、その通達内容を調べるべく探しました。何故なら、法令解釈で対応するには、無茶がありすぎるからです。通達・通知の内容は、「続きを読む」の通りで、社会保険庁・年金機構のミスと被保険者のミスが重なった場合に生じる事態の解決方法の現行制度における取り扱いでした。双方にミスがあった場合であり、私にはこの取り扱いでやむを得ないと思える内容でした。(番号制なしでは、チェック体制の構築が難しい。)

対象となる人数の推定として100万人は大きすぎると思います。何故なら、3号被保険者は、2010年3月末で1021万人です。このうち男は11万人なので、1010万人が女です。2号被保険者(厚生年金または共済年金)である配偶者の収入で生計を立てている人が、3号被保険者です。2号被保険者は3868万人ですが、1021万人を除く2847万人が共稼ぎ又は独身に該当し、その方々には3号被保険者の扱いでミスの生じようがありません。いずれにせよ、1021万人のうち数となるのですが、1% の確率でミスが生じたとすれば、10万人存在することとなります。

他の例として、パートで働いて年間給与受取額を130万円以下になるように働き方を調整していた。しかし、ある年は、忙しくて予定以上の時間働かざるを得ず、130万円を少し超えてしまった。130万円をボーダーラインとすれば、この人は、その年については、共稼ぎ状態の2号被保険者です。その場合、働いている配偶者は、勤務先に扶養家族の移動の申請を出しますが、超えた金額が少額であれば、手続きをしていないと思います。それでよいと思います。他人の所得による生計維持の判断基準がインフレ・デフレなしの一律130万円というのも、変な話と思います。そもそも、3号被保険者制度を改正していくのが本当の姿であると思います。130万円の生計維持判断基準のために、家庭の主婦のパート労働賃金が抑えられ、その結果が非正規雇用の賃金レベルや様々な問題につながっていると思います。小手先のことではない、正しい構想やプランに基づいた改訂をしていく必要があると考えます。

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2011年2月19日 (土)

武富士元会長長男への贈与税課税認められず

最高裁の判断に驚きがありましたが、判決文を読んで、考えてしまいました。

日経 2月18日 武富士元専務への課税取り消し 2000億円還付へ 最高裁判決

その最高裁判決は、既に裁判所のWebに出ています。

平成23年02月18日 最高裁判所第二小法廷 贈与税決定処分取消等請求事件 (判決文

なお、判決文に須藤正彦裁判官の補足意見があり(10ページからです)、この補足意見がこの判決に関して多くを語っていると思います。私も、このブログの続きを読むに文章をコピーしておきます。

1) 事実関係

武富士創業者、武井保雄氏は、オランダに非公開有限責任会社を設立し、この会社に武井保雄氏とその妻が保有する武富士株式15,698,800株を譲渡した。やり方としては、現物出資を下のだと思います。なお、15,698,800株は、2000年3月末時点での発行済み株式(自己株式を調整後)11.6%に相当しました。

オランダ非公開有限責任会社への15,698,800株式譲渡(現物出資?)が行われたのは、1998年3月23日であり、翌1999年12月27日に武井保雄夫妻はオランダ非公開有限責任会社の出資口800口のうち720口を長男に贈与した。15,698,800株の90%に相当し、当時の株価で1653億円強と推定されます。

課税関係では、武井保雄夫妻からオランダ非公開有限責任会社への譲渡は、現物出資であれば、資本の払込であり、課税の対象とはなりません。オランダでの課税関係は不明ですが、オランダを選んだ理由は、非課税になると考えたからのはずです。なお、武富士が配当をした場合には、(日本とオランダとの租税条約を調べていませんが)日本において源泉徴収されるのみで、オランダでは課税されず、利益がそのままオランダに残るし、これを長男に払ったとしても、香港に住んでいれば、日本でも課税されず、香港の課税のみ(こちらもほぼないはずと思います。)。仮に、この長男が日本に銀行口座を保有しており、そこに配当が支払われても、日本で課税されない可能性もあります。(オランダ法人からの配当金[国外源泉所得]を非居住者が受領しても所得税の対象にならないと考えます。)但し、後述する所得税の実質課税が適用され、日本の納税義務が発生する可能性もあります。

2) 贈与税の課税関係

現在の相続税法第1条の4と、贈与があった当時の相当する第1条の2を対比して掲げます。(なお、判決文で1条の2と述べているのは、当時の1条の2です。)

2011

日本に住んでいれば、それが国外財産であれ贈与税の対象でした。また、国外に住んでいても、日本の財産の贈与を受ければ、贈与税の対象でした。この件の場合、武富士株という日本に存在する株式を保有していたのは、オランダ非公開有限責任会社であり、このオランダ会社の持ち分が贈与されたのであり、国外財産の贈与であったのです。

