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2011年3月31日 (木)

原子力の今後

原子力発電も原爆も同じであり、核分裂のエネルギーを利用する。原子力発電は、核分裂の臨界状態を保ちつつ、適切にコントロールし、その発生する熱エネルギーを電力に変換し、且つ核分裂や核燃料からでてくる放射線を閉じこめる。

1) 核兵器問題

世界には、核不拡散条約(NPT)(概要は、ここに外務省の説明)があり、米、露、英、仏、中の5か国を核兵器国と定め、核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止することを取り決めている。但し、インド、パキスタン、イスラエルは非締約国であり、インド、パキスタンは核兵器を保有し、イスラエルも保有していると思われ、締約国の中では、イランと北朝鮮が話題になっている。

世界には、IAEA(国際原子力機関:概要は、ここに外務省の説明)があり、外務省の説明にも、「IAEAは、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする。」とあるように、原子力の平和利用と核爆弾とは密接な関係がある。

核を保有してしまった人類は、無秩序に軍事利用が拡大しないように、核を管理しなければならない。テロリストへの核物質の拡散防止を確保せねばならず、技術障壁の低下により危険性が増加することや、破綻国家の出現を考えれば、リスクは高くなる傾向かも知れない。軽水炉燃料や使用済み燃料が、簡単に核兵器に転用されないといっても、それらを利用して、放射能まき散らし爆弾なんて、簡単に作れそうに思う。それが使用されれば、津波による福島放射能被害よりはるかに大きな被害が及ぶと思う。

原子力を考える際に忘れてはならないことである。

2) 日本の制度

日経ビジネスに掲載されていたこの中山 元さんのコラムの冒頭部分に興味あることが書いてあった。ケーキがあって、それを二人の少女の間で、できるだけ公平に分けるには、一人の少女が自分で納得できるように切り分け、もう一人が先に選ぶ。実に公平である。

日本の制度の多くは、そのような公平な仕組みになっておらず、国会の議決が、帝王の独裁になっている面があると思う。原子力開発も民主的に決定されるべきが、国民不在の実態となっていないかの点を、検討すべきと思う。そこで、原子力委員会、原子力安全委員会、原子力安全・保安院について、設立根拠、役割、委員の選任は次の通りです。

A. 原子力委員会

原子力委員会及び原子力安全委員会設置法により設置され、原子力利用政策に関すること他について企画し、審議し、及び決定する。委員長及び委員は、衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

B. 原子力安全委員会

原子力委員会及び原子力安全委員会設置法により設置され、原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること他について企画し、審議し、及び決定する。委員長及び委員は、衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。なお、原子炉安全専門審査会を置く義務がある。

C. 原子力安全・保安院

経済産業省の組織であり、原子力に関しては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に関する許可や承認を含む行政の仕事等と理解する。(この経済産業省の原子力安全・保安院ご案内を見れば、組織が分かり、仕事の内容を想像することができます。)なお、原子力に関する研究関係の政府の行政については、文部科学省です。

参考:説明図 (省庁再編後の原子力行政体制)

制度や組織が機能しないことほど、恐ろしいことはないと思う。そうでなくても、組織が形骸化していることはよくある。原子力については、事故があれば、重大な結果になるのであるから、形骸化は大きな問題である。果たして、どうであったのか、原子力委員会と原子力安全委員会の各委員は答えるべきと考える。その上で、合理的な制度をつくるべきと考える。国民の投票で選んでもよいし、国会が決定するなら、議席数(これも小選挙区の問題があると思うが)に比例するよう、与党以外の人の意見も反映されるように工夫すべきと思う。

3) 基準の妥当性

今回の福島の事故の直接原因は、想定外の大きな津波が来たことと思う。しかし、津波について、何も考えていなかったわけではない。例えば、この文書は、原子力安全委員会のWebにある論文ですが、津波についても、種々のことが検討されています。2009年9月23日に高熱隧道(黒部第三発電所)を書き、吉村昭の「高熱隧道」を紹介しました。この小説の中で、次の台詞を工事現場の所長に言わせている。

日本電力でも、地質学者の意見に不信感をいだいている。大石教授の言うようにこれから掘りすすんだ場合、温度が低くなるという期待も全く持っていない。むしろ、温度は上がる一方だろうという意見が圧倒的だ。それに仙人谷から進んでいる本坑の坑道も、摂氏80度まで上がっているのを考えると、今のままの旧ルートでは火の玉の中へ突っこんでゆくようなものだ。それで、日本電力でもルート変更を考えてくれたわけだ

しかし、このトンネル工事では最高温度摂氏148度を記録した。会議における議論で、専門家の意見が○○であると紹介すると、それが承認されることが多い。一つの例では、大和銀行事件において、弁護士が述べたことが、決定となってしたようだ。この時、弁護士は、全てについて詳細説明を受けておらず、前提付きで意見を述べているが、その前提がいつの間にか無くなってしまう。

3月16日に書いた福島原子力発電所トラブルで、天漢日乗サンがブログで、福島原子力発電所についての津波の危険性を共産党吉井英勝衆院議員が2006年3月1日の予算委員会第七分科会で取り上げていたことを紹介しました。この時か、それ以前でもよいが、関係者の中で、津波対策について考えが及んだ人もいるのではと思う。どうであったか、今後の検証を待つ。

2)に書いた日本の制度にもつながるし、日本が原子力の導入を決定した当時の三原則である公開、民主、自主が貫かれていないように思う。本当であれば、吉井議員の質問に対して、図面を示して、対策についての説明がされるべきであったと考える。原子力委員会、原子力安全委員会の方々は、どのように思っていたのだろうか。認識はあったのか。これらの点も、三原則に従い、公開の場で、各委員から説明を聞きたい。

4) 損害賠償

賠償が、どうなるか、全く不明である。それを前提に、ブルームバーグのこの記事の賠償額10兆円は、どうだろうか?否定も肯定もできないし、10兆円払ったら、東京電力がどうなるか、東京電力の電気料金がどうなるか、考えるのは時期尚早過ぎると思うので止める。念のため、整理をしておくと、

A) 電力会社の賠償責任は、原子力損害の賠償に関する法律に定められており、無限大であるが、但し書きが付けられている。(次の第3条)今回の場合、単純な法解釈で処理することが困難と思う。国民が納得する形にせねばならない。

第3条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない

B) メーカ等の関係者は免責される。同じ法律の第4条に免責が定められている。「同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない」とあり、第3条の原子炉の運転等に係る原子力事業者のみが損害賠償責任を負うと私は解釈する。また、第4条3項には、「原子炉の運転等により生じた原子力損害については、商法、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律及び製造物責任法の規定は、適用しない。」となっている。

メーカには寛大な法律であり、こうしないと日本に原子力を導入できなかったのだと思う。スリーマイルアイランドの事故後、世界で、原子力の新設が止まった。その一番大きな理由は、賠償責任であったと私は理解している。一旦事故があると、その賠償額が大きすぎて、誰も手を出せなくなった。

なお、電力会社の賠償責任に関して、原子力損害の賠償に関する法律の第7条により、保険その他で1200億円が確保されており、16条で政府の援助義務が述べられている。

原子力損害の賠償に関する法律についても、これからは、見直しをすべきと考える。原発の設計をした者は、免責でよいのか?運転者のみを賠償責任とすることでよいのか?例えば、仮に津波に対しては、XXXを満たせばよいと言うルールがあったとして、ルール違反は当然賠償責任を負う。しかし、それ以上の安全性を取っていれば、どうなるのか?ルールを作った者の責任はどうなるか?あるいは、十分な安全を確保せねばならないとのルールであった場合、設計者と設置者の関係はどうなるか?この際、そのような原点にも、戻って考える必要がある。

5) インフラ輸出

現在の内閣は、最近インフラ輸出と言っていた。原子力設備輸出をするとする。相手国は、売り手や製造者である者の責任と、その政府の保証を求めてきておかしくない。原子力の場合は、破棄物処理まで輸出者と輸出国の保証を求めてくる可能性もある。

このようなことに対して、政府はどのように対処していたのか、国民に対して説明がなかった。相手国に対して、そのような保証は一切せずに、輸出するというなら、それも一つの方法である。インフラ輸出とは、原子力に限らず、物品の価格競争でない世界が入る。そのような中で、自分の利益のみを考えていては、成立せず、関係者が皆苦労をしている。人気取りの政策ではなく、世界の発展に貢献する政策が求められる。

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日赤義援金とふるさと納税

あぶ様からのご指摘を受け、日赤義援金とふるさと納税(追記)を書きました。東日本大震災への日赤寄附金については、ふるさと納税の扱いを受けることができます。

あぶ様にお礼を申し上げると共に、皆様にお詫びを致します。

3月29日に書いたふるさと納税で地震義援金募金を寄附をするへの余計な付け足しです。

3月31日付で総務省が告示115号で、日本赤十字社への今回の地震に対する義援金募金を住民税の寄附金税額控除の対象とすることを発表しました。総務省の告示のページには未だ掲載されていないようですが、官報はこれです。対象となるのは、次の寄附金です。

日本赤十字社が平成23年4月1日から平成24年3月31日までの間に募集する災害救護設備の整備、災害救護物資の備蓄、採血受入機関の整備、原爆病院設備の整備及び救急医療体制の整備並びに支部国際活動基金に充てるための寄附金

ふるさと納税には適用されません。所得税で寄附金控除が適用される結果、その人に適用となっている税率X(寄附金-2千円)により減額される部分と、この告示により住民税の税額控除として(寄附金-5千円)X10%が、それぞれ安くなります。適用を受けるためには、領収書を添えて、確定申告をする必要があります。具体的に幾ら安くなるかは、次の式を参考にしてください。

税が安くなる額=所得得税分(寄附金額-2千円)X5%~40%+住民税分(寄附金額-5千円)X10%

寄附金額とは、所得税と住民税で少し異なるのですが、住民税の方が厳しく、例えば、国に対する寄附金は対象ではなく、認定NPO法人であっても、その地方自治体にあるNPO法人に限られ、日赤募金でも、その県の共同募金会に対する場合とか、限定されます。それが、この告示で、少し広がったのです。但し、広がったのは、今のところ日赤のみで、例えば放送局、新聞社、NPO法人その他には適用されないので、注意下さい。

また、税が安くなる額は、5万円あるいは10万円の寄附をした場合で、所得税率20%(給与所得で6百万円~10百万円位)適用とすると、それぞれ14,100円、28,500円安くなる。一方、ふるさと納税で地方自治体に直接寄附をすると、45,000円や95,000円の税金が安くなる。なお、被災地の地方自治体に直接の寄附を行うと同時に、今回の日赤募金やその他の義援金募集に募金をし、ふるさと納税を適用すると同時に、適用される所得税の所得控除や住民税の税額控除を受けることも可能です。勿論、二重に税が安くなることはないが、適用を受けるためには、所得税の確定申告をすることで、全ての手続きが終わります。

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2011年3月30日 (水)

福島第一原発プルトニウム検出の参考計算

福島第一原子力発電所の敷地内で、プルトニウムが検出されたとのニュースがあり、また原子力安全・保安院が、29日午前10時20分過ぎの記者会見で、事故の重大性や深刻さを表しており、炉心に損傷があったと考えられると説明をしたとのことです。

日経 3月29日 保安院「事故の重大性や深刻さ表している」

経済産業省(原子力安全・保安院)のこれに該当するプレスリリースはなく、重大な事故であるのは、以前からそうである。5重の壁による安全性では、原子炉建屋は壊れており、格納容器も多分損傷しており、圧力容器で保たれている。燃料棒の被覆管は水素爆発からして一部損傷は確実と思う。程度の差こそあれ、余り変わらないようにも思う。でも、数字を使って検証することも必要であり、少し計算をしてみた。(あくまで、参考であり、この結果で、判断を下す目的での計算ではありません。)

1) 測定数値

東京電力の3月28日のこのプレスリリースの別紙をクリックすると測定結果があります。21日および22日に採取した土壌中に含まれるプルトニウムの分析結果です。

最大値は、プルトニウム235が1号基の西北西500mの地点で0.54Bq/kg、プルトニウム239/240が同じ地点で0.27Bq/kgであったとの報告です。

2) プルトニウム

プルトニウムは、自然状態では、ほとんど存在せず、原子炉の中でウランが中性子を捕獲してプルトニウムに変化する。従い、福島第一原子力発電所の敷地内でプルトニウムの存在が確認されたことは、1号基、2号基、3号基のいずれか、あるいは、2基又は全てから漏れ出したと考えられる。

なお、プルトニウムは、94番目の元素であり、陽子が94あり、中性子が144あるのが、プルトニウム238であり、中性子145がプルトニウム239で、中性子146が240です。ウラン原子炉の中で、核分裂をしないウラン238が中性子を取り込んで、プルトニウムになる。

3) 測定された量

3月21日、22日に採取されたサンプル土壌から測定された分析結果について、何g位プルトニウムがあれば、このような値になるかを計算した結果が、次の表です。

Pultonium20113_2 

ベクレル(Bq)は、放射能濃度の単位であり、1Bq/kgとは1kgあたり1秒に1原子核の崩壊が生じる放射能濃度を持つ放射性物質です。時間の経過と共に、放射能濃度は減少し、半減期で丁度半分になる。半減期は、言わば崩壊速度であり、半減期が短いほど、強い放射能濃度となる。一方、短時間のうちに崩壊が進む。

重量割合と書いたのが、3月28日に発表された値(Bq/kg)であれば、1kgに何グラムとなるか計算した結果です。10^は10のべき乗であり、8.52/10^13は、0.000000000000852です。kgあたりのgなので、パーセントにするともう一つ小数点以下のゼロが増えることとなる。

一方で、数値が低ければ大丈夫とは単純に言えないので、気象庁の放射能測定調査の結果を表の下の欄に記載しました。プルトニウムについて2段書きとなっている上の行はプルトニウム238は2007年7-9月調査の最大値で、下の行は検出された値の平均値です。プルトニウム239/240についても同じです。3月28日の発表値は、プルトニウム238については、放射能測定調査の結果の最大値の4.5倍を示している。一方、プルトニウム239/240は、平均値よりも低いが、放射能測定調査の数値もバラツキが多く、3月28日発表値より低い結果も多くある。放射能測定調査の結果は、この環境放射線データベースからのデータです。

結局、この結果で何かが言えるかというと、福島第一原子力発電所から漏出したと思われるが、原子炉に致命的に大きな損傷があるわけではないと私は思います。

なお、自然状態では、ほとんど存在しないプルトニウムが放射能測定調査で測定される理由は、長崎原爆もあるが、主として核実験によりまき散らされた結果です。

4) 原子炉内のプルトニウム量の推定

原子炉に致命的に大きな損傷があるわけではないと思うと書いたのは、原子炉内にあるプルトニウム量を、1号基、2号基、3号基の合計で1000kg~2000kgと推定したからです。勿論、少しでも漏れると困るのですが、とりあえずは電源、機器、計装の確保の方が重要だし、逆にそうしないとプルトニウム漏洩も防げないと考えます。

1000kg~2000kgのプルトニウム量と推定したのは、3基合計の電気出力が2,000MWです。そうすると原子炉で発生させるエネルギーはその3倍になり、年間52TWh、即ち190PJです。ウランの核分裂エネルギーを82GJ/gとすると年間2300kgのウラン235が核分裂していることになる。その結果、発生するプルトニウムは500-600kgと推定する。4分の1づつ核燃料を取り替えるとすると、その4倍の核燃料が装荷されている。そこで、プルトニウム量を1000kg~2000kgと推定した。4号基は、燃料が装荷されておらず、5号基、6号基は問題ないはず。使用済み核燃料にはプルトニウムがあるが、プルトニウムの漏洩は発生していないと想定した。

5) 望むこと

世界の注目を集めているが、プルトニウム漏洩についても、やはり情報公開が少ない。その結果、不安を募らせることを懸念する。チェルノブイリの様な臨界に至っていない。しかし、福島第一原子力発電所には合計6基の原発で4,696MWもある。4号基も含めて、解決が必要な原子炉が4基ある。やはり、重大な事故である。

提案したいのは、原子力委員会、原子力安全委員会、原子力安全・保安院そして東京電力が一堂に会してTV中継付きの記者会見を開き、福島第一原子力発電所の事故の現状と今後について説明をすることである。部分の情報でなく、根幹部分の情報である。他の組織に傷を付けてはいけないというような遠慮した発表では困るし、対策が、そのようになってしまったら本当に困るのである。

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2011年3月29日 (火)

ふるさと納税で地震義援金募金を寄附をする

ふるさと納税制度が、2008年4月の地方税法改正で導入されています。ふるさと納税制度を使って、今回の地震義援金募金を寄附をしたら、どうなるか考えてみました。

1) ふるさと納税制度

ふるさと納税と呼んでいるが、実は税金を納付するのではなく、寄附をすることです。寄附の相手先が、都道府県または市区町村(以下地方自治体とします。)である場合に、寄附をした翌年2月15日-3月15日に確定申告を行って所得税の寄附金控除を受けると共に、住民税の寄附金税額控除を受けます。

これは、都道府県民税と市町村民税の寄附金制度が、2008年4月の地方税法改正で税額控除方式になり、地方自治体に対する寄附については、住民税(厳密には個人の所得割県民税と所得割市町村民税)から次の金額が税額控除されることになりました。

