イレッサ大阪地裁判決 (社説の比較)
大阪地裁で、AstraZeneca PLCが80%、住友化学株式会社が20%の株主であるアストラゼネカ株式会社に対する原告9人への計約6000万円の賠償と政府に対する賠償棄却の判決が2月25日にありました。
読売 2月26日 イレッサ訴訟、国への請求棄却…輸入元賠償命令
1月9日に私は、イレッサ訴訟の和解に反対するを書き、その後、アストラゼネカも政府も和解ではなく裁判を選び、その結果、原告と被告の主張とともに裁判所の判断も公開されることになり、よかったと思っています。判決文は未だWebになく、判決に対するコメントや意見を述べることは適切ではないと思っています。今回の裁判については、新聞各社も社説で取り上げており、それらを紹介すると共に、社説に対する私のコメントを付け加えます。
読売 2月26日社説 イレッサ訴訟 副作用の警告を重んじた判決
毎日は、社説ではなくクローズアップで取り上げていました。
毎日 クローズアップ2011 2月26日 イレッサ大阪訴訟 薬害責任、割れた結論
各社社説を読み比べると、私は、朝日の社説は、論理と理性に欠ける感情的な文章であると思います。他の社説には「ドラッグ・ラグ」という言葉入っているのですが、朝日と読売にはありません。「ドラッグ・ラグ」の解消については、どのように考えるかを、今回のイレッサ訴訟で抜きにしてはならないと思います。また、あらゆる薬には、副作用があり、添付文書の副作用情報の何番目の副作用が強いかは、患者により病状により異なります。
同じことについて、同時に社説が書かれており、読み比べるとおもしろいです。どの新聞社が、社説を書く有能な人材を保有しているか、評価してみて下さい。
私は、毎日のクローズアップ2011の、次の部分が、この判決を機会に書く文章としての適切さがあると思いました。医療において、薬はなくてならない物です。薬事は、薬学部出身者のみならず医師や他の分野の人材も必要です。日本では、バイオを研究しても就職口はなく、他の博士号を取得したポスドクと同様です。現内閣は、最先端技術とか口にしていますが、実は一部の特定産業のみに偏っており、本当に必要なやるべきことをしていないように思います。
・・・しかし、日本の医薬品の承認審査体制は、欧米に比べ脆弱(ぜいじゃく)なのが実情だ。 医薬品の製造・販売承認を行う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)によると、PMDAの職員数は605人(10年4月1日現在)で、うち389人が審査部門に所属。欧米に比べ新薬承認が遅れる「ドラッグ・ラグ」解消や安全対策の強化などを目的に職員を毎年増員しており、04年の発足時に比べ審査担当者は約2・5倍増えた。 しかし、PMDAによると、米国の審査機関の食品医薬品局(FDA)の総職員数は09年度で4911人(同年度のPMDAは521人)、年間予算約1071億円(同約96億円)と約10倍もの開きがある。医薬産業政策研究所によると、新薬承認にかかる審査期間(09年)は通常審査品目で米国13カ月、欧州連合(EU)13・6カ月に対し、日本は19・6カ月かかっている。 さらに、急激な職員の増員を巡る課題も浮上している。製薬会社などの民間企業出身者は、採用後一定期間は前職と密接な関係にある業務に就けないなどの制限があるため、PMDAは大学薬学部出身者など新人の大量採用を進めてきた。その結果、職員の約4割が30歳以下となり経験の浅い審査担当者が増えた。 同研究所が09年に国内で新薬の承認を得た企業約40社を調査したところ、「経験が浅いため、自身の考えで的確に判断し企業側と議論できるまでに至っていない」「担当者や審査部門によって対応にばらつきがある」などの回答が目立った。中には「職員数は増えているが実質的な審査能力がアップしているか疑わしい」という厳しい意見もあった。 同研究所は「人員を大幅に増やす過渡期なので仕方がない面はあるが、大学や民間企業との人材交流を増やし、臨床現場を知る専門医や薬剤師を積極採用するなどの方法で教育プログラムを充実させる必要がある」と指摘している。 |
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