国外財産が、日本に住んでいない人に、贈与がなされたのです。

現行相続税法では、日本国籍があれば、贈与をする側も受ける側も、5年を超えて日本に住んでいない時に、日本での贈与税の課税がなくなります。

贈与税の趣旨は、外国に住んでいれば、その国で贈与税が課税されるとの考え方で、日本法も日本に住む外国人に対して贈与税は課税されます。

3) 本件での贈与税課税

この贈与に関して、杉並税務署が2005年3月2日付けで、1157億0290万1700円の贈与税と173億5543万5000円の無申告加算税の賦課決定処分をしました。当時の贈与税の最高税率は70%であったので、1653億円に対して、この税額になりました。その結果、裁判で争われたのです。

実質的には、武富士株が贈与されたにも拘わらず、名義上のオランダ非公開有限責任会社の持ち分が贈与された。国外財産か国内財産かについては、基本的には争われていません。何故なら、相続税法10条1項8号(当時は、1項6号と思います。)で明確であったからです。(・・・・財産の所在については、当該各号に規定する場所による。・・・・・当該社債若しくは株式の発行法人、当該出資のされている法人又は当該有価証券に係る政令で定める法人の本店又は主たる事務所の所在・・・・・

問題となったのは、長男が日本に住所を有するか、どうかの点です。この点を最高裁は「通算約3年半にわたる赴任期間である本件期間中,その約3分の2の日数を2年単位(合計4年)で賃借した本件香港居宅に滞在して過ごした」ということ等を考え、「香港居宅は生活の本拠たる実体を有していたものというべきであり,本件杉並居宅が生活の本拠たる実体を有していたということはできない」とし、贈与税の納税義務を負わないと判断したのです。

但し、贈与税回避スキームを用い、当時の抜け道をついていることは、最高裁も認識しています。例えば、補足意見の次の記述です。

本件贈与税回避スキームを用い,オランダ法人を器とし,同スキームが成るまでに暫定的に住所を香港に移しておくという人為的な組合せを実施すれば課税されないというのは,親子間での財産支配の無償の移転という意味において両者で経済的実質に有意な差異がないと思われることに照らすと,著しい不公平感を免れない。

長男は、香港に住んでいると言っても、上場会社武富士の取締役であり、しかも、香港へ出国する1年前には武富士の取締役営業統轄本部長に就任し、香港滞在期間中に、常務取締役、専務取締役と昇進したのです。「それで、香港在住はないだろう。」と思ってしまいます。

4) 実質課税

財産家の親子であったから、そんなことができたので、庶民から見れば、嘘みたいな話です。課税について、条文の解釈は、文字の解釈ではなく、本質論や経済実態を重視して課税すべきであるとの考え方があります。私は、米国は、そのような考え方が強いと思っています。日本では、須藤裁判官の補足意見にもあるように、租税法律主義が厳格に守られるべきとの考え方があります。ちなみに、憲法第30条は次の通りです。

第三十条  国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

お上の言うことには従えと、税を取り立てた時代が過去にあったと思います。納税者の権利は重要です。一方、経済が複雑化し、ネットを初め、通信や国・国境が過去と随分異なってきており、ズルを許すのは、政府が税法改正に取り組んでいないからだと、政府を悪者にするだけで解決にならない気がします。租税回避スキームが使われても、実質課税をするのが原則であると、法の上でも明確にすることが重要だと私は思います。

ところで、所得税法や法人税法には、実質課税の原則が条文にあります。また、法人税法には、132条の同族会社等の行為又は計算の否認があったりします。当時の相続税法第1条の2が実質改正されたのは、2000年の租税特別措置法の改正により現行の第1条の4に実質的になりました。オランダ法人の持ち分譲渡は1999年12月27日であったので、当時の大蔵省も素早い対応をしたと思います。

所得税法
(実質所得者課税の原則)
第十二条  資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

法人税法
(実質所得者課税の原則)
第十一条  資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

5) 蛇足

長男が、どのよにして1300億円強の納税資金を用意したかですが、おそらく武富士株を売却したのではと思います。一気にではなく、融資も受けつつ市場を見ながら売却したのだろうと。もし、そのまま保有していれば、武富士は2000年9月に会社更生手続き開始の申立をしました。株式の価値は今やゼロになっています。納税資金を作るために売却し、それを法により還付加算金が通常の利息より高く受けられ、よい資産運用ができた結果となりました。

今後、どうなるのか、私にも分かりませんが、租税の不公平はよくないことです。租税の不公平をなくす条文を付け加えていき、改正をしていく必要性を感じます。税法解釈にあったても、従来既得権益の不侵害がともすれば重要視されてきた気がします。税の不公平になるかどうかも、一つの大きな解釈上のポイントであってよいように私は思います。

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2011年2月17日 (木)

イラク戦争

イラク戦争とは、不思議な戦争です。2003年3月20日に、米軍と英軍を中心とした軍隊が国境を越えて侵攻を開始した。4月9日にバグダッドは陥落し、フセイン政権は終了した。フセイン自身は、2003年12月13日に隠れ家に潜んでいたが捕まった。戦争は、何時終わったのか、今も続いているのか、戦争が終わった何月何日という適当な日にちが存在するのか考えてしまいます。