住民税の税額控除額=(地方自治体に対する寄附金額 - 5千円) X 10% + ((同寄付金額-5千円)×(90%-所得税率(注)))
(第2項の金額は、住民税額の10%を限度とするので、総額では住民税額の20%まで。)

(注)所得税率は、その人の所得税について、超過累進税率として適用されている最大の所得税率

結果として、所得税と合計すると、範囲内におさまれば、5千円の負担で済みます。(厳密には、所得税の寄附金控除は2千円を超える額であり、微妙に異なる部分があるが、無視できる範囲です。)

根拠となる税法条文は、地方税法第37条の2と第314条の7、そして所得税法第78条です。参考となるWebは、この総務省のWebがよいと思います。

2) 5千円の負担で済む上限

寄附金なので、上限はありません。しかし、5千円を超える寄附金を言わば税金で取り戻すような仕組みなので、納付する税額を超えて寄附金を支出しても、自己負担となります。そこで、目安として計算すると次のようなグラフになりました。

ほぼ上のグラフのようになり、高所得なればふるさと納税扱いにできる金額が大きくなる。このグラフを参考にしてください。

3) ふるさと納税の方法

まず、寄附をする県または市町村を決めます。複数でも構いません。その県や市町村に連絡を取り、振込先の口座を問い合わせたりして、寄附金を振り込み、領収書を受領します。この領収書を使って、2012年2月・3月に所得税の確定申告をします。その際、寄附金控除を申告することを忘れないでください。給与所得のみで、年末調整をしていれば、寄附金控除に関わる税額が還付されます。そして、住民税の通知が、2012年5月頃に送られてきます。その通知では、1)に書いた「住民税の税額控除額」相当額が、差し引かれた金額になっています。

こうして、地方自治体に対する寄附金で5千円を超えた額を取り戻すことになります。

4) 義援金をふるさと納税で寄附するメリット

最大のメリットは、寄附を行う人の金銭負担を助けます。もう一つの大きなメリットと思うのは、直接地方自治体に寄附ができることです。例えば、赤十字募金や新聞社、放送局等が募集している義援金があるが、最終的な支出先は、募集をしている団体の意思に任せることとなります。しかし、ふるさと納税だと、○○県とかXX市や町に、自分の意思で、寄附をすることができます。使途制限は難しいと思いますが、使い道について自分の希望を述べたり、メッセージを付けることは可能なはずです。また、複数の地方自治体に寄附をして、確定申告を合計金額ですることができます。

ふるさと納税は、自分のふるさとに納税する制度として、検討されていたこともありましたが、税法として成立したのは、地方自治体であれば、どこでも可能な制度です。東日本大震災を機会に、ふるさと納税で、寄附をしてもおもしろいと思いました。

あまり、宣伝されていないのですが、多分いやがる地方自治体を気にしているのかも知れません。例えば、東京都の人が、ふるさと納税で、岩手県に寄附をすると、「住民税の税額控除額」の額の住民税が東京都に納付されず、東京都は税収減となります。被災地の地方自治体は喜ぶが、寄附をする人が住んでいる地方自治体は悲しむのです。でも、震災の時ぐらいと思います。でも、納税者が力を持つのは、当然のことである気がします。

20113b

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2011年3月28日 (月)

朝日新聞の電力社説は嫌になる

次の朝日の社説です。

朝日 3月27日社説 電力不足―計画節電へ政府は動け

社会主義というより、全体主義のような気がします。自分が、偉くて、全て判っているので、それに従えと言う主義に思える。

例えば、文中に「一時、3100万キロワットまで低下した東京電力の供給力は」と、随分31,000MWを強調している。3月28日の東京電力の発表は、38,500MWなので、24%大きい。それ以外には、「ガス利用を増やし、エアコン使用を1台に限る。」とは、ガスによる冷房の勧めなのか、よく分からない。そうだとしても、様々なことを検討して、初めて結論をだせるのであるが、朝日新聞には論理的思考ができる方が、おられないみたいである。

弱い取材力で、想像たくましく、勝手な全体主義を主張する。社説を読むと、(馬鹿馬鹿しい行為ではあるが)その会社のレベルが判る気がする。私は、人々の様々な努力を信じます。

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東北・北関東5県の税務申告

所得税の確定申告期限は、3月15日であったのですが、青森県、岩手県、宮城県、福島県と茨城県の5県については、申告期限が延長されています。

平成23年3月15日 国税庁告示第8号 青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県における国税に関する申告期限等を延長する件

単に申告書提出の期限のみならず納付期限も延長されていると私は解釈します。従い、これを利用して、余裕を持って、税額計算をして税金を払えばよいと思います。最も、自然災害による雑損控除を受けようとしたり、事業所得等で資産損失の必要経費算入をしようとしても、適用されるのは平成23年分なので、この期限延長には関係しませんが。それでも、3月15日までに所得税を払わなくても延滞税がかからないのは助かります。

この対象が所得税のみかというと、国税通則法11条に基づいており、申告所得に関わる国税全てと解釈します。従い、法人税、消費税、相続税等も入る。ところで、納税地というのは、法人であれば、本社所在地なので、工場や販売支店が5県のどこかにあるだけでは、適用されない。

さて、地方税ですが、申告地方税である法人事業税、県民税、市民税は、法人税の申告をベースに申告書を作成するので、納税地がこれら5県にあり、この国税庁告示第8号により申告を遅くする場合は、やはり、他のこれらの県以外の都道府県にある事業所ぶんの地方税は、同じように遅らせてよいのでしょうね。確かではないのですが。逆に、本社がこれらの県以外の場合、東北・北関東に工場/支店等があっても、その県で納税義務があり、地方税は、期限通り払わねばならないのでしょうね。

災害その他やむを得ない理由による申告期限等の延長を、同時に5つの県に対してしたというのは、やはり初めてなのでしょうね。

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金利上昇の予想

次の記事を読んで思ったことは、金利の上昇でした。

日経 3月27日 企業の資金調達急増 3メガ銀、融資要請が通常の4倍

これから更に増加すると思います。直ちに資金の動きがあるわけではないが、銀行は国債を売却して、企業融資に応じる。その結果、国債は値下がり、即ち、下がった時価で考えれば、リターンの増加であり、金利の上昇である。

結果として、新規国債の発行利率も上がる。為替は、金利上昇通貨が買われることになり、円高が進行する。そのようなマーケットの動きではないかと思います。株価は、私の守備範囲外ですが、株価高になる要素はあまりないと思います。ただ、震災復興株みたいなゼネコン株は、無責任に言えば、上がるかも知れないとは思います。

勝手なつぶやきですが、マネーゲームとは、人の不幸でも何でも、材料にしてしまう面があると思いますから。参加者がというより、マーケットとは、そのような面を持っていると理解すべきと思います。

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2011年3月27日 (日)

福島第一原子力発電所について適切な情報開示を望む(その2)

日経に、次の記事があった。

日経Web版 3月27日 フクシマ、世界の原発政策に波紋 稼働・新設計画ストップ…関連企業の株価にも影響

世界の注目を集めている事故であり、当然のことと思う。適切な情報開示は、世界中からの要求になっている。原子力用の部品、機器、設備は、他の用途と比べ、格段に高い品質が求められていた。溶接箇所は、全てX線検査が必要で、不良品は全て破棄されていたと理解する。そのような基準で建設され、運転されていた。しかし、津波に対して、簡単に危機に陥った。この経験を生かしていかなければならない。そのためには、情報開示は欠かせないと考える。思いついたことを少し書き足します。

1) 原子炉冷却

1号基、2号基、3号基の原子炉格納容器の冷却を淡水へ切り替えて実施中です。経済産業省 地震被害情報(第56報)(3月27 日08時00分現在)及び現地モニタリング情報によれば、1、2、3号基は、それぞれ25日15:37、26日10:10、25日18:02から実施となっています。次のステップとして、外部電源で、ポンプを駆動し、計器・計装関係が回復していけば、安定していくことが期待できる。

それでも、この方式による淡水冷却を続けるべきかというと、やはり混じりけのない純度の高い水で冷却した方がよい。そんなことが可能かと言えば、蒸気タービンの直下に凝縮器という蒸気を海水冷却する大型の熱交換機がある。他にも、冷却が必要な機器はあり、凝縮器以外にも海水冷却をするための熱交換機がある。タービン建屋地下1階の床にたまった放射能を帯びた水を海に流せないので、凝縮器に貯蔵するが、凝縮器は3基以上ある。(1号基は2基の可能性もあるが)配管工事は必要であるかも知れないが、確実に、安定的な冷却が可能であり、5号基、6号基及び福島第二原発並びに今回の地震で停止した女川原発や東海2号原発は、そのように熱交換機を通した冷却を行っている。

2) 原子炉建屋

格納容器は、原子炉建屋の上部崩壊時に損傷をしている可能性が疑われる。一方、その内側にあり、燃料を格納している圧力容器は、大丈夫であろうと思う。しかし、ペレット、被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋の5重の壁で守る設計であったのであり、原子炉建屋は復旧する必要があり、建設しなければならない。これらが、どのような物であるかは、この東京電力の放射性物質の異常放出を防止するための対策.を、読むと少し説明がある。

原子炉圧力容器:冷却材中に漏れた放射性物質を燃料全体を収納している鋼鉄製の圧力容器(厚さ約16cm)

原子炉格納容器:鋼鉄製の格納容器(厚さ約3cm)があり主要な原子炉機器をスッポリと包んでいます。これは原子炉で最悪の事態が発生した場合でも、原子炉から出てきた放射性物質を閉じ込めておくとともに放射能を減らし、周辺における放射線の影響を低く抑えるためのものです

原子炉建屋:格納容器の外側は、二次格納施設として約1~2mの厚いコンクリートで造られた原子炉建屋で覆い、放射性物質の閉じ込めに万全を期しています。

原子炉建屋も、厚さ1~2mなので、通常の建築物では、ありえないような物です。おそらく格納容器の点検・補修と同時並行で建屋も建築することになると思います。

原子炉建屋が完成しても、内部のモニタリングも常に必要で、モニタリングがあるからこそ、安心して、元の生活に戻れると思います。最悪の場合のシナリオは、そんなことはないと思いますが、酷い放射能漏れが生じた時で、現場から全員退去しなくては、ならなくなった時だと思います。おそらく関係者も、それを一番恐れているはずです。格納容器が損傷している可能性があると書いたが、仮に損傷をしていた場合でも、それほど大きな損傷ではないと思う。何故なら、大きな損傷であれば、現場の放射のレベルももっと高いのであろうと思うから。

(地震被害情報(第56報)に、タービン建屋地下1階の床にたまった水の放射能計測結果が発表されているが、本当に高いのであれば、大騒ぎをするだろうとも思う。騒いでいる報道もあるが、電離放射線障害防止規則の限界値を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトにあげた時点で、現場作業は非常に厳しくなっていると思う。)

3) MOX燃料・プルトニウム

マスコミ報道等で、まだ余り話題になっていないと思うが、3号基はこの東京電力の2010年10月26日のプレスリリースの通り、プルサーマルで運転しており、MOX燃料を装荷している。あやふやな情報として、単純にプルトニウムの毒性が高く、危険だとの情報が飛び交って、混乱を招く恐れもあるので、私の知識の範囲内のことを書いておきます。

MOX燃料とは、使用済み核燃料からプルトニウムを取りだして、ウランと混合して軽水炉の燃料に加工した物です。プルトニウムとは何かとなりますが、ウランが核分裂した時に、できてしまう物です。下の絵は、資源エネルギー庁のわかるプルサーマルというパンフレットからです。左がウラン燃料であり、原子炉に装荷時は、3%-5%がウラン235で97%-95%がウラン238です。この燃料が核分裂をして熱を出し、核分裂なので原子番号の小さなセシウムやヨウ素他の別の元素(これらを核分裂生成物と呼ぶ。)に変化します。同時に、中性子を出し、この中性子が別のウラン235にぶつかれば、そこで次の核分裂が生じ、一方、ウラン238にぶつかるとプルトニウムになります。その結果、燃料取り替え時には、ウラン235が減少(下の絵では1%)し、核分裂生成物(3%-5%)が生まれ、またプルトニウムが1%程度作られている。

Mox20113

上の絵の右端がMOX燃料であり、4%-9%がプルトニウムとなっているが、3号基に装荷されているのが、このような割合であるのか、またウラン燃料とMOX燃料の割合がどうなっているか判りませんでした。しかし、MOX燃料を装荷していなくとも、プルトニウムができており、そのプルトニウムも核分裂しているのです。だから、プルサーマルだからと特別にあわてる必要もないとも言える。

非常に判りつらい部分です。放射能が目に見えないと言っているが、核分裂だって目に見えないし、ウランだろうが、プルトニウムだろうが、放射能を出す物質は嫌だとの思いが先に立つ。しかも、プルトニウムとは、自然界にはほとんど存在せず、ウラン原子炉の中で作られてしまう、あるいは原爆として積極的に作られる物質ですから。また、ウランとプルトニウムは、別の元素であるし、性質も異なる面もある。やっかいだとは、言えるのですが、原子炉冷却をし、原子炉建屋を建設して、コントロールできれば、ウラン燃料と大差ない形で管理できると思います。逆に、そのようなコントロールができなければ、ウラン燃料も怖いと言える。

世界の注目を集めている今回の事故を教訓にしなければ、と思います。

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2011年3月26日 (土)

福島第一原子力発電所について適切な情報開示を望む(続き)

「福島第一原子力発電所について適切な情報開示を望む」の中で、私は、「原子炉圧力容器内に海水は入っておらず、冒頭の元GE専門家の発言には前提条件に誤解があると考える。」と書いたのですが、これが大間違いであることが判り、訂正すると共に、お詫びします。間違いが判った理由は、法務業の末席さまからのコメントであり、法務業の末席さまにお礼を申し上げます。

結果、私が考えていたより、深刻な事態であり、事故の経過と詳細報告書が公表され、国民が納得できるエネルギー政策を国民が参加する形で作成されるべきと考えます。ウラン軽水炉依存を減少し、トリウム原子炉の研究・開発に重点を移すことも、おそらく選択肢として含まれるだろうと思います。また、電力自由化の範囲を50kWなんて制限を設けずに、ユニバーサルサービスを確保した上で、全て自由化することも推進すべきと考えます。自由化にはスマートグリッド化も必要であり、改めて別エントリーで書きます。

以下、蛇足ですが、何故原子炉圧力容器に海水が入っていないと誤解したかの理由他を書きます。

1) 原子炉圧力容器内の圧力

通常は、いくらかですが、この柏崎刈羽原子力発電所の原子炉の圧力・水温・水位リアルタイムデータのように7MPa強です。大気圧が0.1MPa程度なので、大気圧の70倍ほどの高圧力です。ちなみに、温度は、約280℃位であり、この温度と圧力が燃料の核分裂で得られたエネルギーです。火力発電ほど高圧ではないが、それでも戦艦大和の高圧タービン入り口蒸気圧が22-23kg/cm2程度と比較しても、2.3MPa位。その3倍の高圧です。

2) 給水ポンプ

70気圧(7MPa)の蒸気がタービンに流れ、タービンで運動エネルギーに変化し、同じ軸上の発電機が電気を発生するのですが、原子炉圧力容器からはタービンに流れた分量と同量の水を補給する必要があり、その役目が給水ポンプです。原子炉圧力容器内が7MPaであれば、それ以上の圧力で水を押し込んでやらないと入らず、弱ければ逆に押し戻されることになります。実際には、逆止弁があるから、逆流はおこりませんが。普通のポンプでは、水を入れることは不可能です。また、原子炉圧力容器内とは放射性物質が入っている箇所であり、密閉されており、手出しできません。

3) 地震後の原子炉圧力容器内

ここに経済産業省プレスリリースの3月24日18:05現在のプラント関連パラメータがあります。4号基は、圧力容器内に燃料が無く、燃料プールへの水補給はあっても、圧力容器内への水注入の必要はなかった。5号、6号は定期検査で停止中であったし、5号基のディーゼル発電機が作動しなかったことがあったが、6号基のディーゼル発電機から電力を受けて、5号基と6号基は、20日の14:30と19:27にそれぞれ冷温停止することができ、圧力容器、格納容器、建屋のいずれにも損傷は発見されていない。表に纏めてみました。

Tepco1f20113_2 

表を見ると、恐ろしい。地震から55分後に1号基から4号基の交流電源が失われた。そして非常用炉心冷却装置(ECCS)による注水ができなくなる。そして、ベントという圧力容器内の気体外部放出(放射能放出)をせざるを得なくなり、更に海水を消火系や給水系を使って圧力容器内部に入れざるを得なくなる。今でも、1号基は大気圧の4-5倍の圧力があります。圧力容器に海水を入れると行っても、消防車やポンプ車から直接入れるのは、放射能を拡散するので、不可能であり、一旦タンクに入れて消火系や給水系のポンプで注水している。元々あった多くの地上にある水や油のタンクそして配管が津波で使えなくなったのだと思います。

4) 非常用ディーゼル発電機

結局、ディーゼル発電機が1-4号基で55分しか稼働しなかったのが、致命的であったように感じます。しかし、発電所に備えてある発電機が使用不可能なら、他の所(リース屋でもどこでも)から緊急で手配可能なはずです。IAEAは、これについて成功したように述べていたのです。

Fukushima Nuclear Accident Update (11 March 2011, 21:10 UTC)

Japanese authorities have informed the IAEA's Incident and Emergency Centre (IEC) that officials are working to restore power to the cooling systems of the Unit 2 reactor at the Fukushima Daiichi nuclear power plant. Mobile electricity supplies have arrived at the site.

