地震による原子力発電所の放射能漏れ
放射能漏れは、基本的にあってはならないことです。次の朝日の報道を読むと不安を感じてしまうのですが、実際はどうでしょうか。雑感を書きます。
朝日 3月12日 制御室1千倍の放射線 正門付近は20倍 福島第一原発
1) 朝日の報道の根拠
「経済産業省の原子力安全・保安院は12日朝に記者会見し」と書いてあり、原子力安全・保安院 地震被害情報(第11報) (3月12日午前7時00分現在)には、)福島第一原子力発電所に関して次のように書いてあります。
・モニタリングカーにより周辺監視区域境界近傍の放射性物質測定を行ったところ、12日4:00現在と比較して数値の上昇を確認※。(12日5:20現在)
MP6(正門付近)0.07μSV/h→0.59μSV/h(4:00→4:30)
MP8(正門付近)0.07μSV/h→0.38μSV/h(4:00→4:35)
※)数値のレベルは、一般公衆の年間線量限度である1mSvに達するのに約70日かかる程度。
その後、12報、13報、14報と続いており、MP6で5.1→5.1→6.7と推移し、MP8で2.5→2.9→5.3と推移しています。6.7μSV/hとは、1時間当たり6.7μSVなので、1mSV(1000μSV)/年に到達するには、149時間すなわち6.2日となり、7時発表の70日より相当短くなっています。
2) 放射線の安全数値基準
一般公衆の年間放射線被曝限度を1mSV/年とする基準は、 ICRP(International Commission on Radiological Protection:国際放射線防護委員会)の勧告数字によると理解します。また、国内法において、この数値は経済産業省の告示になっていると理解します。
ICRPの1mSV/年も、2007年勧告では「計画被ばく状況における公衆被ばくに対しては、限度は実効線量で年1mSVとして表されるべきであると委員会は引き続き勧告する。しかし、ある特別な事情においては、定められた5年間にわたる平均が年1mSVを越えないという条件付きで、年間の実効線量としてより高い値も許容される。」と5年平均での適用もあり得るとしている。
なお、更に複雑なのは、放射性破棄物処分の問題がある。原子炉からの破棄物の処分が確立されねば、原子力発電は成立しない。破棄物処分地における放射線量は当然問題である。破棄物線処分に関わる放射線の許容量は幾らにするかという問題である。もう一つは、5年平均のようなアプローチであり、軽水炉原子炉の事故時における許容放射線の決め方として、単純に1mSV/年とすべきかである。
実は、この問題は、日本の原子力発電のみに関わるのではない。もし、日本が官民共同スタイルで、原子力発電を輸出するなら、実は、ハードの輸出ではなく、基準を含めた輸出にならざるを得ない。日本が、どうリードするのか?例えば、放射線の安全基準はICRPに従うことを推奨することになるであろうが、具体的には、どうするのか。インフラ輸出には、この種の課題はついてくるのである。
原子力発電所に関わる人達や医療でX線を扱う人達には、別の基準が存在する。電離放射線障害防止規則であり、こちらでの放射線許容基準は、1mSV/年と比べると、ゆるやかである。
事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
2 事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。
3) 原子力発電
原子力発電所は、地震に対して全く問題がなかったとは言えないであろう。むしろ、トラブルを含め様々な経験があって、そのフィードバックの結果として安全性が高まる。少なくとも、現時点において、重大な事故につながるトラブルはなかったと思う。但し、この点を含め、後日詳細な報告書が出されるべきである。
発電所の地元の方々は、避難を強いられた。日常生活を犠牲にしての避難であり、大変と思う。問題がないと予想されても、万が一のために避難に同意された。その代償は、受益者が負担すべきと考える。東京電力とその電力需要家であるべきか、地震という自然現象の結果であり、広く電力需要家全てか、あるいは税金なのか、多少の議論はあると思うが、日本で原子力発電所が必要と考えるなら、発電所の地元に負担を押しつけてはならないと思う。
日本は人口減社会に入り、今後それほど多くの原子力発電所の新規建設は多くないと思うが、一方で、老朽化する発電所の建て替えは必ず必要であるし、放射性破棄物は常に出てくる。CO2を出さない変わりに、使用した燃料と、ほぼ同量の使用済み核燃料が出てくる。対立ではなく、協力から、よりよい社会が生まれてくると思う。
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コメント
毎年行われる住民向けの胃検診での被爆は以下の通り。
引用)----
著者: 丸山隆司,他
発表年: 1996
研究方法: 推計
検査方法: 実態調査と実験に基づく推計
検査件数(対象数): 全国民(1億2千人)
不利益の種類と頻度:胃X線検査1件の実効線量
男4.9mSv 女3.7mSv
[文献ID S0016304X線診断による臓器・組織線量,実効線量および集団実効線量]
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0030/1/0030_G0000072_S0016304.html
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以上から、医療被曝と比較してもかなり低い被爆である。
毎年これだけの被爆でも、白血病の発症はおろか、平均寿命は上昇し続けている。
外部被爆ならあまり問題にならないでしょう。
だだ問題なのは、爆発時に拡散した放射性物質による「内部被爆」に対しては注意を要します。
投稿: うまそう | 2011年3月15日 (火) 00時09分
原発について、もう1つ。
当地域である静岡県の浜岡原発1・2号機の廃止が平成20年に決定されましたが、更地になるまでには平成45年まで待たばなりません。
http://www.chuden.co.jp/complex/press_oshirase_unten_topics_tenken/topics/__icsFiles/afieldfile/2009/11/19/211119haishi.pdf
今回の福島第一原発の3台が廃炉になる訳ですが、その後始末についてかなり問題になるのではと思います。
投稿: うまそう | 2011年3月15日 (火) 00時18分
うまそう サン
コメントをありがとうございます。今回の評価は、現時点では、不明点も多く、まだ時間を要すると思っています。廃炉になるんですかね。私には、よく分かりませんが。
投稿: ある経営コンサルタント | 2011年3月15日 (火) 00時36分