訳の分からない戦争ですが、次のニュースに接して思ったのは、「そんなところかな?」でありました。

MSN産経ニュース 2月16日 イラクの大量破壊兵器 内部情報は「でっち上げ」

で、英紙ガーディアンの報道として、イラク戦争開戦直前の「イラクは移動式の生物化学兵器とその工場を持っている」とした情報はイラク人情報提供者による捏造だったと当の情報提供者がインタビューで話をしたと書いています。

元のガーディアンの報道とは次の所にあります。

15 February 2011 Guarudian Defector admits to WMD lies that triggered Iraq war

英語で、WMDとは、Weapon of Mass Destructionのことであり、大量破壊兵器です。記事の内容は、書き出しの次の文章で代表されていますが、Read the full story of how the US was dupedを読んでも興味ある内容が書かれています。

The defector who convinced the White House that Iraq had a secret biological weapons programme has admitted for the first time that he lied about his story, then watched in shock as it was used to justify the war.

思ったことを書き連らねてみます。

1) 一人の嘘情報で戦争になるのか?

情報提供者とは、国家情報機関に対する情報提供者であり、スパイです。彼は、ドイツに亡命した時、亡命を認める変わりにスパイになることを要求されたのです。政府の情報戦争とは、そんなことなのですね。日本政府も、しっかりと北朝鮮スパイを使っているのでしょうか?(余談でありすぎました。)

政府が戦争を決断するのに、たった一人のスパイからの情報で動くのでしょうか?重要な判断をする場合には、複数のできる限り多くの様々な情報を分析して、実施すると思うのです。彼は、自分が話した嘘が戦争を正当化するのに使われてショックを受けたと言っているのですから。

例えば、好戦的独裁者がいれば、簡単に、特定情報で動いてしまうのでしょうね。米国関係者も、今後研究をするだろうし、人類にとって重要な研究テーマだと思います。

2) ドイツは嘘情報を見抜いていたのか?

ドイツはイラク戦争に参加しませんでした。しかし、彼はドイツのスパイであり、同時に米国にも情報提供をしていたのです。パウエル米国国務長官が国連安全保障理事会で演説をしたのが2003年2月5日で、この演説の中で、今回インタビューに応じた情報提供者が書いたスケッチを証拠として見せたのです。

歴史とは、相当の期間が経過しないと、真実が見えてこなかったが、最近はネットのおかげで、短くなりました。少なくとも、ドイツは、イラクについて他の多くの情報収集手段を持っていたことが、ガーディアンの記事でも分かります。米国、英国が何故欺されたのかということと、ドイツ、フランスが何故参加しなかったのか、情報戦ではどうであったのかが、やがて分かってくるのでしょうね。

3) 日本の参加は正当化できるか?

当時の首相は、米国の言うことは信用できるとして、後方任務ではあるが、イラク国内での活動を伴う戦争への参加を呼びかけ、日本は参加しました。平和憲法だからとの理由のみならず、戦争への参加は、日本人にとって相当重いものであった。戦場に自衛隊が行くことが、余り大きな反対論もなく、実施されたと思います。

広島の原爆記念碑の言葉も、むなしいことになりそうな気がします。私は、少なくとも、戦争に日本が参加するなら、これこれ、このようなことでと言う明確な理由が必要だと思います。米国の戦争だから、日本も参加するというのは、許されべからざることと考えます。(正確には、米国が大量破壊兵器についての絶対的証拠を掴んでいるので、間違いはなく、世界平和のための戦争であり、許されるとの説明であったと記憶しますが、肝心の証拠が国民に開示されなかったので、「米国が」が理由付けになっていると考えます。)

日本も情報活動をすべきだと思います。(しているでしょうね)世界の全ての国である必要性はありません。情報活動が弱い部分は、他国からの情報にも頼ればよいし、情報交換が可能な部分もあると思います。いずれにせよ、他国の情報に依存するなら、証拠をきちんと手に入れることです。自分の国の情報機関のスパイだって、嘘情報を流してくるのですから、他国からの情報なんて、嘘情報が大量に入っていると思うべきです。

憲法第9条の改正につながるとして反対論があると思いますが、日本は、どのような場合に戦争に参加できるのか、議論・検討をしておくことも必要ではないかとの気がします。何故なら、イラク戦争ではあまりにも簡単に日本の戦争参加が決まってしまったと思います。

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年金について考える(その1)国民年金

年金について考えてみます。先ずは、国民年金が得なのか、損なのかです。

この国民年金のパンフレット(平成22年度版)のあるように、政府は国民年金について次のように述べています。

メリット1 老後をずっと支える終身の年金
メリット2 不測の事態に備える保険としての年金
メリット3 納めた保険料分は税金の負担が軽減
メリット4 生涯の年金額は保険料の1.7倍以上
メリット5 国民年金は経済の変動にも負けません

メリット1は、その通りです。但し、長寿を全うしないで、若くして亡くなると、損をすることになります。

メリット2は、65歳未満で障害者となった場合に障害者年金が受給でき、基礎年金については、18歳以下の子があり死亡した人により生計が維持されていたという要件がありますが需給制度があります。病気で障害者の認定を受けても受給できるのであり、保険の性格をもっています。

