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2011年3月 2日 (水)

運用3号国民年金の無責任体制

運用3号国民年金被保険者(本当は、基礎年金3号被保険者の方がよいのかも知れませんが、国民年金法7条1項3号における定義であることから、運用3号国民年金被保険者としておきます。)問題に関する政治家・議員や政府の対応そしてマスコミ報道を見ていると嫌になってくるので、書いてしまいます。

1) 本質論

本質論は、まじめに手続きをした人とうまく運用3号により保険金の支払いを逃れる人との不公平ではありません。不公平がおきているのを是正せず、見知らぬふりをして、放置したことが問題です。

そこで放置したのが、社会保険庁の人であったのかですが、そうとも言い切れません。3号被保険者とは、社会保険庁が管理できないような状態にあったとも言えるのです。そもそもは、3号被保険者という制度をつくるなら、それを管理する法制度を作らなかった政治家と高級官僚に最大の責任があります。

消えた年金は、誰が悪かったのか。政治家です。そして、幹部役人です。臭いものに蓋をして、先送りをしていたのが出てしまったのです。運用3号問題は、消えた年金の逆ですが、実は、これも問題の先送りをしていただけ。運用3号が不公平であるとの議論は、先ずは過去の政治家に向けられるべきであろうと考えます。

過去を全て洗い出し、国民の前に、全てを明らかにすることが必要です。年金記録について、保険料を支払った被保険者に開示しない制度がどうして存在したのかです。3号被保険者という制度をつくりながら、誰が3号被保険者であるか、その管理を誰もしない制度が正しい訳がない。社会保険庁に年金記録を被保険者とチェックしたり、3号被保険者をチェックする権限を与えていなかったのであるから、社会保険庁が悪いとは言えない。

2) 通知・通達

政府行政においては、通知・通達が出されることが多い。通知・通達は法ではないので、その差出人と相手先を縛るのみであり、国民を縛るものではない。国民は、通知・通達に縛られず、それは法に従っていないと訴訟を提起可能である。

運用3号問題は、2010年3月29日の年金記録委員会で取り上げられ、8月以上経過した12月15日に通達として出されたのです。8ヶ月間、厚生労働省内部で、法改正の必要性も含め、盛んに議論がされていたはずです。私の想像ですが、法改正をするなら、根本的な問題から改正すべきであり、とりあえず解釈通知で統一的な運用取り扱いをすべしとなったのであろう。当然、大臣等にも話は行っているはず。

法改正には検討すべき事項が多く、中途半端な法改正をするよりは、とりあえず解釈についての通知・通達で扱いを決めて対処する選択もあり得るはず。現実に、運用3号が出る前から、この問題は存在した。それに対しては、どのような扱いをしていたか、厚生労働省は答えるべきである。

3) 日本年金機構は解体すべし

私は、日本年金機構は解体し、社会保険庁をつくるべきと考える。公的年金とは、重要な制度であり、公務員が管理すべきである。公務員とは、憲法においても、第15条2項の「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」に限らず、第17条の「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」がある。例えば、法律上も守秘義務については、公務員の義務は、非公務員よりも厳しい。

消えた年金は、社会保険庁に問題があったのではなく、年金全体の管理制度に問題があったのである。その問題を明らかにせず、組織を政府から切り離すのは、魔女狩り以外に何ものでもない。多分、これを唱えた人達(マスコミも含め)のすねに傷があったのだと疑う。

4) 良い年金制度を

「年金を考える」としてシリーズで書こうと思っていますが、未だその1を書いただけ。続きを近々書こうと思いますが、日本の年金制度は、明らかに時代にそぐわなくなっている。2月17日の年金について考える(その1)国民年金で書いたが、1号被保険者は自営業者だと言われているが、実は自営業者は1号被保険者中の5分の1以下で、派遣、非正規労働者、フリーター、学生等が5分の4以上である。そのような人達を捕まえて、所得が捕捉できておらず、優遇されていると述べる。自営業の人達だって、所得については、ほぼ確実に税務署が所得額を掴んでいる。確かに、農業従事者が自分の農地で収穫した農産物を食べる場合、時価消費額は所得金額とすべきで、それを正確に申告していないかも知れないが、問題とすべきような事項と思わない。一方で、年末調整を受けた給与所得者は所得税法121条により原則20万円以下の他給与所得以外は申告義務を有さないが、この制度は自営業者には適用されない。

3号被保険者問題は、次回の「年金について考える」において、述べる予定であるが、これも時代とのミスマッチが大きすぎる。その結果は、運用3号以上の不公平を生んでいるし、私は日本の社会の経済発展・成長を大きく阻害していると考えている。

制度とは、絶対論で正しいとか正しくないとか議論をしても間違うと考える。時代により、価値観は異なるし、発展する分野、目指す方向、様々なものが違うのであり、その時代に最も適切な制度をつくり、それを時代と共に変化させて行かなくてはならない。

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