IAEAの時間は、UTCなので、日本時間3月12日午前6時です。同じようなニュースが日本でもあったように記憶するのですが、この発電機は、どうなったのか不思議です。手配する時は、容量も考慮しているはずだし、追加も可能。例えば、自衛隊には無いのだろうか。米軍は60Hzで無理と思うが。

このようなことも、今後の検証の課題だと思います。情報公開を行うことが、全ての基本と考えます。

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震災国会の行方

いよいよ国会が始まる。予算は、参議院で否決されても、衆議院が優先するので、2011年度予算は政府原案通り成立する。しかし、予算関連法案と呼ばれている税法改正、公債発行特例等法案、子ども手当法案等の行方は、わからない。そして、その後、直ちに東日本大震災に関する補正予算の審議に入らなければならない。このことは、どれだけ国民のために、国民の方を向いた活動をするかが、各政党と議員に問われていると言える。3月25日の日経社説は次の通りであった。

日経社説 3月25日 復興予算の財源は「ばらまき」をまず削れ

民主党が、大震災復興のための支出が見込まれる中、依然としてマニフェストにこだわるのか、あるいは大震災というマニフェスト作成時において考慮していない事態の発生と言うことで、積極的に国民の要望に応じるのかが問われている。但し、このことは、全ての政党と議員に共通である。

1) 復興国債

大震災からの復興のため、巨額の追加国債は発行せざるを得ない。しかし、青天井では済まされず、正当な説明が可能な額でなければならない。阪神大震災と異なるのは、金額が大きくなることのみではなく、残高GDP200%の時に追加発行する場合の、マーケットの反応である。今回の震災で、為替は円高に振れた。復興国債においては、売りを仕掛け、国債の値下がり、延長期金利の上昇に向かう可能性があると思う。日本国債の格付けは下がっているのであり、東日本大震災は更に下がる方向であり、国債の残高増は更に格付けを下げる。

日銀による国債引き受けに頼らざるを得ない部分があるが、格付けをあげる要素はない。投機マネーが、どう動くかを読まずして、安易に日銀引き受けによる多額の国債発行はしてはならない。国債発行には規律が必要である。

2) 1000円高速と高速無料化の廃止

最も手っ取り早く財源を確保する方法である。逆に、継続する意味が私には見あたらない。休日の高速道路を1000円にするより、そのための財源で道路の復旧をする方が意味があるはず。

3) 子ども手当

3月3日の子ども手当は、どうなるのだろうか?で書いたように、単純に廃止すると、増税のみとなり、大変になる。妥協をするなら、所得制限を付けるか、課税対象にすることと思う。所得制限は、住民税の金額で線を引けば、地方自治体が対応可能と思うし、課税対象にするには、単純に法案第15条の公課の禁止を削除すればよいと考える。そうすれば、住民税の課税対象ともなり、所得税は超過累進税率であるから、低所得者層にやさしい。

4) 税法改正

どうなるのかよく分からないが、法人税も改正が通らなくても、赤字企業には関係ないのであるから、この際あまり関係ないようにも思う。やはり、これからの税制の基本構想を震災復興とも絡めて練り直すことが重要と思う。消費税は増税に向かうことになると思うが、所得税、法人税、相続税はどうするのか?そして、医療保険と年金を税で、どう支えるか。歳入庁の設立は?税社会保険統一番号制の導入スケジュール。様々な課題があり、これらに手を付けないで、目先の税制改正に躍起になっても仕方がない。ねじれ国会の時こそ、多くの関係者の意見を取り入れ、議論されたよい案が生まれることが期待できる。

現在の税制改正で、本来なら廃止される上場株式の10%課税が延長されるが、利子所得、配当所得、有価証券譲渡所得(損失)は、特例なしで、所得税法の超過累進課税とすべきである。低所得者の預金利息に税を課す意味はなく、逆に高額所得者の株式売却利益には損失の差し引きを認め、かつ7%の税率とする必要性を感じない。株式が下がって、損をしたら、その分所得税が減額となってよいはず。税社会保険番号制度により、現状の変な税制を正常に戻せる。

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2011年3月25日 (金)

福島第一原子力発電所について適切な情報開示を望む

福島第一原子力発電所のことが続きますが、次の記事が少し気になりますので。

47ニュース 2月24日 福島原発、海水が冷却妨げる恐れ 米紙NYタイムズ指摘

米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で、安全性を研究していた専門家は、原子炉内で海水中の塩が結晶となって燃料棒を殻のように覆っている恐れがあると指摘。・・・・最悪の場合は熱の蓄積によってウラン燃料が完全に溶けて、より多くの放射性物質が出る危険もあるという。」と書かれています。

私の理解は、海水は原子炉圧力容器や原子炉格納容器を冷却するのに使用した。但し、圧力抑制プールの水が減少し、圧力抑制プールに海水を注入したことはある。圧力抑制プールは原子炉格納容器の一部であると言えるので、原子炉格納容器内には海水が注入された原子炉もある。但し、核燃料が入っている原子炉圧力容器には海水を注入していない。また圧力も高いので、消防ポンプでは、海水を注入できない。

以上が私の理解で、原子炉圧力容器内に海水は入っておらず、冒頭の元GE専門家の発言には前提条件に誤解があると考える。この私の理解でよいのか、私に答える必要はなく、NY Timesや47ニュースで報道されたことに対して、コメントを出してもらいたい。

公開、民主、自主という日本が原子力平和利用を決定した時の精神に戻って、もう一度考え直すべきと思う。当時とは、異なる事情もあり、そっくりあてはめることが無理な部分もあるが、当時の原則は正しいと考える。今回の事故に関する情報開示は、重要と考える。原子力基本法第2条は「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」と定めている。

上のNY Timesの記事は、March 23, 2011 New Problems at Japanese Plant Subdue Optimismであり、当該部分を続きを読むに入れておきます。

なお、海水を使用したことについては、望ましくないが、当時の局面において、使用しなかった場合のリスクを考えても、使用すべきとの判断に至ったのだと思います。一方、海水使用の時間が長ければ長いほど、悪い事象が多く発生するのであり、可能な限り早い時点で、清水冷却に徐々にでも切り替えるべきである。海水なんて考慮して設計、建設はされていなのはあたりまえ。外部への放射能漏れが無くなったとしても、燃料や高放射性破棄物を取り除けるのは、相当先であり、ずっと管理し続けなければならない。難しい判断が続くと思うが、適切な情報公開をすべきである。間違った情報が流れることは、恐ろしい。

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福島第一原子力発電所と女川原子力発電所

日経Web刊に、「福島第1原発、巨大津波直後の映像」という国土交通省東北地方整備局が公開した11日午後5時前の福島第1原発の空撮映像(動画)があった。その動画にリンクを張れればよいのですが、張り方がわからず、このページから、タイトル名で検索して探してください。生々しい映像が見られ、津波で地上で屋外に設置された機器がダメージを受けているのがわかります。

一方、国土地理院が東北地方太平洋沖で発生した地震による被災地の空中写真撮影を3月12日から実施しており、撮影した空中写真をWebで公開しています。ちなみに、女川原子力発電所の空中写真は例えばここにあります。ほとんど被害がないように思えます。

設計上のGL(Ground Level)の差が、ここまで影響したのか、今後研究の対象となり、将来に生かされるのだと思います。

法務業の末席 さま

女川を小名浜としてしまったとは!間違いのご指摘ありがとうございます。

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2011年3月24日 (木)

福島第1原子力発電所復旧作業

福島第1原子力発電所3号機のタービン建屋地下1階で作業をしていた3人が24日正午過ぎに被曝し、病院に搬送されたとのニュースがありました。

日経 3月24日 3号機で作業員3人被曝、2人を病院搬送 福島第1 放射線量170~180ミリシーベルト

現場で頑張っておられる方々に、感謝します。

夏の停電について書いたのだから、福島第1原子力発電所復旧についても、書かないと片手落ちかなと思い雑感を書きます。原子力発電については、十分理解していない点もあり、間違った場合の影響は大きく、慎重にならざるを得ない部分がありますが、とにかく書いてみます。間違い点があれば、コメント欄へ書き込みをお願いします。

なお、復旧という言葉は、本来であれば、旧の状態に復することであり、元通りになることですが、ここでの意味は、放射能レベルが元のレベルに戻るという意味とします。それ以上の、議論は現状においては、無理があると考えます。

1) 放射能漏れについての安全性

放射能漏れに対する安全性についての一つの説明は、この電気事業連害の原子力・エネルギー図面集第5章」のPDFデータの5-11ページの「放射能を閉じ込める5重の壁」を参照するのがよいと思います。ペレット、被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋の5重の壁で守るという思想です。今回、被覆管の一部の損傷が確実視され、原子炉建屋については1号基、3号基、4号基で大きく壊れています。

なお、日経に対抗して書いているわけではないが、日経も日経 3月24日 福島第1原発、3つの可能性 冷却システムが左右という記事を出して掲載している。記事の2ページ目に各発電設備の現状の表があり、参考になります。

原子力発電とは、燃料に含まれているウラン235が中性子を放出して核分裂し、その中性子が更に別のウラン235に衝突し、核分裂連鎖反応が生じ、核分裂に際して発生する熱を利用して発電している。具体的には、原子炉圧力容器の中に原子燃料があり、核分裂を制御棒によりコンロールしつつ運転する。沸騰水型原子炉であれば、中性子の減速材を兼ねている水(軽水)の温度上昇となり、高圧の蒸気となり、この蒸気がタービンを駆動する。この蒸気圧と同じ圧力が原子炉圧力容器にかかっている。そして、その外側を原子炉格納容器が更に密閉しており、放射能を閉じこめている。更に、原子炉建屋で囲っている。原子炉建屋についても「標準化BWRプラント(1,100MWe級)に対する安全審査手引き」に次のように記述されている。

(3) 原子炉建屋原子炉棟
① 原子炉棟は、冷却材喪失事故時等に際して、常用換気系を閉鎖し、非常用ガス処理系を運転することによって、負圧に維持できること。
② 原子炉棟は、定期検査時に漏洩試験を行い、気密度を確認できること。

2) 福島第一発電所の1号-4号の現状

核分裂連鎖反応は止まっている。しかし、核燃料は、放射性物質であり、自然状態に置いても、放射線を出して、発熱する。この発熱量のデータを保有していないが、現状において、何もしていなければ内部にこもってしまう。温度も高くなれば、圧力も高くなる。そこで、懸命に水や海水で許容範囲に温度、圧力を下げようとしている。

冷却に使用する動力となる電源が何とか確保できた。電気が使えれば、離れた場所から操作できる。但し、機器や配線等に問題がないことが条件である。また、計器・計装類が、使用可能でないと充分な機能が発揮できない。原子力発電所は、計器・計装の塊であり、その信頼性を回復する必要がある。

3) これからのシナリオ

福島第一発電所1号-4号は、海水で直接冷却せざるを得ない事態に追い込まれた。その結果、海水が電気品、電気系統に絶縁不良等問題を起こしている可能性はあると思う。そうなると、それらの取り替え、修理に時間を要するであろうが、重要部分、緊急部分から作業をするであろうから、現状よりは悪くはならないと考えてよいように思う。

放射能レベルを元のレベルに戻すには、原子炉建屋を再建し、密閉状態の負圧を確保しなければならない。新規建設であれば、放射能がない状態での作業なので、放射能を気にする必要がないが、今回は異なる。建屋の設計や工法等も工夫すると思うので、どれだけの時間を要するかわからないが、結構長いこともあり得ると思う。

1)で掲げた日経の記事は冷温停止までのシナリオについて3つの可能性を書いている。冷温停止だけでも、これほど異なった可能性があるのであり、全体については、とても言えないのですが、あまり楽観視はできないような気がします。

最悪のシナリオは、手が付けられなくなり、全員待避して、核分裂連鎖反応がおこることであろう。しかし、あり得ないと思う。もし、そんなことが生じたら、福島第一原子力発電所だけで、核燃料が580トン、プルトニウムを含有している使用済み核燃料が1720トンある。何故、それだけはないと考えるかは、理論的思考とは異なるかも知れないが、自然状態では臨界にならないように考慮してあることを信じるだけです。

4) 放射能作業手当て

放射線を浴びつつ作業をする人達がいる。基準を守り、働くことが必要であります。ところで、この基準(電離放射線障害防止規則第7条第2項の緊急作業に従事する労働者の線量の上限)が、100ミリシーベルトから250ミリシーベルト(その緊急作業に従事する間に受ける線量)に変更されたのです。3月15日付け厚生労働省令第23号で、施行が3月14日で1日前です。(参考:官報通知

交代要員も必要で、基準を守らねば、2次災害が働く人に出てしまう。自分自身の末梢血幹細胞を保存しておけば、大量被曝をしても、移植手術で助かる可能性があるとも聞きます。但し、末梢血幹細胞の採取等のリスクについて、私も判らず、それぞれの方の判断が必要かも知れません。

そして、何よりも、せめて作業手当ては十分であるべきと思います。250ミリシーベルトと2.5倍にした。ここに「宇宙飛行士は1日で地球上の半年分の放射線を浴びる」という3月23日のニコニコニュースがあるが、国際宇宙ステーションに6月滞在して180ミリシーベルトですから、これより多い。十分なケアがなされるべきです。

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2011年3月23日 (水)

関東地方今年夏の停電は?

東京電力の夏の電力需給について、日経も次のように取り上げており、話題になることが多くなると思われる。無責任予想ですが、3月22日に東京電力需給見通しの予想を書いたこともあり、私の予想を夏についても、書いてみます。

日経 3月23日 夏の電力不足、最大1500万キロワット 東電管内

1) 最近の記録

2006年から2010年までの夏期の最大電力(7月又は8月に記録されており、年間最大でもある。)のグラフを作成しました。(資源エネルギー庁の電力調査統計からのデータです。)

Tepco20113g

2010年は、59,988MWであったが、2009年は54,496MWと2010年より5,492MW低かった。原因は、気温の差と理解する。ところで、最大電力はバラツキがあり、10%も差が生まれる可能性がある。3月22日に今年の夏が猛暑になればと書いたのは、これが理由です。いずれにせよ、2010年以上にはならず、最大60,000MWと予想します。

2) 供給予想

1)のグラフに最大電力を記録した時の電源構成を表示しています。ちなみに2010年は水力4,375MW、火力34,070MW、原子力10,702MW、その他2MW、他社受電10,839MWであったのです。これを、3月22日に書いた「3)供給設備」の表と比べればおおよそ掴める感じになる。

私は、3月22日に「無責任予想としては、4月の中旬には5,000MWは回復し、40,000MWの供給力・・・、ゴールデンウィークに鹿島火力が全機運転可能となれば、45,000MW程度まで回復・・・」と書きました。この流れで行くと、夏のピークである7月末頃には50,000MWには回復するのではと思います。そして、うまく行けば、この場合は東北電力の設備も、ほぼ回復し東北電力から応援を受けることも可能となり、全てあわせて55,000MWに持って行ける。そうなると、冷夏であれば、少しの電力需要調整で乗り切れると期待する。

需要のピークが60,000MWになって、供給力が45,000MWしかなければ、日経の伝える政府見通しの通り15,000MWの不足であるが、50,000MWになれば不足は10,000MWとなり、55,000MWに持って行ければ、5,000MWの不足に縮まる。

3) 需要対策

今のような計画停電は、避けるべきと思う。夏なので、クールビズは当然。明るい時間が長いことを利用して、フレックス・タイムや時差出勤、そして休暇の分散ができれば、ピーク需要は拡散してある程度低くなると思う。夏時間は、果たして有効か、よく分からない。朝の明るい時間が利用できるが、日の入りの時間が今より1時間遅くなるのであり、帰宅時間帯が今より暑く感じたりすることがあり得る。いっせいではなく、会社や職場単位で、夏を1時間仕事時間を早めたりしてもよいのかも知れないが、託児所、保育園等の対応が難しかったりするのかも知れない。やはり、休暇を長く取り、全員同時ではなく、電力需要平準化を目指して分散して休暇となるのが、一番よいように思う。

春の高校野球が始まった。夏は、昔から、高校野球とエアコンで需要が増加する。そこで、今年だけは、午前中の試合は、少し時間帯を早め、午後の試合は全てナイターで行う。甲子園球場において照明用電力供給に問題はなく、一方で関東地方のピーク需要は低くなる。高校野球は、日本文化の一つであり、エネルギー対策を講じて実施すべきと思う。

昨年の夏はとても暑かった。今年の夏は、わからないが、例え、同じであっても、今の計画停電なんて変なことをせずに、前もって調整し、工場等は夏期休業の日程調整を行い、人間的な生活が過ごせ、かつ経済活動にも影響がないように工夫できる可能性があると思う。

4) 現在の状態

東京電力発表の3月13日以降の電力供給力は、次のグラフのように、改善してきた。24日の計画停電も2つのグループでのみあり得るとしており、その実施の要否についても2時間前に発表としている。また、東京電力は、1時間ごとの電力の使用実績のグラフこのページに掲載している。当初の開始時点より、改善していると思う。そうこうするうちに、計画停電が解消するのかも知れないが、やはり、鉄道、病院・診療所、交通信号、重要公共施設等には電力供給を継続した上で、計画停電を実施できるようにして欲しいと思う。

Tepco20113h

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ホウレンソウの放射能は幾ら?