メリット3については、社会保険料控除の対象であり、税負担の軽減になります。但し、低所得者にとっては、それほど大きな魅力ではない可能性があります。但し、低所得者には、保険料免除制度があります。学生の場合の免除もあります。仮に、全額免除となった場合の、年金受給額ですが、対応期間について受給額が50%になります。保険料免除に該当する場合、放っておいても意味はなく、免除手続きをすれば、将来年金が受給できるのであり、支払ゼロあるいは減額でリターンがあるという最高の投資ができます。

2011

メリット4について、私も計算してみました。81歳まで生きれば、1.7倍となりました。私の計算を行った表はここにあります。グラフにすると次の通りです。

2011_2

長生きは、そのまま年金受領で得をします。1.0になるのが74歳です。なお、政府のパンフレットにはずっと大きな金額が書かれていますが、私の計算は物価上昇をゼロとしています。

メリット5の経済の変動にも負けないというのは、残念ながら、首をかしげます。所詮、40年先や、あるいは100年近い先のことなど、不確定要素が多すぎるからです。但し、政府が管理するのであり、税をつぎ込んでも、制度を死守し、いかなる不況になっても給付を継続し、大きなハイパーインフレになっても物価調整をし・・・・と、国民年金に対する国民の権利を守っていくことは可能です。しかし、逆に言えば、バカなバラマキ政策の政党が政権を握り、年金財政を無茶苦茶にし、制度を破綻させてしまうリスクもあると思います。

メリット5は、政府が言うのではなく、国民が自分たちの制度として死守すると誓わなければならないことだと思います。過去の実態は、既得権益を守るため、その結果として若年者の権益が侵害されてきたという面があると思います。但し、その理由の一つとして、長寿社会と少子化社会が同時にやってきて、予定が狂い放しの要素があります。2004年の年金制度改正で国庫負担割合が見直され、基礎年金の3分の1から2分の1に国庫負担が引き上げられることになりましたが、この一番の理由は、国庫負担(税負担)を引き上げないと、上の私の計算が成り立たないのです。即ち、国民年金は全て基礎年金ですから、国庫負担がなければ1.7倍の年金受領には98歳まで必要であり、もし国庫負担が3分の1のままであったなら83歳が1.7倍の年金受領になります。

公的年金とは、政治に翻弄されるリスクがあります。ちなみに現状は、この日経 2月10日 国民年金改正法案を閣議決定 国庫負担2分の1維持の通り「いわゆる「霞が関埋蔵金」を使って国庫負担の2分の1を維持するのは09年度から3年連続」であります。3年連続なので、民主党ばかりを責められませんが、高速無料化やその他のバカなバラマキを少しは減らして、国民のことを考えた予算を作ればよいのにと思います。81歳で、1.7倍は、国庫負担2分の1があっての話なのです。

厚生労働省は、本年1月28日に国民年金保険料の納付率を2010年11月末現在で56.7%と発表しています。(この発表)たったの56.7%しか払っていないのです。但し、よく読むと対象月数10,013万月で納付月数5,677万月とあり、4-10月の7月分なので7で割ると1,430万人のうち支払ったのが811万人であることが分かります。実は、2010年3月末の国民年金の被保険者数は1,977万人とされています。保険料を支払っているのは、全体の1,977万人の56.7%ではなく、保険料免除をされた人が約550万人存在し、免除されていない1,430万人の56.7%の人が支払っているという意味です。

なお、サラリーマンは厚生年金に、公務員は共済に加入するので、国民年金は農業者や小売店その他の自営業のイメージですが、非正規雇用者が実に多いのです。次のグラフを見てください。社会保険庁の平成16年公的年金加入状況等調査から作成しました。

2011

更に年齢階層により分割したのが次のグラフですが、どうですか?実態をよくあらわしていると思います。学生は非就業者・不詳に含まれています。

2011_2

非正規雇用で厚生年金に加入できず、収入も少ないという若者が多いのが現実と思います。収入が少ないから、国民年金が有利だと言われても、そんな金銭の余裕はなかなかないし、一方で、政治に翻弄されかねないと考えれば、払ってもムダになりかねないと思ってしまう。子ども手当と騒ぐのもよいでしょうが、若者にももっと陽を当ててよいと私は思います。

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2011年2月15日 (火)

鳩山前発言の辺野古方便発言

沖縄タイムスの記者によるインタビューでの発言であり、その沖縄タイムスの記事は次です。

沖縄タイムス 2月13日 鳩山氏「抑止力は方便」本紙インタビュー 辺野古回帰 理屈付け 普天間移設 戦略の欠如 陳謝

移設先を名護市辺野古と決めた理由に挙げた在沖海兵隊の抑止力について「辺野古に戻らざるを得ない苦しい中で理屈付けしなければならず、考えあぐねて『抑止力』という言葉を使った。方便と言われれば方便だった」と弁明し、抑止力論は「後付け」の説明だったことを明らかにした。