ホウレンソウは混乱しています。

時事ドットコム 3月22日 新たな調達先の確保急ぐ=4県産ホウレンソウ出荷停止で-スーパー

政府が、茨城県、栃木県、群馬県及び福島県のホウレンソウとカキナ及び福島県の源乳の出荷を、当分の間差し控えるよう3月21日に指示しました。消費者庁の発表も掲げます。

原子力災害対策本部長 3月21日 4県の知事宛 指示

消費者庁 3月21日 食品からの放射能検出に伴う出荷制限について

消費者庁の文章には、当分の間と書かれており、「今回の出荷制限は、各県内の各地域等の対象品目の分析の結果、暫定規制値を安定的に下回るようになるまで行われることとなります。」と書いてあることから、相当長期間になることもあり得ると思います。

1) 食品放射能汚染基準

平成23年3月17日に、食安発0317第3号により「放射能汚染された食品の取り扱いについて」というのが出されており、「当分の間、原子力安全委員会により示された指標値を暫定規制値とし、これを上回る食品については、食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることがないよう販売その他について十分処置されたい。」となっています。(ここにあります。)

ちなみに、野菜類であるホウレンソウとカキナは放射性ヨウ素について2,000Bq/kg、放射性セシウムについて500Bq/kgで、牛乳はそれぞれ300Bq/kgと200Bq/kg(乳幼児を除く)です。

2) 測定結果

厚生労働省が、3月19日、20日と21日の3日間食品中の放射性物質の検査結果について(福島原子力発電所事故関連)を第1報から第5報まで出しています。(第1報第2報第3報第4報第5報)この発表に各県から厚生労働省に提出した検査結果が添付されており、測定結果が分かります。この測定結果のうち、食品放射能暫定規制値を超えた市町村とその測定値(最高値のみ)を抜き出したのが次の表です。

20113

これを、どう評価すべきか、私にも解りません。表を作成する仕事でさえ、本来であれば、政府かマスコミがすべきことをしてしまったように感じます。政府は、判りやすい形で発表すべきです。原子力三原則を無視しているように思えます。

3) 不透明政府

ダメ政府で機能していないように感じます。この数字を出してくるのに苦労したこと。そして、今回の指示は政府の原子力災害対策本部長という人が出しているが、誰かというと内閣総理大臣です。何故、総理大臣の名前を使わずにと思います。暫定基準値は原子力安全委員会より示されたのです。原子力安全・保安院や原子力委員会とは別に原子力安全委員会というのがあるのです。そして、本日ここに書いてあるように、食品安全委員会という委員会が本件に関して委員会を開催しています。厚生労働省に消費者庁も関係しており、頭が混乱状態になってしまう。

日本政府は、原子力政策を、もてあそんでいるような感じにさえ思えます。こんな複雑な政府組織って不効率で機能しないのではと思います。その上、複雑すぎて、チェック機能やガバナンスも働かない悪い見本みたいになっているのではと思います。ムダを省くなら、そんな組織を合理的に再編することをすればよいのにと思います。

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2011年3月22日 (火)

東京電力需給見通しの予想

3月19日から21日までの3連休は、計画停電がなかったが、22日からは実施予定と発表がありました。

東京電力プレスリリース3月21日 3月22日(火)以降の計画停電の実施予定等について

関東と山梨県、富士川以西の静岡県に住んでおられる方や工場、事務所等の人々は、苦労をしています。停電になると大型店を含め店が閉店し、生活が不便となり、経済的損失や社会的損失も大きく、一刻も早く元の状態に復帰させてくることを東京電力に要望します。但し、不可能を望んでも無理であり、現実の姿は、どうであろうかと勝手な予想を書いてみます。

1) 3月21日(祝)以降の計画停電の実施予定等について

東京電力のプレスリリースには、都度翌日の供給力予想が記載されており、それをグラフにしたのが次です。

Tepco20113a

13日から14日にかけて、供給力が落ち込んだ理由が不明であるが、以後は順調に回復し22日は35,500MWの予想になっている。

2) 昨年の記録

1年前と比較すると、少なくとも、需要面の予想の参考になるのであり、2010年1月から2011年1月までの13月分の月間最大電力(MW)とその供給構成ならびに月間供給電力量(GWh)のグラフを作成した。データの出所は、資源エネルギー庁の電力調査統計からです。

Tepco20113b

Tepco20113c_2 

最大電力や必要供給力の参考として、毎月の電力供給量をその月の時間数で割り算して、月間平均供給電力(MW)のグラフを書いたのが次です。

Tepco20113d

3-4月は、平均32,000MW-34,000MWで、最大47,000MW-52,000MW程度です。3月22日の供給力が35,500MWであれば、平均はカバーできても、ピークは困難というのは、そうなのだろうと思えるような感じです。

3) 供給設備

供給力をチェックします。東京電力自社の数値は、電力調査統計やWeb(例えば、ここに火力発電の詳細がある。)から知ることが可能であるが、他社設備からの購入については、自由化されたこともあり、数字が掴みにくいが次の表のように推定した。なお、佐久間水力発電所は、東京電力と中部電力が50/50で利用可能と理解するが、50Hz電源の運転が可能な貴重な設備故、50Hz運転を行って、全量を東京電力と仮定した。

Tepco20113e

東京電力がプレスリリースで地震により停止中としている発電機は表の右端欄に記載した。日本原子力発電東海2号は休止中であり、相馬共同火力新地発電所も運転不可能と理解し、常磐共同火力勿来発電所も休止中とした。鹿島共同火力は住金鹿島の操業状態をチェックしていないが、外部への売電はしていないとした。

揚水発電を除外し、柏崎刈羽原子力発電所の運転中発電機は公表されているので、火力について地震休止中以外の発電機について、これらを合計すると次のようになった。(なお、ディーゼルは全て伊豆七島と小笠原故、除外した。)

Tepco20113f

22日の供給力は35,500MWと発表されており、42,388MWの中に、定期点検による停止中の発電機がその差6,888MW以上はあると推定される。水力については、水量がある時に最大出力運転となり、負荷のパターンによっても供給可能能力が異なるので、推定には困難が伴う。除外した揚水発電も供給力としては期待可能であり、系統安定には欠かせないが、揚水動力が必要であり、現在の供給力と負荷状態において、どのような揚水発電の運転が可能であるかの推定はいよいよ困難が伴う。一方、鹿島火力は地震により3,200MW休止している。これが、復帰し、揚水動力に回せるオフピーク時の供給余力が大きくなると、ピーク時の供給力も増加することとなる。そうすると、現在より10,000MWあるいは15,000MW-20,000MWの供給力増加も可能ではないかと思う。

無責任予想としては、4月の中旬には5,000MWは回復し、40,000MWの供給力になるのではないか。40,000MWでは、1年前の最大電力47,335MWの4月最大電力をまかなえないが、供給停止時間は、今より相当短くなるはず。工場の操業パターンの調整等で相当停電は回避できると期待する。ゴールデンウィークに鹿島火力が全機運転可能となれば、45,000MW程度まで回復し、計画停電ゼロの状態になることを期待する。

4) 燃料

ゴールデンウィーク計画停電ゼロのためには、燃料面のチェックも必要である。第一福島、第二福島原子力発電所の地震により停止した発電機の出力合計は6,428MWである。6,428MWの火力発電所を24時間フル稼働させた場合の燃料量は、月間燃料消費量が重油で、100万-110万キロリットルである。この燃料の量も相当大きい。しかし、石油の国家備蓄、民間備蓄があるので、原油輸入が手配してから日本到着まで2月を要するとしても、備蓄の取り崩しでまかなえる量である。

鹿島発電所他、石油火力は原油・重油・ナフサを含め、石油であれば、燃焼可能な設備になっている。従い、燃料面の心配はないと思う。(コスト面・価格面は当然ある。)LNGは、輸送にLNG船が必要であり、その他制約が多い。短期的には、石油に依存せざるを得ない。

以上が私の分析です。今年の夏は、猛暑になると、結構大変かも知れません。

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2011年3月21日 (月)

福島第一原子力発電所非常事態に思うこと

福島第一原子力発電所の非常事態は、続いており、外部電源がつながり、ディーゼル発電機も最低1基は稼働状態になったようです。

読売 3月20日 福島第一2号機、配電盤に通電…3号機にも放水

多少は落ち着いたとしても、放射能が外部に漏れ出さないようにするには、原子炉建屋を補修し、外部と隔離可能とし、建屋内の圧力を大気圧以下になるよう、吸い込み送風機で空気を吸い、それをフィルターを通して排気筒から排出し、原子力発電所があっても、なくても放射能に変わりがない従来と同じ状態にする必要があるはず。相当の時間を要するし、現段階において、そこまで考える余裕はなく、とりあえず臨界状態を絶対に防ぐこと、可能な限り圧力容器内の高放射能レベルの気体を空中に放出しないようにすること等で、精一杯と思います。

この非常事態の原因を究明することは、時期尚早ではあるが、思いついたことを書き留めておくのも必要とも思う。そこで、思いつくままに書いてみると、以下のようになりました。

1) ディーゼル発電機のダウン

私の理解では、福島第一発電所の電力は、東京電力新福島変電所経由で発電した電力が送電される。同時に、新福島変電所は東北電力南相馬変電所といわき幹線と呼ばれている東北電力の275kV送電線で結ばれており、かつ福島第一発電所と新福島変電所の間は500kV送電線のみならず154kVでも結ばれており、途中の大熊変電所で東北電力の送電線とも接続されている。送電ができれば、逆方向の受電も可能。今回の地震では、この全ての送電線が機能しなくなり、福島第一発電所は、発電機が停止すると、東京電力の他の発電所からも東北電力からも電力を受けられないことなった。

そのような時のためにディーゼル発電機が設置されていたのである。そして、ディーゼル発電機は正常に稼働した。しかし、地震から55分後の午後3時41分に停止し、電池からの直流電源のみとなり、シナリオ外の非常事態に陥った。この報告が次の福島第一原子力発電所からのプレスリリースです。

3月11日 福島第一原子力発電所 原子力災害対策特別措置法第10条第1項の規定に基づく特定事象の発生について

ディーゼル発電機も複数台設置されていたのであり、全機が使用不可能となったのは何故か?55分間稼働してたとすれば、津波との関係は?原子力発電所は、計器による自動監視を前提に作られているのであり、安全確保に電力は絶対必要。そのため、ディーゼル発電機は非常に高い信頼性を念頭に設置されていたはず。この疑問に、非常事態収束後回答を得たい。

2) 原子力発電の安全性

産経新聞のZAKZAKが、衝撃的な記事を出している。

ZAkZAK 3月18日 事故原発は“欠陥品”? 設計担当ら35年ぶり仰天告白

このようなことは第一福島1号基にのみあてはまるのか?もしかしたら、原子力発電所のみならずほとんど全てでないのかと思う。神戸地震でも、倒壊しないはずのビルが倒壊し、今回も安全なはずの防潮堤が津波に役立たなかった。あまりこんなことを言いすぎては、パニックを生むだけであり、冷静に考える必要があるとも思うが。

3月20日の日経には、「津波への対応 女川と差」という記事があった。今回の地震と津波で、東北電力女川原子力発電所は、非常事態には至らなかった。津波に対して、第一福島と第二福島は津波の高さを6mと想定し、敷地高さを10mにした。女川は9mと想定し、15mの敷地とした。福島第二が非常事態に至らなかったのは、外部電源から電力供給を受けられた。それほど大きな差ではなかったが、明暗を分けたといったような内容である。

もし、今回の福島第一の非常事態の原因が、津波対策であったなら、実は2002年に問題となった検査・修理結果の虚偽記載は、行為そのもののみならず、その内容も評価されるべきではないか。津波対策を放置したことと、どちらが重大なことか、原点にもどって考え直す必要性を感じる。原点とは例えば、国として津波高さの対策基準を設けるべきか、あるいは電力会社の設計思想で個別に対応すべきかも含めてである。

ほんの少しの差であっても、結果がまるで異なる場合がある。人間は完全無欠な物を作れず。数多く、長期にわたって使われている物は、欠陥があっても、少しづつ改良がなされ、安全性は高まっている。原子力発電所は、どうであろうか?事故やトラブルがあった際に、原子力発電所は大きな被害を起こす可能性がある。

3) 国民のための安全性

読売が次のような記事を出していた。

読売 3月18日 政治主導空回り…「危機の連鎖」に対応し切れず

原子力発電は、政治主導で推進してはならない。国民のために安全性を検証する機関をつくり、そこが審査し、結果を公表し、それを国民が承認して進めるべきである。何故なら、数多く、長期にわたって実証されていない以上、安全とは言い切れないからである。

日本の原子力とは、政治主導で進められてきた部分が相当あるように思う。米国と日本の政治・産業の利害が一致したことにより導入・推進された部分があると思う。

原子力についての研究や開発、そして利用に私は反対するわけではない。しかし、政治が関与して、ねじ曲げることは、してはならず、国民の決定により推進すべきと考える。1956年に原子力委員会が発足したのであるが、その第1回の原子力白書には次のように書いてある。

日本学術会議第39委員会においては,原子力予算が成立した以上,原子力研究の遂行に遺憾ないよう努力すべきであるとの態度をきめ,4月20日からの総会にはかつた。総会では激烈な論議のすえ,第39委員会提案による二つの決議が可決された。
 そのーはビキニ事件に言及し,原爆実験の禁止について世界各国の科学者の協力を求めたものであり,その二は平和目的の原子力の研究について,次の三項目の実行を求めたものである。

    1)原子力の研究,開発および利用の情報は完全に公開され,国民に周知されること。
    2)原子力研究は民主的な運営によつてなされ,能力あるすべての研究者の十分な協力を求めること。
    3)原子力の研究と利用は,自主性ある運営のもとに行われるべきこと。

 この公開,民主,自主の三つの項目は日本学術会議の原子力研究の三原則といわれるようになつた。この三原則は幅の広い表現であるため論議の対象となり,反対意見もあつたが,後に原子力基本法にとり入れられ,わが国原子力開発利用の基本方針となつた。

この原子力三原則が、政治によりないがしろにされていないのかという点である。輸出するなら原子炉輸出の前に、三原則輸出をすべきではないかという点である。勿論、使用済み核燃料であるプルトニウムがテロリストに渡らないようにするために、公開できない情報が存在する時代にはなったが、発電所の図面すら公開されなくては、安全性を審査できないことになる。審査員のみに判っているだけでは、三原則冒頭の公開原則に違反している。

日本学術会議の議事録をあたっていないが、立派だと思う。核兵器と原子力開発を、きちんと結びつけて、最初に核実験禁止を述べている。軽水炉やプルトニウムのことを当然知っていた人達であろうから。

原子力委員会は、内閣府に属し、活動し、我が国の原子力政策の基本方針を策定している。現在5人の委員がいる。この5人に、一人ずつ自分の考え(今回の非常事態について及び今後の原子力政策についてを含め)を国民に先ずは説明することを要求すべきだし、委員は説明義務があると思う。氏名のみ、あげておくと、近藤駿介、鈴木達治郎、秋庭悦子、大庭三枝と尾本彰の5名である。

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2011年3月20日 (日)

会社の程をなさない林原

東日本大震災のニュースで、多くの事件が埋もれているようにも思いますが、本当であれば林原事件も、もっと取り上げられてよいように思うことから、林原事件を書くこととします。

1) ごまかし経営者

私は、林原という会社を訪問したことも、経営者に会ったこともないのですが、1月25日に私的整理のためにADR申請をしたと聞いて、売上高282億円、グループ企業12社合計年間売上約800億円に対して、負債総額1千億円は、その売上/債務比率から、債権者が納得できる企業再生が困難か、あるいはもしかして大口債権者中国銀行が特別の支援をして、一般債権者の配当を厚くする案を出して解決するのかどちらかと思いました。

47ニュース 1月26日 バイオ関連の林原が私的整理申請 負債1千億円程度

その後は、やはり会社更生法申請に切り替えた。この辺りまでは、よくある話であった。

47ニュース 2月2日 林原が会社更生法申請 負債1500億円以上

その後、唖然としたのが、次のニュースでした。

MSN産経 2月8日 中国銀、破綻林原の「会計監査人」不在を確かめず 初の四半期赤字に

どこの銀行も全てだったのでしょうが、融資先の状態を調査せずに貸付を行うのは、私からすれば、信じられないことです。監査報告書を入手していないということになるわけで、では、財務諸表はどうしたのかと思ってしまします。これに関しては、SankeiBiz 3月10日 約500社が義務付けられた監査を受けず 公認会計士協会のような報道にもなりましたが。

2) 同族会社の放漫経営

林原は、3月7日に更生手続きの開始決定となったことが報道されました。予想されたように、放漫経営のニュースです。

日経 3月19日 林原、本業外に388億円投資 12年間、不動産や美術品に

中国新聞 3月18日 林原、創業家に48億円流出か

MSN産経 3月17日 林原、20年間違法配当か 前社長に多額資金流出

19日の日経に書いてあるのも「12年間に借入金を約1000億円増やした。開発会社である林原生物化学研究所(同)に研究開発費として286億円を投じる一方、不動産購入に293億円、グループ会社の増資と上場企業の株式取得に53億円、美術品購入に42億円と本業以外の部門に多額の資金をあてたもよう。」であり、研究開発費には286億円で、不動産購入や美術品購入に388億円を投じたという常識外れの放漫経営と思われます。