鳩山前首相のインタビューの一問一答として、次の47ニュースに掲載があります。

47ニュース 共同2月13日 鳩山由紀夫前首相の一問一答

首相が、国民に説明するに当たり、方便を使って良いはずがない。ところで、考え方によれば、米軍から譲歩を得ることを含め、辺野古案に戻る以外に方法はないことを、単純化して、抑止力の観点から難しいと表現したとなる。

日本の首相には、言語明瞭・意味不明なる発言をする方が多く、政治や経営とは言葉であると思っている私からすれば、失格の方々に思えます。

例えば、現首相菅氏は、次のように述べています。(2009年9月9日 沖縄タイムス 移設中止明記「難しい」 民主・菅氏)なお、衆議院選は10日前の8月30日でした。

一方で、「鳩山代表はこれまで県外、国外と言っており、責任を持って交渉するだろう」とし、党の姿勢に変更がないことを強調した。

抑止力発言があったのは、鳩山氏が首相就任後初めて沖縄を訪問した時のことでした。沖縄タイムス 2010年5月4日 首相、県内移設表明 知事と会談「県民に負担を」

政治家とは、その場限りの、無責任発言を重ねる方々であると感じます。

一方、鳩山氏は無責任であり、発言に責任を持たない。しかし、正直な人であると言えるような気がします。多くの議員の中には、自らも勉強をし、他人の研究や検討も勉強し、人格的にも立派な人もおられる。そのような人を議員に選びたい。既存政党にいなくても、政党人ではなくとも、いなければ、我々からそのような人を議員として担ぎ出すことができる制度がよいと思う。今の小選挙区制度は、残念ながら、そのような要求を満たすことはできない。既存政党と大政党に有利で、政策や意見より、求めるものを捨てでも、政権につくための権力闘争が優先してしまう制度である。

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2011年2月13日 (日)

日本航空整理解雇から考える

日本航空について書くのは随分久しぶりですが、次のニュースが出発点です。

しんぶん赤旗 2月9日 “業績上は整理解雇不要だが更生計画は反故にできない”

JAL会長稲盛氏が、日本記者クラブでの2月8日昼食会で、会長就任から1年の取り組みについて話しをした際に、日経の三宅記者の質問に対して答える中での発言です。次の所で稲森氏が講演した動画を見ることができます。(日本記者クラブのホームページからリンクがありました。)

2011年2月8日 12:00〜 14:00 10階ホール 日本航空の稲盛和夫会長講演

日経の三宅記者の質問は、この動画の1時間3分を経過した所から始まり、それに対する稲森氏の回答は1時間8分経過付近で終了します。

1) 発言内容

しんぶん赤旗が報道している通りでした。

「会社業績は日を追うごとによくなっている。160人を残すことが経営上不可能かといえば、そうではない。しかし、金融機関、債権者、裁判所などに約束した(日本航空の)『更生計画』を1年もたたないうちに反故にしてしまうことはできない。過去、日本航空は約束を守ってこなかったから、倒産したのである。合計16,000人を解雇するという自分が就任する前に作られていた再建計画に基づき、ほぼこれに近い方々に別会社に移動することを含め、人員削減を実施してきた。」

2) 解雇権

日経三宅記者は、日本の解雇制度が厳しすぎて企業が解雇をできず、その結果が新卒者の就職難や若年労働者の雇用機会の減少につながっているのではないかと稲森氏の意見を求めていました。現実に解雇を実施している日本航空経営者への質問です。

雇用者に解雇権がないかと言えば、当然あります。なお、他の権利と同様で濫用してはなりません。

(注)「濫用」とは、「乱用」ではありません。権利の「乱用」とは、認められない権利を行使することであり、権利の「濫用」とは、権利としては存在するが、他の権利を侵害することになったり、みだりに行使することは許されず、権利行使にあたり代替案を含め十分な検討と努力をした上で行使すべき権利を、安易に行使することです。

そこで、濫用にあたるかどうか考えると、次の報道にある労働組合の主張の通りであれば、濫用に思えます。計画より業績がよいのに、何故計画通りに解雇する必要があるのかと思います。

47ニュース 2月4日 日航解雇で労組がILO申し立て 十分な協議せず、と

ILOに是正勧告を求め、1月には解雇無効を東京地裁に提訴したとのことですが、ILOや東京地裁の判断を待ちたいと思います。

なお、2010年11月26日に京都地裁で整理解雇が権利の濫用にあたるとして整理解雇の無効が判断された判決がありますので、リンクを掲げておきます。

平成22年11月26日 京都地方裁判所 地位確認等請求事件 判決 判決文

3) 雇用

雇用は大きなテーマです。もっと事由に解雇を実施できるのが、本来の姿かも知れません。しかし、雇用を単純に、その雇用に関わる雇用主・会社と労働者の問題のみで考えることは適切でないと考えます。日本は、終身雇用の世界であったし、実は未だ終身雇用的な状態が日本社会に続いていると思います。ある先進国の会社を訪れた時、応対してくれた人に、それまでの仕事の実績等を尋ねたことがあります。その人は、その会社のモロ競争相手に数年前まで勤めていたとのことでした。自分の能力を精一杯高く売りつける社会では、よくあることです。日本だったら、企業機密が競争相手に渡ると心配するでしょうね。しかし、そもそも、自分が身につけたKnow-Howと企業に属する情報とは、それほどスッキリと区別できないはずです。