10年間赤字続きの会社がですよ!坊ちゃんと嬢ちゃんばかりが集まった同族会社なのかも知れません。

日経記事には「更生法適用の申請時に東京地裁が選任した調査委員の報告書で指摘されている。」とあり、第三者が調査をしないとなかなか判明しにくいのであり、だからADRでやろうとしたと思います。同族会社とは、ガバナンスが働きにくい組織である。それを前提に融資し、ガバナンス強化を要求すべきが、中国銀行他がしたことの責任は、問われてよいのだと思います。

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2011年3月19日 (土)

矢木沢ダムでの発電

本日も東京電力の計画停電がありました。3月15日の「計画停電の改善必要」に法務業の末席さんから、「そのバカな運転を東電は実際にやったのです」と毎日の報道を示してコメントを頂きました。

データがなく、何も言えないのですが、矢木沢ダムについては、1時間おきと10分おきの水位、貯水量、流入水量、放流水量のデータが水資源開発機構の沼田総合管理所(ホームページ)から発表されています。このデータを使って、矢木沢ダムにおける発電について、推定することがある程度可能なので、以下その結果です。

1)矢木沢ダムの水位と放水量

グラフにした方が、分かりやすいので水位と放水量のグラフを10分おきのデータから作成しました。(グラフの左端が3月15日午前9時30分で、右端が3月18日午後9時20分です。)

Yagisawa20113a

変な形のグラフであることが判ります。即ち、ダムからの放流が夕方の6時頃から夜の9時・10時頃(日によって多少の差はあるが)に集中し、ダム水位は、この放流時間に低下し、放流時間以外は上昇しています。

放流量を合計して平均を求めると22.63m3/秒で、1日当たり約200万m3になります。一方、流入量は平均8.84m3/秒程度の1日当たり77万m3位で、放流の方が多く、水位は下がっているという状態です。

2) 矢木沢ダムでの発電

矢木沢ダムは、水資源開発機構が保有・管理しており、水力発電設備を東京電力が保有・管理しています。発電設備は、8万KWが3基で、最大使用水量1基あたり100m3/秒です。(ここに東京電力群馬支店による説明あり。)

矢木沢ダムの場合は、洪水等非常時以外には、発電に利用して放流しています。従い、放流イコール発電と考えて、この場合は、大丈夫です。そうすると、どのように発電しているか判明したと同じです。毎日夕刻に発電を集中しています。即ち、計画停電を実施している最近の電力ピークは、夕刻であり、この時間帯にあわせて発電をしていると考えられます。日によって、時間帯や放水量(発電量)が微妙に異なるのは、その日の電力需要と他の供給設備の状態の変化によると思います。なお、参考まで、3月17日の発電を推定したグラフを書いてみました。100m3/秒の放流で8万KW(80MW)の発電と仮定しています。

Yagisawa20113b

3) 関連事項

放流が1日の特定時間に集中して問題はないのかと疑問を持たれた方も多いと思います。矢木沢ダム特有の事情があり、それが矢木沢ダムの直ぐ下流の須田貝ダム(洞元湖)です。須田貝ダムで下流への流量を調整できるからです。須田貝ダム及び須田貝発電所は東京電力の所有(1955年完成。説明はここ)で、矢木沢発電所は1965年完成の東京電力初の揚水発電所です。

この何日間の運転で揚水発電を矢木沢発電所が行っているかというと、多分していないと思います。最初のグラフにダム湖の水位を示していますが、揚水運転による水位上昇はなく、自然流入による水位上昇のみと思うからです。なお、矢木沢ダムの貯水量データについては、実際貯水量と異なっている可能性があると思います。理由は、須田貝ダムに貯水しても、矢木沢ダムに貯水しても、効果は全く同じであり、水資源開発機構と東京電力の運用上の取り決めで、最大の効果が発揮でき、かつ管理可能であれば問題がないはずですから。詳細に検討すると、そのように思えました。

矢木沢ダムは、関東・首都圏の主要水源であり、洪水緩和のための重要な役割を持っています。1年間の水位と貯水量の推移として、2010年の動きと2011年になってからの数字をグラフにしてみました。

Yagisawa20113c

7月末頃から水位を下げ、貯水量を減少させているのは、台風シーズンの豪雨があった時に、ダムで下流への水を受け止め洪水緩和を図るためです。1月に貯水量を減少させているのは、3月・4月頃からの雪解けによる水量を平均化するためと了解します。矢木沢ダムは、ダム諸量データベースにあるように、有効貯水量175,800千m3の関東一大きなダムです。上のグラフで9月頃80,000千m3程度に貯水量を下げており、この場合の洪水調節能力は95,800千m3となるわけです。参考まで、話題の八ッ場ダムはというと、2009年8月25日の八ッ場ダムを考えるに書いたように有効貯水能力90,000千m3のダムです。八ッ場ダムの発電能力は、松谷発電所他との干渉があり、ほとんどありません。

発電そのものについてのデータがなく、間接的な矢木沢ダムの水に関するデータからの推定ですが、興味を持って読んでいただくことができればと思い書きました。

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2011年3月16日 (水)

太陽光発電は、計画停電に有効か

東京電力の地域では、ここ連日計画停電が続いています。こんな時に、ふと思うのが、我が家に太陽光発電があったならです。

ある程度は、有効です。うまくいけば、コンセント1個分の電力が得られます。自立運転コンセントがついている太陽光発電設備がある場合で、最近はほとんどあるのではと思いますが、次の環境省のWebをご覧下さい。

自立運転コンセントの使い方

では、これがあると万能かというと、次はシャープのWebですけれど、

停電時に電気を使うには(自立運転) 自立運転モードのご注意

ということで、発電量より大きな電力を消費する機器が使えなかったり、掃除機、冷蔵庫等のモーターで動く機器が使えなかったりします。それと、当たり前の話ですが、夜間は使えず、朝夕等太陽光が少ない時や雨・曇天でも制約を受けます。

いつもは、太陽光発電は、消費電力より発電量が大きかった時、電力会社に48円/kWhで売れます。しかし、停電とは電力会社の供給設備とつながっていないのであり、売ることができません。最も、こう言うと不思議がられるかも知れません。電線は繋がっているのですから。実は、その通りです。発電して電線に流すとお隣さんに電気が行きます。それどころか、電線がつながった相手先全てに電気が流れます。そんなたくさんの電気を自分の太陽光か供給できず、パンクするか、安全装置が働いて、送ろうとしても、送れない状態になります。

スマートグリッドだと声高らかに叫んでおられる方々もおられすのですが、スマートグリッドが成立するためには、そのためのインフラも必要であるのです。そのインフラの一つが、電圧・周波数安定の機能であり、アンシラリー・サービス(例えばこのWeb)というのも重要なインフラです。電力会社が電力供給をしていないと、アンシラリー・サービスがないので、電気を送れないとも言えます。

いずれにせよ、太陽光発電設備を持っていて、自立運転モードを使っていない方がおられたら、先ずは自分の設備が自立運転可能か調べて、可能であれば、是非お使い下さい。

でも、やはり電力会社から、電力が供給され、太陽光発電の電気の余剰分は電力会社に売ることができ、かつ冷蔵庫もエアコンも使えるのが、やはり一番よいことですね。

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福島原子力発電所トラブル

福島第一原子力発電所の事故・トラブルの解決・解消にむけて、日夜尽力されておられる方々に感謝と激励を述べさせていただきます。

現場には核燃料から放出される放射能があり、事故が疑われる場所に出向いて、調査・確認ができず、様々な困難を伴う。しかし、発生した以上はそれを克服せねばならず。苦労がつきまとうと思います。今回の事故の直接の原因は地震の揺れよりも、地震により引き起こされた津波であったと思います。

日経 3月13日 東電社長「非常用電源、津波で機能せず」 福島第1原発

本日の天漢日乗サンのブログは、福島原子力発電所について津波の危険性を共産党吉井英勝衆院議員が2006年3月1日の予算委員会第七分科会で取り上げ、質問をしていたと書いておられます。

天漢日乗さんのブログ 3月16日 福島第一第二原発事故を予見していた・・・・

この質問に対する政府の回答が、正面から捕らえての回答であるか疑問がありますが、基本的には問題なしと回答としたと了解します。

はたして、チリ級の津波への対応が考慮されていなかったのか。現時点での中途半端な回答ではなく、現在のトラブルが解決・解消した後に、詳細な報告書が出され、検証されるべきと考えます。おそらく、考慮はされていたと思います。それが、正しかったか、あるいは正しいと信じるべき相当の理由があったのかがポイントと思います。

今回の地震においては、津波の後、原子力発電所の生命線であるディーゼル発電機が全て稼働しなくなった。その原因は、何であったか。対策は何故有効でなかったか。更には、外部からの発電機の運搬・設置に、時間を要しすぎていないか、容量は適切であったか等についても検証されるべきと思います。もしかしたら、緊急事態として、自衛隊の発電機をヘリコプターでも輸送すれば、間に合ったのか、極端ですが、そのようなことも将来のためには、検証されるべきと思います。

事故のデータとは、貴重な財産です。事故結果を将来に生かせることができるかどうかは、未来の発展と大きな関わりがあるはずです。広く言えば、原子力政策はどうあるべきか、軽水炉、MOX燃料、高速増殖炉、使用済み核燃料、放射性破棄物、トリウム炉、温暖化ガス、化石燃料等様々な課題も関連すると思います。工学的な面のみならず、例えば、その中には、政府の組織問題もあると思います。即ち、原子力安全・保安院が原子力を推進する方向に向かって動いて適切な経済産業省の中にあって良いのかも、そうであると思います。日本の政府の組織に、府省に属さない独立した委員会は会計検査院とか公正取引委員会とか少なすぎるように思います。

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2011年3月15日 (火)

計画停電の改善必要

本日の計画停電は、一部の地域での夕刻1時間半程度の停電で終わったようである。

日経 3月14日 東電が初の計画停電 第5グループの一部、1時間半

これで終わらず、明日以降も計画停電を実施する可能性があるとのこと。

日経 3月14日 15日も計画停電、5グループに分け実施 東電発表 それぞれ最大3時間

一方で、改善の余地は多いと思う。

1) 電車には電力供給を

電車を止めるのは、良くない。1編成800kW程度と思う。100編成を走らせると、80,000kWとなるが、全ての編成が同時に電力を消費するわけではなく、1/5とすると16,000kWである。それでも100編成で、列車間隔を2kmとして、複線だから2で割って、25kmはカバーできる。この計算が、どれほど的を得ているか不明であるが、その10倍の1000編成走らせるとすると160MW(16万kW)となる。

電車を運休させることは、社会や経済に対するマイナスは非常に大きい。万一、供給力が不足すると判断しても、電車には電力供給を確保すべきと考える。多分、東京電力が発表した計画停電の1グループの需要は5,000MW(500万kW)以上あると思うので、そのなかの10%の停電で、電車は相当走らせることができると思う。

JR東日本は、多くの電車を運休した。ところで、JR東日本には、自前の発電所が1,104MW(川崎火力655MWと信濃川水力449MW)ある。現在最大出力で稼働可能か、また信濃川の水量の情報も持っていないが、JR東日本の特に首都圏地域は東京電力の電力供給とは、ある程度無関係に、電車を走らすことが可能な地域であるはず。JR東日本は、14日の運休について説明をすべきと考える。安易な運休は避けるべきである。

2) それ以外のインフラにも電力を

病院や診療所という医療機関には、電力供給を継続すべきである。ほとんどの診療所には非常用発電機はないが、電力が必要な医療機器は設置されていることが多い。現在の医療は電力に依存している部分が大きいのであり、ある意味ライフラインである。その他、道路の信号機にも電力供給は継続すべきであり、市町村役所・役場にも供給をすべきと考える。

地域・住所で画一的に停電をすることは、止めるべきである。他の供給は停止しても、インフラの電力供給を継続することが可能と考える。こまめに6kV中圧線で操作すれば可能なはず。3月14日の一部地域への電力供給停止には、東京電力3月13日15時発表のプレスリリースにあった地震により停止中変電所の那珂変電所、新茂木変電所、常磐変電所と水戸北部変電所が関係している可能性があり、6kV中圧線対応は取れなかったかも知れない。一方、多くの地域では、少し離れれば、停電時間が異なる別の計画停電グループになっていた。これは、中圧線で操作するか、もう一つ高い電圧で操作するかのどちらかと想像する。社会と人々のことを考えれば、社会と人々のことを考えた停電をすべきである。

3) 大口電力需要家

過去の電力需給が逼迫した夏期シーズンでは、大口電力需要家の需要調整をしていた。今回時間がなかったこともあるであろうが、大口需要家の協力を呼びかけるべきである思う。自家発余剰電力の買取での供給力が増加の期待量は不明であるが、そのようなことも含め過去に実施した需要調整も検討すべきである。(こんなニュース日経 3月14日 三菱重工、自家発電力を東電に売電検討もあった。)

4) 情報開示

情報が開示されていないと思う。例えば、3月14日の需要カーブと供給力は、どうであったのか?勿論、14日の停電が送変電系統の制約が原因であったのであれば、単純にカーブを見ると停電は不要と判断してしまう。しかし、それは、適切な注釈を付け、説明すれば良いのであり、停電という不利益を与えるからには、同時に必要な情報開示がされるべきである。(この発表を見ると、10時、16時、18・19時の3ポイントの需要については、なされている。)

実は、情報開示に反対しているのは、東京電力なのか、政府なのか、双方なのか、それさえ分からない。最も、一番分からない部分であるが。

例を示すと、停止中変電所が述べられている同じ東京電力3月13日15時発表のプレスリリースに、地震で停止中の火力発電設備が書いてある。広野火力発電所2、4号機、常陸那珂火力発電所1号機、鹿島火力発電所2、3、5、6号機、大井火力発電所2号機と東扇島火力発電所1号機である。では、他の発電機は運転可能な状態であるのか、定期点検等で停止中か不明である。他社の発電所についても、日本原子力発電の東海2号や常磐共同火力の勿来発電所、相馬火力の新地発電所は地震により運転停止中と理解するが、全体像がよく分からない。需要が減少する春を迎えて、定期点検のために停止を計画している火力発電所も多いと思うが、停電をするには、適切な情報開示は欠かせない。

3月14日の計画停電を発表したこのプレスリリースに書いてあるのは、次のことである。

<参考>
○3月13日の需給予測
 需要想定  3,700万kW(18時~19時)
 供給力   3,700万kW

○3月14日の需給予測
 需要想定  4,100万kW(18時~19時)
 供給力   3,100万kW

14日は月曜であり、13日の日曜より400万kW需要増を予測するのは理解できるとして、供給力が600万kW減少するのは、何故か?説明が、全くない。6,000MWとは、やはり大きな数字である。3月13日15時には、「大井火力発電所3号機は復旧済み)」とも書いてあり、徐々に供給力も回復していくと思っていた。ところが、停電発表では、減少する。

なお、3月15日は、次の予測となっており、供給力は2000MW増加したが、13日の37,000MWには至らず。

○3月15日の需給予測
   需要想定  3,700万kW(18時~19時)
   供給力      3,300万kW

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2011年3月14日 (月)

イレッサ訴訟

1月9日にイレッサ訴訟の和解に反対するを書き、2月26日にイレッサ大阪地裁判決についてこのブログ(社説の比較)を書きました。3月11日には、アストラゼネカと原告の双方が地裁判決を不服として、大阪高裁に控訴したとニュースがありました。

東京新聞 3月11日 原告側、アストラゼネカとも控訴 イレッサ訴訟判決

2月25日大阪地裁の判決文は、要旨と第5分冊が、イレッサ弁護団のWebでこのページからダウンロードが可能な状態になっています。アストラゼネカは、控訴の理由等をここに説明をしています。

イレッサが承認されたのが、2002年7月5日です。約3月後の10月15日に添付文書第3版が出され、同時に緊急安全情報も出されました。大阪地裁の判決もアストラゼネカの責任を認めたのは、この3月間です。しかし、判決文を読んでも、スッキリしませんでした。第1に、イレッサは薬として有効であるとしています。その上で、危険性の説明が十分ではなかったとして、その責任があるとしたのです。ところが、判決文(V-119ページ)で「・・・イレッサによる間質性肺炎の前記特徴が平成14年7月時点において判明していなかったことを伺わせるもののいうことができ、他にイレッサの副作用である間質性肺炎の特徴がその当時把握されていたことを認めるに足りる証拠はなく・・・・」と述べているのです。高裁で、どうなるか見てみたいと思いますが、大阪地裁の判決文(第5分冊のみですが)を私が読んだ印象としては、アストラゼネカが正しい気がします。

東京訴訟については、3月23日が判決日です。どのような判決でしょうか?