政府は、平成23年度税制改正案で、雇用を増やした企業に対する法人税の優遇措置なんてのを出していますが、どんな効果があるのだろうかと思います。例えば、農林業の労働人口が高齢化すると同時に減少している。労働マーケットがゆがんできているように思います。政治家だけの責任ではありませんが、一方で法や政府政策が果たす役割は大きいと思います。雇用マーケット、労働マーケットを進化・発展させていくことを考えることは重要と思います。

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2011年2月 7日 (月)

日本相撲協会の改革

一部には日本相撲協会解散の可能性という報道もあるようですが、それは行き過ぎのはず。2月3日にブログを書いた後の2月6日に大阪場所中止の発表もあり、参考まで私の整理を書いておきます。

1) 現在の日本相撲協会

日本相撲協会の正式名称は財団法人日本相撲協会であり、その寄付行為(財団法人なので定款とは呼ばれず、寄付行為です。)はこの相撲協会Web Pageにあります。2006年5月に国会で成立した公益法人改革関連3法の前から存在しており、改正前の民法34条(公益法人の設立)により設立された財団法人です。

民法は、自然人以外に法人の存在を認め、公益に関する社団又は財団で営利を目的としない法人を主務官庁の許可を得て設立できるとしていた。営利を目的とする法人は商法により会社として設立されるべきとの考え方でした。

公益法人改革により従来の財団法人及び社団法人は、公益性について認定の申請を行い、認定されれば公益財団法人または公益社団法人となれます。(期限2013年11月)例えば、日本気象協会は財団法人であったのですが、2009年10月1日から一般財団法人日本気象協会となっています。相撲協会も一般財団法人となることは可能です。

2) 日本相撲協会の収入と寄付行為に規定している事業内容

日本相撲協会の平成23年予算がここにありますが、総収入額95億円のうちの75億円(82%)が本場所事業収入です。一方、寄付行為の第4条において「次の事業を行う。」なっており、(1) 相撲教習所の維持運営、(2) 力士、行司、呼出、床山の養成と全部で9項目ありますが、本場所を開催することが書かれていません。

相撲協会自身が大八百長をしているように思えます。

3) 公益事業と収益事業(私の定義)

相撲の本場所を事業主として開催して、それを収益事業ではなく、公益事業だとするなら、反社会的事業を除いて全て公益事業です。対価を得てコストを賄い自立・持続・継続するようにする事業が収益事業です。農業は収益事業です。同時に、食料を生産する社会に貢献している公益事業であると考えます。

広義の収益事業とは、反社会的事業を除く全ての事業であり、狭義の収益事業とは自立・持続・継続が困難であるが、社会的な意義が大きく、寄附金に依存する度合いも高く、補助金や税優遇の手段を含め政府や地方自治体も、その活動を支援すべき事業と考えます。

4) 相撲協会の今後

プロ・スポーツ事業の実施主体である限り、公益法人はおかしい。一般財団法人となるか、相撲の本場所事業を含め相撲興行は、別法人を設立し、その新法人に移行をすればよいのです。そうして、相撲協会は現在の寄付行為にある通りの教習所の運営や力士の養成をアマチュアを含め実施し、国技相撲の普及に尽力すればよいと思います。

そもそも相撲の不祥事は、力士がたるんでいるからという理由より、経営・運営が近代化されていなかったことにも大きな問題があるはず。一般の会社でも、経営は幅広い経験が必要です。知識は外部から借りることができても、経験を借りるのは困難なことが多いのです。相撲協会で言えば、どのような立派な力士でも、部屋が運営できても、協会の運営は容易ではありません。経営感覚を持った人にそれなりの権限を渡し、能力あるコンサルタントを雇う必要性を感じます。

5) 日本相撲協会解散の可能性

私は、協会解散の可能性はないと思っています。解散可能性の一つの論拠は、相撲協会が公益財団法人にこだわり、2013年11月までに公益性の認定を受けられず、一般財団法人への移行を選択しなかったときのことです。

そんな非常識な選択はないはずですが、ちなみに日本相撲協会の寄付行為では46条で残余財産の処分については、文部科学大臣の許可を受けて、この法人の目的に類似の目的を有する公益法人に寄附すると規定しています。いずれにせよ、その前に定款を変更して適正な組織、ガバナンスが有効な組織に改革することが必要であり、重要です。

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2011年2月 5日 (土)

宮古島での自動車運転過失致死無罪を考える

現在2チャンネルで話題になっているようです。2008年に沖縄県宮古島市で起こった自動車事故で、バイクに乗っていた高校生が車に衝突され死亡した。車(軽自動車)には、運転をしていた人を含め6人が乗っており、その6人の氏名は判明しており、警察は運転をしてた女性を送致し、酒気帯び運転と自動車運転過失致死の罪で、その女性は起訴された。