このブログの後半部分は、マスコミ報道について、書きます。2月26日には、社説について書きました。毎日新聞に記者の目というコラムがあり、”国の対応が「誤り」であったことは明らかだ”と述べています。大阪地裁の判決文を読むと、それは言い過ぎではないかと思えます。リンクと記事のコピー(クリックすると別窓で拡大)を掲げます。

毎日 3月4日 記者の目:肺がん治療薬「イレッサ」訴訟判決=日野行介(大阪社会部)

Mainichiiressa201134 意見が異なることに問題はないと思います。何故異なるのか、その判断をした理由等を議論し、何が正しいか論争をすれば良いのですから。しかし、私が、この記者の目の記述で嫌に思うのは、イレッサが承認された2002年7月頃は、何を述べていたかです。下に、2002年9月30日(10月15日に緊急安全情報が出されたので、微妙な日ですが)の毎日の科学・いま&未来というコラムで書いているイレッサについてです。2011年の記者の目と随分異なると感じませんか。決して、毎日だけではありません。マスコミ報道では、よくあること。真実の報道より、売上、視聴率を目指した人気取りの、その時のご時世にあわせた記事や報道になりがちと私は感じます。読み手、受け手としては、気をつけないと大変な目にあいます。でも、大新聞や大放送局に、どうどうと述べられると、つい信じてしまう人が多いかもしれません。

Mainichiiressa2002930

判決文V-79ページに、イレッサ推定投与数を、2002年7月末820人、8月末1960人、9月末9600人、10月末1万5000人、11月末1万8100人、12月末2万900人としています。ここまで伸びたのは、マスコミ報道が関係していないだろうか?重篤な患者にとっては、夢の薬と報道されれば、藁以上の物になると思う。医師が危険性を述べても、「どうなっても構いません。私の責任ですから、どうかこの薬を試させてください。」と患者が依頼したら、どうなるでしょうか?

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2011年3月13日 (日)

福島第一原子力発電所1号機で何かあったようですね

次のようなニュースがあり、福島第一原子力発電所1号機で、重大な事故が発生したようです。

朝日 3月12日 福島第一原発1号機爆発時、数十人被曝か

朝日 3月12日 原子炉建屋の爆発、露出した燃料棒が水蒸気と化学反応か

朝日 3月12日 「爆発音」に各国緊張 IAEA、即応態勢整える

国際原子力機関(IAEA)のWebを見ると次のような発表がありました。CETは、ヨーロッパ中央時間で、冬時間の間はCETに8時間を足すと日本時間になります。iodineとは、ヨウ素のことです。

IAEA update on Japan Earthquake 1340 CET 12 March 2011

東京電力の3月12日 午後9時現在のプレスリリースでは、「本日午後3時36分頃、直下型の大きな揺れが発生し、1号機付近で大きな音があり、白煙が発生しました。」とあり、何かがあったと判断すべきです。

では、何があったのだ、どの程度の重大な事故なのだとなると、今後の情報を待たざるを得ません。そもそも、人間が立ち入れない世界での出来事みたいな部分があるからです。現場に行って、見てくるわけにはいかないのです。何故なら、放射能を浴びるから。それ故に、原子力発電所は、計器で監視して、このようになっていると考えて操作をするシステムだからです。原子炉とは、放射能の塊みたいな物。だから、原子炉圧力容器は、徹底的に頑丈に作って、その上更に厚いコンクリートの建物に入れる。推定が事実となるには、放射線を浴びる危険性が低くなり、必要な確認が実施可能となった時です。原子力とは、これが宿命です。そのような課題を乗り越えていって使用可能となる設備だと思います。事故が起きて、安全性が高まる。

原子力発電所は、重油を使う。何故なら、非常用にディーゼル発電機があるからです。保安用の電力供給が目的なので、原子炉同様高い信頼性を確保する。ところが、今回機能していない。想定を超えた地震の揺れであったのか、あるいは津波が関係しているのか分かりませんが、そのようなことが関係して、この1号機の事故になっているのかも知れません。

直前のブログで、放射能漏れを書いたので、1号機のことも書くことにしました。

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2011年3月12日 (土)

地震による原子力発電所の放射能漏れ

放射能漏れは、基本的にあってはならないことです。次の朝日の報道を読むと不安を感じてしまうのですが、実際はどうでしょうか。雑感を書きます。

朝日 3月12日 制御室1千倍の放射線 正門付近は20倍 福島第一原発

1) 朝日の報道の根拠

「経済産業省の原子力安全・保安院は12日朝に記者会見し」と書いてあり、原子力安全・保安院 地震被害情報(第11報) (3月12日午前7時00分現在)には、)福島第一原子力発電所に関して次のように書いてあります。

・モニタリングカーにより周辺監視区域境界近傍の放射性物質測定を行ったところ、12日4:00現在と比較して数値の上昇を確認※。(12日5:20現在)
MP6(正門付近)0.07μSV/h→0.59μSV/h(4:00→4:30)
MP8(正門付近)0.07μSV/h→0.38μSV/h(4:00→4:35)
※)数値のレベルは、一般公衆の年間線量限度である1mSvに達するのに約70日かかる程度。

その後、12報、13報、14報と続いており、MP6で5.1→5.1→6.7と推移し、MP8で2.5→2.9→5.3と推移しています。6.7μSV/hとは、1時間当たり6.7μSVなので、1mSV(1000μSV)/年に到達するには、149時間すなわち6.2日となり、7時発表の70日より相当短くなっています。

2) 放射線の安全数値基準

一般公衆の年間放射線被曝限度を1mSV/年とする基準は、 ICRP(International Commission on Radiological Protection:国際放射線防護委員会)の勧告数字によると理解します。また、国内法において、この数値は経済産業省の告示になっていると理解します。

ICRPの1mSV/年も、2007年勧告では「計画被ばく状況における公衆被ばくに対しては、限度は実効線量で年1mSVとして表されるべきであると委員会は引き続き勧告する。しかし、ある特別な事情においては、定められた5年間にわたる平均が年1mSVを越えないという条件付きで、年間の実効線量としてより高い値も許容される。」と5年平均での適用もあり得るとしている。

なお、更に複雑なのは、放射性破棄物処分の問題がある。原子炉からの破棄物の処分が確立されねば、原子力発電は成立しない。破棄物処分地における放射線量は当然問題である。破棄物線処分に関わる放射線の許容量は幾らにするかという問題である。もう一つは、5年平均のようなアプローチであり、軽水炉原子炉の事故時における許容放射線の決め方として、単純に1mSV/年とすべきかである。

実は、この問題は、日本の原子力発電のみに関わるのではない。もし、日本が官民共同スタイルで、原子力発電を輸出するなら、実は、ハードの輸出ではなく、基準を含めた輸出にならざるを得ない。日本が、どうリードするのか?例えば、放射線の安全基準はICRPに従うことを推奨することになるであろうが、具体的には、どうするのか。インフラ輸出には、この種の課題はついてくるのである。

原子力発電所に関わる人達や医療でX線を扱う人達には、別の基準が存在する。電離放射線障害防止規則であり、こちらでの放射線許容基準は、1mSV/年と比べると、ゆるやかである。

事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。

3) 原子力発電

原子力発電所は、地震に対して全く問題がなかったとは言えないであろう。むしろ、トラブルを含め様々な経験があって、そのフィードバックの結果として安全性が高まる。少なくとも、現時点において、重大な事故につながるトラブルはなかったと思う。但し、この点を含め、後日詳細な報告書が出されるべきである。

発電所の地元の方々は、避難を強いられた。日常生活を犠牲にしての避難であり、大変と思う。問題がないと予想されても、万が一のために避難に同意された。その代償は、受益者が負担すべきと考える。東京電力とその電力需要家であるべきか、地震という自然現象の結果であり、広く電力需要家全てか、あるいは税金なのか、多少の議論はあると思うが、日本で原子力発電所が必要と考えるなら、発電所の地元に負担を押しつけてはならないと思う。

日本は人口減社会に入り、今後それほど多くの原子力発電所の新規建設は多くないと思うが、一方で、老朽化する発電所の建て替えは必ず必要であるし、放射性破棄物は常に出てくる。CO2を出さない変わりに、使用した燃料と、ほぼ同量の使用済み核燃料が出てくる。対立ではなく、協力から、よりよい社会が生まれてくると思う。

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2011年3月11日 (金)

米国務省メア日本部長の「ゆすり」発言による更迭

メア部長の退任を米国務次官補キャンベル氏が3月10日に伝えたと報道がありました。

日経 3月10日 「ゆすり」発言のメア部長更迭 米国務次官補が謝罪 米大使も沖縄訪問へ

米国務省日本部のメア部長(Mr. Kevin K. Maher, Director of the Office of Japan Affairs, Department of State)が2010年12月3日に国務省内で行った講義での発言ですが、講義の内容は、どうであったのか琉球新報に英文メモとその翻訳が掲載されていたので紹介します。

琉球新報 3月8日 メア氏講義メモ全文(English)

琉球新報 3月8日 メア氏講義メモ全文(日本語訳)

問題の発言は、以下の部分にありますが、masters of “manipulation” and “extortionとは表現がまずいのではと思いますが、私も英語が、そこまで得意ではありません。

”While the Japanese would call this “consensus,” they mean “extortion” and use this culture of consensus as a means of “extortion.” By pretending to seek consensus, people try to get as much money as possible. Okinawans are masters of “manipulation” and “extortion” of Tokyo.”

但し、of Tokyoとなっているのです。日本語訳では、「沖縄の人々は日本政府を巧みに操り、ゆすりをかける名人である。」となっている部分です、沖縄に対しての東京との表現です。日本政府には違いないのですが、ニュアンスとしては、沖縄という地方が東京の中央政府に対抗するためには・・・・というのがあると思います。沖縄は外交権もなく米国と直接交渉できないのです。力からすれば、沖縄は弱く、強くなるには、そうであって欲しいとの気持ちにもなります。

このメモを、「ゆすり」発言の前から読むと、民主党政権になって「県外移設」と県外に候補地が存在しないにも拘わらず政権は約束をした。それを実行できないと言われて、沖縄は、簡単に合意できない。結局は、政権に掛け合って、金で解決するしかないというのは、実は多くの人が思っていることではないのだろうか。言ってみれば、沖縄とは無関係の東京の人間だから、沖縄をもてあそべる。沖縄は、かつて琉球王朝という独立国であった。戦争で国内唯一の地上戦があった。戦後の米国統治の時代に、日本政府は沖縄の人々の保護に、どれだけあたったのか。サンフランシスコで講和条約を締結する際には、沖縄の返還や保護より、東京の人達は自分たちの利益確保に目が行っていなかったか。今も、米軍基地の大半が沖縄に存在する。難しい課題や問題が存在すると思います。

沖縄の人達が、東京の人達と様々な交渉をして、沖縄の権利を守るのは、当然のことと思います。メア部長が「和」について述べていますが、これも、当を得ている部分があると思います。私自身、「和」とは何かよく分かりません。反対論を述べず、長いものに巻かれろとするのが「和」でしょうか?もし、そうだとするなら、「和」に反対します。

なお、メア部長の退任については、その役職では、発言に注意をせねばならず、当然のことと思います。しかし、日本人にとって、ケシカランと怒るだけではなく、メア部長の発言内容について一考をしても良いように思います。

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年金について考える(その2)厚生年金

厚生年金と言っても、やはり複雑な面もあるので、最も身近な、幾ら払って、幾ら年金が受領できるかを先ずは書きます。

1) 年金保険料

2011年度は16.058%で、毎年0.354%づつ上がり、2018年度に18.3%になります。普通に考えれば高いと感じます。しかし、充分な額の年金が将来受け取れるなら、ヤムを得ないかと考えられます。なお、16%-18%は個人と会社による半額ずつの折半です。従い、会社にとっては、人件費は給与額の8%-9%高いコストアップとなり、個人にとっては、手取り給料が8%-9%下がります。これって、税金とどこが違うの?と疑問を持ちます。実は、2004年は13.58%であったので、知らないうちに所得税が5%増税されているのと同じ、あるいは、それ以上なのです。5%アップして、逆に年金はダウンですから。2004年以前が良すぎたのなら、やむを得ないとも考えられるので、いずれにせよ次の年金受給額のチェックです。

2) 年金受給額

保険料は、16.058%のように一律ですが、年金額は老齢基礎年金(定額部分)と老齢厚生年金(報酬比例部分)になるので、結果は複雑です。そして、3号被保険者が関係するので、更に複雑になります。何故3号被保険者が関係するかというと、2号被保険者の配偶者なので、2号被保険者が保険料を払っていると考えます。しかし、保険料は報酬比例の16.058%であっても、受給する年金は単身者(あるいは共稼ぎ世帯)と比べると配偶者が基礎年金を受給するので、世帯単位で考えれば、その分年金額は多くなります。

グラフにすれば、次のイメージです。

201130

3) シミュレーション

計算をしてみないとなりません。年金額は、次の式で計算をしました。

報酬比例部分年金額 = 勤務時平均年収額 x 勤務年数 X 5.769 X 1.031 X 物価スライド率

物価スライド率は、2011年度はマイナス0.4%なので、0.981を適用しました。基礎年金は、2月17日の年金について考える(その1)国民年金と同じ月額65,741円としました。年収6百万円の場合の計算を以下に掲げます。(クリックすると、別Windowで大きくなります。)

20113a年収6百万円の場合は、払った保険料総額を、受け取る年金額が上回るのは84歳以上になった時です。2百万円から10百万円まで、計算してグラフを書くと次のようになりました。基礎年金部分は、支払った保険料とは関係なく、受領できるので、所得が低いほど受取年金額と支払保険料の比率比較では有利と言えます。

20113b_2 

このグラフに国民年金の給付受領額も表示すると次のようになり、国民年金の方が有利と言えます。

20113c_2 

少し変えて、何歳まで受領すれば、支払った保険料の総額を上回れるかをシミュレーションした結果が次のグラフです。

20113d

上記の計算で、1000万円以上の年収の人については対象としていませんが、理由は厚生年金保険料は月額報酬62万円で賞与1回150万円が上限(年1050万円程度)となります。これ以上収入があっても保険料は上限額で変わらず、受け取る年金額もこの上限額見合いとなるので、最大額1000万円を年収とするグラフにしました。なお、月額報酬には残業手当も通勤手当も含みます。そして、厳密には等級で計算するので、当然ギザギザのグラフとなります。現制度における年金額の目安としては使えると考えます。

3) 3号被保険者

3号被保険者は、配偶者が2号被保険者であり、かつ2号被保険者の収入で生計を維持している人です。専業主婦(夫)であり、3号被保険者は常に2号被保険者とペアで存在する。別の表現にすると、2号被保険者には3号とペアである者とない者の2種類存在する。

そこで、共稼ぎ世帯と専業主婦世帯のモデルケースを仮定し、モデルケースの世帯収入金額を5百万円、7百万円、9百万円の3通りを考え、共稼ぎ世帯の場合は2人の収入をそれぞれ3百万円と2百万円、3百万円と4百万円、そして5百万円と4百万円として、どのようになるかを見てみます。

20113e

グラフは世帯収入が、1人であれ、2人合計であれ、同一なら完全に重なります。何故なら、共稼ぎ世帯でも3号被保険者世帯でも基礎年金部分は2人分あり、これに老齢厚生年金(報酬比例部分)が加わりますが、1人分であれ2人分であれ報酬額に対する同じ係数のかけ算なので答えは同じになるからです。約1000万円の年収が上限となっているが、年収が高いほど保険料に対して受領できる年金額が比率では小さくなっている。3号被保険者世帯の場合は、夫(または妻)の収入を2人の共同で稼ぎ出したとして年金受給額を決めていると言うことです。

合理的な気もしますが、問題がないわけではない。1号被保険者の場合は、同じ状態であっても2人分の保険料を支払う。しかし、上から2番目のグラフにあるように、1号被保険者の国民年金の場合は、厚生年金のどの所得金額より高い年金比率になっている。最も、年金が基礎年金のみであり、報酬比例部分もあわせて考えないと不合理な面はある。

むしろ、3号被保険者とは、2号被保険者の収入により生計を維持するものであるので、年収130万円以下であることが必要。結果、月10万円なら範囲内であるが、月平均15万円となると、厚生年金保険料が会社負担と合計で16.058%、個人の手取りで8.029%のダウンとなる。実際には、健康保険料も払わねばならず、個人負担5.5%として13.529%も手取り収入が減少することとなる。3号被保険者の制度は、このような関連を考えると、基礎年金は全額消費税による徴収に制度を変更してしまった方が、合理的な気がする。

参考まで、3月8日は国際女性デーであったのです。そこで、この日にOECDが、Unpaid WorkというこれをWebに出しました。Unpaid workとは、無償の仕事という意味ですが、この場合は、日本語の家事労働に相当します。家事労働の割合は、どの国でも女の方が多くの時間を割いていると言っています。日本は210分/日ぐらいでしょうか、第6位です。日本より、イタリア、ポルトガルの方が、女の家事労働の超過時間が多くなっています。但し、別のグラフを見てみると男の家事労働時間は、短い順番で1位韓国、2位インド、3位日本で4位が中国となっています。

個人の努力だけではなかなか大変。社会の制度も変わらなくてはならない。人口減社会に対応するには、女性の能力と労働力に頼らざるを得ないと思う。そうなると、共稼ぎ世帯を応援する制度に変えていかねばならず、3号被保険者制度も一見合理的に思えるが、日本の社会の発展を考えるなら、改革の必要があると思います。

4) 投資リターン

年金を投資とリターンのみで考えることが適切とは思わないが、投資とリターンの関係で見ることも必要と思います。

20113f

65歳の平均余命が、簡易生命表で男18.88年、女23.97年なので、男は84歳、女は89歳まで年金を受領すると仮定すると、男の場合は年収6百万円以下でないと投資損が見込まれ、女の場合は、どの場合でもプラスリターンが見込まれる。しかし、6百万円以上の年収であれば、リターンは年率1%にもなりません。以下の表は、グラフにしたデータを表にしたものです。