一審では容疑が認められ、懲役3年の実刑判決となりました。しかし、福岡高裁那覇支部での2010年8月17日の控訴審判決では弁護側の主張である「事故当時は同乗していた長女(当時15歳)が運転していた」というのが認められ、一審判決は破棄され、自動車運転過失致死罪については無罪となり、酒気帯び運転についてのみ罰金30万円となった。

この高裁判決を受け、福岡高等検察庁那覇支部は判決から2週間後の8月31日、上告しないことを決め、この女性の無罪は確定しました。

その結果、警察は再捜査することになり、15歳の長女が運転していたのであれば、長女を検察に送致し、検察は起訴をする必要があります。ところが、再捜査の結果は「新たな被疑者はいない」と結論付けたとのことです。即ち、当初容疑者として送致した女性以外に被疑者は存在しないこととなります。

検察は上告を断念しており、女性の無罪は確定しています。次の憲法第39条の考え方であり、犯行を犯していない長女を含め他の5人の同乗者を逮捕・起訴することは、当然あってはならないことです。

憲法第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない

一方、当時17歳であった高校生の遺族は、悲しみだけでなく、受け入れられない現実と向き合っているのだと思います。

皆様なら、どう思われますか?

1) 検察は最高裁に上告すべきであったか

刑事訴訟法では、上告の事由について、405条第1項のように「憲法の違反があること又は憲法の解釈に誤があること。」のように限定しています。最高裁では、事実の判断について争われないこととなっています。

従い、冤罪の逆ではあるが、検察を糾弾することが正しいのか、単純に結論づけられない点があります。

2) 弁護士の責任は

このような裁判結果に接すると、弁護士とは真実や真理を追求するよりも、裁判で勝たせることが役割であり、人間の感情に無関係な冷酷な人達であると思ってしまいます。もし、罪を犯せば、このような弁護士を雇いたいと思ってしまう。

しかし、弁護士とは真実や真理を追求する仕事ではありません。依頼人のために、弁護をすることが仕事です。勿論、弁護の途中で依頼人のことを信頼できなくなり、辞任することもあるでしょうが、疑いがあっても、(嘘をつくことはできませんが)依頼人のために懸命に弁護することは重要です。

この事件について、何も知っていませんが、弁護士が悪意を持って、弁護士活動をしたのではないはずです。

3) 裁判官の責任は

当時15歳の長女が運転していたとの容疑者の主張に裁判官は疑問を持ったはずです。同乗していたのは、容疑者の友人の女性2人と娘3人でした。容疑者又はこの5人の中の誰かが運転していたのに間違いがない。親子であれば、娘が身代わりに犯行を認めることは、生じた状況であったはず。

判決文も裁判記録も見ていないので、何も言えません。言えることは、裁判とは真相を明らかにする場ではないことです。この裁判も「容疑者が刑事罰を受けることについて、その容疑を認める十分な証拠が存在するか」です。この女性が運転していた事実を推認させる客観的な証拠はなく、同乗者らの供述は信用できず、合理的な疑いが残るとして、無罪判決を出したのです。

4) 運転していた女性被疑者

真実は、この女性のみでなく同乗していた全員が知っています。裁判で真実は明らかになっていないが、真実は存在し、その真実を知っている人も存在します。

刑法の罪については罰に問われない。しかし、良心の罪、宗教的な罪、道徳的な罪に一生さいなまれることになると思います。刑罰により良心の痛みが軽くなることはないでしょうが、刑罰を逃れたことにより、良心の痛みが、更に増すことはあると思います。

良心の痛みに耐えて生き続けることは辛いことだと思います。この女性が運転していた場合、いっそのこと、第一審の懲役3年を受け入れて、被害者に精一杯の賠償をすることで、幸せになれたのではと思います。

5) 民事賠償責任・民事裁判

報道からすると、民事裁判が終わっていないようです。容疑者であった女性は、民事賠償責任から逃れることはあり得ません。警察が再捜査結果として、新たな被疑者はいないとしたことは、責任を逃れようと刑事裁判で娘に罪を転嫁し、遺族の精神的に受けた苦痛は極めて大きいとして、高い賠償金額・慰謝料の請求になる可能性が高いと思います。

遺族からすると、金銭で解決はつかないが、金銭以外に求めるものはない。被害者として、謝罪以外に、金銭より他に要求するとなると、何もないし、また求めてはいけないことです。命を差し出せ、奴隷になれとは言えません。

刑事罰については、このような結果ですが、それを民事で埋め合わせ、可能な範囲で解消することはできると思います。人間が作り出した社会のルールは、人間が幸福になるように運営すべきだと考えます。

=====参考 新聞記事=======

最後に参考とした新聞記事のリンクを掲げます。

沖縄タイムス 2011年2月2日 「新たな被疑者なし」 宮古死亡事故 県警、再捜査で結論

沖縄タイムス 2011年2月2日 「何のための再捜査」 宮古死亡事故 被害者の母 怒りあらわ

宮古毎日新聞 2010年9月5日 高校生死亡事故逆転無罪に困惑

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2011年2月 3日 (木)