20113g

考えれば、当然で、終身年金は働いている時は同じように保険料を支払うので、短命より長寿が必ず受領額が大きい。平均余命で考えれば、男より女が有利。従い、同じ保険料で運用していることから、男の保険料が最終的には女の年金に使われているとも言える。しかし、それが社会として見れば、決して男が損をしていると結論づけるのは早急すぎる。本当に年金とは、難しいというか、奥が深いというか、社会を支える制度として発展させ、育てていく必要があることを感じます。保険料だ、税金だと、無意味な対立を煽るのではなく、どうするのが社会として、国民として、最も良いのかという観点を重視すべきと考えます。運用3号論戦は、本質を横に置いて、足の引っ張り合いをしている人達と痛感します。

なお、次回以降、共済組合にも少しふれ、そして、年金財政や将来の年金財政見通し、そして将来設計へと頑張ってみます。

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2011年3月10日 (木)

嘘も方便は、まずいですね

「それを方便と言われれば方便だが。広い意味での抑止力という言葉は使えるなと思った」との有名な発言があったのは、つい最近のことでした。(47ニュース 2011年2月13日 鳩山由紀夫前首相の一問一答

これも、まずいですね。

しんぶん赤旗 3月10日 “整理解雇 銀行との約束ない”

9日の衆議院国土交通委員会で、穀田委員の質問に対して、日本航空(JAL)副社長執行役員の水留浩一氏(企業再生支援機構の常務取締役でもあると思います。元:ローランド・ベルガー副会長兼シニアパートナー)が、JAL会長の稲森氏の発言に関して、「個別具体的に『整理解雇』に対して要望を(銀行から)お聞きしたことはない。先方(銀行)からコメントをいただいたこともない」と述べたと報じています。

2月13日の日本航空整理解雇から考えるで、稲森氏発言に関して書きました。日本記者クラブでの2月8日昼食会で、日経の三宅記者の質問に対して「160人を残すことが経営上不可能かといえば、そうではない。しかし、金融機関、債権者、裁判所などに約束した(日本航空の)『更生計画』を1年もたたないうちに反故にしてしまうことはできない。」と述べたのです。

2010年1月19日の企業支援機構による発表(ここにあり)にも事業再生計画の概要等が書かれており、人員・組織体制の効率化、柔軟性の抜本的向上と言う項目もあり、また8つの労働組合と協議を行うことは述べられている。再建計画で、重要なのは基本方針であり、事細かく過度に細部まで規定して、フレキシビリティーなく作成されているとは、思わないし、そんなことをすれば経営知らずの馬鹿者と思います。

「合計16,000人を解雇するという自分が就任する前に作られていた再建計画に基づき、ほぼこれに近い方々に別会社に移動することを含め、人員削減を実施してきた」として、整理解雇を正当化するのは、嘘も方便に属すると思いました。日本記者クラブのインターネットTVの稲森氏の講演録画を聞くと、JALでやっていることには、新興宗教の教祖の部分があるのではと思ったりします。嘘を方便でつくのは、まずいことです。JALの社員は、どう思うのでしょうか?

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2011年3月 9日 (水)

混乱だけの主婦年金救済

3号被保険者の不整合記録問題は、国民の利益を離れ、解決に向かうのではなく、政争の道具にしかなっていないと思います。様々な報道があり、何がどうなのか全く解らないとしか言いようがない状態と思えるが、その中で、朝日の報道のリンクを、あげておきます。

朝日 3月9日 主婦年金で厚労相陳謝 新救済策に野党側「国会軽視」

1) 年金機構を解体して社会保険庁と歳入庁をつくるべし

日本年金機構と言っても、多くの人にとっては、年金特別便を送付してくる組織ぐらいの感覚です。何故なら、国民年金の加入手続きは市区町村の年金担当窓口で行う(参考:この年金機構のQ.0118の答え)し、厚生年金や共済組合の場合は、勤務先の会社や役所で申請を行うからです。受給の際は、郵便でのやりとりだし、払われる時は、銀行振り込みです。

3号被保険者の不整合記録問題が、発生した一番の理由は、法律の不備だと思います。管理について適切に定めていない法律を作り、社会保険庁を解体して、特殊法人の日本年金機構(通常、単に年金機構と呼ばれています。)を作ったのです。特殊法人とは、一般の株式会社のように会社法のような法人に関する法律により設立されたのではなく、その法人のためだけに法律が作成され、設立される。従い、その法人には定款がありません。日本年金機構法に定められているので、定款を作ると矛盾が生じる。

年金機構の最大の問題点と思うのは、日本年金機構法第1条、第2条で、政府管掌年金事業に関する業務等を行い、政府管掌年金の国民の信頼の確保を図ることが書かれているが、実は、政府管掌年金とは厚生年金と国民年金のことであり、国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済(共済組合)は、含まれていません。

主婦年金(3号被保険者不整合記録)問題は、共済組合に加入している場合も、発生しているのです。そもそも、日本の年金は、誰が全体を管理しているか、訳が分からない状態です。社会保険庁は、厚生労働省であったので、社会保険庁が事務面では管理すべきと言えたと思います。しかし、今は、無茶苦茶と思います。

共済組合が年金機構から外れているのは、多くの共済組合があり、利権構造が複雑であるからかも知れません。国家公務員共済は各府省ごと、衆議院、参議院、裁判所、会計検査院等にあり、全部で20近く組合があると理解します。地方公務員共済は64組合あり、私学共済は特殊法人の日本私立学校振興・共済事業団(文部科学省監督)です。この状態で、3号被保険者が管理できるとは、思えない。できるとすれば、番号制を導入して、その上で、厚生労働省社会保険事務所が役所として、管理することと思います。

本質を正さずして、パッチワークで国民を誤魔化すことに反対します。

2) 3月8日の年金業務監視委員会の意見書

3月8日付け総務省大臣宛の年金業務監視委員会の意見書は、次のように述べています。

「運用3号」の適用を受けることを申し出た者のうち、裁定未了の者については、「運用3号」の適用を行わず、正規の種別変更を行うこととし、既に裁定済みの者についても裁定の取消等の措置を検討すべきである。

現に年金を受給している裁定済みの者については検討すべきであるとして、逃げてしまったりであるが、次のようなことを考えてしまう。

a) 裁定済みで実際には3号に該当しないにも拘わらず保険料を納付せずに、年金を受領している人に年金の返還を求めるのか?求めた場合の問題と、求めない場合の、裁定前の人との間で不公平が生じないか?個人名は不要であるが、裁定済みで問題ある人が何人いて、何故そのようなことが発生したかの情報が、適切な開示が妨げられることはないか?
b) 制度の欠陥、厚生省、社保庁、年金機構、自治省、文部省、その他共済組合を管轄する府省の行政上のミスについて適切な追求がなされるか?
c) 年金機構の業務範囲を超える国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済における不整合記録問題は、誰が解決するか?(3号被保険者とは2号被保険者の配偶者である。その2号被保険者の年金記録から、不整合記録の調査が可能である。共済組合については、年金機構は業務範囲外であり手が出せない。誰が、調査をするか?有効な方法とは何か?

3) 根本的な解決を求める

民主党とは何であったのだろうかと思う。税方式による基礎年金を構築すると言っていたように思うが、全く何もしない。歳入庁構想も示していた。それらは、政権を取るための口からの出まかせで、政権についたら何もしないのだろうか。国民のために自らの人生を掛けて、貢献する人を選ぶことができる選挙制度が作られるのがよいと思うが、道は、なかなか遠いだろうなと思う。しかし、そんな人を応援したいと思う。

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2011年3月 7日 (月)

規制仕分けとは、よく分からない

「規制仕分け」というのを3月6日、7日で実施しているが(ホームページはここ)、やはりよく分からない。この12項目が選ばれたが、なぜこの12項目か基準や理由がよく分からない。もっとも分からないのは、事業仕分けで何を期待するかである。公開で議論をするのは評価できるが、1項目について1時間30分しか時間を割いていないで、結論を出すのは、無理があると思う。あるいは、やるまでもなく結論が見えている項目もある。

例えば、「貴金属等の買取業者による自宅への強引な訪問買取」である。「被害実態を早急に把握の上、現行法制上可能な措置を講じる。その一方で、法的措置についても早急に検討する。」というのが結論であるが、これは結論が初めから分かりきっており、出したと自慢できない。一方、マスコミに変に報道されて、悪影響が出ないかと、私なんかは恐れる。即ち、事業仕分けで取り上げられたのは、被害者の救済が現行法で不可能に近いと誤解されることである。相場より不当に低い価格で、強引に訪問買取業者が買っていったのであれば、不当な行為であり、損害賠償を訴えることは可能である。そうであれば、法改正を待たず、消費生活センターを含め、相談をすべきと考える。

一方、「再生可能エネルギーの導入に関する規制(保安林・国有林)」は、何を言っているかというと、森林(保安林)の伐採を許して、風力発電を進めようというのである。風力発電自身、やはり問題が多い。まして、森林伐採は、十分な検討なしに安易に進めると取り返しがつかなくなる。こんな難しい問題を1時間30分で結論を出すのには反対する。

また「電気自動車の急速充電器の設置に係る電力契約の規制」と言うのがある。これも理解に苦しむ。何故なら、日本において50kW以上(沖縄では2000kWと理解するが)の電力供給の契約は自由である(電気事業法2条1項7号、電気事業法施行規則2条の2第1項1号)。急速充電器は35kWなので、1台のみなら、経済産業省の認可を受けた供給約款に基づき供給され、2台であれば自由化されているので、合意に達しなければ、電力会社(自由化電力なので、10電力とは限りません。)が供給を断ることもあり得る。電気自動車と言えば、何でも許されるとするのは、本末転倒である。民間のビジネスに合理的な基準を欠いた規制を持ち込むと、社会全体の歪みを拡大する。現政権の高速無料化はCO2の大量発生になっていると思うし、太陽光の買取により電気料金は上がっている。

政権末期になると、意味がある無しに拘わらず、税金を使って、何でもやり始めるのかなと思う。

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政争を続ける愚の骨頂の政治家達

「政争を続ける愚の骨頂の政治家達」とは、多くの人が、思っているはず。そのようなことのいくつかについて。

1) 年金3号被保険者への運用3号扱い

運用3号問題は、法改正で対応するのかも知れないが、実に変な話であると思う。何故なら、運用3号扱いに関する課長通知が出された12月15日の前から、3号被保険者の不整合記録は存在していた。自民党議員は、法改正をせずに課長通知で対応するのはケシカランと言う。これは、観点を変えれば、自民党が与党であった時代には、課長通知・通達も出さず、現場で適当に扱えと処理していたことを意味する。気付かなかったで終わらせてはならない。現場の声すらくみ上げる仕組みがなかったことになる。運用3号は、2年間の保険料を支払うことを求めたが、その前の昨年末までは2年間の保険料の支払さえ求めずに、優遇していた可能性もある。

問題の所在を明らかにせずに、相手の行為を非難するやり方は、世の中を悪くすると考える。それは、政治家ですか?国民の責任は?一番大きな良くない点は、二大政党による政争の愚であると思う。マスコミも、同調しているから、嫌になるが。例えば、次の朝日の社説である。

朝日 3月7日社説 主婦の年金―政争の具とは愚の骨頂

タイトルは、すんなり読めるが、例えば「放置すれば低年金や無年金の人がたくさん出る・・」というのは、そう単純ではないと思える。解決策によっては、受給中の年金を返還する必要が生じる人も出てくる。事態を正確に把握することが、第一歩のはず。そして、原因を究明して、対策を立てるという当然の措置を実施すべきである。そして、制度そのものの見直しである。

2) 前原外国人献金問題

この外務省のWebに3月6日外務大臣会見記録(要旨)がある。年間5万円を在日の知人から献金を受けたことを大問題とすべきかは、国民の判断と思う。政治献金をめぐる問題により国会の審議停滞させるわけにはいかないというのが、前原氏の本音の部分のはず。(では、小沢問題はと思うが。)

在日問題について、触れれば火に油を注いだ状態になったのかも知れない。しかし、あえて触れてもよかった気がする。外国人問題と領土問題は、世界中で、ポピュラリズムの代表と思う。排斥や差別を述べれば、選挙に勝てる。本質を述べれば、選挙に負ける。そこは、前原氏自身が、尖閣と北方領土問題で利用していたのであるが。北方領土問題にしても、ポツダム宣言受諾を発表してからミズリー号で降伏文書調印までの間を含む日本の対ソ連外交も検証されねばならないはず。蛇足であるが、8月15日には、外地と呼ばれた満州他の地域に多くの日本民間人は居住していた。ポツダム宣言を受諾しても、外地在住の日本人の安全を守る義務を日本政府は有していたし、ソ連と外交交渉を行うことも可能であったはず。

国民にとっては、何がよいのか、遠い世界の政争の結果と思える。

3) 減税日本の名古屋市議選

名古屋市議選(定数75)が4日告示され、地域政党「減税日本」が、最多の41人を擁立したとのことである。

朝日 3月4日 出直し名古屋市議選が告示 減税日本、過半数確保が焦点

名古屋市議選について、私は、選挙権はなく、外国の選挙と同じであり、減税日本は減税結果の名古屋市の地方公共団体としての収支や財政状態のシミュレーションを出しているのか知らない。

民主党の2009年衆議院選とよく似ている気がする。10%市税削減をするために、手っ取り早いのは、増加する生活保護費や国民健康保険負担を削減することであるが、まさかそんな構造になっていないでしょうねと思う。

マニフェストや選挙公約というのは、最大の政争ですから。

4) マスコミ

マスコミについて思った。

4-1 運用3号問題

2010年末まで、不整合記録が発見された3号被保険者は、どのような扱いがなされていたのか、マスコミなりにも調査し、報道すべきと思う。

4-2 前原献金問題

3月6日外務大臣会見の中で、日本インターネット新聞の田中記者が、国会で答弁のあった献金について、暴力団のフロント企業のS氏なる人物と前原大臣が知り合ったのが6~7年前で、この人物が逮捕されたのが6年10ヶ月前、そして、そういう人物(暴力団関係者)と知りながら、蓮舫大臣、野田大臣に紹介したということかと、質問をしている。田中記者の発言が根拠のないことであるのか、もし、田中記者発言の通りであれば、問題は大きいと思う。マスコミは、調査・報道してよいように思う。

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2011年3月 5日 (土)

中央リニア新幹線に「はやぶさ」を走らせたなら

3月5日、最高速度320km/hで走行する東北新幹線はやぶさのE5系電車が走り始めました。

日経 3月5日 新幹線はやぶさ発進、国内最速の時速300キロ 東京―新青森、最短3時間10分に

1) はやぶさが中央新幹線を走ったなら

中央新幹線とは、磁気浮上のリニアで計画されている新幹線です。距離が最も短い南アルプスルートで東京・大阪間が438kmで、67分の所要時間となる。このルートを、はやぶさ(E2系電車)が走った場合を、計算してみる。

3月5日のはやぶさの時刻表では、10時33分盛岡発で新青森着11時22分である。即ち、所要時間は49分であり、盛岡・新青森間を178.4kmとすると、平均走行速度218.4km/hである。この速度で、東京・大阪の438kmの走行時間を計算すると、2時間00分となる。但し、仙台・盛岡間を計算すると平均時速244.4km/hなので、東京・大阪間は1時間47分となる。

電車は、様々な制約下で、運転されているので、中央新幹線をはやぶさが走行する場合は、制約条件は相当緩和されるはず。そこで、最小限の制約として、出発駅と到着駅の加速と減速のみを考え、それを除いた区間は最高速度の320km/hの走行が可能であるとする。平均加速・減速性能を1.5km/h/sとした場合は、320km/hの加・減速の時間が213秒であるが、これを250秒とし、走行距離を11kmとする。この前提での所要計算は、次の式となる。

438km走行時間 = (438km - 11km x 2)/320km/h + 2 x 250sec/3600sec/h

                      = 1.4389時間 = 1時間26分20秒

磁気浮上リニアとの差は20分に縮まったのです。名古屋での停車を考えていないが、一方で、磁気浮上リニアの計算も不明です。今後、車輪走行電車の技術革新が進めば、磁気浮上リニアとほとんど変わらない気がします。新しく、トンネルを掘って、直線に近い新線を建設するのであるから、最高速の車輪走行鉄道が可能です。

2) エネルギー消費

車輪走行と磁気浮上リニアを比較すると車輪走行がエネルギー消費で優れています。第一に、車輪走行は浮上させるためのエネルギー消費が必要ない。磁気浮上は、幾ら超電導技術を使うとしても、ゼロではない。車両内部(例えば、前照灯や座席の照明・冷暖房)の消費電力供給のために、わざわざガスタービンを搭載しCO2を排出する案もある(山梨実験線のリニアがそうである。)。超伝導コイルも高温超伝導が可能であるとしても液体窒素の温度-196℃は、LNGの温度-162℃より低く、低温を全線にわたり24時間、365日維持するための必要エネルギー量も大きいと思われる。