プロ・スポーツが公益事業とは根本的におかしい

次のニュースに、大いなる違和感を感じました。

日経 2月23日 相撲協会の公益法人認定「難しいと言わざるを得ない」 官房長官

プロ・スポーツとは、観客から観戦料金を徴収して成立するビジネスであり、観客の支持を受けるべく、アマチュアとは異なった高度なレベルのスポーツの技により観客に興奮や満足を与える仕事です。AFCアジアカップのカタール2011における日本チームの活躍は感動を与えてくれました。

さて公益法人とは、公益財団法人もしくは公益社団法人のことであり、2006年5月に国会で成立した公益法人改革関連3法により、行政庁の認定を受けた公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人です。新制度への完全移行は、2013年12月なので、2013年11月までに公益法人の認定を受ける必要があります。

そこで、公益性の認定基準の一つとして、公益目的事業比率50%以上があります。ちなみに、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第15条は次のように定めています。

(公益目的事業比率)
第十五条 公益法人は、毎事業年度における公益目的事業比率(第一号に掲げる額の同号から第三号までに掲げる額の合計額に対する割合をいう。)が百分の五十以上となるように公益目的事業を行わなければならない。
一  公益目的事業の実施に係る費用の額として内閣府令で定めるところにより算定される額
二  収益事業等の実施に係る費用の額として内閣府令で定めるところにより算定される額
三  当該公益法人の運営に必要な経常的経費の額として内閣府令で定めるところにより算定される額

プロスポーツのチケット販売収入・入場料収入は、どう考えても、収益事業だと思います。即ち、第15条において第2号の金額が50%以上あり、第1号は50%を下回るのが明らかだと思うのです。

Jリーグの2010年覇者名古屋グランパスは、株式会社名古屋グランパスエイトです。プロ野球日本シリーズ優勝の千葉ロッテマリーンズは、株式会社千葉ロッテマリーンズです。

私は、プロ・スポーツは、プロ・スポーツとして、お金を観客から頂いて成長していくのが本当の姿であると考えます。

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2011年2月 2日 (水)

バラマキに反対論を述べた朝日新聞

バラマキが横行すると、さすがの朝日新聞も反対論を述べ始めたと思いました。

朝日新聞社説 2月2日 主婦の年金―この不公平は許されない

ここまでバラマキをされるとモラルも何もありゃしないですが、そのバラマキ政策とは次の政府の対応です。

朝日 2月1日 年金切り替え漏れ数十万人=夫が脱サラ、退職の専業主婦―救済策周知へ、年金機構

掛け金を払わずとも、年金が受給できるなんて、多くの人にとっては信じられないことです。もし、100万人が対象だとし、掛け金を払っていない期間が20年であるとすると、一人あたり360万円、100万人で合計3兆6千億円になります。但し、運用利息を考えると、年率3.5%とした場合には、一人当たり5,124千円となり、100万人合計で5兆円を超えます。

信じられないバラマキ金額です。もし、年金の掛け金を払っていない人を救済するのであれば、払った掛け金に見合った年金を支払うこととすれば良いのです。掛け金の支払期間が25年より短くても、救済すべき理由があれば、支払った掛け金額に応じた年金を支払うべきと考えます。

もし、このバラマキ政策を実施したら、正規に支払っている人の年金が5兆円の減額となるかあるいは、5兆円の増税になるのですから、恐ろしいことです。

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小沢一郎問題

「小沢氏の処分、早急に決めず」なんてニュースがありますが、これは政党内の話であり、国民の観点は、これとは異なると思います。

日経 2月2日 民主幹事長「小沢氏の処分、早急に決めず」

国民としては、次の「小沢一郎が党首だった自由党の2002年の組織活動費約15億円が使途不明」とのニュースの方が、根本的問題として考えるべきと思いました。

日経 2月1日 旧自由党の資金15億円、藤井氏「知らぬ」 予算委で答弁

政党助成金という税金が、この15億円に含まれているのではと思うのです。明朗会計で、政党助成金の支出については、帳簿も全てのレシートもWebまたは、Webと同等な誰もが容易にチェック可能な手段を提供して会計を公開していますと言うなら別ですが。

事業仕分けでは弱者をいじめるより、政党助成金の使途を事業仕分けの対象にすべきではないかと思います。日本に寄附文化がないのではなく、会計責任や会計公開の文化がなく、寄附をしても、どのように使われるか不明であり、募金の名目と使途が異なるのではないかの不安がつきまとっており、この障害を除かないと正常なNGO活動、NPO活動あるいは政治活動も成立しないことを危惧します。

ところで政党助成金は、どうすれば良いかと言うと、やはり議員活動助成金とし、議員個人に支払う。そして、選挙は政党主体ではなく、候補者個人の人となりや、意見を重視して、選べるようにする。政治活動は、政党がするのではなく、(議員でない人も含め)個人がするのです。国民一人一人が主役の生きがいがある国をつくるべきと考えます。

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