Webで探すと、このようにピーク電力は40倍で、平均でも3倍と書いておられる方もいる。そこで、信頼性の高い情報を探すと、社民党中島隆利衆議院議員が2010年10月19日に質問書を提出していた。(ここにあります。)磁気浮上リニア新幹線についての多くの疑問を、質問している。そこで、その回答であるが、10月29日に総理大臣臨時代理として仙谷氏が回答をしている。(ここにあります。)

「ピーク電力、平均電力の総量等、想定される電力使用量の詳細を明らかにしていただきたい。」との質問の第1項目に対して、「中央新幹線の具体的なルート等が決まっていないため、現時点でお尋ねについてお答えすることは困難である。」との答えである。落第というより失格の回答である。

政府もJR東海も秘密にしておきたい理由があると思えてしまう。実は、10倍以上のエネルギー消費の塊ではないかとも思える。また、ここに交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会による2010年12月15に付けの中間とりまとめの報告書があるが、エネルギー消費については、何も書かれていない。

国民に知らせたくないとするこのようなことは、絶対反対である。民主党は、情報公開を進めるとして政権についた。しかし、実際にすることは全く逆の、国民を無視した専制政治を行っているように思う。

なお、はやぶさのCO2発生量の低さについては、2010年12月28日のブログ1000円高速より鉄道発展策をを見てください。

3) 安全性

磁気浮上リニア鉄道の大きな課題は、安全性であると考える。鉄道の安全性は、様々な要素が関係する。例えば、英仏トンネルには英国の鉄道列車とフランスの鉄道列車が乗り入れているが、安全規格や安全制度が異なり、双方の規格・基準・要求を満たすために工期の遅延や工事費の増加もあったと聞く。鉄道の安全性や信頼性は、机の上の問題ではなく、実際に運行していて事故やトラブルが発生しないことである。JR西日本尼崎事故は、ATSの整備なんて小さな問題ではなく、もっと大きなところにあったと思います。

磁気浮上リニア鉄道と車輪式新幹線を比較すると、車輪式新幹線がよほど信頼できると考えます。のぞみ号と中央新幹線と、どちらを選ぶかと言えば、20分の差なら、のぞみ号に乗って安心する方を選ぶと思います。多分、運賃もずっと安いはずだし。リニアができても、現在の新幹線を撤去する理由は全くなく、当然運行を継続すると考えています。

4) 将来

まず、中央新幹線を建設するなら、国家プロジェクトであってはなりません。政府や自治体の債務保証、補助金、貸付、出資等一切を排除すべきです。3)で英仏トンネルのことを書きましたが、英仏トンネルは、民間会社に対して55年間の事業権を付与した民間プロジェクトです。(なお、当初55年間であったが、その後延長が合意され、現時点では2086年までの事業権です。)この事業権を保有する会社が、フランスに本社があるユーロトンネル(ホームページはここ)です。ちなみに、ここをクリックすると株価が出ます。

中央新幹線をJR東海がすべきかどうかは別にしても、民間会社に対して有期の事業権を付与し、民間会社が民間事業として自ら全額を資金調達し、建設し、運営することも選択肢として考えるべきと思います。その民間会社が、磁気浮上リニアとするか、車輪式新幹線とするか、最終決定をすればよいのです。民間から資金を集めるためには、上場や社債発行も必要です。そのためには、エネルギー消費量に関する情報を含め全て公開せねばなりません。

多くの国で鉄道が見直され日本企業が活躍できるチャンスが期待されている。ところで、その鉄道とは何であるか。磁気浮上リニア鉄道ではないはず。実は、磁気浮上リニア鉄道は、飛行機よりも経済性が低いであろうと私は思っています。山梨実験線の走行実験に関して税金が投入されているなら、情報を公開すべきです。2)で書いた仙谷由人の答弁書を読めば、秘密主義も甚だしい。情報が公開されないなら、今後一切の税金投入に反対します。

磁気浮上リニアは、ドイツでも研究され、上海では実現したが、断念された。何故、日本が磁気浮上リニアの研究を続けるか不思議に思う。同様なことは、原子力開発でも同じで、高速増殖炉の開発を続けるのか、不思議でならない。一方で、トリウム炉の研究は、ほとんど行っていないと理解する。世界の逆を行く方法もあるかも知れないが、その場合は、それについて国民の理解と支持を得るために十分な説明をすべきである。

そんななか、はやぶさはいいですね。

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2011年3月 3日 (木)

子ども手当は、どうなるのだろうか?

予算案を参議院が受けとった日にちについてまで、もめる状態なので、子ども手当なんて、どうなるのか、場合によっては大変な増税になると思うので、書いてみます。

1) 所得税増税

昨年2010年3月31日公布の所得税法等の一部改正により、所得税法の「控除対象扶養家族」の定義が「扶養親族のうち、年齢16歳以上の者をいう。」となり、子ども手当対象の16歳未満の扶養親族が範囲から外された。同様の改正は、地方税法でも行われた。結果、16歳未満の子供を持つ人の所得税は増税となっている。但し、適用は2011年1月1日からであるので、2011年の年末控除の時に、増税を実感することになる。

そこで、所得税が(住民税と合計で)、どのように増税となるかを計算した結果が次のグラフです。子ども2人で、2人とも15歳以下で、給与所得者であるとした場合です。共稼ぎであっても、専業主婦(夫)の家庭であっても、扶養控除が適用されるのが夫か妻か(他の親族の場合でも)一人だけなので、世帯単位の増税額としては同じです。

20113

グラフを書いてみると結構な増税額であることが分かります。子ども手当が払われれば、この増税額との差額が、収入増となるのか、負担増となるのか分かります。さて、その子ども手当ですが、月額13,000円(年額156,000円)で3歳未満は20,000円(年額240,000円)なので、子ども2人であれば312,000円であり、上のグラフからすると、給与金額が年間15百万円以下であれば、子ども手当金額の方が、増税額より大きいことになります。なお、増税をパーセントで示したのが、次のグラフです。

20113pct

2) 子ども手当法案が成立しなかった場合

子ども手当法案が不成立で、そして所得税についても改訂されなければ、増税は既に1年前に成立しているので、増税と児童手当の組合せとなる。児童手当は、3歳まで月1万円、3歳から小学校卒業まで月5千円(第3子以降は月1万円)であり、中学生にたいしては、上のグラフの増税の適用のみ。1人5千円で、2人で1万円の年間12万円となると、上のグラフからして年間5百万円以下の給与額であれば、トントンに近く、6百万円以上は増税であり、8百万円を超えるとそもそも児童手当の対象外であったので、20万円以上の増税となる。

そう考えると、子ども手当は所得控除の不適用を前提とする制度であり、児童手当は所得控除の適用を前提とした制度である。ねじれ状態で、与野党が譲らず、現行の所得控除不適用において児童手当に戻った時は、ネジレは国会だけでなく、子供を持つ世帯にまで影響を及ぼす。議員さん達は、勢力争いに明け暮れるのか、それとも国民のことを少しは考えるのか、あるいは誰が国民のことを考えるのか、興味を持って見守りたいと思う。なお、詳細の計算については、次の表を見てください。クリックすると拡大します。

20113_2

3) 雑感

所得控除から手当へとする方向は、それでよいと思うのです。しかし、増税については、所得税法で言わば恒久的な措置を行い、一方で子ども手当の方は、2011年度の1年限りの法案であり、矛盾を生じている。恒久財源が手当てできないと言いながら、所得税は恒久的に増税し、今回の平成23年度所得税の改正案でも扶養控除38万円は合計所得金額が4百万円を超える場合は、超える金額の38%を控除した残額としている。増税額を予算案で見ると、所得税134,900億円の税収は、前年度補正予算の所得税128,080億円から6,820億円しか増税を見込んでいない。上の計算からすれば、増収額はもっと大きいと思うが、よく分からないことをする人達です。何しろ、子ども手当関連の支出予算としては、「児童手当及子ども手当年金特別会計へ繰入」として1兆9598億円が計上されている。いよいよ分からない。

増税について、昨年の所得税改正について余りマスコミ報道はなかったように思うが、国会では、そのような発言は、何度もあった。例えば、次のような発言があった。財源問題は、所得控除不適用による増税で決着していたと、私は思っていた。

平成22年02月01日  衆議院 - 本会議(自民谷垣総裁の質問に対して鳩山総理の発言)
子ども手当と扶養控除の見直しについてのお尋ねがありました。控除から手当へ、我々のその理念は、相対的に高額の所得者に有利な所得控除というシステムから、相対的に支援の必要な方々に有利な手当へと切りかえるというものでございます。

平成22年02月08日  衆議院 - 予算委員会(自民加藤勝信委員質問に長妻大臣回答)
我々も実は今回、子ども手当を導入と同時に、公表をさせていただいておりますけれども、若年者扶養控除を廃止するということで、基本的に、それもプラスマイナスした実額でいうと、年収の高い人ほどこの金額は少なくなる、こういうような形にさせていただいているところであります。

平成22年02月16日 衆議院 - 本会議(公明竹内譲議員質問に菅大臣回答)
今般、子ども手当の創設と相まって、所得税の年少扶養控除を廃止することとしたところです。・・・個人住民税の年少扶養控除及び特定扶養控除についても、所得税との税体系上の整合性の観点から、同様の措置を講じることとしたところであります。

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2011年3月 2日 (水)

運用3号国民年金の無責任体制

運用3号国民年金被保険者(本当は、基礎年金3号被保険者の方がよいのかも知れませんが、国民年金法7条1項3号における定義であることから、運用3号国民年金被保険者としておきます。)問題に関する政治家・議員や政府の対応そしてマスコミ報道を見ていると嫌になってくるので、書いてしまいます。

1) 本質論

本質論は、まじめに手続きをした人とうまく運用3号により保険金の支払いを逃れる人との不公平ではありません。不公平がおきているのを是正せず、見知らぬふりをして、放置したことが問題です。

そこで放置したのが、社会保険庁の人であったのかですが、そうとも言い切れません。3号被保険者とは、社会保険庁が管理できないような状態にあったとも言えるのです。そもそもは、3号被保険者という制度をつくるなら、それを管理する法制度を作らなかった政治家と高級官僚に最大の責任があります。

消えた年金は、誰が悪かったのか。政治家です。そして、幹部役人です。臭いものに蓋をして、先送りをしていたのが出てしまったのです。運用3号問題は、消えた年金の逆ですが、実は、これも問題の先送りをしていただけ。運用3号が不公平であるとの議論は、先ずは過去の政治家に向けられるべきであろうと考えます。

過去を全て洗い出し、国民の前に、全てを明らかにすることが必要です。年金記録について、保険料を支払った被保険者に開示しない制度がどうして存在したのかです。3号被保険者という制度をつくりながら、誰が3号被保険者であるか、その管理を誰もしない制度が正しい訳がない。社会保険庁に年金記録を被保険者とチェックしたり、3号被保険者をチェックする権限を与えていなかったのであるから、社会保険庁が悪いとは言えない。

2) 通知・通達

政府行政においては、通知・通達が出されることが多い。通知・通達は法ではないので、その差出人と相手先を縛るのみであり、国民を縛るものではない。国民は、通知・通達に縛られず、それは法に従っていないと訴訟を提起可能である。

運用3号問題は、2010年3月29日の年金記録委員会で取り上げられ、8月以上経過した12月15日に通達として出されたのです。8ヶ月間、厚生労働省内部で、法改正の必要性も含め、盛んに議論がされていたはずです。私の想像ですが、法改正をするなら、根本的な問題から改正すべきであり、とりあえず解釈通知で統一的な運用取り扱いをすべしとなったのであろう。当然、大臣等にも話は行っているはず。

法改正には検討すべき事項が多く、中途半端な法改正をするよりは、とりあえず解釈についての通知・通達で扱いを決めて対処する選択もあり得るはず。現実に、運用3号が出る前から、この問題は存在した。それに対しては、どのような扱いをしていたか、厚生労働省は答えるべきである。

3) 日本年金機構は解体すべし

私は、日本年金機構は解体し、社会保険庁をつくるべきと考える。公的年金とは、重要な制度であり、公務員が管理すべきである。公務員とは、憲法においても、第15条2項の「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」に限らず、第17条の「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」がある。例えば、法律上も守秘義務については、公務員の義務は、非公務員よりも厳しい。

消えた年金は、社会保険庁に問題があったのではなく、年金全体の管理制度に問題があったのである。その問題を明らかにせず、組織を政府から切り離すのは、魔女狩り以外に何ものでもない。多分、これを唱えた人達(マスコミも含め)のすねに傷があったのだと疑う。

4) 良い年金制度を

「年金を考える」としてシリーズで書こうと思っていますが、未だその1を書いただけ。続きを近々書こうと思いますが、日本の年金制度は、明らかに時代にそぐわなくなっている。2月17日の年金について考える(その1)国民年金で書いたが、1号被保険者は自営業者だと言われているが、実は自営業者は1号被保険者中の5分の1以下で、派遣、非正規労働者、フリーター、学生等が5分の4以上である。そのような人達を捕まえて、所得が捕捉できておらず、優遇されていると述べる。自営業の人達だって、所得については、ほぼ確実に税務署が所得額を掴んでいる。確かに、農業従事者が自分の農地で収穫した農産物を食べる場合、時価消費額は所得金額とすべきで、それを正確に申告していないかも知れないが、問題とすべきような事項と思わない。一方で、年末調整を受けた給与所得者は所得税法121条により原則20万円以下の他給与所得以外は申告義務を有さないが、この制度は自営業者には適用されない。

3号被保険者問題は、次回の「年金について考える」において、述べる予定であるが、これも時代とのミスマッチが大きすぎる。その結果は、運用3号以上の不公平を生んでいるし、私は日本の社会の経済発展・成長を大きく阻害していると考えている。

制度とは、絶対論で正しいとか正しくないとか議論をしても間違うと考える。時代により、価値観は異なるし、発展する分野、目指す方向、様々なものが違うのであり、その時代に最も適切な制度をつくり、それを時代と共に変化させて行かなくてはならない。

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2011年3月 1日 (火)

選挙改革(公職選挙法)

一票の格差が大きすぎるとする判決が相次いでいます。

MSN産経ニュース 2月28日 一票の格差訴訟 判決で「国会批判」続出 司法の“いら立ち”反映

衆議院議員選挙区画定審議会の3月1日の会議で平成22年国勢調査人口(速報値)に基づく試算結果の概要という資料が提出されここにあります。

私は、衆議院議員の選出選挙方法および参議院議員の選出選挙方法は共に、見直しをすべきと常々考えている。次のような弊害があると思うからである。

・ 衆参議員の差が小さく類似性が高い

現在の選挙制度(衆議院小選挙区・比例代表制と参議院都道府県区・全都道府県区比例代表制)では余りにも衆参共に似通っており、二院制を生かすには、少しは異なった制度がよいと考える。

・ 参議院一人選挙区(定数2であるが、3年ごとの選挙選出は1)

一票の格差が生まれる最大の理由は、都道府県単位選挙区選挙である。47選挙区のうち、29選挙区が一人選挙区で、61.7%である。その結果、選挙区人口と議員定数の比率で一票の価値が平均より小さい選挙区が15都道府県で大きいのが32都道府県ある(参考3月1日審議会資料16ページ)。一人選挙区では、投票ムードにより、勝者が左右される。獲得票数で少しの差が、当選議席数では大きな差となる。

・ 国民の意見が議員選出の結果に反映されない

国民の意見が議員選出の結果とイコールとなるのは、全議員を比例代表で選出することであると思う。しかし、それでは政党を選ぶのみの選挙となり、人を選ぶこともできない。また立候補するにも政党への所属が必要となる。中選挙区も一つの解決策とも思える。

・ 政党権力政治がはびこる

小泉郵政選挙の後、首相が小泉氏を含めて4人、選挙もなく次々と交代した。実現不可能なマニフェストでも、選挙で勝てば官軍と、国民の意見や支持を無視する政治をしてもよいこととなる。大政党所属でないと議員になれるチャンスが低い。大政党幹部は立候補者の公認等多くの権力を握ることが可能であり、権力集中と国民を無視した政党内部の権力闘争が激化する危険性あり。

いかがでしょうか、以上のようなことを、思ってしまうのです。選挙制度を定めている法律は、公職選挙法です。選挙の違憲判決も、公職選挙法が違憲であるとしているのです。法は、国会で制定するのであり、憲法41条も、国会を国の唯一の立法機関であるとしています。しかし、公職選挙法については、議員は利害関係の矛盾が生じる部分がある。第三者機関なんて言うと、訳が分からなくなるので、国会議員を委員としない、委員会をつくり、そこが複数の改革案を調査・検討し、報告書を作成し、公開する。また、シンクタンクを初め、多くの外部の意見を求める。公聴会を開催する。Web等で一般からの意見を求める。その結果を基に、選挙改革案をつくる。それが、国会で決議されて法律となる。その際に、反対される議員もおられるであろうが、それでよいと思う。委員会作成の第○案による公職選挙法の改正をするというのが、選挙公約になってよいと思う。

選挙は、重要であり、議会に国民の意見が反映されていないと国民が感じる場合は、その国にとって不幸であり、危機であると思う。よくない選挙制度では、解散総選挙を繰り返しても、国民の意見は反映されず、政治家の権力闘争のみとなる。

(参考) 衆議院議員選挙区画定審議会とは、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告する役割です。それ以上の権限はない。衆議院比例区や参議院に関しては、審議会さえないのは、公職選挙法で全て定められているからです。

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